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M2 Shot Triggers「ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~」インタビュー前編
“全人類対応”M2STG「ケツイ」完成! 感謝祭ではまさかの発表も!?
2018年11月15日 00:00
往年の名作をこだわり満載で蘇らせるエムツーのSTGブランド「M2 Shot Triggers(以下、『M2STG』)」。その第4弾となるプレイステーション 4用シューティング「ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~」が11月29日に発売となる。
この発売に合わせて、エムツー開発スタッフ陣へのインタビューを行なった。今回も移植への苦労話や裏話が満載で、前半だけでもかなりのボリュームとなったので、じっくりお読み頂ければ幸いだ。
なお、このインタビュー前編では、「ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~」の話の他にも、エムツーが11月18日に開催するイベント「エムツーショットトリガーズ弩感謝祭」についても伺わせて頂いた。ここだけの新情報もあるので、ぜひご注目頂きたい。
【ケツイ~絆地獄たち~】
2003年にアーケードにリリースされた縦スクロールの弾幕系シューティング。開発はケイブ、販売はAMIが担当している。2018年現在のケイブ取締役である池田恒基氏、通称IKD氏が、当時にプログラマーとして手がけた作品のひとつ。楽曲は並木学氏が手がけている。
敵に近いほどロックオンが速くなるロックショットなど、リスクを背負って前に出て敵を殲滅することで活路を切り開けるという、独特なゲーム性を確立している。特定条件を満たすと入れる表2周、さらに厳しい条件で入れる高難易度の裏2周、その最後に登場する「エヴァッカニア・ドゥーム(以下、『ドゥーム』)」など、高い難易度で知られる。
本作の物語は、2054年という近未来を舞台に、世界中に兵器を輸出し莫大な利益を不当に得ている企業「EVAC Industry」を完全壊滅させる作戦が遂行されるというもの。だがその作戦は、遂行後に関わった全てのものを破棄するという秘密裏の任務になっており、そこには作戦に携わる者の命も含まれる。生きて帰ることすら許されないが、志願した者にはその命と引き換えにどんな願いでも1つだけ叶えられるという約束がされていた……という悲壮な物語となっている。
本作のタイトルである「ケツイ~絆地獄たち~」には、そのストーリー内容からの「死を前提とした任務に赴く決意を秘めた主人公たちの絆は地獄まで行っても切れることはない」という意味が込められている。
約1年の作り込み、オリジナルの追加要素満載になったM2STG第4弾の「ケツイ」
――M2STGの3作品目である「魔法大作戦」から約1年ぶりとなりました。結構、ユーザーの皆さんをお待たせした感じですよね(笑)。
堀井氏:すみませんっ! 全部、福井が悪いんですっ!!
全員:(笑)。
久保田氏:全部ではないっ!
福井氏:はいはい、全部俺が背負いますよー(笑)。
堀井氏:かかった時間と、その結果できあがったものが良いのか悪いのか、記事を読んで頂いた皆さんにご判断頂こうじゃないかっ!
というわけで、今回のいろんな意味での主犯は福井ですっ!!
久保田氏:なるほど、そういうことであれば確かに主犯は福井ですっ!
福井氏:はい、やってしまいました(笑)。
久保田氏:今回、とてつもなく盛り盛りになってしまったのは福井の並々ならぬ情熱がゆえですね。それだけに、時間がかかってしまって(笑)。
堀井氏:最近はもう、いろんな人から「エムツーさんはビジネスをちゃんとやっているのか? やる気があるのか?」って言われるんだから。
その問いに「あるっ!」って答える自信がますますなくなりそうな、言ったところで説得力もなくなりそうな今日この頃ですよ。だって各方面の誰もが言うんだよ?
久保田氏:「エムツーさん大丈夫なんですか?」みたいに。
堀井氏:そうそう。まぁ、良いか悪いかで言ったらダメですよ。でも、ビジネスとしてはダメだけど、ゲームが好きな人からの支持は得ていきたい。そういう意味では今回の「ケツイ」も福井が全力でいいものを作ってくれたから「ありがとう」って思ってますよ。
――堀井さんはいろいろなイベントなどでもおっしゃっていましたよね。「いつ完成するのか結構やきもきしたんだけど、できあがったものを見たら文句が言えなくなった」って。
堀井氏:そうそう、まさにそれなんですよ。
――開発はいつ頃から進んでいたのでしょう?
久保田氏:スタートそのものは早かったんですよね。うちの開発で1番最初に行なうのは元のゲームの解析からで、まずアーケード版に近づけるというのをやるんです。そして、ある程度アーケード版が作れたら、全国レベルのスコアラーの人に連絡を取ってうちで動かしているアーケード版をプレイしてもらって、本物に近いか、間違いがないかをお聞きします。そういうところから始めていくのですが、今回の「ケツイ」でそれをやっていたのは、もう1年以上前ですね。
――1年以上前となると、前回のM2STGの「魔法大作戦」より前ですね。
久保田氏:そうです。約1年半ぐらい前で……去年の夏ぐらいですね。「ケツイ」は、2017年のケイブ祭りで初めて制作を発表させて頂いて、その発表から少ししてから動かし始めている感じですね。アーケード版が動くようになったあたりでSPSさんというケツイ全一の人にきてもらってプレイしてもらい、気になる箇所をお聞きしたりして。
ただ、その頃は僕や福井は「魔法大作戦」を作っていたので、「ケツイ」の方にはまだ本格的には手をつけていなかったです。「魔法大作戦」が完成して11月の配信を迎えたあと、僕はまだM2STGタイトルの他機種対応などをやっていたのですが、福井はすぐに「ケツイ」に取りかかりました。そこから福井が先行して「ケツイ」へのアイデアなどを考え始めたという流れですね。
福井氏:ですね。私が本格的に「ケツイ」に取りかかり始めたのは12月か1月あたりです。
久保田氏:僕とリード・プログラマーの今村が「ケツイ」に取りかかれたのは今年の4月ぐらいからです。そこまでは福井が「ケツイ」について練っていたのですが、その期間に福井のなかで「ケツイ」への気持ちや構想がグツグツと煮えていたんですよ(笑)。
福井氏:企画を立てて、プロトタイプ版へと勝手に実装してましたね、やや暴走気味に(笑)。
――それで今回の「ケツイ」に実装されているあれやこれやの元や、それにかかった時間が、福井さんのこだわりから生まれたものだという話になるんですね。
福井氏:ですね(笑)。
――ちなみに、もっと遡って「M2STGの次のタイトルが『ケツイ』と最初に決まった」のはいつ頃だったのでしょう? 2017年にケイブ祭りで発表する前ですよね。
久保田氏:それは、2017年のケイブ祭りの前にケイブの皆様とお話をする機会があったんですよね。そこで「せっかくだからM2STGの次の作品の話もしようよ」ということになって。そこでケイブさんから「『ケツイ』はどうですか?」と、オススメ頂いたんですよね。
オススメしてもらったタイトルには「デススマイルズ」などもあったのですが、堀井の方で検討してもらって、その結果「ケツイ」に決まったんです。それが2017年のケイブ祭り開催の1~2週間ぐらい前でしたね。
堀井氏:そうそう。決まってからは速かったね。
――「ケツイ」をやると決めてから1~2週間の間にアーケード版を動かせるようにして、全一の人に来てもらってプレイしてもらって、それで2017年のケイブ祭りに発表したということになるのでしょうか? それだと、さすがに早過ぎる感じですよね?
