インタビュー

サードウェーブ代表取締役社長 尾崎健介氏インタビュー

“eスポーツマシン”はスポーツとしてのフェアネスを担保するため

――その発表会で印象的だったのは、「GALLERIA GAMEMASTER」というゲーミングPCについて、単なるゲーミングPCではなく「eスポーツマシン」だと定義されました。言わばステージを1つ上げたわけですが、「eスポーツマシン」と定義した理由はなんですか?

【GALLERIA GAMEMASTER】
eスポーツマシンと定義しているGALLERIA GAMEMASTER

尾崎氏: 当初の成り立ちはBTOでした。どのゲームをやるためにはどのスペック以上のPCが必要なのか、しっかりご説明してBTOの中でお客様に選択していただく。そういうものが今までの「GALLERIA」でした。

 「eスポーツマシン」と定義したのは、それとは全然別の話で、スポーツの世界がまさにそうですが、囲碁でも将棋でも勝負ごとはフェアじゃないといけないじゃないですか。それはLANパーティーに自分のPCを持っていってやるというようなコミュニティ大会であれば、そのあたりは曖昧でもいいかもしれませんが、高校大会とか何かのチャンピオンシップなどのオフィシャルな大会になればなるほど、大会としてどこまでのフェアネスを担保するのかというところが、大会運営側が決めていかなければならないですよね。

 それはPCメーカーという立場を忘れて、決めていかなければならない。そうなると、今までの我々のBTOだけだと、「はい、皆さんお好きなものを」というわけにはいかなくて、この大会をするには、このPCでなければならないというものがあります。

 我々のBTOが、良さの反面、悪さがあるのは、新しいCPUが出たり、新しいGPUが出たりすると、どんどん採用して、それをいち早くお客様に届けることをビジネスの中心にしていることです。そうではなくて、例えば学校だとか何かの大会の時に、いったん購入して「インテルが新しいCPUを出したから、じゃあ新しく買い換えなさい」とか、買い換えないと不利になるとか、そういう形だと良くないと。

 いったん導入したら何年間かは同じ環境で戦えるようにしないといけない。そういう中で、eスポーツ用の「GALLERIA」、真の意味でのゲーミングマシンというものを定義しないといけないという思いで、「GALLERIA」とは別に、「GALLERIA GAMEMASTER」という、スペック固定のシリーズを作りました。

――つまり、「GALLERIA GAMEMASTER」は、最初からeスポーツを前提としたeスポーツグレード、大会グレードのマシンということですか?

尾崎氏: そうですね。大会とかを実施してeスポーツを本当に文化にしていこうということを考えると、eスポーツに使うPCのスペックをどうするのかというのはその部分をフィックスさせていかなければならない部分はあるなと思います。

【JeSU公認PC】
GALLERIA GAMEMASTERはJeSU公認PCとなった

――実際その取り組みがスタートして1年が経過したわけですけれども、手応えはいかがですか。「eスポーツマシーン」はマーケットに刺さりましたか。

尾崎氏: そうですね。これは量の問題ではなくて、質の問題です。eスポーツ大会をやるような場所、eスポーツ用の施設が全国にいろいろありますが、そういう所で採用されるようになりました。量というところの手応えは全然ないのですが、そういう所は気にしていなくて、そういうフェアな環境が広がっていき、そういうインフラが広がっていくと同時に土台ができ上がっていっているという意味での手応えは十分あります。

――なるほど、そうなると「GALLERIA GAMEMASTER」の名前を冠した、「GALLERIA GAMEMASTER CUP」の見方も変わってきますが、すでに2回の開催実績があり、今年開かれれば3回目となるのですが、ここ2回までの感想はいかがでしょうか?

尾崎氏: 感想としては、当然やって良かった思います。まだまだ、我々が思い描くような規模だとか、注目度であるとか、そういった面ではまだまだで、極端な話まだ1/100ぐらいです。もっと回数を重ねる毎に爆発的に増やして行きたいなとは思っています。

――サードウェーブさんは、全国高校eスポーツ選手権も始められて、どちらかというとそちらの方の規模が大きいので、「GALLERIA GAMEMASTER CUP」の印象が薄くなっているように思うのですが。

尾崎氏: そうみえるかもしれませんね。

――今後はどういった風に育てて行こうと考えられていますか。

尾崎氏: それはもう世界に繋がる大会ですよね。もっと世界に繋がる大会にしていきたいです。

――“世界に繋がる大会”というのは、第1回目からスローガンとして掲げられていて、第2回は2カ所の大会に参加できるようになりましたが、3回目について現時点でお話いただけることはありますか?

