インタビュー

M2 Shot Triggers「ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~」インタビュー後編

オリジナル要素でより激しく楽しめる「DEATHTINYモード」!“恒例の裏”に“サウンド”もこだわり凝縮!

発売日:11月29日 発売予定

価格:ディスク版:6,800円(税別)

ダウンロード版:3,700円(税別)

CEROレーティング:A(全年齢対象)

 往年の名作をこだわり満載で蘇らせるエムツーのSTGブランド「M2 Shot Triggers(以下、『M2STG』)」。その第4弾となるプレイステーション 4用シューティング「ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~」が、いよいよ11月29日に発売された。

 この発売に合わせてエムツー開発スタッフ陣に行なったインタビューの後編をお届けしよう。前編をまだご覧頂いていないという人は、あわせてお楽しみ頂ければ幸いだ。

□“全人類対応”M2STG「ケツイ」完成! 感謝祭ではまさかの発表も!?
https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1153397.html

インタビューにご参加頂いた皆様(写真左から順に)
冬野灰馬氏……デザイナー。パッケージイラスト等のメインビジュアルやポスター用のビジュアルなどを担当している。
久保田和樹氏……「ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~」ディレクター。M2ガジェットや各種UIなど、全般的に担当している。
福井将之氏……追加仕様やM2ガジェットなどの企画&プログラムを担当。追加ジングルと効果音のディレクションも担当している。
堀井直樹氏……有限会社エムツーの社長としておなじみ。
佐藤圭一氏……デザイナー。M2ガジェットのデザインをはじめ、ロゴマークやパッケージデザインなど各所のデザインを担当している。
春日達彦氏……M2サウンドチーム所属のサウンドクリエイター。今回のインタビューには参加されていないが、「ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~」でもサウンド全面を担当している。
工藤索興氏……M2サウンドチームに新たに加わったサウンドクリエイター。春日氏と同じくインタビューには参加されていないが、「ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~」の基板音源再現などを手がけている。

【ケツイ~絆地獄たち~】

2003年にアーケードにリリースされた縦スクロールの弾幕系シューティング。開発はケイブ、販売はAMIが担当している。2018年現在のケイブ取締役である池田恒基氏、通称IKD氏が、当時にプログラマーとして手がけた作品のひとつ。楽曲は並木学氏が手がけている。

敵に近いほどロックオンが速くなるロックショットなど、リスクを背負って前に出て敵を殲滅することで活路を切り開けるという、独特なゲーム性を確立している。特定条件を満たすと入れる表2周、さらに厳しい条件で入れる高難易度の裏2周、その最後に登場する「エヴァッカニア・ドゥーム(以下、『ドゥーム』)」などは、高い難易度で知られる。

本作の物語は、2054年という近未来を舞台に、世界中に兵器を輸出し莫大な利益を不当に得ている企業「EVAC Industry」を完全壊滅させる作戦が遂行されるというもの。だがその作戦は、遂行後に関わった全てのものを破棄するという秘密裏の任務になっており、そこには作戦に携わる者の命も含まれる。生きて帰ることすら許されないが、志願した者にはその命と引き換えにどんな願いでも1つだけ叶えられるという約束がされていた……という悲壮な物語となっている。

本作のタイトルである「ケツイ~絆地獄たち~」には、そのストーリー内容からの「死を前提とした任務に赴く決意を秘めた主人公たちの絆は地獄まで行っても切れることはない」という意味が込められている。

【「ケツイDeathtiny ~絆地獄たち~」PV】

エムツーオリジナル要素を搭載した「DEATHTINYモード」は、デストロイシステム使いまくりのアグレッシブプレイ!

「DEATHTINYモード」オリジナルの青いDチップを取ってゲージを貯めて……
デストロイシステム発動!発動時の敵弾が全て高得点となる金のDチップに変わって、自機の攻撃力もアップする
デストロイシステムをチェーンして発動させると、レベルが上がってさらに自機の攻撃力アップ!画面は2チェーン目なので左下のゲージの上にレベル2と表示されている

――それでは7つのモードのうち最後のひとつ、「DEATHTINYモード」についてお伺いいたします。

久保田氏:今回1番のアレンジバージョンになる「DEATHTINYモード」です。こちらはなんと、「ケツイ」の基本操作であるボムがありませんっ!

