【特別企画】
「リネージュM」の歴史は英雄たちの歴史。攻城戦レポート
それは初代城主の座を巡るプライドとプライドの物語
2019年9月27日 12:00
- 毎週日曜日20時~ 開催
MMORPGの歴史は、即ち英雄たちの歴史でもある。
「リネージュM」についに攻城戦が実装された。攻城戦とは本作の舞台である「アデン大陸」に存在する城の支配権を巡り、あらゆる血盟がその戦闘力はもちろん、人望、叡智、謀略……その総合力を持って戦いに挑む大規模な対人戦だ。
MMORPGの大規模対人戦においては戦闘力以外の要素も重要となる。いかに多くの協力者を集められるか、逆に相手の戦力を削ることができるか。そのためにはゲーム内での外交から、ゲーム外にも飛び火する場外乱闘も含めて様々な工作活動が行なわれる。兵士1人1人が人間であるからこそ起きる様々なエピソードはMMORPGならではの面白さである。
その面白さはモバイルMMORPGの「リネージュM」でもまったく変わりはない。むしろ新しいMMORPGよりも人と人のつながりというか“濃さ”は圧倒的な印象だ。「リネージュ」の時からそうだったが、ボス狩りなどの協力プレイから、血の匂いがプンプンとする血盟同士の抗争まで、人と人が作り出す物語はとてもサービス開始から数カ月とは思えないほどの密度だった。
その魅力の一端を伝えるために、筆者がプレイしている「リネージュM」のケンラウヘル01サーバーの攻城戦の模様をレポートする。プレーヤーの1人として、そしてアデン大陸で生活をしている冒険者の1人として、本サーバーにおける英雄たちの歴史をここに残したい。もちろんこれは観測者の1人としての視点であり、内情は異なる可能性があるのでその点はご容赦いただきたい。
アデン大陸の歴史を作る英雄たちの誕生とルーツを紹介
「血盟」とは他のMMORPGで言うところの「ギルド」的なもので、メンバーがお互い協力し、切磋琢磨するというシステムだ。筆者は自分でも血盟を運営しているし、メンバーとして所属していたこともあるが、「リネージュM」の血盟は家族のような人間関係の濃さを感じている。というのも本作には協力、競争が必要な様々なコンテンツがあり、それらの多くを血盟のメンバーとプレイする。そうすると自然と絆は強くなり、喜びや痛みを共有する仲になるのだ。
どのサーバーも似ている部分があると思うが、サーバーオープン直後はとにかくカオスだった。多くの冒険者達がアデン大陸に降り立ち、様々な血盟が立ち上がる。血気盛んなゴリゴリの対人血盟もあれば、狩りをメインにする血盟や、コミュニケーションに主軸を置いた血盟もある。
そんな数々の血盟の中から攻城戦でキーを握った血盟は、名実共に我がサーバーのトップを走っている「Sleeeeeeeeeeping(以下、Sleeping)」血盟、その対抗馬とも言える存在感を持ちバチバチとフィールドで火花を散らす「農民一揆」血盟、そして対人勢として第3勢力の的な存在である「サルモネラ」血盟だ。なお「Sleeping」血盟、「サルモネラ」血盟からは内情を聞くことができたので両血盟の血盟君主には改めて感謝を申し上げたい。
まずは「Sleeping」血盟について紹介しよう。攻城戦を主軸に置いた血盟としてはランキングトップを走っている名実ともにトップ血盟だ。だが本血盟はサーバーオープン当時からトップを走っていたわけではない……というかサーバーオープン当時には存在しない血盟だった。
サーバーオープン直後、多数の血盟が立ち上がり混迷を極めていた中、対人戦を主軸に置いた最も存在感を放っていたのが「Conquistador」という血盟だ。サービス開始前からSNSなどで血盟員を募集し、サービス直後からトップを走っていた血盟で、対人戦に主軸を置いた過激な血盟だった。
「Conquistador」血盟は血盟員も多く、さらに個人個人の戦闘力も高かったため、PvPはもちろん「リネージュM」で重要なコンテンツである「ボス狩り」でもかなり活躍していた印象だ。ボスは貴重で強力なアイテムを落とすため奪い合いが発生するほどの重要なコンテンツの一つだった。この血盟は外から見ると過激な印象で、ちょっとした小競り合いでも血盟同士の抗争まで発展することがあった。筆者が知る範囲でもサーバーオープンから間もないタイミングでいくつかの血盟と抗争に発展、抗争に敗れたクランが解散に追い込まれていくのを複数目撃した。