久保田氏:アーケード版自体はもう社内で動いていたんでしたっけ?
堀井氏:うん、もう以前から動かしてあったんです。
――なるほど。それなら納得ですね。
福井氏:以前にも長野(M2 Shot Triggers シリーズディレクターの長野敦也氏)と、M2STGの次のタイトル案を話したことがあったんですけど、そこで「もしかしたら『ケツイ』もやれるかもよ?」みたいに言われたことがあったんです。俺はそれがすごく嬉しくて、「ぜひ『ケツイ』にしましょう!」って言った覚えがありますね(笑)。
――元々エムツーさん社内で動くものを作ってあって、福井さんをはじめ「ケツイ」に思い入れのある人もいて、ケイブさんからもオススメされて、全部が揃って進んでいった感じなんですね。
冬野氏:ちなみに、次のM2STGタイトルが「ケツイ」に決まる前に、ケイブさんからは「鋳薔薇」をオススメされていた時期もあったんです。でも僕が昔に「鋳薔薇」の制作に関係していたものですから、向き合うにはもう少し時間が欲しいなと思って。僕としては他のタイトルにして欲しいなって思っていたんですよ。
堀井氏:でも、向き合えるその時がきたら無理矢理にでも押し込みたいですね!「鋳薔薇」も福井の調整で遊んでみたいと思ってるんですよ。
久保田氏:それは確かに見てみたい。
福井氏:いやぁでも、「鋳薔薇黒 ブラックレーベル」と家庭用「鋳薔薇」のアレンジモードは、「薔薇死(DIE)す! = バラダイス」システムという面白いアレンジが既にされているし、どうかなぁ……。いずれ検討したいですね(笑)。
――冬野さん的にも福井さん的にも、やるのなら覚悟のいるタイトルというわけですね。
久保田氏:そうですね。もちろん今回の「ケツイ」もそうで、社長から「次は『ケツイ』にしよう」と言われたとき、すでにプレッシャーを感じました。ファンの人の熱意もすごい作品ですから、やらかしたらケツイFBIに捕まって無期懲役に処されるなぐらい思ってます(笑)。
――堀井さんとしては「ケツイ」をリリースする時期の見積もりは、当初はどれぐらいで考えていたのでしょう?
堀井氏:2017年内は無理でも、年明けくらいにはマスターアップして、2018年の春ぐらいには発売したい……ぐらいの感じですかねー。
久保田氏:「次のケイブ祭りぐらいかねー」みたいに言ってましたよね。
堀井氏:そうそう。春ぐらいと思ってた。
久保田氏:まぁ、結果は2018年11月ということですが。……この前、時期はずれの桜が咲いていたなんていうニュースを見かけましたので、もしかしたら今は春かもしれない!
――……日に日に寒さが増すばかりですよー。
全員:(笑)。
解析して感じた「ケツイ」の構造は、例えるなら“繊細なガラス細工”
――福井さんは今回の「ケツイ」の開発に、どんなコンセプトを考えていたのでしょう?
福井氏:「いろんな人に遊んでもらいたい」っていうのがまず第1で、「いかに、くりかえし遊べるゲームにできるか」ということも考えていましたね。そこで、まず「SUPER EASYモード」を作り、それを“派生させていく”方法がいいのではと考えました。
ただ、その「SUPER EASYモード」を作るのがそもそも大変だったんです。今回は僕と飯塚さん(有限会社太陽製作所 飯塚連也氏)という外部のプログラマーさんとで作業をしていったのですが、「ケツイ」は68000のアセンブラで書かれていて、そのアセンブラでどういう弾幕を作っているのかを解析して、どこをどう変えると簡単な弾幕になるのかを見ていったんです。
この解析作業が本当に長丁場で。他のタスクもありつつで、期間としてはそこだけで3~4カ月かかってしまったんですよね。
久保田氏:「SUPER EASYモード」完成までの最終調整を含めると、もっとかかってますよね?
福井氏:そうですね。他のタスクも含めつつで期間としては解析に3~4カ月、調整でさらに2カ月ぐらいかかっています。
堀井氏:そんなにかかるのが先にわかっていたら俺は止めてたねー。
――(笑)。
堀井氏:今はできあがったものを見ているから飲み下せているというのが正直なところで、目を離した隙にこれができあがってくれていたから、なんとか世に出せることになった気がする! まぁ、「目を離した隙が3~4カ月あるのはどうか?」と言われるかと思うけど!
久保田氏:解析段階の話なので、「SUPER EASYモード」だけひたすらにやっているということでもないですからねー。
堀井氏:わりとインビジブル(見えない)なんだよね。いろんなものがちょっとずつ進んでいる段階だから、何がどれぐらいかかっているのかというのがあやふやな時期だった。
久保田氏:調整の方向性に時間がかかったというのも、後から合流した自分が「福井さん! これ、まだまだ難しいよ!」なんて言ったりしたのもあって。ちょこちょこ変更を加え続けていたからというのもありましたね。
――「ケツイ」のコード解析は、他のタイトルと比べて手強いものだったのでしょうか?
福井氏:結果的にはそうですね。というのは、今回の「ケツイ」での「SUPER EASYモード」は、弾幕を再構築するレベルでいじっているんです。より深いところまでつっこんで手を入れてSUPER EASY化をしているというわけで、それがかなりの茨の道だったんですよね。でも、そうした方が面白くなると思ったんです。
社長には、「めちゃめちゃ時間はかかりますが、根本的に弾幕を簡単にするところからやらせてください」とお願いしてやらせてもらったんですけど、難しいことに挑戦しているので難しい事態になっていきまして……。社長に話したよりもずっと時間がかかっちゃったんです。
弾幕を根本からいじるとなると、アセンブラのプログラムを一行一行見ていくことになるんですよね。うすうす予想はしていたんですけどその膨大さに「これはえらいことになった」と思いつつ。ケイブさんのプログラムってすごくシステマチックに組まれているので、簡単な部分もあるんです。でも、簡単じゃない部分もたくさんあるんです(苦笑)。
――それは例えば、「雑魚敵の編成A」がいたとして、その編成Aがいろんなステージで登場してる場合、その編成Aの弾幕の撃ち方を変えるといろんなステージでの編成Aの弾幕がまとめて変わりますよね。「ケツイ」はそういう共通の撃ち方をする敵が多いのか少ないのかで言うと、どちらでしょう?
