インタビュー

PS4「バトルガレッガ Rev.2016」インタビュー

受注限定版の締め切り間近! 伝説のSTG “ガレッガ” への取り組みをたっぷり伺った

エムツーの堀井直樹社長、ディレクターの長野敦也氏、プランナーの久保田和樹氏
インタビュー収録日:10月3日

タイトル配信日:12月15日

価格:
3,700円(税別・ダウンロード版)
8,800円(税別・Premium Edition)
プレイ人数:1~2人

 1996年にアーケードに生まれ、今なお伝説的作品としてプレイし続けられているエイティングのシューティングゲーム「バトルガレッガ」が、12月15日プレイステーション 4用タイトル「バトルガレッガ Rev.2016」として復活する。

 今回、STGブランド「M2 Shot Triggers」を立ち上げ、初の自社パブリッシング作品として本作を発売するエムツーにて、インタビューを行なわせて頂いた。ご参加頂いたのは、堀井直樹社長、ディレクターの長野敦也氏、プランナーの久保田和樹氏。

 エムツーと言えば「セガ 3D復刻プロジェクト」インタビューシリーズで弊誌をお読みの皆様にはお馴染みと思うが、こちらでも“移植への苦労話や裏話”、“こだわり”が満載なので、お楽しみ頂ければ幸いだ。

【「バトルガレッガ Rev.2016」最新プレイ映像】

20周年でついに「バトルガレッガ」移植が実現! 「弾銃フィーバロン」は“来年の寒いうちに”

【バトルガレッガ】

 エイティングより1996年2月にアーケードへとリリースされた縦画面縦スクロールのシューティングゲーム。美麗なグラフィックスに、重厚な世界観、そして現在はエムツーに所属する並木学氏の手がけたサウンドが相まって好評を博した。

 最大の特徴はゲーム内部にある“ランク”という難易度調整システム。一般的なシューティングゲームの感覚でプレイすると終盤のステージはかなりランクが上昇し、敵弾の増量をはじめ、敵の攻撃が熾烈になる。この概念が当時のプレーヤーによって研究されるまでは“1コインクリアが不可能”とすらされた。自機のパワーアップ状態や取得アイテムなどによって上昇、残機数が減ると低下といった研究がされた結果、残機を稼いで要所で自爆し、ランクをコントロールするという方法で1コインクリアが達成された。

 1998年にはセガサターンへの移植も行なわれたが、現在はプレミア価格で取引される存在となってしまっている。

写真内の左から順に、プランナーの久保田氏、ディレクターの長野氏、堀井社長。開発中バージョンでの実演プレイも交えつつ、たっぷりとお話を伺った

堀井氏:今日は主にディレクターの長野に話してもらおうと思います。各種のモードやM2ガジェット(以下、『ガジェット』)の話など、それに、サウンドがなぜか知らないけど4バージョンも収録されることになったのはどうして? とか……。

長野氏:最後のは“あんた”のせいだよ!

――(笑)。

※9月10日に東京・新宿ネイキッドロフトにて開催されたイベント“ガレッガナイト”にて、堀井氏が「サウンドのバリエーションを増やしたい!」と無茶振りした結果、イベント会場にてスーパースィープから発売されるCDへ収録されるリミックス版サウンドも追加されることになった。

堀井氏:いつも“あんた呼ばわり”なんですよーほんとにもう!

長野氏:会社の会議中でも「堀井」呼ばわりだったり、“あんた”だし……いつもこんな感じですね(笑)。

堀井氏:僕が高校生のときに長野の家に遊びに行ってたんですけど、そこに行くと変な人達が集まってPC-8801でゲーム(「REVOLTER」)作っていたんですよ。自主制作のシューティングゲームを作って売ってたんですけど、そのあとに「会社にする」なんて話もあって。彼の影響を受けてエムツーを作ったのが実はきっかけだったりするんですよね。

長野氏:そうやってエムツー作ったのを人のせいにするんですよ!

堀井氏:そのせいで今も辛い思いをしていると! 会社経営は大変です(笑)。

――思いがけずエムツーの成り立ちのエピソードの1つが聞けましたが(笑)。まずは「バトルガレッガ」移植の成り立ちはどんなものでしたか?

