インタビュー
「バイオハザード RE:2」開発陣インタビュー
「『バイオ RE:2』はリメイクではなく、「バイオハザード」の最新作!」
2018年12月5日 18:00
- 2019年1月25日 発売
- 価格:
- 7,800円(税別、PS4パッケージ版)
- 7,222円(税別、PS4/PC DL版)
- 8,148円(税別、PS4/PC DELUXE EDITION)
- 24,800円(税別、COLLECTOR'S EDITION)
- 7,280円(税別、Xbox One DL版)
- 8,180円(税別、Xbox One DELUXE EDITION)
カプコンは、2019年1月25日発売予定のプレイステーション 4/Xbox One/PC用サバイバルホラー「バイオハザード RE:2(以下、バイオ RE:2)」において、メディアツアーを開催した。
メディアツアーでは丸2日間に渡る本作未公開部分の試遊やCS第⼀開発統括 常務執⾏役員 ⽵内 潤⽒へのインタビューのほか、開発陣のCS第一開発統括 第一開発部 ディレクターの門井一憲氏、CS第一開発統括 第一開発部 第二ゲーム開発室室長 ディレクターの安保康弘氏、CS第一開発統括 第一編成部 プロデュース室プロデューサーの神田 剛氏のお三方にインタビューを行なうこともできた。
試遊の手触りを踏まえて、色々と気になることを聞いてきたので、こちらの内容をご紹介しよう。
カプコンメディアツアーの記事一覧
・「バイオハザード RE:2」試遊レポート
・「バイオハザード RE:2」開発陣インタビュー
・カプコン第一開発部統括 竹内 潤氏インタビュー
懐かしくも全く新しい、生まれ変わった「バイオ2」
――発売まであと2カ月に迫りましたが、今の心境はいかがですか?
門井氏:本編はほぼ完成しているので、今は発売日を待つ状態なのですが……。
神田氏:早く発売して欲しい気持ちもあり、一方で開発としてはもうちょっと最後までしっかり宣伝活動の追い込みをかけたいなという気持ちのせめぎ合いです(笑)。
――発表以来、ユーザーさんの反応はいかがですか?
門井氏:最初はどうなるかなと思っていたのですが、プレイした方は皆さん「面白い!」と言ってくれているようで、いい評判を頂いています。昔を知っている人は懐かしさもありつつ、全然違うところもあったりして驚いていただけているようです。
神田氏:E3以来、プレイした方からは「想像していた以上だ!」とかなりポジティブな声をいただいていますね。
安保氏:オリジナル版「バイオ2」プレーヤーさんの間でTwitter上で思い出の話が膨らんだりしているのは嬉しいですよね。
――「バイオ RE:2」の製作期間はどれくらいですか?
神田氏:初めてタイトルのアナウンスをしたのが2015年の8月で、逆算すると3年ほどですね。
――ナンバリングではなく、あえて「バイオ2」を「バイオハザード」の最新作として選んだ理由を教えてください。
神田氏:ずっとファンの方に熱望されていたというのもありますし、「RE ENGINE」など、自分たちが満足のいくものをファンの方に届けられる開発環境が整ったというのもありますね。
門井氏:プレイステーション 2くらいの世代だと変わった印象にできなかったと思いますし、プレイステーション 4世代に変わった今だからこそ色々と新しくできるというのが大きいですね。個人的にはちょうどよかったなと考えています。
安保氏:2002年に「『バイオ1』のリメイクが発売されたから次は『バイオ2』出すんじゃないの?」とファンの間では度々話題に上がっていたものの、プロジェクトとしてはなかなか立ち上がらなくて、大分時間が経ってしまいました。
時代も進んでいるというか、時間が経ってユーザーさんの目も肥えていますし、色々なゲームも出ているしというところで、改めて現代、2019年に発売するのに相応しい内容になるよう議論を重ねて、オリジナル版を原作とした最新作ということで今回の形になっています。
――「バイオRE:2」の発売はオリジナル版「バイオ2」から丁度21年目ですよね。
神田氏:21年、中途半端になっちゃいましたね(笑)。
安保氏:「20年目を目指していて、1年遅れちゃった!」というわけではないです(笑)。作っていたらたまたまそうなったという感じで。
門井氏:発売日は狙いましたけどね(笑)。
神田氏:そうですね、発売日はオリジナルの「バイオ2」と同じ週なんですよね。
――先程「RE ENGINE」のお話がありました。このエンジンを使うと制作上どのようなメリットがありますか?