――ボムがない。

久保田氏:ボムの代わりにオリジナル要素の「DEATHTROYシステム(デストロイシステム)」というものを発動できるので、それで窮地を切り抜けていくという遊び方になっています。

 デストロイシステムは、「デストロイゲージ」を貯めて発動するものです。他のモードだと画面の下にはボム数の表示枠がありましたが、「DEATHTINYモード」ではここがデストロイゲージになっていて、敵を破壊した時に出る、このモードオリジナルの「青いDチップ」を取るとゲージが貯まっていきます。

 デストロイシステムを発動するには1回にゲージ30%が必要で、ゲージの色は貯まっていない時は青いですけど、30%以上になれば発動可能の緑色になります。そして、ゲージが30%以上貯まっているときにボムボタンを押すと、デストロイシステム発動です。

 発動すると、そのとき画面に出ていた敵の弾が高得点の金Dチップに変わります。そして発動直後のわずかな間、自機が無敵になります。

 「デストロイシステム」発動後はゲージが減っていって、30%分がなくなると終了になるのですが、発動中は自機の攻撃力がアップしますし、敵を倒したときにやはり高得点となる金Dチップが出るようにもなるんです。

――青Dチップを取ってゲージを貯めて、デストロイシステムを発動。発動した瞬間の敵の弾が全部金Dチップになって、発動直後は無敵時間もある。ゲージがなくなるまでは自機の攻撃力がアップして、金Dチップが出るようになるのでスコアも稼げる……と。

久保田氏:そうです。あと、デストロイシステムの終了間際の数秒には「チェーンタイム」という時間があります。このチェーンタイム中に何もせずにデストロイが終わった時は、もう一度敵の弾を消してくれます。

 ゲージが60%とか90%とかあった場合は、チェーンタイム中にもう1度デストロイを発動させて継続させることができます。これを「デストロイチェーン」と呼んでいるのですが、チェーンさせるとさらに自機の攻撃力がアップするんです。

 ただし、チェーンを繋げたときには、デストロイ終わりの弾消しは発生しないです。弾消し回数が減るものの、より攻められるようになるという、ちょっとリスキーな使い方でもありますね。

――デストロイ終わりの弾消しを取るか、チェーンを繋げてさらに攻撃力を高めるかの選択なんですね。

久保田氏:そうなんです。ざっくり言うとデストロイチェーンは“スコアを稼ぐ人向き”なんですね。敵の弾幕をしのぐために使うなら、単発発動で使って弾消しを起こした方が窮地を切り抜けやすくなりますね。

福井氏:チェーンするというのは攻めのプレイスタイルで、チェーンしないというのは守りのプレイスタイルという感じで。攻めるか守るかをプレーヤーが選べるようにしてあるんです。

――なるほど。デストロイ単発で、敵の弾消しを目当てにしたボム的な使い方もありなんですね。

久保田氏:ですね。そういう意味でも、このモードでは「オートボム」ならぬ「オートデストロイ」も搭載してあります。被弾する瞬間にゲージが30%以上貯まっていればデストロイシステムが自動発動するのでミスしないです。ただし、デストロイモード中に被弾するとミスになってしまうので、そこは注意が必要ですね。

――あっそうか、発動直後が少し無敵なだけで、発動中ずっと無敵というわけではないんですよね。

久保田氏:そうなんです。基本の要素はこんなところですので、実際に「DEATHTINYモード」のプレイを見て頂きましょう。

(久保田氏の「DEATHTINYモード」プレイを見ながら)

久保田氏:敵を倒すと青いDチップが出ていますよね。これを取ってゲージを貯めていきます。あと、パワーアップアイテムでもゲージが貯まります。これでゲージが30%以上になってゲージの色が緑になったら発動可能ですね。

 そして……ここぞというときにデストロイシステムを発動します!発動すると敵の弾が全部でっかい金色のDチップになるので、タイミングよく使うと画面を高得点アイテムが埋め尽くす感じになって気持ちいいんですよ。それで……(数秒して)今、「パシューン!」という音が鳴りましたが、その音が鳴ったら30%分のゲージがなくなってデストロイモード終了になります。

――デストロイモード中の時間は数秒というところですね。結構ゲージが貯まりやすいですし、どんどん発動しまくっていく感じになるんですね。

久保田氏:そうなんです、ポンポン使っていくべきものなんですよ。

福井氏:青いDチップは、中ボスとかをロックショットで1箇所に集中させて撃ち込むと大量に出てくるようにしていますので、うまくプレイすれば、さらにたくさん発動できるようになりますね。

久保田氏:デストロイモードの終わり際のチェーンタイムは、金のDチップが青のDチップに変わりますので、それをみて連続発動するかどうかを判断するというのもプレイのポイントになります。連続発動してチェーンを繋げていくと、左下にチェーンレベルという数値が出るのですが、実はこのレベルがスコア稼ぎに関わってきたりもしますね。