福井氏:どちらかと言えば少ないです。かなりの敵が個別の動きをしているので、それを1つずつ解析して触っていかないといけなかったんですよね。さすがに雑魚敵のヘリ部隊まで1機ずつ個別のプログラムだったりはなくてシステマチックに組まれているのですが。
同じ敵でもステージによって動きの変わる敵がいるんですよね。例えば、ステージ3に登場する「ゴールデンバット」という敵は、ステージ3の前半と後半、あとステージ5の3カ所で登場するのですが、攻撃パターンが全部違っているんです。その違っている部分のプログラムを全部見ていかないといけないので。見た目が同じ敵でも結局は全部見ていかないといけなかったです。
――これまでのM2STGタイトルでの「SUPER EASYモード」では、そこまでディープなところまでは触らなかったんですよね。
福井氏:今までは弾幕のアセンブラプログラム全行解析までは踏み込んでいなかったですね。もうちょっと解析しやすい切り口からのアプローチというか、手のつけやすいところで変えていました。現実的な解析コストでできるだけ効果が出るところを触っていた、という感じですね。
――言うなれば効率的な調整というか。
福井氏:そうなんです。でも今回は……効率を投げ捨てたというか(笑)。
全員:(笑)。
福井氏:まぁ投げ捨てたわけでもないんですけど(笑)、弾幕の1個1個について、弾を撃つ間隔や弾数や角度の変更などを個別に行なっています。そこが大きな違いですね。
――今回はなぜ、そこまでやろうと思ったんですか?
福井氏:それはやっぱり「ケツイ」だからですね。「バトルガレッガ」があり「怒首領蜂」があって弾幕シューティングがメジャーになっていったという流れがあったと思うのですが、「ケツイ」はその流れのひとつの頂点だと僕は捉えています。
池田さん(池田恒基氏、IKD氏)と市村さん(プログラマーの市村崇志氏)がケイブでシューティングを作っていったそのノウハウが詰まっていて、調整のされかたも洗練されているんですよね。その「ケツイ」をSUPER EASY化するというのなら、生半可な触り方だとできないぞっていう気持ちがありました。
――実際に解析して調整をされた今だと「ケツイ」というタイトルはどんな印象になったのでしょう。予想通りでしたか?
福井氏:予想外でしたね。中にはアクロバティックなプログラムで弾幕を作っているところもあったりして、予想外でしたね。「こんなことをやっているんだ!」って驚かされました。
SUPER EASY化するにあたってひとつの弾幕をいじりはじめたとして、パラメーターをひとついじって一部を簡単にしたとすると、全体が崩れたりするんですよ。いくつものパラメーターの複合で弾幕を成立させていて、それを全部まとめて調整しないといけない、そういう弾幕もあったんです。
そういう作り方で、ああいうトリッキーで美しい弾幕ができているんですよ。繊細なガラス細工みたいなもので、ひとつパーツを外したら崩れちゃうような感じでした。
堀井氏:ガラス細工っていう印象かー、そうなんだ!
久保田氏:下手に触ったら、かえって難しくなったりしてましたよね。
――「ケツイ」って敵と攻撃を誘導していくようなプレイになりますよね。そういうプレイを想定して設計段階から組み立てられているのかなと思えるのですが、そこのひとつだけを下手にいじってしまったら、誘導も成立しなくなってしまうような。
福井氏:そうなんです。プレーヤーが敵の弾を誘導させていくシーンにしても、敵が何フレームかで弾を出していてギリギリで成立するようになっていたりして。そこのフレーム数を不用意にいじるとプレイが破綻してしまうんです。そういう場面ではフレームをいじるのは止めて、別のパラメーターを苦肉の策でいじったりしています。
――なんだか、最初はやればやるほどひどくなっていったのが想像できるような(笑)。
福井氏:そうなんですよー(苦笑)。今回は68000のプログラムを基本的には構成そのままでいじっていかないといけないという制約もあったんです。普通、プログラムは処理を差し込んだり変えたりしても平気ですが、今回は方式の制約上そうはいかないんですよね。そういうのもあって大変でした。
――なるほど。この話だけでも、よくまとまりましたねーっていう感想になってきますね。
福井氏:時間との闘いでしたね。優先度の高い弾幕の調整からずっとやっていきました。
「ケツイ」が持つ近未来ミリタリー感を目指しフォントにもこだわったM2ガジェットやUIのデザイン
――福井さんと飯塚さんがそうした解析をして構想をまとめているところに、久保田さんと佐藤さんが開発に本格的に合流されていったわけですよね。
久保田氏:そうです。僕と佐藤とでUI(ユーザーインターフェイス)周りを作っていきました。「ケツイ」の色に合わせたようなUIを作りたいなと思いつつ、最初は僕が1人でUIの骨組みを作っていたんですけど、特に見た目をかっこよくするのが難しくて。途中からデザイナーの佐藤が加わってくれたので、そこからは全面的に佐藤にお任せでしたね(笑)。
――佐藤さんにインタビューさせて頂くのは初めてですよね。
佐藤氏:はい。私はこれまではエムツーのウェブデザインやエムツーショットトリガーズのロゴマークなどをデザインさせて頂いていたんですよ。
福井氏:佐藤さんはフォントマスターな人で、「オクトパストラベラー」のマップに登場しているオルステラ文字とその文字を元にした通貨単位のデザインなどもやられているんですよ。
――なるほど、フォント周りに特に強いデザイナーさんなんですね。
久保田氏:そんな佐藤さんが「ケツイ」の制作にきてくれるというのが4月からということだったのですが、4月に最初にきて頂いてお願いしたのが「M2ガジェットをかっこよくしてくださいっ!」っていうものでした。しかも同じく今年4月に開催されたケイブ祭りまでに(笑)。
福井氏:もうケイブ祭りの直前だったよね(笑)。
堀井氏:よくよく考えると、4月から制作チームに人が入るスケジュールなんだから、春に製品が発売されるわけないなー(笑)。
全員:(笑)。
久保田氏:佐藤さんが1週間かそこらでM2ガジェットの見た目をブラッシュアップしてくれて、なんとかケイブ祭りの試遊出展に間に合ったんですよ。
佐藤氏:あれは1週間なかったんじゃないかなー(笑)。
福井氏:営業日的には3営業日ぐらいしかなかったような。
――ひどい(笑)。
久保田氏:(笑)。でもM2ガジェットのベース部分は自分がもう作ってあったんですよ。ただ、その見た目、デザインのかっこよさが足りなくて、そこをやってもらったんです。ケイブ祭りでのお披露目までにはとにかく時間がなかったので「とりあえず、なんでもいいのでかっこよくしてください!」っていう感じでした(笑)。
――佐藤さんとしては最初の仕事がその状況だったのはどうだったのでしょう(笑)。
佐藤氏:「バトルガレッガ Rev.2016」の頃からWEB制作で関わってはいたので、「あぁ、いつも通りのエムツーだな……(笑)」みたいな感じでしたね(笑)。ただ、ゲーム内で動かすデザインの制作は今回が初めてだったので、自社の制作ツール、弊社で展開している2Dイラスト用アニメーションツールである「E-mote」と同じ技術基盤のツールなのですが、その使い方を久保田さんに教わりつつ、組み込むのに四苦八苦していました。
――ガジェットの見た目などを整えるときのコンセプトなどはどんなものがありましたか?