【GALLERIA GAMEMASTER CUP】
SCARZ Absolute(現Absolute)が「CSGO」部門で2連覇を達成した第2回 GALLERIA GAMEMASTER CUP(参考記事

尾崎氏: まだ厳しいですね(笑)。第3回 GALLERIA GAMEMASTER CUPは実施します。その先の話は決まったらまずは中村さんにお伝えしますから、もう少し待って下さい(笑)。

――わかりました。では、GALLERIA GAMEMASTER CUPの生みの親として第3回をどういった大会にしたいと考えられていますか。

尾崎氏: 形としては今の形で良いと思っています。規模と海外につながる道のりをもっと大きくしていきたいと思っています。これは現在やっている高校大会とは全く別で、高校生以外の学校単位じゃない中でのスポーツなので。サッカーで例えると、キリンカップ、トヨタカップでしょうか、あのようなイメージです。

――種目についてはどのように考えておられますか。

尾崎氏: 種目ですが、GALLERIA GAMEMASTER CUPに関しては、正直よく(競技種目として選んでいる「CS:GO」の)バイオレンスの話がありますが、「CS:GO」、「LoL」、「ロケットリーグ」に共通していることですが、グローバルでも通用するようなタイトルでやらなければならない。それだけです。

――そこの第1回目から続けられているポリシーは変えないということですね。

尾崎氏: そうですね。

――例えば、今JeSUさんのスポンサーをされていますが、JeSUが推進しているような、国内のタイトルを推していくのではなく「CS:GO」だったり「ロケットリーグ」だったり、グローバルで通用するようなタイトルを推していくということでしょうか。

尾崎氏: そうです。グローバルに通用している、またはグローバルに通用するであろうタイトルですね。

――eスポーツ種目について直近で気になっているゲームはありますか?

尾崎氏: 直近ですか……。「ロケットリーグ」はもっとハネると思いますね。

――個人的にも「ロケットリーグ」はお好きでeスポーツとしても推していきたいという感じでしょうか。

尾崎氏: そうですね。日本の中でのアメリカやヨーロッパと比べると「ロケットリーグ」の認知度は少ないですね。ただ、バイオレンスなど世間が気にしているところのハードルがないので、今よりも何倍も認知されていくと思っています。

――昨年12月に、榎本さんが大活躍した「アキバトーナメント」がありましたが、あれは「ロケットリーグ」が種目でしたね。そんなに注目されているのなら尾崎さんが出れば良かったのに(笑)。

【アキバトーナメント】
局所的な盛り上がりを見せたアキバトーナメント。第2回が楽しみだ

尾崎氏: それはどうでしょうか。表の顔は榎本ですから(笑)。

――なるほど、実は出たかったけど、榎本さんに任せたから出られなかったみたいなですか。

尾崎氏: そうでもないのですが(笑)。次回は榎本と、私と松原(サードウェーブ上席執行役員松原昭博氏)でやって、勝った人が出ます(笑)。

――そうなるともうどなたが勝つかわからない。別の意味で、混戦模様ですね。

尾崎氏: はい(笑)。

――ただ「アキバトーナメント」は実際に取材してみてすごく良いイベントだと思いました。日頃「ゲームをやらないでしょ?」と思われる人たちが、本気になってゲームをして、みんな笑顔になれて、楽しんでいる風景がとても良いなと思いました。

尾崎氏: そうですね。

担当者: インプレスさんも出てくださったんですよね。

――そうなんです。発表会に行くまでそれを知らなかったのですが、サードウェーブさんに負けたんです。ギリギリ勝つぐらいを狙うべきなのに大敗を喫して、さすがに負けすぎじゃないかと、反省会でした(笑)。

担当者: インプレスさんは、ゲームに慣れていらっしゃる方ばかりが出ていたので、練習なさってなくて「サードウェーブには勝てるな」と思っていらっしゃったと思うんです。そうしたら榎本が大活躍して(笑)。

――榎本さんはeスポーツ大会に出場して得点を取ったことで自信をつけられたようで、eスポーツについて何かを言うと「でもおまえ大会に出て点を取った経験ないだろう?」と返されてやりにくいとスタッフが仰ってました。

(爆笑)

【大会で得点を取る榎本氏】
サードウェーブの大将として出場し、見事得点した榎本氏

――でも、そういう所も含めて、eスポーツって楽しいな、おもしろいなというところが世間に少しでも伝わったのではないかと思っています。

尾崎氏: 仰るとおりで、社内でもゲーマーとして入社した社員たちは「ゲームやらないでしょ?」という風に見ているところはありますよね。会話をしていると(この上司は)ゲームをやったことない人だから、ニュアンスが伝わりにくいなと、そういう軸で話している者もいます。

 ふつう会社って年齢や役職を気にしながら話をするもので、「ゲームをやっている人」とか「ゲームをやっていない人」という軸が私の中にはなかったんです。でも、ある意味でいえば、それは正しいと思うんですよ。eスポーツをこういう形で文化にして広めようという人たちが、ゲームをやっていなければ気持ちが入らないですよね。ですから、eスポーツに関わる業界の人たちがeスポーツイベントに直接参加するのは大賛成です。