安保氏:1番のメリットはレスポンスの速さですね。修正してから確認できるまでのレスポンスが滅茶滅茶速いんですよ。なのでトライ&エラーを効率良く行なえて、そのぶんクオリティアップに時間をかけられるんです。
――今作のグラフィックスでは特に雨の反射や水の濁りなど、水の表現力が凄い印象がありました。
門井氏:濡れていると不潔な感じで「触りたくない」とか「気持ち悪い」という感情に繋がるので、あちこち濡らしたりしてますね。グラフィックスのコンセプトは「ウェットアンドダークネス」で、濡れた表現や暗闇に何か居そうな感じなどにこだわっています。
安保氏:濡れているほうが生物の"ナマ感"を上手く表現できるんですよね。皮膚もカサカサしているよりも濡れてるほうがナマっぽいんです。
――試遊ではゾンビを倒したあとやリッカーの皮膚のヌラッとした感じが凄く嫌だなぁと思いました。
神田氏:グチャァ……っていう(笑)。
――ところで、今回ゾンビが凄くしぶとい気がするのですが……。
門井氏:そうですね、最近の流行り、トレンドだと大量に出てくるけれどヘッドショット1発で死ぬ、というゾンビが多いんですが、今回は1体1体怖くて強いという風にしたかったんです。その上でゾンビに迫られている間の緊張感を演出するためにわざと動作をゆっくりにしたり、ヘッドショット1発じゃもちろん死ななくて、撃っても撃ってもしぶとく近づいてくるとか、手足が使えなくなったら今度は這ってきたりとか……というところまでちゃんと全部モーションを入れて、こだわって作っています。
――しかも普段はのろのろと動いているのに、襲ってくるときはグワッと素早く襲ってくるんですよね。
安保氏:1週間くらい何も食べてないくらいの勢いでゾンビが襲ってくるような、もう「食いたいィィィ!」って迫ってくるゾンビの飢餓感が出ていると思います。
――「バイオ RE:2」では音も怖いですよね。クレア編だとタイラントに延々と追いかけまわされて、ずっと足音にビクビクしていました。
門井氏:姿が見えるより音だけ聞こえるほうが怖いと思うんです。音響に関しては今回リアルタイムバイノーラルという新たな技術を使っていて、5.1ch対応のヘッドフォンなどでなくても立体に音が聞こえるようになっているので、敵がどちらにいるかが音だけでわかるようになっています。
ちなみに、逆にタイラントはこちらの足音を聞いているので、隣の部屋にいたとしても音を立てると気づいて近づいてきます。静かにしていると意外とやりすごせるかもしれません。
安保氏:タイラントの追跡の匙加減は結構難しくて、しつこく追いかけられるけど、なんとか逃げ切れるような微妙なバランスにしています。今回のタイラントはできるかぎりワープのようなズルをせず、実際に建物内を動き回ってプレーヤーを追跡しています。
――オリジナル版「バイオ2」の固定カメラではなく、新たにビハインドカメラを採用した理由を教えて下さい。
門井氏:やはり今の時代固定カメラだと人を選ぶ操作になってしまうので、色々と試した結果変更することにしました。試した中にはFPSもあったのですが、今回はレオンやクレアといったキャラクターの要素も重要なのでやはり姿が見えたほうがいい、ということでビハインドカメラを採用しました。
神田氏:ゾンビに噛まれるときに、顔が迫ってくる恐怖感や臨場感を1番よく表現できた視点でもありましたね。
――視点で言うと、暗いところではライトを向けたところしか視界が無いのが怖いです。
門井氏:人間の視界に近い方が臨場感も出ますし、今回ライトはちゃんと構えて持たせるために労力を割いてるんです。他の作品では胸にライトを固定したりしていることもありますが、手で持っているときちんと動きを付けないといけないのでとても大変でした。
でもやっぱりこの臨場感を出したいので、こだわって作っているというのはありますね。攻撃したときにモーションが飛んでしまったりしないように、きちんと繋ぎを作ったりして、普通はやらないことにわざわざ挑戦したりしました。
安保氏:あとは画面の中のどこに敵がいるかというのが予めわかってしまうと怖くないので、自分で探すという感覚、ライトを当てることで確認をしてもらうというのも意図として盛り込んでいます。
門井氏:自分で「ライトを当てる」というところを意識して欲しかったんですね。
安保氏:「どこにいるんだー!」と探して欲しいです。
――キャラクターの移動速度については恐らくかなり詰めたうえで決定されたのではないかと思うのですが、このあたりいかがですか?