佐藤氏:やはりゲーム内のイメージを大事にするということですよね。これまで冬野さんがM2ガジェットのデザインを手がける際にもそこを大事にされていましたし、その流れを壊したくないなと思っていました。僕は冬野さんが作成された「バトルガレッガ Rev.2016」のガジェットの、原作のドットを活かしたデザインが大好きなんですよ。なので今回もドットの素材を集めて作っています。
久保田氏:なるべく原作のデザインやドット絵などを使うようにして雰囲気を壊さないようにするというのがありますね。「ケツイ」は特にそこが大事なゲームかもしれないです。
佐藤氏:「ケツイ」のデザインって、ミリタリーな泥臭い感じもありつつ、近未来なクールな部分もあって。普通にドット素材だけを持ってくるだけだと前者の印象が強くなってしまって……。
プリレンダのドット素材をそのままに持ってくるとザラついている感じが強くなっちゃうんですよね。あと、「ケツイ」はもともと縦長の絵を引き延ばしているんです。スクリーンのオプションでドットバイドットで100%×100%表示にしてもらうとわかりやすいのですが。
久保田氏:「ケツイ」って解像度がちょっと変わっているんですよね。224×448っていうすごく変則的なものなんです。
福井氏:画面の狭い方の解像度が特に少なくて224ドットしかないので、それ用の素材をそのまま持ってくるとザラザラな画像になっちゃうんですよね。ドットのアスペクト比も2:3で正方形ではないので、デザイン面ではみんな苦労してましたね。
佐藤氏:そんなわけで「ケツイ」の雰囲気を残しつつも、あまりドットのザラつき感が出過ぎないように整えていきました。
――なるほど。「ケツイ」のデザインは独特なものがありますよね、近未来ミリタリーという感じで。やはり原作のデザインや世界観を注意深く調べていったのでしょうか。
久保田氏:そうですね、ベースはやはり原作のテイストですので、原作を徹底的に分析しました。また、原作に登場するメカや世界観など、冬野がオリジナルスタッフの皆様にお話を聞いてきたときはチームのテンションも上がりましたね。
冬野:そのあたりはぜひディスク版の初回購入特典についている「OFFICIAL MATERIAL BOOK」のメカデザイナー座談会も読んで頂けたらと思います。本当にいろんなお話をして頂けたんですよ。
冬野:そういえば、「ケツイ」で使われているフォントを特定していくのにも、かなり苦労していましたよね。
佐藤氏:そうでした。実は「ケツイ」って使っているフォントが多くて、数字だけでも4~5種類ぐらいあるんです。
久保田氏:倍率チップ表示のいわゆる「ケツイフォント」と言われている数字と、スコアに使われているフォントは違いますし。「ケツイフォント」に見えてもWARNING表示やスコアランキングなど微妙に違っていたり。
福井氏:ステージ道中の倍率アップという表示と倍率をかけて敵を倒したときの表示も、それぞれみんなフォントが違うんですよね。
――確かにそうやって言われると「ケツイ」の表示って結構バラバラな印象がありますね。フォントの統一性があまりないような。
久保田氏:そうなんですよ。しかも、メカに書かれているフォントとかはまた違っているんです。「Impact」というゴシック体に近いものが使われていたりして。どのフォントにイメージをあわせていけばいいのか悩ましいんですよ(笑)。
堀井氏:これを使っておけば「ケツイ」らしくなるっていう、決め手のフォントがないんだよね。
久保田氏:ゲームってフォントがとても大事で、フォントがゲームの世界観を出してくれるんです。例えば「グラディウス」とかのフォントとかはすごくイメージに結びついていますよね。そういう風に、“そのフォントを使っていればそれっぽくなる”というのがあるゲームは結構多いのですが、「ケツイ」はそれがないんですね。
強いて言えば倍率チップの表面にある数字がケツイフォントと言われるぐらいのものなのですが、実際にゲーム内の要素を洗い出してみると、「……それほど倍率チップのフォントがケツイフォントというわけでもないなー」ってなるんです。
――大きく見えているぶん印象は強いんでしょうけども、全体の使われている数などバランスを見るとそうでもない?
久保田氏:印象は強いですよね。でも、全部そのフォントでM2ガジェットやUIを作ればいいかというと、そうもいかない感じがしてきます。「ケツイ」はたくさんのフォントを使い分けているので、今回作っているUI等にもいろんなフォントを使っていかないとそれらしくならないんですよ。
福井氏:M2ガジェットやUIにいろんなフォントが使われているところにも、ご注目頂ければなと思います。
初回購入特典の「OFFICIAL MATERIAL BOOK」には、IKD氏、市村氏をはじめ、開発秘話が盛りだくさん!「ケツイ」キャラクターたちのその後の物語まで……?
――冬野さんはメインビジュアルを担当されたんですよね。
冬野氏:今まではM2ガジェットのデザインなどもしていたんですけど、今回はパッケージやポスターのメインビジュアルなどの絵を中心に参加しています。
堀井氏:あと、初回購入特典の「OFFICIAL MATERIAL BOOK」の制作にみっちり参加していますね。
――なるほど。まずは、今回のメインビジュアルはどのような構想で作られたのでしょう?