だがそんな「Conquistador」血盟にも転機が訪れる。突如主要メンバーが脱退して新規に血盟を立ち上げたのだ。そして「Conquistador」の血盟君主の方針についていけなくなったという多くのメンバーが新規にできた血盟に移籍することとなった。それが「Sleeping」血盟だ。ちなみに「Conquistador」血盟はその後に解散。サーバーを駆け抜けた1つの歴史が終わったタイミングでもあった。
「Sleeping」血盟に次いで存在感を発揮しているのが「農民一揆」血盟だ。サーバーオープン時から少しずつ力を溜めていき、外交などで力を溜めて一大勢力となっている血盟だ。
こちらも対人意欲が高い血盟で、もちろん城の制覇も目指している。前出の「Sleeping」血盟とは敵対関係にあり、フィールドでもバチバチと対人戦を繰り広げていた。筆者のサーバーでも巨塔の1つといえる存在だ。
そしてもう1つが「サルモネラ」血盟だ。ルールは裏切り行為以外はなんでもOKで、PKなどにも積極的に参加しており、勝った負けたより楽しく暴れることを重視しているという。目立った同盟クランなどはなく、サーバー内の多くのクランとも敵対関係にあった。もちろん前出の「Sleeping」血盟や、「農民一揆」血盟とも敵対関係である。“ガチで城主を目指す”というよりは第3勢力として「場を荒らすことを目的としている」とのことで、そこに向けて秘密裏に外交を進めていたという。動向次第によっては戦場をかき回す存在だが……攻城戦は“ワンチャン”もあるのでひょっこり城主を取るようなことも起こりうるダークホース的存在だった。
アデン大陸の動乱は攻城戦前から始まる。因縁の血盟が停戦、そして別の英雄達は解散
初回の攻城戦は、筆者の印象では間違いなく「Sleeping」血盟、「農民一揆」血盟の動きがキーになると推測した。そこにサーバートップを走り続けている"自称狩り血盟”の「SAMURAI」血盟の動向や、「サルモネラ」血盟、そしてこれまで目立った活動を行なってきていなかった"自称"攻城戦血盟の大きく3、4勢力のぶつかり合いになると睨んでいたのだ。
だが攻城戦直前に大きなニュースが飛び込んできた。それは「Sleeping」同盟、「農民一揆」同盟の停戦条約の締結だ。長きに渡り対立関係にあった2大勢力の両者が停戦するのは驚きだった。また「リネージュM」ではボスや狩場の独占(関係者以外が入って来たらPKするなど)といった活動がしばしば行なわれており、「Sleeping」同盟もそういった活動を行なってヘイトを高めていたが、それらの独占の解放などもあわせて発表された。また1つ歴史が変わった瞬間だ。
ほぼ同タイミングで「Sleeping」同盟や「農民一揆」同盟とそれぞれ敵対していた「サルモネラ」血盟も解散を発表。攻城戦を狙いあうのは「Sleeping」同盟、「農民一揆」同盟、そして伏兵的な第3勢力という展開になると見られていた。
さて、そんな状況で迎えた第1週の攻城戦「ケント城」の攻城戦がスタートした。最初の攻城戦ということもあり、前出の「Sleeping」血盟、「農民一揆」血盟はもちろん、他にもいくつかの血盟が参戦、また多くのプレーヤーが傭兵として駆けつける大規模な戦闘が繰り広げられた。
まだ戦い方のセオリーなども固まっていない状況かつ、傭兵で参加したプレーヤーも多く、なかなか統率が取れておらず、団子状態で揉み合うという戦いになった。攻城戦の流れとしては城の門を破り、中にある守護塔を破壊、出現する「月桂樹の冠」を血盟君主が拾えば城を獲得できる。その後20分間守り切るか、攻城戦終了時間まで守りきれば城の所有権が正式に城主になれるのだが、この20分間守り切るというのがお互いなかなか難しかった印象だ。そんな中戦争時間残り僅かなところで「Sleeping」の血盟君主が「月桂樹の冠」を奪取し、そのまま初代ケント城城主となった。