門井氏:マップの広さや敵の性能など、色々加味してあの速度になってますね。他のゲームに比べたら遅いと感じるかもしれませんが、プレイしているうちにこれが自然だと感じてもらえるようになってくると思います。
安保氏:「バイオハザード」の近作に比べると第1作の「バイオ1」や「バイオ2」では建物自体が狭くて、敵が出てきたときの距離が近いというのが良さだと思いますので、比較的ゆっくり目の速度に調整しています。
――確かに遠くにゾンビがいる、というよりいきなり現われることが多いですね。
神田氏:角を曲がっていきなり出てくるとか(笑)。
――もうそれが本当に怖いんですよ……。
神田氏:そう感じていただけて良かったです(笑)
――ストーリー的にも細かく変更が入っていますが、オリジナル版「バイオ2」から変えるところと変えないところというのはどのように決めたのでしょうか?
門井氏:基本的に印象に残っているシーンは残す、という判断をしています。1度通しでストーリーを作ってみて、自然に感じるような流れにするために順番を変えたり、それでも違和感があるようであれば内容に手を入れたりと色々試行錯誤して決めていますね。なのでオリジナル版「バイオ2」と同じシークエンスが場所や順番を変えて出てきたりもします。
安保氏:原作のファンの方も沢山いらっしゃるので、お話が全く違うものになってしまわないように留意しつつ、表現を少し変えたりして同じものだけどより深く伝わるようにアレンジを加えています。
門井氏:大枠は変わらないけれど、枠組みの中の過程、細かな部分が色々と変わっているという感じですね。
――今お話しできる範囲で、ストーリーの新たな見どころはどこですか?
神田氏:今回の体験範囲だと署長やケンドのストーリーですね。
安保氏:レオンはケンドと出会うんですが、オリジナル版「バイオ2」にはなかったシーンが追加されています。これはレオンがこれから先に進んでいくうえで、その意志をより強く固める演出になっていますし、ケンド自体もよりドラマチックな状況に置かれています。
門井氏:マービンの扱いもオリジナル版「バイオ2」より大分大きくなりました。レオンが成長するきっかけになるキャラクターになりましたね。
安保氏:先輩らしくてカッコいいですよねぇ。
神田氏:ああいう漢気のあるキャラクターには惹かれますよね。
門井氏:あとキャラクターで言うと僕はクレア推しで……可愛くて仕方がないです。マービンにはクレアとのシーンもあるんですが、ある台詞がグッときて個人的に1番好きなシーンです。
安保氏:レオンも新米感がアップしていて、フレッシュでいいですね。署長もオリジナル版「バイオ2」より憎たらしさがアップして、クレアを殴って去っていくような、よりヘイトを貯めていく感じがいいなぁと思います(笑)。シェリーもちょっと大人っぽくなって、設定上の実年齢に近づいています。
門井氏:シェリーはもともとオリジナル版「バイオ2」でも12歳という設定だったので、8歳から10歳くらいに見える幼い感じなのを実年齢に近づけたというのもありますし、ただの子供という"記号"ではなく、ちゃんと人格を持った人間として描きたかったので、今作では敢えて大人っぽい12歳にしています。
――そういえば、今回は英語音声と日本語字幕でのプレイでしたが、結構言葉が荒いですよね。署長もクレアも「Shit」や「FUCK」といった単語を多用していました。
安保氏:署長に関しては、威圧感が大事なので(笑)。
神田氏:それくらいの強いセリフを言いたくなる状況ということで、ネイティブの方でもあれくらい言ってもおかしくはないというレベルですね。
安保氏:演出としてシェリーのピンチを演出を伝える意味で、署長の本気度を見せておきたかったんです。「コイツはほんとにヤバイやつだ!」って。
――ほかに「バイオ RE:2」で注目してほしいポイントはありますか?
安保氏:「バイオ RE:2」ではアイテムマネジメントにもこだわっていますね。オリジナル版「バイオ2」よりもこの遊びの幅を広げています。
門井氏:アイテムを持てる量に制限があるなかで、どれを持っていくか、というのは「バイオハザード」シリーズを通して面白いところだと思うので、あえて持ち切れない量のハーブや強化火薬を置いているシチュエーションもあります。
――試遊では拾えるアイテムが沢山あって、インベントリがすぐに一杯になってしまっていました。あれはわざとだったんですね!