長野氏:毎年お花見をしていて、そこが本当のきっかけかなと思うんですけど、以前からそこで堀井はエイティングの外山雄一さんに「『ガレッガ』の移植をやらせてください!」ってずっと打診していたんですよ。

堀井氏:その頃はWiiのバーチャルコンソールアーケードがあって、「これに『ガレッガ』を出したい」とWiiで実際に動かしたりしていたんですよ。遅延とか考えなければ60fpsで動いてもいたんです。

 そのときにはセガの奥成(洋輔)さんにも「(ガレッガを)出せる方法ないかな?」って相談したり、「なんならセガから出してもいいのでなんとかなりませんか?」みたいな話までしていて。

 でも、その時は時期的なものもあり、セガからリリースというのも難しくて。諦めたんですよね。

長野氏:そこから少し経って今年の花見のことになるんですけど、外山さんに例年のとおり「やらせてください!」ってお願いしたんです。

 いつもだと「エイティングとしてもいろいろ難しい……」というお返事だったんですけど、そのときは外山さんからも「2016年ってガレッガ20周年なんだよね」というお話があって。そこでもう一押しお願いしたら、「じゃあ、ちょっと(実現に向けて)がんばってみる」と言ってもらえて、ついに許可を頂けたんです。そこが始まりですね。

――なるほど。長年お願いしていて、ついに実現したということですね。PS4向けということで、ハードの決定はすぐに決まったのでしょうか?

堀井氏:そうですね、アーケードスティックに繋いでかっちり遊べるというハードを今の時点で考えると、普及台数なども考慮したらPS4かなとなりました。

――STGブランド「M2 Shot Triggers」としては、「弾銃フィーバロン」移植の発表が4月にありましたし、そちらも以前からお話されていたとは思うのですが、「ガレッガ」の移植もそれと並行するように決まっていったような流れになるのでしょうか? そのうえで、それらラインナップをエムツーが自社パブリッシングで出そうという決断をされた?

長野氏:「弾銃フィーバロン」自体は以前からケイブさんとお話をしていて、エムツーでパブリッシュという形でリリースできるという状態にはなっていたんです。

堀井氏:ただ、世間的にはその頃はPS3からPS4への転換期だったんですよね。「弾銃フィーバロン」を出すという話はケイブさんとまとまっていて、そこに花見の席から「ガレッガ」もいいよということになってくれて。だったら自社パブリッシングでそれらを出していこうとなったんですよね。

長野氏:話がまとまると堀井は、「『ガレッガ』と『フィーバロン』を今年中に両方出すぞ!」って言い出したんですよ。でもそれはさすがに……今年に出せるのは「ガレッガ」だけになっちゃいますね。

堀井氏:そこはちょっとケイブさんには申し訳ないんですけど、「ガレッガ」は20周年のアニバーサリータイトルなので……という形で。「フィーバロン」にも別のでかいネタを仕込んで冬の間に出したいというところです。

長野氏:「フィーバロン」は、来年の寒いうちに出せればいいなという感じですね。

「M2 Shot Triggers」第1弾として12月15日発売予定の「バトルガレッガ Rev.2016」
こちらは第2弾となる予定の「弾銃フィーバロン」

――そうすると、流れ的には後からリリースできることが決まった「ガレッガ」ですけど、PS4ですぐに動かすことはできたのでしょうか?

長野氏:社内のライブラリがあるので、何かのハードで動いていれば他のハードに持ってきて動かすだけならできますね。

 ……でも、そこからの「とりあえず動いている」というところからの苦労が当然あって。それを「ガレッガナイト」でもさせて頂いたのですが、フレームレートや、すっごい微妙なタイミングの調整ですね。それらだけで1カ月半から2カ月ぐらいかかっています。

――「ガレッガナイト」では入力に関する話や“遅延をなくすためにしている秘密のテクノロジーがある”という話もありましたが。

堀井氏:そこは実のところを言っちゃいますけど、元の「ガレッガ」は“入力してか
ら画面に反映されるまで数フレームほど遅延している”んですよ(※)。それを限界ま
で取り払ったんです。表示遅延があるぶんと内部的な遅延解消分が相殺されて、いい
感じになっているという話なんです。

――先読みもしているんじゃないか、と言われていましたね。

堀井氏:それに近いことも今後にやらないといけなくなりそうですね。あと、PCなんかだと120fpsで動かせるじゃないですか。そこに対応していくとさらに0.5フレーム削れるんですよね。そういうのも今後やっていきたいと思いますね。

――そうした調整を重ねつつ、さらに「ガジェット」などの追加要素もありますよね。追加要素は調整と同時に進めていったのですか?