続く2週目はアップデートが適用されケント城とオーク要塞の2城体制になった。結果は予想通りで、ケント城を「Sleeping」同盟が守りきり、もう1つのオーク要塞を「農民一揆」同盟が獲得する、という展開になった。停戦協定のおかげか「Sleeping」同盟はオーク要塞を攻めることはなく、平和に終わるかと思いきや、予想外だったのが、停戦協定を結んでいるはずの「農民一揆」同盟が「Sleeping」同盟が守るケント城を攻めていたことだ。血気盛んな傭兵たちを止めることができなかったのか、2城制覇を目指したのか。その真意はわからないが、ここで生まれた軋轢が翌週に影響を与えることになったようだ。
サーバーの情勢が大きく固まる3週目。3つの城が解放されここでの結果が間違いなく今後のサーバーの歴史を作っていく。敵対する勢力も同盟勢力もあらゆる血盟を含めた人間関係の起点がここから生まれるのだ。また3城が絡み合う展開から各同盟がどれだけ人員を集められるか、そしてどの城を守ってどの城を攻めるか。選択肢が3つになることで間違いなく戦い方が変わることが予想された。例えば自分の城を一旦放棄して自分の同盟の血盟君主に城を譲り、別の城を攻めるなんてこともできる。戦争時間50分のうちに防衛側は30分守りきれば防衛成功、攻撃側は奪取して20分守りきれば奪取成功、決着がつかなくても戦争時間が終わるタイミングで冠を持っていればその時点で権利が固まるという仕様の範囲内であれば、どんな戦い方をしても良いわけだ。
筆者の予想では1つ目の城ケント城は「Sleeping」同盟、2つ目の城オーク要塞は「農民一揆」同盟。これらの城は停戦協定を結んでいるので特に戦いは起こらず3つ目の城ウィンダウッド城の奪取戦では「Sleeping「血盟の同盟「莫逆の友」血盟と、「農民一揆」血盟の同盟「MistDown」血盟がぶつかりあい、どちらかが城を取る展開になるだろうと踏んでいた。だが実際は意外な展開が繰り広げられた。
というのも「農民一揆」同盟が守るオーク要塞が陥落したのだ。「農民一揆」同盟とその傭兵の多くはオーク要塞の防衛ではなく、ウィンダウッド城を攻めることに力を割いていた。そしてウィンダウッド城に夢中になっている中オーク要塞が「Sleeping」同盟の手によって陥落、「農民一揆」同盟もオーク要塞の取り返しに向かうが、ケント城を守りきった「Sleeping」血盟のメンバーも続々とウィンダウッド城、オーク要塞へと参戦。結果としては「Sleeping」同盟が3城を制覇する形になり、ケント城を「Sleeping」血盟、オーク要塞を「Forest」血盟、ウィンダウッド城を「莫逆の友」血盟が奪取するという1同盟による3城制覇という形になり、「リネージュM」始まって以来最初の3城が解放された本格的な攻城戦はこうして幕を閉じた。
とはいえまだまだこれは英雄たちの歴史の序章にしか過ぎない、むしろ3城が解放されたこれからが本番と言えるだろう。「農民一揆」同盟もプライドを賭けて城を取り返しに向かうだろうし、第3、第4の勢力が今後生まれる可能性もある。筆者のサーバーで言えば傭兵だけでも200人余が参加している。それらの一部がもし第3勢力として立ち上がれば情勢が変化することは間違いない。
「Sleeping」同盟、「農民一揆」同盟、そして水面下で活動する第3、4の勢力。間違いなくどの同盟も次の攻城戦に向けて水面下で外交などを繰り広げていることだろう。
“名誉”のために全力を尽くして戦うのが攻城戦
城主血盟はもちろんゲーム的なメリットがある。税収が入手できたり、城主血盟に所属する血盟員しか利用できない商店が存在していたりといった具合だ。だが筆者は「城主」の座を争う目的はそういった実利の先にあるのではないと思う。それは城主という"名誉”にあるのではないだろうか。その名誉のためにキャラクターを強化し、あらゆる策を講じ、全力を持って立ち向かう。それが「リネージュM」の攻城戦の魅力だと筆者は感じるのだ。
ケンラウヘル01サーバーでは、現実時間にしてたった3週間で濃密な“歴史”が生まれた。他のサーバーではまったく別の物語が紡がれているはずだ。
筆者は「リネージュM」の魅力はこういった英雄たちの歴史にあると考える。この記事を読んだ読者にもぜひ新たな歴史を作る1人として、そしてこの歴史を共に目撃する1人として、ぜひアデン大陸でお会いしたい。そして願わくばこの記事を読んだあなたがアデン大陸の新しい歴史を記録してくれることを期待しつつ、ここに筆を置く。