冬野氏:最初に、4月に開催されたケイブ祭り用のビジュアルで自機のA/Bとエヴァッカニア・ドゥームの3つのモデルを作ったんです。「ケツイ」の象徴とも言えるドゥームに自機が迫っていくっていう構図ですね。
ただ、そこである意味“必殺の構図”を使ってしまったので、次のメインビジュアルでインパクトのある絵にするにはどうしたらいいかと考えたんです。「ケツイ」はどのボスもインパクトがあって弾幕も含めてキャラクター性がちゃんとあるんですよね。ファンの人は、4面の「シンデレラアンバー」が好きとか3面中ボスの「ヴィノグラドフ」が好きとかいろいろ好みがありますし、どれを削っても不満が出るだろうなと思いました。
でも、僕がボスキャラクターを全部モデリングしなおしてイラストを作るというのは、さすがに厳しかったんです。そこで、「ケイブさんからモデリングデータをもらえたならボスを全部出したビジュアルを作ります。」という話をしたんです。「それがないなら、ちょっと別の方向で考えます」というように、ちょっともったいつけたんですよね(笑)。そしたら、ケイブさんが全部のモデリングデータを出してくれて、結局はやらざるを得なくなってしまって(笑)。
久保田氏:「やっぱり、全部入れるしかないか……」って言ってましたよね(笑)。
――初回購入特典の「OFFICIAL MATERIAL BOOK」では冬野さんが聞き手になってのメカデザイナー座談会も収録されているということですよね。
冬野氏:今年のケイブ祭りのときに「ケツイ」のスタッフの皆様と少し話させて頂いたんですが、その時に自機デザインの裏話とか「ケツイ」のメカデザインの裏話がどんどん出てきて、しかも、どれも今までに聞いたことのない話ばっかりだったんです。
ケイブさんは今までキャラクターをプッシュすることは結構あっても、メカデザインをアピールする機会がなかったそうなんですよね。それで「そういう話ができる場を用意してもらえたら話しますよー」って言ってもらえて、それで今回の座談会が実現したという流れなんですよ。
開発スタッフの皆さんの中でも「そろそろ『ケツイ』の話したいよね」っていうムードが盛り上がってくれていたみたいでしたので、今回はいいタイミングだったのかもしれないですね。
――原作のスタッフの皆さんにとっても「ケツイ」はやはりいろいろ思い入れのあるタイトルだったのでしょうか。
冬野氏:デザイナー陣の皆さんは「好きなメカテイストのものを思いっきりやれた」ということで、すごく気に入っているそうですね。それにスコアラーの皆さんのやり込みもすごいことになったゲームなので、そういうところからも関わった皆さんにとって思い入れのあるゲームかと思います。
――なるほど。
福井氏:「OFFICIAL MATERIAL BOOK」ではプログラマー対談として池田さんと市村さんに久保田と僕でお話を伺ったんです。そこでも、池田さんは内心ではすごく思い入れのある好きな作品だと話してくれたんですよ。
久保田氏:おっしゃってましたよね。「ケツイ」に対して池田さんにちゃんとまとまって語って頂いたのって今回の初回購入特典の「OFFICIAL MATERIAL BOOK」が初めてだと思うんです。
――どんなお話があったのか少しだけお聞かせ頂けませんか?
久保田氏:ケイブの池田さんと市村さんにお話させて頂いて、どういう経緯から「ケツイ」という作品が動き始めていったのか、というところから入り、果ては「なんで5面の最後のところパンツァーシュナイダーが6機も出てくるんですか?」とか、そういう細かいところまでお聞きしました。
堀井氏:池田さんに思い入れがないわけないんですよね。もうだいぶ前の2010年頃の話ですが、僕が最初にケイブさんに「シューティングを移植したいんです、PS3とPS Vitaで。」ってお話したとき、そこでいきなり「『ケツイ』を移植したいんです」って言っても、「お前、それちゃんと移植できるの?」って拒否られる雰囲気があって、そうとう大事にされているのを感じたんですよ。
そこで1番最初は、「堀井さん『弾銃フィーバロン』お好きですし、いかがですか?」という話になって、2010年に開催されたケイブ祭りで「弾銃フィーバロン」を動かしているんですという発表をしたんです。
そこには、何かがあったと思うんですよね。まずは何かで移植の腕を見せないと「ケツイ」や「怒首領蜂 大往生」は触って欲しくない……というような。そういう雰囲気があったと、僕は勝手に思っているんです。
――なるほど。特別な存在であることを肌で感じたんですね。
久保田氏:実際、福井が今回「ケツイ」を解析してみると、弾幕のひとつひとつにしてもこだわりがあって、特別さがプログラムに出ていたわけで。それが福井を苦しめたわけです(笑)。意志がこもっていて、それだからこそユーザーさんがついていったんだなと思えるんですよ。
堀井氏:「ケツイ」が好きな人の思い入れはすごいよね。ゲーセンの喧騒を録音してきたっていう人がいたんですけど、「ゲーセンの喧騒って言ってるけど、これ『ケツイ』の音を録ってるよね(笑)」っていうことがあったりして。
久保田氏:ピッピッピッピッみたいな(笑)。
堀井氏:そうそう。受け手にはゲームの熱さがすごく伝わっている感じがアーケードの当時からあったんですよ。
久保田氏:熱いゲームですよね。池田さん市村さんのお話も熱くて、今回の対談にも「テンション高く」というキーワードがたくさん出てくるんですよ。
――テンションですか。「ケツイ」の作り方って計算の集合というか、かなり理論詰めなのかなと思っていたのですが、テンションなどの感覚的な言葉が多く出たのですか?
久保田氏:そうなんですよ! そこが面白いところなんですっ!
福井氏:面白いんですよ。計算で作られていつつもテンションと本能も最大限にこめられているというところがありますね。
――それは意外に思えるところがありますねー。シューティングゲームの作り方って、どこか理詰めなイメージがするのですが。
久保田氏:自分もそう思っていたんですよね。特に池田さんのシューティングはそうだと思っていたんですけど、例えば「なんで敵の数を増やしたんですか?」とか「なぜボスの攻撃をこんなに厳しくしたんですか?」とお聞きすると、「もっとテンションを高めていかないと」っていう言葉が出てくるんですよ。
――ゲームの展開として盛り上げることが重要というような。
久保田氏:そうなんです。「もっと盛り上げないとっ!」みたいな。
堀井氏:例えば、僕らがケイブにプログラマーとして入社したら、懇切丁寧に弾幕の作り方とかを教えてくれると思うんですよ。そこはわかるように理論的に。こうすると物理的に難しくなるし、こうすると易しくなるよねみたいに。でも、「池田さんもそうやって作っているんですか?」って聞いたら、「俺? 俺はワーッて作ってるよ!」みたいに言われると思うんだよね(笑)。
――昔の天才肌な漫画家さんのアシスタントになったら、「理屈じゃないんだよ、ハートなんだよ!」とか、「ここはガーッときてドーンッだよ!」って言われたみたいな(笑)。
久保田氏:本当にそんな感じ(笑)。池田さんの中には「もっとそこで、ウワーッといかないと!」みたいなのがあるんです。「ケツイ」は市村さんと池田さんの2人体制で作られたということなのですが、市村さんが作られた弾幕に対して池田さんがダメ出しした話なども聞けて。
――テンションやセンスで作っているとなると、お互いの色がぶつかりますよね。
久保田氏:そうそう、ぶつかるんですよね。お互いの強い色があるからこそぶつかって、途中から池田色に変わっていたりとか、逆に相手の良かったものを自分のところにも採用したりとか。制作秘話にはテンションや情熱といった単語がたくさん出てきて、それってやはり重要なんだなと衝撃を受けましたね。
佐藤氏:僕はカメラマンとして同席させて頂いたのですが、お2人は作り手でありつつも、プレーヤー目線で楽しむことをものすごくわかっている人なんだなと感じましたね。
――なるほど。初回購入特典の「OFFICIAL MATERIAL BOOK」には他にどのような内容が収録されているのでしょう。
久保田氏:今お話しした池田さんと市村さんにお聞きした「プログラマー対談」の他に、先ほどの「ケツイ」のグラフィックスデザインを担当した若林明さん、田中周幸さん、新井兼吾さんに弊社の冬野がお聞きした「メカデザイナー座談会」、それに「ケツイ」のオリジナルコンポーザーである並木学さんとケイブサウンドチームの松本大輔さんに、弊社サウンドチームの春日と工藤、あと福井がお話をさせて頂いた「サウンド座談会」ですね。
――中でも「サウンド座談会」は収録時間がすごいことになったということですよね。
久保田氏:6時間ですね(笑)。
福井氏:4時間を予定していたんですけど、1時間の延長を2回して合計6時間ものインタビューになっちゃいました(笑)。
――「サウンド座談会」ではどんなお話が出たのでしょう?