――パワーアップアイテムを取っただけでも1ゲージ分ぐらい貯まっていますし、どんどん使っていけますね。

久保田氏:パワーアップアイテムはちょうどゲージ30%分で1発動分ですね。「DEATHTINYモード」はパワー固定状態でのプレイになっているのでパワーアップアイテムは本来の用途ではなくなっているのですが、デストロイゲージを貯めるのに有効なアイテムという位置付けにしています。

――ばんばん稼いでデストロイモードをどんどん発動させてプレイしていくというような。アグレッシブなアレンジになっている感じですね。

福井氏:そうですね。攻めにブーストをかけたり、逆に弾消しに使ったりと、従来の「ケツイ」にはない遊び方になっていると思います。

今回も「DEATHTINYモード」には裏が!その名も「DIE-DEATH」!
「DIE-DEATH」モードでは、突入条件は秘密だが、プレイしていると右下に謎の表示が出ることがあるとか…?ぜひいろいろとお試し頂きたい

――M2STGシリーズでのアレンジオリジナルモードというと、恒例の「裏モード」も気になります。

久保田氏:ですよね。今回もあります!「DEATHTINYモード」プレイ中にある条件を満たすと裏に突入します。

福井氏:今回の裏は、その名も「DIE-DEATH」モードです!

――「DIE」で「DEATH」!

堀井氏:「DIE-DEATH」ってすごい名前だよなぁ(笑)。

全員:(笑)。

久保田氏:裏に突入すると、右下に「DIE-DEATH」という文字が現われるので、それでわかるようにしています。「DIE-DEATH」は敵の攻撃がかなりきついのですが、そこをデストロイモードを駆使して切り抜けていくという感じになりますね。一方で、「DIE-DEATH」だと通常より得点が稼げるようになっています。

――より激しい攻撃をデストロイモードで激しく切り抜けて、ばんばん稼いでいくと。それにしてもアーケード版以上にでっかい倍率チップがジャラジャラと降ってきて、見た目にも豪勢ですよね。

堀井氏:“アイテム取りたい感”と“ジャラジャラ感”は重要!

――なるほど。ちなみに「DEATHTINYモード」の基本の難易度はどれになっているのでしょう?アーケードと同じですか?

福井氏:1周目のアーケードと同じですね。

佐藤氏:ただ、デストロイモード発動で弾幕を消せますし、オートデストロイもあるしで、相当楽になっていると思います。

福井氏:コンセプトとしては、敵の攻撃パターンはアーケード相当で厳しいんですけど、そのぶんデストロイモードでこっちも強くなっているので、初心者の人でも強敵を倒すチャンスがある、というところですね。 ただし、「DIE-DEATH」は大変難しいですけど、激しく稼げるモードにもなっています。上級者の人はこっちのスコア稼ぎがオススメですね。

 ちなみに、「DEATHTINYモード」では画面内の倍率表示なども全部カットしてあります。実はこれは青いDチップを表示させるために必要だったという事情もあったりします。基板の制約上、カラーパレットの都合が……。

佐藤氏:表示を削らないと、青いDチップの色が出せなかったんです。

――(しばらく久保田氏のプレイを見て)久保田さんのDIE-DEATHプレイが3面後半に入ってきましたが、さすがにだいぶきつそうになってきましたね。

久保田氏:ちょっと無言になってました……あっ!(デストロイゲージがないときに被弾してミスしてしまっった)。

全員:(笑)。

――これはデストロイの発動場所がかなり重要になりそうですね。久保田さんのプレイも、スコア稼ぎに使っているところもあれば、弾幕がやばいところをデストロイ発動で乗り切っているところもありますし。

久保田氏:ものすごい弾幕がきても、デストロイを駆使すればなんとか生き延びれるんです。そういうバランスに上手くなってくれたかなと思います。

――デストロイゲージの管理が重要になりそうですね。

福井氏:ですね。ゲージ管理を上手くやって、苦手な箇所やボスまでにゲージを90%以上貯めていければ、3回は弾幕を消せます。戦略的にゲージを貯めることでシューティングが苦手な人でも生き延びることができますね。被弾するときのオートデストロイ発動用にゲージを温存しながらのプレイというのも、もちろんいいと思います。

 使い方をプレーヤーが選択できるようにしているので、そこで戦略的に楽しんだり、爽快感を増やしたりというのを狙っているんですよ。

――チェーンという要素があるから、攻めに前向きに使うこともできるというのがポイントですね。

福井氏:「俺は稼ぐためにデストロイするぜ!」というプレイもできます!

――スコアを稼ぐためのデストロイの使いどころというのは、例えばどんなタイミングがいいのでしょう?

