インタビュー

「Monster Hunter Now」開発者インタビュー

外に出るからこその経験やコミュニケーションを楽しんでもらいたい

【Monster Hunter Now】

9月14日 正式サービス開始

基本プレイ無料(アイテム課金制)

 ナイアンティックとカプコンはAndroid/iOS用リアルワールドハンティングアクション「Monster Hunter Now(モンスターハンターNow)」を本日9月14日に配信する。基本プレイ無料で、ビジネスモデルはアイテム課金制。

【『Monster Hunter Now』ティザー映像】

 本作は「モンスターハンター」シリーズの新たなモバイルゲームとなっており、最先端の位置情報技術とAR技術を強みに持つナイアンティック社が開発・配信を担当している。「モンハン」の世界が現実世界にやってきたというコンセプトで制作されており、日常の中で気軽にハンティング体験を楽しめる。

 プレーヤーはハンターとなり、現実世界に登場するモンスターを狩る冒険に出発する。地図上に出現したモンスターを近くにいるプレーヤーを誘って協力プレイで討伐をしたり、仲のいい友人とパーティを組んで冒険をしたりと「モンハン」の世界を楽しむことができる。また、アプリを閉じている間に遭遇したモンスターを空き時間に狩猟する「いつでも冒険モード」でスキマ時間にもプレイできる作品だ。

 今回はリリースに際して本作のゲームディレクターであるナイアンティックの菅野千尋氏に話を聞くことができた。今回は開発のコンセプトの経緯や今後の展望などを聞くことができたので紹介したい。

ゲームディレクターを務めるナイアンティックの菅野千尋氏

位置情報ゲームならではの「モンスターハンター」の体験をしてほしい

――今回のコンセプトとして今までの「モンスターハンター」と違って我々がゲームの世界に入るのではなく、「モンハン」の世界がこっちに来るっていう現実世界にやってくるという言わば逆のような感じのコンセプトにしようと思った経緯を教えてください。

菅野氏:位置情報ゲームというものの特性上、やっぱり現実世界は切っても切り離せないのは1つ要素としてあると思っています。例えばナイアンティックは「ウェイスポット」と呼ぶいわゆる有名なランドマークを使っています。例えば「ポケモンGO」ではポケストップにも有名なランドマークと言われる場所が当てはまっていることが多いです。

 「ウェイスポット」という場所は実際の地名が出てくるんです。例えば、東京タワーなどの名前が出てきます。そうすると当然皆さん現実の地図の中で遊ばれるので現実の世界の中に何かファンタジーのものを乗せるというよりかは、現実世界を舞台にする方が没入感がすごく高まると思いました。

 その上でただの「モンハン」のモバイルゲームにはしたくないなと思っていた部分がありました。企画当初から逆に現実世界の中で「モンハン」のモンスターたちが住み着いて生活したら、どんなふうに絵が作れるんだろうとか、どのような体験ができるんだろうというところは割と考えていました。キービジュアルやコンセプトアートを作る絵でもあくまで現実の世界をベースに作っていて、今回のプロモーションでも渋谷みたいにビルが立ち並ぶ都会の中にモンスターが出現するのですが、あれば実は割と早い段階からそういったコンセプトアートが存在していました。最終的に結構長い時間はかかりましたが、そこに戻ってきたと思っていますね。独自性ですね。そこが「モンハンNow」の独自性になっていると思います。

本作は現実世界にやってきた「モンハン」のモンスターたちと戦う

――なるほど。ちなみに「ウェイスポット」に該当するような有名なランドマークが少ない地域でも楽しく遊ぶことはできますか?

菅野氏:やはり位置情報ゲームは当然地図を使うという特性上、こちらに意図しない形も含めて、どうしても都会とか都心にゲーム体験が集中しがちなんです。もちろん都会都心部は当然魅力的なスポットも多いですし、人もいらっしゃるので、どうしても偏ってしまうということ自体をゼロにすることは難しいとは思います。

 ただ今回の「モンハンNow」ですごく心がけていたのは郊外の方たちがちゃんと遊んでもらえるようなゲームにしたいと強く考えてました。資源を集める、モンスターと戦うという1番ベーシックなゲームサイクルが遊んでいただけるよう、人が使っている道沿いの一定範囲内であればモンスターと資源が湧くデザインにはなっています。都心とまったく同じとまではさすがに言えないですが、最低限ゲームのベーシックな部分遊んでいただけると思っています。