門井氏:そうです(笑)。ジレンマを感じてもらうために敢えてやっています。「バイオハザード」ではアイテムを持ち切れなくならないように効率のよいルートを構築する楽しみもあるので、そういったところもオリジナル版「バイオ2」と同じように楽しめるようにしています。
安保氏:サバイバルとして何を持っていくか、という取捨選択も必要ですね。
神田氏:そのほかの見どころで言うと、やはりリッカーなどとの立体的な戦闘ですね。リッカーは360度動き回るのでスピーディで迫力がありますので、動きなども楽しんで欲しいです。
――リッカーがこちらを見つけたときの叫び声は本当に心臓に悪いですね。
神田氏:それで慌てて部屋の外に逃げたりすると、そこにはゾンビが待ち構えていたりして(笑)。
安保氏:あとは「木の板」なんかも評判いいですね。板で窓を塞ぐか塞がないかでゾンビの侵入率が変わってくるんですよ。
――えっ、そうだったんですか。
安保氏:要所要所で窓を塞がないとゾンビが増えたりして苦労することになります。基本的にゾンビは建物に"侵入"してきてるので、突然発生したりすることはないんです。全てのゾンビをシャットアウトすることはできませんが、塞いでいくことでかなり楽に進めると思います。
――アイテムで言うと、今作ではナイフも消耗品扱いで壊れるようになりましたね。
門井氏:今回ナイフは結構強いんですよ。なので、強い代わりに壊れるようにしました。あとはゾンビに襲われたときにナイフを刺して逃げるという行動ができるんですが、こればかり使われてしまうと簡単になりすぎてしまうので消耗品にしました。ただ、その代わりに何本も拾えるようにしてあります。
神田氏:例えば壁に刺さってたり(笑)。
安保氏:銃の弾薬は基本的にはギリギリになるように調整してるので、ナイフだけを無限に使われてしまうとバランスが崩れてしまいます。なので、そのあたりのバランスを取っています。
――ちなみに、オリジナル版「バイオ2」では"ナイフクリア"というチャレンジもありましたが、それは今作でも可能ですか?
門井氏:できます……基本的には。一部イベントでナイフ以外を使わなければならない部分もありますが、銃を使わずにクリアすることは十分可能です。
――少し気が早いお話ですが、今後DLCなど拡張コンテンツを作る予定はありますか?
神田氏:そうですね、何かしらやりこみ要素的なものを出せたらいいなとは思っているんですが、まだ具体的にお答えすることができる段階ではないですね。ただ、「The 4th survivor」や「The 豆腐 Survivor」はちゃんと本編に収録されていますし、「バイオハザード」のファンに喜んでもらえそうなものを沢山盛り込んでいますので、発売を楽しみに待っていてください。
――最後に、ファンに向けてコメントをお願いします。
門井氏:「バイオ RE:2」はリメイク作品というより、「バイオハザード」の最新作として全力で作っています。昔プレイした人も、新しく「バイオ2」に興味を持ってくれた人も、誰でも楽しめる作品に仕上がっていますので、ぜひプレイしてみて下さい!
安保氏:「バイオ2」をやったことがない方にプレイしてもらいたいというのはもちろんですが、昔オリジナル版「バイオ2」を遊んだ方が20年経った今、もう1度遊んでも楽しめるよう徹底的にアレンジを加えたりして、思い出補正込みの「『バイオ2』が面白かった!」というイメージを超えることを目標にして作っています。現代の基準で遊んで充分に満足していただけるものを目指していますので、是非もう1度遊んでみてほしいと思います。
神田氏:1から再構築した「バイオハザード2」改め「バイオハザード RE:2」ですが、これだけ変化しているのにオリジナル版「バイオ2」のプレイフィールというのをしっかりと感じていただける内容になっています。さらに登場人物たちが織り成すヒューマンドラマの部分も非常に見ごたえがあって、怖いだけではない「ホラーエンタテイメント」として楽しんでいただけると思います。ナンバリング作品同等の「バイオハザード」最新作として作っている作品になりますので、原作のファンだけでなく新しいゲームファンの皆さんにも手に取っていただきたいなと思っています。
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