福井氏:やっぱり雑魚や弾が大量に出現するところがいいとは思うのですが。実はデストロイ中は“Dチップが出た周りの弾もDチップに変わる”んですよね。爆風巻き込みみたいなものです。なので、デストロイ中は敵の弾がたくさん固まっているところを上手く攻撃するようにすると、さらに稼げるようになります。

――なるほど。発売日からは秋葉原Heyで「DEATHTINYモード」でのアーケード台が設置されるということですし、その期間中のハイスコア争いも楽しみですね。

福井氏:ですねー。皆さんどんどん挑んでもらえたらと思います。スタッフ一同楽しみにしています(笑)。

「DEATHTINYモード」のオリジナル要素をはじめ、M2STG「ケツイ」にこだわりを詰め込んだ福井氏

――「DEATHTINYモード」を作ったのは、開発順としては最後の方だったのですか?

福井氏:最後の方でしたね。当初はもっと軽いものにしようと思っていたのですが、他を作り込んでいくうちに、「DEATHTINYモード」も時間をかけた作りになっていきました。

 今回の「ケツイ」の開発当初から、いろいろなアレンジモードを検討していたのですが、最終的には「怒首領蜂大往生」の「ハイパーシステム」や「デススマイルズ」の「パワーアップ状態」の方向が「ケツイ」に合うと判断しました。ゲージを貯めて発動させると敵の弾が消えて自機の攻撃力が上がるというものですね。

――元のボムの機能をデストロイシステムに置き換えてしまおうと考えたのは、どういったところからだったのでしょう?

福井氏:元々は、今回のアレンジモードを“リソース管理ゲーム”にするのがいいのではと考えていたんです。弾幕が苦手でも戦略的にリソースを使えばクリアしやすくなる、というような。でも、「ケツイ」の場合、ボムが頻繁に撃てますという方向へと伸ばすのは違うかなと思って。「ケツイ」のボムってその場で敵の弾幕を消すもので守りの要素なので。もっと攻めの要素、継続的に攻め続けられるものにしたかったんですよね。

 突然「エスプガルーダ」の話をしますが、「エスプガルーダ」では「覚聖」という要素があって、これはアイテムでゲージを貯めて発動します。これが割と「頻繁に発動できる要素」なんですね。そこで、そういった要素を「ケツイ」に入れてみようと思ったんです。

 「エスプガルーダ」の覚聖のように頻繁に使える要素と、「デススマイルズ」のゲージを貯めて発動してパワーアップするという要素をあわせて。その結果、デストロイ発動時に弾消しの効果も入ったので、ボムはなくして置き換えてシステムをシンプルにしました。

 ……と、そんなことを考えてやっていくうちに、ボムをなくして機能を追加するために、さらなる解析と開発が必要になって、開発現場は大変なことになっていきました(笑)。

――ちなみに「DEATHTINYモード」という名称はどういうところからできていったのでしょう?

福井氏:命名したのは佐藤ですね。

佐藤氏:最初はゲームタイトルに何か副題をつけようというところを考えていたんですけど、そこにも“ケイブっぽさ”を出したかったんですよね。「ケツイ」のストーリーは最後に主人公達も死んでしまう運命にあるので、死の「DEATH」と、運命の「DESTINY」をかけあわせての「DEATHTINY」にしたんです。言葉の掛け合わせにケイブっぽさが出るかなぁと。

堀井氏:うん、わかる。

久保田氏:それでタイトルは「ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~」に決まって。そこから、1番のアレンジモードの名称も「DEATHTINYモード」にしたらいいんじゃないかとまとまっていきましたね。

佐藤氏:その頃は「DEATHTINYモード」のデストロイシステムも、まだ名前が決まっていなくて「ハイパー(仮)」と呼んでいたんです。そこは、攻撃力が上がって敵弾も破壊するので「デストロイシステム」にしようと。その「デストロイ」の綴りも「DEATH」を入れた「DEATH TROY」にしているんですよ。

 ちなみに、「DEATHTINY」は「Death」と「Tiny」という単語にわけることもできますが、「Tiny」は小さいとか細かくという言葉なので、「アーケードチャレンジ」や「絆育成」も、ステージを細かにわけて小さな単位で遊べるという感じで。そういう「Tiny」も入っています。

――なるほど、いろんな要素が上手く繋がっていったというわけですね。お話を伺っている間に久保田さんのプレイがいよいよ5面ですが、順調ですねー。

福井氏:久保田はこの「DEATHTINYモード」をやりこんだ結果、アーケードを1周クリアできるようになったんですよ(笑)。

久保田氏:ボクは以前だと5面までいけなかったんですけど、「DEATHTINYモード」だと5面まではいけるので、それで練習して敵の配置パターンを覚えたらアーケードもいけるようになったんですよ。