 もう1つポイントとして今回大きな公園や大型ショッピングモールをモンスターがたくさん湧くエリアにしています。大きい公園や大きいショッピングモールは様々な地域にありますし、そういう場所は実はモンスターがすごく湧きやすくなっています。設定としてそのエリアはモンスターの密度も少し多いですし、モンスターを倒していなくなった後もモンスターが出現するまでの時間を短く設定しています。住んでいる場所の近くにランドマークはあまりないが、大きいショッピングモールには買い物に行けるとか、大きい公園には行けるみたいな形で集まっていただけるのかなと思います。

 マルチプレイも大きい公園の中で公園内のプレーヤー同士がマッチングできるくらいの距離として200mから250mくらいの範囲を対象にしています。この範囲はイメージとしては同じ大きい公園の中で同じ公園の中にいる人同士がマッチングしても近すぎない距離かなと思います。この距離は近くすれば近くするほど、顔を合わせていきなりマルチプレイするのちょっと嫌だなとか気まずいなとか失敗したときに申し訳ないなとかなってしまう。200mから250mぐらいであればどこにいるかわからないけど、この公園の中にいる誰かなんだろうなと感じられる距離だと思い、あまり気を使わなくていいぐらいの距離感として設定しました。こういった場所では週末に一緒にマルチプレイ楽しんでもらえるのではなないかとか、ショッピングモールだったら楽しんでもらえるのではという形になっています。また、こういう場所は安全な場所も多いと思います。

――今回バトルが75秒と従来の「モンハン」のバトルに比べてすごい短期決戦になるります。バトルのコツはあるのでしょうか

菅野氏:もちろんあるとは思います。結構時間が短いので、時間内に狩りを完結できるという要素が原作より少し強いと思います。また、ダメージを受けて失敗する、時間をロスするという意味が原作とは違ってくると思っています。

 一方で、時間をどうやりくりするか、どうやってタイムロスを防ぐかといった遊び方は原作より少し強く意識することになると思います。ただ、モンスターと戦って失敗してしまったとしても、またマップに戻ってきてもう一回やり直すことができます。もちろんモンスターずっといるわけではないので、何十回も何百回もできるわけではないですが、モンスターがいなくなるまではリトライできます。ですので、本作では装備替えて再度挑もうかなとか、属性合わせようかなといった試行錯誤をしていただけるのかなと思っています。

――マルチプレイでバトルする場合、マルチに誘ったプレーヤーの武器の強さが基準となるのか、参加するプレーヤーの強さなど総合的な強さが基準となるのか、モンスターとのバトルはどういった基準でモンスター強さが決まるのでしょうか。

菅野氏:プレーヤーの目の前に登場するモンスターは、プレーヤーのストーリー進捗によって次第にアンロックされていく仕組みになっています。

 例えばストーリーをまだ始めたばかりであまり進んでいないプレーヤーは自分のマップには出ているモンスターの種類が少ないです。その後、少しずつストーリーを進めていって緊急クエストをクリアするごとに新しいモンスターが1体ずつ自分のマップに増えていきます。ただし誰かから誘われてマルチプレイに入る際には自分のマップに出ていないモンスターのバトルに参加することができる仕組みです。そこは一切制限していないので、少し背伸びをして戦ってみるということもできます。

 さらに、同じモンスターでもたくさんプレイしている人のところには星の数が多いモンスターが登場します。星の数が強さを表しているので、同じクルルヤックでもストーリーを進めている方は星5のクルルヤックかもしれないし、自分の目の前にいるのは星1とか2かもしれない。そこで差別化されているので、クルルヤックでも星5のクルルヤックの募集になる場合もあれば星1のクルルヤックの募集もあるという形になります。

 原作の「モンハン」にも上位とか下位というのがあると思いますが、それの難易度をもう少し細かく細分化したような感じです。同じリオレウス、クルルヤックでも星の数によって難易度や強さが変わる形になっています。

 また、マルチで参加したプレーヤーの人数によってモンスターの体力が変動します。人数を集めたら簡単に勝ててやり応えがないとはならないよう、みんなでワイワイできる程度の難易度を保ちつつ、かつちょっと歯応えが残っているというデザインにしています。1人で戦っていると大変だったのが、4人で攻撃するんで4分の1の簡単さになるかと言われればそうではなく、ちょっと簡単になるぐらいのところの難易度になっているというイメージですね。

マルチプレイではプレーヤーがまだ出会っていないモンスターとバトルすることもある

移動中の時間がなくてもアイルーがマーキングしたモンスターと後でバトルを楽しめる

――本作では「いつでも冒険モード」でオトモ・アイルーが遭遇したモンスターにペイントボール投げて、モンスターにマーキングしてくれます。このペイントボールを投げるモンスターの上限はあるのでしょうか。