福井氏:濃い話ばかりで、「ケツイ」の音楽を作曲された当時の話がひたすらに続きましたね。
佐藤氏:並木さんが当時のデータを持ってきてくださったので、それをひとつひとつ再生しながらお話頂いて。容量的にも厳しい基板だったそうなのですが、その厳しいなかにどうやって曲のデータを納めていったのかというお話もありました。
――プログラマー座談会にテンションというキーワードが多く出てきたという話に対して、「サウンド座談会」は結構技術よりな感じがするのが、意外で面白い感じがしますね(笑)。
福井氏:確かにそうですね(笑)。並木さんは「ケツイ」 の作曲のときに『サウンド企画』というテキストを作成され、コンセプトを作られたそうです。そこであげられた数々のキーワードの詳細は冊子をお読みいただくとして、そこにも個人的にはテンションや熱量を感じますね。
――なるほど。冬野さんがお聞きした「メカデザイナー座談会」はいかがでしたか?
冬野氏:2時間ほどの予定でお話させて頂いたのですが、予定していた以上に裏設定の話とかがぞろぞろ出てきて(笑)。
前半は背景やメカについて伺って後半にはキャラクター設定などもお聞きして。最後には「ケツイ」のキャラクターたちがエンディングのその後にどうなったのか……という話まで出てきましたね。
堀井氏:「それ、言っちゃっていいの!?」的な話!
冬野氏:スタッフの皆さんのなかでも目配せみたいなのがありましたね(笑)。「池田さんからOKはもらってるから!」っていう確認も途中にしてました。「ケツイ」のキャラクターが好きな人にとっては、とんでもない内容でしたね。
久保田氏:衝撃の内容!
――それは気になりますね。初回購入特典でしか買えない冊子にするのはもったいないというか、えげつないですね(笑)。
久保田氏:もともと、ここまで貴重な内容になる予定ではなかったのですが……なっちゃったんですよね。
堀井氏:最初は、ディスク版を購入してくれる人に何かオマケをつけたいよねっていう気持ちからだったんです。
プログラマー対談は特に、市村さんは原則顔出しされていない人だし、池田さんだって副社長なわけで、そんな簡単に話して頂ける人ではないんですけど、今回の「ケツイ」をプレイしてもらううちに、「これはもっとアピールした方がいいよ」的なことを言ってくださって。そこでいろいろなこともさせてもらえるようになり、最終的には「全人類対応済 弩推奨版」というお言葉まで頂けました。
久保田氏:我々が追加した新モードなども、池田さんにプレイしてもらって監修して頂いて。自分は最初ビクビクしていたんです。でも、僕らが真面目に新モードを作ったことを評価して頂いて、池田さんも乗り気でいろいろとやって頂けたんですよ。
「DEATHTINYモード」という今回の目玉と言えるモードでは、池田さんからも「こうして欲しい」というご意見を頂いたのでそれを入れてあったりします。
堀井氏:池田さんからの提案の中には「基板の仕様的には無理なんじゃないか」と思ったところもあったのですが、池田さんから「ここはこう作っているから、こうすればPS4ならちゃんと動くはず」と具体的なお話を頂いて。今も「ケツイ」の中をきっちり覚えていらっしゃるのにも感動したんです。
久保田氏:そんな感じでやり取りをしているうちに、池田さんからいろいろと裏話的なものもお聞きするようになって、「これはちゃんとお話を聞いた方がいい!」と思って、プログラマー対談を急遽させて頂くことにしたんですよ。
――なるほど。そんなこんなで初回購入特典の「OFFICIAL MATERIAL BOOK」は当初の予定ページ数を超えたというわけなんですね。ちなみにこれは、ディスク版を予約しないと手に入りづらいですか?