 あと実は5面ボスの「エヴァッカニア」は、「DEATHTINYモード」だとアーケードの2周目の攻撃パターンになっているんです。なので「DEATHTINYモード」をやりこんでからアーケードで戦うと「あれ、なんか簡単だな」みたいになったり(笑)。

――スパルタな慣れさせ方(笑)。

福井氏:ちなみにエヴァッカニアとドゥーム戦だけは、デストロイゲージがかなり早く貯まるようになっています。デストロイ発動中の被弾だけ気をつければ、わりとすぐに次の発動ができるので。

――「激しく戦え」ということなんですね。

久保田氏:今、残機が0になりましたが、最後の1機は攻撃力が上がってデストロイゲージの貯まりも早くなります。ただし倍率の上限が500までになるので稼げなくなるんです。

――厳しいところもある一方で救済もあるというか。ギリギリまでプレイが続くようにしているんですね。

久保田氏:そうなんです。そのあたりも含めて、今回のテーマは本当に“スパルタ”だと思うんですよ。もうね、福井スパルタ集ですよ!

――福井スパルタ集!

佐藤氏:そして、全ての道はアーケードに通ずるという(笑)。

福井氏:遊んで頂くからには、「危ない!やられる!」というスリルを存分に味わってもらうよう激しい攻撃にするものの、その一方で、できる限り多くの人にエンディングを見てもらいたいと思っていますので、そういうチューニングにしています。そのうちにアーケードもクリアできるようになってもらいたいな、と。

 全人類アーケードクリア計画なんですよ……全ては!

――どこか、理想を実現するためには手段を選ばないマッドサイエンティスト感がありますよね(笑)。

全員:(笑)。

最高難易度の「DIE-CUSTOM」に久保田氏が挑戦!M2STG「ケツイ」のプレーヤー育成力で結構いけるように?

――7つのモードには入っていないですが、CUSTOMモードからプレイできる最高難易度のモードもあるんですよね?

福井氏:あります。CUSTOMモードで特定の設定にすると遊べる、その名も「DIE-CUSTOM」です。「DIE-CUSTOM」は開発の最後の方になんとか間に合ってねじこんだモードなので、CUSTOMモードで手動で設定した人だけが遊べるものになっています(笑)。

 ルールとしては、アーケードの裏2周目を残機1のスコアエクステンドなしで挑むというものです。ただし、オートボムありでも遊べますし、ボム数も6個まで増やしてもOKなので、実質6ミスまでは大丈夫ですね。

――なるほど。オートボムありでも、かなりエグイ設定ですよね。これが今回で1番難易度の高いモードというわけですので、じゃあ恒例のプレイを久保田さんに……!

久保田氏:……やりますかー!

最高難易度の「DIE-CUSTOM」モードを久保田氏がプレイ!エムツー開発陣の皆様からのいじりを背中に浴びながら奮闘することに(笑)

 ここからは現場での久保田氏のプレイをいじる声を書き起こすので、その雰囲気を楽しんでもらえれば幸いだ。

「1面はなんとかなるんだけども2面以降がね……もう、こんなん無理だよ!」

「2面はもう中ボス前からマジでやばいです」

「3面まで行ければケイブのシュー太郎先生の記録を超えられますよ!(※)」

「なんとしてもシュー太郎先生は超えたい!」

※シュー太郎氏はケイブの社員であり、非公式生放送「ケイブるてれび」に出演中。以前に放送内でM2STG「ケツイ」の「DIE-CUSTOM」モードに放送中に挑戦した。「ケイブるてれび」はこちらシュー太郎氏が「DIE-CUSTOM」モードに挑戦したときの模様はこちら