菅野氏:1日に1回アプリを立ち上げると3個の「オトモ・ペイントボール」が配布されるます。これは毎日、朝の決まった時間に補充されます。そのため毎日3体ずつはプレーヤーが移動している限りは必ずマーキングできるようになっています。

 ちなみにペイントボールは2種類あり、オトモ・アイルーが投げる「オトモ・ペイントボール」のほかに、プレーヤー自身が自分の好きなタイミングで好きなモンスターに対して任意で使える「ペイントボール」があります。こちらのプレーヤーが使える「ペイントボール」は一応課金で買っていただくことができます。「オトモ・ペイントボール」の方は、リリース記念パックをご購入いただくと購入から1カ月間は毎日支給されるオトモのペイントボールの数が3個から5個になります。

 「オトモ・ペイントボール」はアプリを立ち上げていない状態でも自分が通った場所にその時いたであろうモンスターにオトモ・アイルーがペイントボールを投げてマーキングしていきます。1回マーキングするとまたしばらく時間が経ってからマーキングされてみたいな形になっています。マーキングしたモンスターはマーキングしてから48時間有効となっています。

――マーキングもできてバトルも75秒という手軽さはたくさんの層の方が気軽に「モンハン」を楽しめそうだと感じました。

菅野氏:そうですね。今回すごく大きく2つのプレーヤー層をイメージしています。もちろんシリーズ作品が好きで、わざわざ外で「モンハン」を遊ぼうと思ってくださった方が、「これは『モンハン』じゃないな」と思うようなものを作りたくないと思っていました。その方たちがもちろん重要なプレーヤー層であることは間違いないです。シリーズファンにも「モンハン」としてきちんと遊んでもらえるものを作りたいって思っていました。

 また、ゲームをほとんど遊ばない人や、これまで「モンハン」に触れてこなかったけれど、他のゲームを遊ぶ人、ちょっと難しそうだなと思って触れなかった人、興味があったけど触れてこなかったそういう方たちには是非初めての「モンハン」として触っていただきたいなと思っています。もっと言うと若い方もターゲットで、プレーヤー層の中心層から少し外れている方たちにも「モンハン」の面白さを認識してもらうきっかけになるタイトルになると期待しています。

――ちなみに今回モンスターが13種類、武器が6種類、リリース時からプレイできるようになっていますが、今後どのくらいのスパンで次のモンスターや武器が登場するのでしょうか

菅野氏:もちろん武器種は皆さんハンターさんたちのアイデンティティの1つだと思っています。「あれが欲しい」、「これがなきゃ嫌だ」といった意見は把握しています。まず大きいアップデート計画として年にシーズン単位で四半期に1回ぐらいのペースでまとまった数のモンスターと武器種をアップデートしたいなと考えています。

 まだ何を追加するというのはこの場ではお伝えできないですが、そう遠くないタイミングで新しい武器種の話やモンスターの話など皆さんにお伝えできるのではないかなと思います。また、大きい機能についても、こういう機能があったほうがいいのではないかなど皆さんいろいろ考えてらっしゃると思います。大きい機能のアップデートも大型アップデートのような形で年4回ぐらいは実施していきたいと思っています。他にも毎月必ずイベントがありますし、数週間に1度の細かいアップデートの中では、プレイの改善などの細かい機能のアップデート追加をする予定でいます。

――ユーザーのコメントなども目を通されているんですね。

菅野氏:ちゃんと拝見しております。皆さんの「何が欲しい」、「何がなきゃやりたくない」というコメントも全部チェックしています。単純に人気順に出したいというわけではないですが、モンスターや武器種の人気は重要な要素でもあります。ただリリース時に選んだ6種類の武器もゲーム的に必要なものから順番に選んでいます。

 1番ベーシックにこのゲームに向いてるものは何だろうというところから片手剣選び、それから片手剣と相差反するものとして全く違うプレイスタイルを表現できる大剣を選び、遠距離武器も必要だよねということからライトボウガンを入れてといった形で、本当に1つ1つ武器種は様々なテストをしています。最初から全部入れたら結構な数になったと思いますが、やはりちゃんと作り込んで「これは僕の知ってる『モンハン』体験じゃない」や「これは片手剣じゃない」とは感じさせないようにしっかりとゲームデザインをしています。ですので、この後追加される武器もそういった形で、武器種を追加したときに体験してもらえる新しい遊びを作れるのではないかと思っています。