堀井氏:予約のみではなく初回購入特典ですので、発売日付近なら店頭でももらえるとは思うのですが……。
久保田氏:確実に手に入れるにはご予約頂ければと思います。
トップスコアラーのコアな要望にも応える、こだわりの「M2ガジェット」
――M2STGの特徴でもある「M2ガジェット」についてお伺いしていきますが、軽くご解説頂けますでしょうか。……軽くと言っても量が多いので大変だと思いますけども(笑)。
久保田氏:わかりました(笑)。ガジェットはプレイするモードによっていくつかそのモード用に置き換わるようになっているのですが、まずは基本の種類からいきましょう。
まずは左の上にある「スコア表示」と「倍率カウンター」ですが、ゲーム内では倍率の表示が回転するアニメーションになっているので、リアルタイムに把握しづらいんですよね。なので、わかりやすくシンプルかつ大きな表示を別でしています。ここは全一プレーヤーの人にも「とても重要!」って言ってもらえましたね。
「プレイヤーインフォ」も自機とボムの数にキャラクターのイラストも載せています。ここは自機のTYPE-AとBでもちろん変わります。
――このあたりはもうM2STG的にはお馴染みの基本的なサポートという感じですね。
福井氏:ですね。でも実はシンプルな表示の倍率カウンターを搭載したのは久保田のアイデアからなんですよ。アーケード版で慣れている人だと数字が止まったあとの決まったタイミングに見るようになったり、回転している最中でも「だいたいこんな感じの数値かな」って理解するクセがついていたりするので、実は意外と考えつかなかったりするんです。ここに気がついたのは久保田のスコアラー視点のたまものですね。
久保田氏:次は「2周目突入条件情報」というものがあります。「ケツイ」には条件を満たすと入れる表2周と裏2周という2通りの2周目プレイがあるのですが、それに入れるかどうかを表示するガジェットです。2周目にいく条件は「失った自機数と使ったボム数を足した合計が6以下」というものなので、ガジェットではそれをまとめてマークで示してます。
また、裏2周に入れるのは「ノーミスノーボム、スコアが1億2,000万点以上で1周目をクリア」という条件になっていますので、ガジェットには1億2,000万点まであと何点なのかを表示します。
福井氏:例えば、5面までいって「今日はノーミスの3ボムでこれているから、表2周目にいけるかも!」というときも、そこからミスしたりボムったりしているうちに合計数がわからなくなったりするんです。このガジェットならすぐに確認できますね。
久保田氏:次は「クリアボーナス」というものです。ステージクリアのボーナス点がトータル倍率と残機数とボム数とで変動するのですが、それをリアルタイムに表示します。
――だんだんとスコアラーさん向けな濃い要素のガジェットになっていきますね。
久保田氏:そうなんです。ここからさらにコアなものになっていて、次が「空ロックカウンター」ですね。上級者のテクニックである「空ロック」を成立させた数をカウントするというものになっています。空ロックした瞬間に光るマークを表示するので、配信やリプレイを見ている人が「おっ空ロックした!」ってわかる細かな演出も入れてあります。
――上級者の人は1面でもすごい数になったりしますし、リプレイや配信などで見るときにもわかりやすいですね。
久保田氏:次が「チップレーダー」です。「ケツイ」は敵を倒したときの距離に応じて1~5の倍率のチップが出るというシステムで、接近して倒すと高い倍率チップがもらえるわけですが、このガジェットでは一番近い敵を倒したときに出現する倍率チップがいくつになるのかをリアルタイムに表示します。距離も視覚的に出していますね。
――自分のプレイのリプレイを見て「もう少し近づかないと5チップが取れないんだな」ってわかったりしますね。感覚ではなく、より視覚的に。
久保田氏:ですね。リプレイの研究用とも言えるガジェットで、どのぐらい近寄った方がいいか、または近づき過ぎていてリスクが高いのか、というのもわかると思います。
堀井氏:「気持ちは攻めているけど実際はそうでもなかった!」みたいなことがありますので、これで見るといろいろ新鮮かもしれないですよ。
久保田氏:次は「ダメージエフェクト」ですね。攻撃している敵にどれぐらいのダメージを与えているのかを表示します。「エフェクト」という名称には「効果」、「効力」という意味もありまして“効率よくダメージを与えているかを見ましょう”というガジェットなんです。
例えば、ロックショットは固い敵に1点集中で攻撃するのが重要なのですが、ロックする対象が分散していると1体あたりへのダメージ効率が良くないんですよね。なので、集中ロックできているときはこのガジェットのグラフと数字が高まります。
――これも、常に最大に近い方が良いプレイになっているというわけですよね。上のチップレーダーと合わせるとより効率の良さがわかる感じ。
久保田氏:特にボス戦で効率よく攻撃できているかは重要なので、これで自分のプレイを確認して頂ければ。
福井氏:ちなみに、これはボス戦ではボス本体へのダメージ効率だけを表示するようにしています。パーツにダメージを吸い取られているか、わかるようにしたかったので。
久保田氏:次は「バレットカウンター」です。これは画面上に表示されている敵の弾の数を表示するというものですね。
――これも、早めに敵を倒せていない証拠になるというか。敵が残っているから画面上の弾が増えがちになるというような。
久保田氏:そうですね、ステージ道中の改善にいいかなと思います。特に1周目はこっちの攻撃の仕方で敵の弾の数がだいぶ変わってきます。早めに倒せていればそんなに弾を撃たれないんですよね。そういうのも見られるものになっています。
堀井氏:一方で、ボスの時はもう仕方がないところがあるよね。ボスのテンションゲージみたいなところがある(笑)。
久保田氏:ボス線の時のこのガジェットは違った見方になりますね。ステージ3のボスの発狂とかはすごい数字になりますから(笑)。
佐藤氏:「ケツイ」って基板の性能上、敵の弾は256発も出ないんですよね。最近の「怒首領蜂 最大往生」とかはもっとたくさん撃ってくるのですが。でも「ケツイ」はその割には殺意が凄いんですよね(笑)。
堀井氏:そうそう、弾の数あたりの殺意の込め具合がすごい! 以前に「虫姫さまふたり」を移植している時に「弾を1万発出すと処理落ちするんで」とか言われて、「1万発って言われても知らんがな!」なんて思ったんだけど、あのあたりに比べると「ケツイ」の弾は少ないけど絶対殺すっていう殺気がすごい。
久保田氏:「怒首領蜂 大往生」とかもすごいですよね。あれも基板の関係上もっと弾数が少ないのに、1発あたりの殺気はさらに強い(笑)。
福井氏:あれはすごいよね。
久保田氏:というわけで、次は「バトルアチーブメント」ですね。これはM2STGの前作「魔法大作戦」にもあったもので、ステージの道中、中ボス、ボスなどのプレイを評価するシステムです。ノーミスノーボムでその場面をクリアすると金メダル、ボムを使ってもノーミスなら銀メダル、ミスしたら銅メダルとなっていて、これはプレイモード別に用意してあるので、かなりの数がありますね。
――ステージをいくつかの範囲に区切ってプレイ評価が出るというものですね。これは1周目と2周目はわかれているんですか?
福井氏:いえ、1周目2周目共通になっています。1周目クリアを目指すプレーヤーをサポートするためのガジェットですね。
久保田氏:次は「フルロックスピード」という、ちょっとマニアックなガジェットですね。「ケツイ」は、敵との距離が近い方がフルロックするまでの時間が短くて、逆に遠い敵にロックするのには時間がかかのですが、その1つ目のロックをしてからフルロックにかかるまでの予測時間を表示しています。あとロックしている数も表示していますね。
フルロックにかかるまでの時間はもちろん短い方がいいです。そこでこのガジェットでは、そのロック時間を「GREAT」とか「BAD」っていう表示で毎回評価するようにしています!
堀井氏:音ゲーかっ!
久保田氏:1番短い時間でロックした時にはピカグレ(※)も出ます!
堀井氏:そうなんだ。音ゲーかっ!
久保田氏:佐藤に「ピカグレ出そう!」ってお願いしたんです(笑)。
※「ピカグレ」は音ゲー用語で「Perfect Great」の略称。
久保田氏:そして左側の最後はコントロールインフォですね。入力情報を表示しています。
――これで左側のM2ガジェットは全部ですね。福井さん的にここまでのガジェットの中でも重要度が高いと感じているのはどれでしょう?