「ここの弾幕がやばい……おおーすごい避けれてる!」

「覚醒した!?」

「嘘避けっぽいよー!」

「でも、さすがデバッグをひたすらやっただけあって上達してるよね」

「まぁ、そういう風に褒められた途端に崩れるのがお約束だがなっ!」

「……周りからの口の攻撃がひどい!」

「それにしてもいい感じに避け過ぎだよね。……なんかやってない?」

「なんもやってないですよ!」

「嘘避けっぽいよー!」

「裏2周のボスにも対応できるようになってますね!」

「これも『DEATHTINYモード』をやりこんだおかげですよ!」

「久保田さん、以前は『ケツイ』苦手だって言ってたのにね」

「いやぁ結構いけちゃうんじゃない?あ、これは無理だ(笑)」

「無理無理って言いながらやっていると、生き延びていることにテンションが上がってくるんですよ!」

「謎のアドレナリンが」

「おおー、なんだかんだで4面までいった!」

「キャー!久保田さん素敵ー!」

「移植してー!」

「ガヤがひどい(笑)。あーもう無理!」

「あぁー……。」

「終わったー。」

 というわけで久保田氏は4面前半でゲームオーバーに。

――実演プレイありがとうございました。こんな感じに「無理、無理!」って言いつつ楽しむのがいいかもしれませんね(笑)。

久保田氏:ですね、購入頂いた皆様にもぜひお楽しみ頂きたいです(笑)。

歴代「ケツイ」のBGMアレンジに、当時の心残りもしっかり補完したサウンドパート

――サウンド周りについてお聞きしていきますが、BGMのセットは5種類あるんですよね。

久保田氏:DLCで提供しているものを含めて5種類ですね。

福井氏と「ケツイ」の全楽曲を手がけられた並木学氏(「エムツーショットトリガーズ 弩感謝祭」より)。「ケツイ」での並木氏のわずかな心残りも、福井氏の努力でしっかりと補完されている

久保田氏:このうち「ステレオアレンジ」と「ベイシスケイプアレンジ」は、PS3版やXbox 360版に収録されていたものですね。それを今回の「ケツイ Deathtiny~絆地獄たち~」でもお楽しみ頂けます。

 松本大輔さんによるアレンジは、最初に「ケツイ」をやるとなったときにケイブさんから「弊社の松本大輔のアレンジを入れてみてはどうですか?」と提案頂いたことがきっかけで実現したものですね。それで松本さんにお願いして全曲のアレンジを作って頂きました。

 最近だと「ごまおつ (ケイブのスマートフォン向けアプリ『ゴシックは魔法乙女』)」をやっている人なら、松本さんの曲は聴き慣れているかと思いますので、松本さんアレンジの「ケツイ」をお楽しみ頂ければと思います。

福井氏:「ごまおつ 」でも「ケツイ」とのコラボをやっていて、そこでも松本さんが「ケツイ」のアレンジをやられていたんですよね。「ごまおつ 」で「ケツイ」を知ったという人にもぜひ、今回の「ケツイ」を楽しんでもらえたらいいなと思いますね。

久保田氏:DLC提供(パッケージ版には封入されている)になる「VIRT アレンジ」は、ケイブさんが発売されたXbox 360用「怒首領蜂大復活ブラックレーベル」のアレンジモード向けにJake“virt”Kaufman氏が作られたケツイ風アレンジの曲ですね。「怒首領蜂大復活ブラックレーベル」のものでありつつも、全曲「ケツイ」のアレンジですので、それを今回は「ケツイ」本編で聴けるようにしています。

福井氏:「怒首領蜂大復活ブラックレーベル」の「アレンジモード」は、「ケツイ」の主人公たちのいわばifの前日譚ストーリーになっています。「ケツイ」が「怒首領蜂大復活ブラックレーベル」を経て、ふたたび「ケツイ」本編に舞い戻ってくると思うと熱いですよね!

――「ステレオアレンジ」と「ベイシスケイプアレンジ」は、PS3版やXbox 360版と同じものになっているのでしょうか?

福井氏:厳密に同じというわけではなく、どちらも並木さんから提供頂いた作曲データを手を入れずに忠実に使っています。

 どういうことかと言うと、他機種版では並木さんが作ったデータからBGMのレートやBPMを変えていたことがあったそうで、例えばXbox 360版だと60fps向けにBPMを変更していたそうなんですよね。ですが、今回はそれをせずに。並木さんの作られた本来の意図通りのデータを使っているんです。

堀井氏:こちらはNTSCではなく基板にフレームを合わせているので、本来の作曲データのままに収録できているということですね。

――なるほど。これまでの「ケツイ」だとフレームレート合わせでわずかに速くなっていたBPMも、元データ通りに聴けるということですね。BGM以外の音周り全般はどうでしたか?