長野氏:そうですね。ただの移植で終わらせるというつもりは最初からなくて。プレーヤーさんの欲しい機能や物をつけたいというのがあって。特に「ガレッガ」はそういうものがすごく多いゲームなんですよね。題材的にもプロジェクトのコンセプトに合っていたので、追加要素を入れる方向へと話がとんとん拍子に進んでいきました。

――移植をするにあたって、高解像度化したりなどいろいろとプランが出てくると思うのですが、どういうコンセプトだったのでしょう? やはりプレーヤー目線が1番でしょうか?

エムツー所属の3DCGクリエイター冬野灰馬氏が個人的に「ガレッガ」にハマっていたということで、今作ではディレクターを務めることに。その後、1コインクリアも達成した

長野氏:それはもちろんです。あと、今日はちょっといないんですけど、ディレクターの冬野が今年の頭から「ガレッガ」を攻略していたんですよ。

堀井氏:ブログにプレイ日記をつけていたんだよね。

長野氏:その話を聞きつつ、さっきの花見の席で「ガレッガ」が移植できるとなって。それで、別のプロジェクトの会議のときに「『ガレッガ』の移植をやるから冬野さんお願いね」と伝えたんですよ。

――冬野さんが「ガレッガ」をやりこんでいたのはこの移植の話があったからなのかな……と思っていたんですけど、そうじゃなかったんですね(笑)。

長野氏:いや、全然違うんですよ(笑)。

堀井氏:逆、逆。趣味でやってたんです(笑)。

 「ガレッガ」の移植をうちで進めていたことだって、冬野はしばらくの間は知らなかったはずです。本人からすると、何も知らずに「ガレッガ」を遊んでいたら、急に「ある程度作ってみたからプレイしてみて」って言われ、ディレクターもやってって無茶振りを言われ。しかも「発売までにはクリアできるようになって」とかも言われてました(笑)。

長野氏:その時は冗談で言ってたんですけどね(笑)。

堀井氏:それから本当にクリアできるようになってたね。

――そして、そんな冬野さんからガジェットに関する仕様がぼこぼこと上がってきた、という感じでしょうか?

長野氏:そうですね。冬野が“自分で欲しいと思う機能”をどんどんまとめていって。最初は企画と仕様をまとめていただけだったんですけど、そのうち自分で全部を作るようになっちゃって。それもあっという間だったよね?

久保田氏:すごい速さで作りまくってましたよ。ガジェットのデザインは最初と今だと全然違ってます。冬野からの「あれも入れたい、これも入れたい」が止まらなくて。途中でガジェットのサイズを調整して、「空いたスペースにこれも入れよう」といったこともやりましたね。

長野氏:冬野だけでなくユーザーさんにもプレイしてもらって。そこで「どんなガジェットが欲しいですか?」とリサーチもしました。それもありつつ増えていった感じですね。

――ガジェットを増やしても処理の負荷的なところはそんなに問題はないのでしょうか?

長野氏:実は意外と……あるんですよ。やっぱり動いてますからね。そこの処理をうまくやりくりしていかないといけないんですけど、一時期はガジェットが重くてゲーム本体が落ちたりしてました(笑)。「これはヤバイからなんとかしよう!」と、1回全体を見直して今はなんとか。

――なるほどー。そうすると、やはりトライアル&エラーで盛るだけ盛って、仕様が固まったら最適化で軽くしていくという流れはあったんですね。

長野氏:そうですね。ちょうどガレッガナイトの直前ぐらいがヤバかったところで、一通り全部を突っ込んだら重くて動かなかった(笑)。

久保田氏:「なんか音がブツブツ途切れてるけど!?」ってなってました(笑)。

堀井氏:ガレッガナイトで処理落ちしたらシャレにならんよ! それこそガレッガ警察の皆さんが暴動を起こすよ(笑)。

(※)掲載初期にはニュアンスを伝えるためにおおまかなフレーム数を
記載しておりましたが、記述を変更させて頂きました。