リリース時には13体のモンスターが登場する
プレーヤーの期待に答えて今後のアップデートで武器も追加されていくそうだ

――今回の「モンハンNow」は他の位置情報ゲームとここか違うといったポイントはありますか。

菅野氏:僕はPSPで「モンハン」のおもしろさを知った世代です。またナイアンティックは皆さんに外に出ていただいて人と出会う、家族や友達と新しい場所を知るといった新しい体験出会いをしてほしいということを会社として強く思っています。

 本シリーズは2005年発売の「モンスターハンター ポータブル(カプコン)」でそれを早い段階で実現できていたと考えています。当時はゲームをあまり遊ばない人もPSP持ち歩いて「モンハン」やってる方が結構いらっしゃったと思っています。それが「モンハンNow」で反映されているのが、マルチプレイ要素だと思っています。いつでもどこでも誰とでもマルチプレイができるということで、近くにはいるけど、どこいいるかわからない知らない人とマルチプレイをする上でのハードルをかなり低くできたのではないかなと思っています。

 またパーティープレイもあります。パーティー機能を使っていただくとご家族や友達で移動するときに、これから1時間みんなで狩りに行こうみたいな形でグループを作る機能があります。そのグループの中で一緒に狩りをできるようになっています。位置情報ゲームは今まで1人でそれぞれ皆さんスマートフォン持ち、それぞれの自分のキャラクターを育てて、新しいアイテムを手に入れたりしていたと思います。そんな中でグループで移動するというのは位置情報ゲームとしては実はちょっと新しい要素なのではないかと思っています。このパーティプレイが「モンハンNow」のスタイルにも、元々の「モンハン」にもすごく合ってると思います。みんなで遊びながら移動する、みんなで移動した後で遊ぶという体験を繰り返していくのは他の位置情報ゲームとは違ったポイントではないかなと思っています。

 他にも今の時代のゲームは家でもどこでもオンラインで繋がれて便利だと思うのですが、逆にその便利がゆえに人と人との距離が一定のところ以上縮まらない感覚があるのではないかなと思っています。特にコロナ禍の時にそれを強く感じていました。ですので、今回の200mといった物理的な距離設定やグループ組んでもらうことで、近い距離で遊んでもらいたい、便利な時代だからこそ近い距離で遊ぶために会うといった、より深いコミュニケーションをゲームを通じて感じられるのは大事なのではないかと思っています。

 直接会うからこそ起こる出来事やコミュニケーションの深さみたいなものを感じてもらえるのではないかなと思っています。特にCMに起用させていただいた20代の方たちは生まれた時からオンラインで繋がれるっていうのは当たり前の中で、逆に集まって遊ぶという体験がむしろ新鮮に映る部分もあるんじゃないかなと思っています。

【『モンスターハンターNow』CM | “survival dAnce” 篇 | Music by 4s4ki (Prod. by Yaffle)】
本作では友達などと一緒にグループプレイもできる

――本日配信となりすでに遊んでるプレーヤーもいれば、プレイしようかどうしようかと思っているプレーヤーもいると思います。この記事を読んでいる読者に向けてコメントをお願いいたします。

菅野氏:やっぱり「モンハン」シリーズが好きな方たちに、家ではコンソール版のシリーズ作品を遊んで、外に出たら「モンハンNow」をプレイするという遊び方を楽しんでもらえると思います。家の中だけでなく、外出した際にも「モンハン」を味わえると捉えていただきたいです。いくらでも「モンハン」の世界を楽しめるゲームに仕上がっていると思いますので多くの方に遊んでもらいたいなと思っています。そして手軽ではあるものの、きちんと「モンハン」のデザインができていると思います。1つの素材を追い求めて何度も狩りに出るというシリーズ特有の結構ハードな部分もありますが、そういう体験も味わえるかと。

 一方で「モンハン」は知っていたけれどプレイしたことなかったという方の「初めての『モンハン』」になれるようにもできています。初めて触った人は「ライトボウガンと弓ってあるけど何が違うんだろう?」といった武器の性能など違いがわからない人たちもたくさんいらっしゃると思います。そんなユーザーも段階的に「モンハン」のおもしろさを知っていけるようなデザインにもしているつもりです。もし今まで「モンハン」シリーズに触れてなかった人もこれをきっかけ「モンハン」シリーズ最初のタイトルとして遊んでいただけると思いますので、ぜひダウンロードいただければと思います。

――ありがとうございました。