福井氏:そちらも大変でしたね。基板の音質の再現にはかなり苦労しまして。基板は、デジタルのPCMチップと、その後ろのアナログ回路とで音ができているのですが、まずデジタルPCM部分だけのエミュレーションだけで再現度をチェックしたところ、再現としてはもの足りなかったんですよね。そこを再現するためにエミュレーション担当の方にアナログ部分のシステムを作っていただき、そして弊社のサウンドチーム新人の工藤ががんばってチューニングをしてくれました。

 設定のOTHER SETTING内に「アーケードのサウンド再現のオン/オフ」という項目があって、これをオンにするとアナログ部分の再現をより高めることができるんですよ。

久保田氏:基板からの音の出方を再現していますね。工藤いわく「JAMMA端子のSP Plusから出ているような特有の音」になるんです。暖かみのあるアナログ的な音質ですね。

福井氏:あとは他にも「バージョンによる曲の違い」も切り替えられます。これはどういう事かというと、アーケードの「ケツイ」の楽曲には、2003年にリリースされた基板のバージョンと、サントラに収録されたバージョンの2つがあるんです。サントラの方はアーケードのものからブラッシュアップされていて手を入れてあるそうなんですよね。

 実はアーケード基板では、並木さんが作った曲データの最終バージョンが、いろいろな事情によって基板の最終バージョンに載せられなかったそうなんですよ。その曲データの最終バージョンだとわずかに修正がされているのですが、そちらはサントラのみに収録されたんです。

 それで今回、並木さんの方から「最終バージョンの曲データを入れて欲しい」というお話になって。それを切り替えられるようにしてあるんです。

久保田氏:並木さんから、「せっかくだからこれ入れてよー」っていう感じで連絡頂いたんですよね。

――当時の心残りもしっかり拾えているというわけですね。ちなみに曲データの最終バージョンはどんな違いがあるのでしょう?

福井氏:ドゥーム戦の曲のフレーズがわずかに変わっていたりとか、2面のフレーズがちょっと変わっていたりとか、そういうのが何カ所か数曲にありますね。あと、音量のバランスも調整されているそうです。

 実はこれを組み込むのにも、ただ曲のデータを突っ込むだけではダメで、解析してから対応する必要があったんです。最終バージョンの曲を組み込もうとすると、そのデータそのもの変わってくるので、プログラム全体のアドレスにズレが出ちゃうんです。そうするとM2ガジェットなども全滅するので、そこのズレが出ないように、工夫して組み込んでいます。

 ……僕自身も最終バージョンの曲でプレイしたいっていう気持ちがあったので、その一心でがんばったところですね(笑)。

久保田氏:福井の「並木学ミュージック」への愛が出ているところです(笑)。

福井氏:ちなみに今回のデータ容量は1.6GBぐらいと、M2STGとしては結構大きな容量になっているのですが、そのほとんどがサウンドデータですね。アーケード基板再現バージョン以外のBGM4種類はCD音源よりも上の48000Hzのレートで収録しています。

久保田氏:今回は新規のオープニングムービーなども入っていますので、全体のサイズが大きくなりましたね。

福井氏:完全新曲として、並木さんにオープニングムービーの曲を作曲いただきました!素晴らしい曲に仕上がっているので、ぜひお聴きいただきたいです!そして、オプションから見ることができる「スタッフクレジット」で流れるメドレーは、弊社サウンドチーム春日と工藤の2人が「ケツイ」の原曲をDJプレイでメドレーに仕上げたものですね。かっこいい仕上がりですので、こちらも聴いてもらいたいですね。

――なるほど、サウンド面もこだわりまくっての盛りだくさんですね。ちなみに、M2STGでは毎作品BGMとSEのボリュームを個別に設定できるようにしていますし、そこもやはり解析してちゃんとわけているというところですよね。

福井氏:今回ももちろんやっています。あれが地味に大変なところなんです(笑)。今回だと68000とZ80のそれぞれのサウンド解析をして、そこに手を入れて、BGMとSEそれぞれにボリュームバランスを調整できるようにしています。

M2STG第5弾タイトルは「エスプレイド」!そして「アレスタ」も!来年以降も走り続けるエムツー

「エムツーショットトリガーズ 弩感謝祭」で明かされたM2STG第5弾タイトルは「エスプレイド」!井上淳哉氏からのコメントも公開された
そして、M2Aというプロジェクト名で進んでいるのは新作の「アレスタ」!こちらは冬野氏がディレクターとなって進めていく
「エムツーショットトリガーズ 弩感謝祭」の会場でアンケート用紙を手にひそかに暗躍していた堀井氏

――M2STGの今後、ひいてはエムツーの今後について、お話頂けますでしょうか。

堀井氏:はい。このインタビューを皆さんにお読み頂いている頃は、「エムツーショットトリガーズ 弩感謝祭」も無事に終えているはずですので、M2STGの次のタイトルとして「エスプレイド」を、そしてM2Aというプロフェクトで新作の「アレスタ」を開発しています。

 先行して発表済みの「フィーバロン学園」と、「斑鳩」を手がけた井内ひろしさんの最新作である「ウブスナ UBUSUNA」についても、ちゃんと進んでいますので。お待ちください。

福井氏:「エスプレイド」は久保田が大好きなタイトルということなので。

久保田氏:基板も持ってます!ボクの友人には元全一のスコアラーもいますので、彼にもテストプレイをしてもらって、ボチボチ進んでいます。

福井氏:流れ的には、今回の「ケツイ」は福井のターンでしたが、「エスプレイド」は久保田のターンだ、みたいなことを言っちゃってもいいのかな(笑)。楽しみにお待ちください。

久保田氏:とは言っても、どれぐらいお待ち頂くかは福井の企画次第なのですが!

福井氏:アレンジモードを模索するための解析を進めていて、あれをアレしたり、コレをあれしたりしています。

――もう解析を進めているんですね。

福井氏:5割ぐらい進んでいますね。そこからSUPER EASYモードを作っていくという段階です。

――今回伺った「ケツイ」の流れで言うと、最初の1~2カ月のあたりですね。

福井氏:そうですね。トッププレーヤーさんに触ってもらって、よりアーケードの再現度を高めるというところもきっちりやっていきます。

――わかりました。12月でM2STGも2周年となりますし、来年の展開はどのようになりそうですか?

堀井氏:3周年目に向かってですね。今後は「エスプレイド」もディスク版を出して欲しいという声があると思いますので、その方向で検討しますし。冬野が作る新作「アレスタ」もPVを出しましたし。いろいろとありますので、来年も期待して頂ければ!

冬野氏:昔から、「来年の事を言えば鬼が笑う」って言いますよ?

堀井氏:……来年“以降も”期待して頂ければっ!

冬野氏:それなら鬼もオッケーです!

全員:(笑)。

――それでは、最後にゲームファンの皆様に一言頂けますでしょうか?

佐藤氏:今回はゲーム内の開発に関わるのは初めてだったのですが、外観に関わるところをいろいろとやらせて頂きましたので、穴が空くほど、M2ガジェットや製品ロゴ、パッケージ・ポスターなどを見て頂けたらなと思います。よろしくお願い致します。

冬野氏:今回はキービジュアルを手がけたのですが、ボスのモデリングデータをケイブさんから提供して頂いたりして、昔に僕が一緒に仕事をした人と再会したりもしたんです。今回は僕が新規にモデリングしたデータと原作のデータを合わせて使っていますので、人の繋がりとしてもデータ的にも新旧の交流というところがあって、思い入れのある作品になりました。

――思い返すと、M2STG最初のタイトルだった「バトルガレッガ Rev.2016」で、M2ガジェットの方向性を定めたりしたのは冬野さんでしたし、M2STGがあれから2年経つというところについてはいかがでしょうか。

冬野氏:「バトルガレッガ Rev.2016」の時は本当に手探りで。いろいろと「こうできたらいいなぁ」っていう夢をガジェットという形で並べていた感じでした。でも、それを実現するのも自分だったんですけど(笑)。今ではそういうM2ガジェットが、もうあって当たり前みたいなところまできてくれて。すごく育ってくれて感慨深いです。今後も皆様にお楽しみ頂ければ嬉しいです。

――ありがとうございます。では続いてお願い致します。

久保田氏:とりあえず……、まずは大変お待たせ致しました!2017年の4月に発表してから大変お待たせしてしまったのですが、その結果できあがったものは池田さんから「全人類対応済弩推奨版」というお言葉も頂けて、「ケツイ」という作品の決定版と言えるものにできたのではないかと思います。ぜひとも、皆様にはアーケード1周ができるようになるまで、遊びこんでもらえればと思います!

佐藤氏:ドゥームを倒せとは言わないところが優しい(笑)。

久保田氏:それは俺も無理なので(笑)。ドゥームにはSUPER EASYモードでも会えますので、みんなでドゥームに握手しに行ってください。

福井氏:全人類対応を掲げて作った「ケツイ」がやっと完成しました!「アーケードチャレンジ」、「絆育成」、「DEATHTINYモード」といった新しいモードで、全人類がアーケードをクリアできるようお助けしますので、プレイして頂いて、実際にアーケードをクリアしてもらえればと思います!

久保田氏:(アーケードクリアしてくれよ!)※小声で

福井氏:(クリアしてね!)

久保田氏:(絶対してくれよな!)

全員:(笑)。

堀井氏:M2STGは最初はちゃんとシリーズとして続けていけるのかも心配だったのですが、無事に4作目の「ケツイ」をリリースできて、ディスク版も出せるようになって。次の新作も発表させて頂いています。シューティングゲームをこれからも広めて行きたいという気持ちで、これからもがんがんやっていきますので、長い目で見守って頂ければ嬉しいです!

――ありがとうございました!!