福井氏:そうですね……。やはり「空ロックカウンター」ですね。ガジェットを作るために「空ロック」を自分でも出せるように練習しました。「ずらし押し空ロック」というのもあるのですが、それはもうトップスコアラーさんがやるようなテクニックで手動でやるのは大変で。作るのに苦労しました。
ただ、実は「空ロックカウンター」の仕様はトップスコアラーの人からツッコミを頂いていてバージョンアップ予定なんです。というのも、今の空ロックをカウントする判定はトップスコアラーから見るとカウントする種類が足りないということなんですよね。
空ロックは2つの倍率チップを総取りするテクニックで、敵を破壊したときの距離で変化する倍率チップの通称「距離チップ」と、敵の爆風からロックで出る倍率チップの通称「爆風チップ」を両方取るというものなのですが、今の「空ロックカウンター」は距離チップで「5」チップが出たときだけを空ロック成功として認めるという判定にしてしまっているんです。トップスコアラーさんとしては「5」チップ以外の距離チップをあえて出すという稼ぎ方があるということで、「1」~「5」チップも空ロック成功にカウントするようにして欲しいということなんですよ。それを今後のバージョンアップで対応予定です。
――あえて距離チップの方を5チップ以下にした方がより稼げる場面があるのですか?
久保田氏:そうなんです、稼げるんですよ。
――ということは、今の仕様だと「空ロックカウンター」は低いのにスコアは高いみたいなことが起きてしまうと。
福井氏:そうなんですよ。
堀井氏:これはもう、本当にごく一部のトップクラスのスコアラーさんの話ですね。でもちゃんと対応したいと思います。
福井氏:補足になりますが、いわゆる「タイマーの後付け」という現象も、このガジェットのカウントに含む仕様です。例えばヴィノグラドフをロックで倒し、すぐにザルキイ級をショットで倒して「5」チップタイマーが出た状態にすれば、ヴィノグラドフの爆風からロックで「5」チップが出るようになる……といったテクニックですね。この仕様についてはトップスコアラーさんからOKをもらっています。
――なるほど。かなりコアなところですがとことん突き詰めて対応されると。一通り左半分のガジェットをご解説頂きましたが、デザインも細かに作り込まれていますよね。特に「フルロックスピード」のLSIゲームみたいな光らせ方が好きです。
佐藤氏:ありがとうございます。ガジェットを含めて全体的にグリーンをベースカラーにしていますね。
久保田氏:「ケツイ」のイメージカラーって緑ですよね。そこでオプションとかのUIも基本を緑色にして、あとはハイライトとして明るい色を使っている感じですよね。
――ゲージの見せ方も戦闘機の計器っぽい感じもありつつミリタリー過ぎないぐらいの、「ケツイ」の独特さに合わせている感じがありますね。
久保田氏:扇形のメーターにしていたりとかはこだわったポイントですね。最初はタコメーターのデザインにもしていたのですが、昔のアンプみたいな見せ方にもなっていますね。
――右側には大きく「マップ」のガジェットを表示していますね。
久保田氏:マップは佐藤がすごく苦労したところですね。
佐藤氏:僕が参加したときは今のものとは違って本当にマップだけが載っていたんですよ。ボスのHP表示とかも全部左側に入っていました。でも、左側に入れたいガジェットが増えてきたときに、ボスのHP表示などはマップと一緒に右側に入れることにしたんです。
ボスのHPって常に表示するものでもないですし、それにボス戦のときはマップスクロールも止まるわけですから、マップを切り替えてボスのイラストとHPを表示をするように変えました。
久保田氏:一部の中ボスと戦闘しているときはマップは見た目的にスクロールしているものの実際はループしているという仕様になっているんですよね。なので、その場面はこのマップガジェットで上手く表現するのが難しいんです。そういう理由もあって中ボスの表示もするようにしたんです。
――なるほど、マップの表示が都合が悪いときにボス情報を表示して見せなくて済むようにしているんですね。
佐藤氏:そうなんです。そういうこともあってボスと中ボスの表示を右側に持ってきました。
――完成形のマップガジェットではボス以外の敵機のイラストも表示するようにしていますよね。
久保田氏:公式イラストのメカデザインですね。それもしっかりと載せています。2面・5面の中ボスでは、中ボス撃破後の雑魚敵が1番多くなるタイミングを表示する「最大数回しメーター」も搭載しています。
――中ボスを撃破したタイミング次第で、その直後に出現する敵の数が変わるということですよね。そこで、1番敵が多くなる中ボス撃破タイミングを目で見えるようにしたと。かなりコア向けなポイントですね。
久保田氏:完全にスコアラーさん向けですね。あとはマップに赤い線が3本表示されます。これは「過去にここでミスしたよ」っていうところなんですね。よく見てもらうと小さく「CAUTION」て書いてあります。この機能は実は以前から社長が欲しいって話しているものなんですよ。
堀井氏:オンラインでデータを共有して「みんなここでミスってるよ!」っていうのを感じられるようにしたいんですよ!
――確かにそれはちょっと見てみたいですね。オンラインで他の人のプレイの痕跡を共有するというような。
堀井氏:それにはどうしてもサーバーが必要になるのですが、いずれサーバーを用意して何かしていきたいなと思いますね。
久保田氏:「みんな縦穴でミスってるー!」みたいな楽しみ方をしたいという野望はあるのですが、今回は自分のプレイでミスしたところを3カ所まで保存するようにしています。
――なるほど。あとは右下にBGMの情報を出しているというものですね。これでガジェットは一通り全部ということですが、これまでのM2STGでやってきたガジェットの積み重ねという感じがありますね。
久保田氏:そうですね。「魔法大作戦」で冬野が苦労したあの頃の積み重ねが今回に存分に活かされています(笑)。
冬野氏:(笑)。
堀井氏:やりたいなって思ったことをうっかり言ってしまったばかりに、すごい大変なことでもやらざるを得ないハメになるというのが、ちゃんと引き継がれている感じがしますね(笑)。
――ちょっと画面に近寄ってM2ガジェットのデザインをじっくり見てみたいのですが……、うわぁ細かい! めっちゃ小さい字で「CAUTION」って書いてある!
久保田氏:細かいですよー。
――確かにガジェットに使っているフォントもいろんな種類が混ざってますね。
佐藤氏:そうなんです。プレーヤーインフォの文字とかは、僕の方でフォントを作ったものですね。
久保田氏:佐藤さんの書き下ろしフォント!
堀井氏:書き下ろしフォントっていう新しい概念が誕生してる。
久保田氏:おそらくケイブさんの方にはあるフォントだと思うんですけど、うちには無かったので、そこで佐藤さんが「自分で起こした方が早いね」と、作っちゃったんですよ。
――いやぁ本当に細かいですし、これは良く見てみるとこだわりの感じられるポイントですね。
福井氏:プレイする皆さんにも1度、じっくり見てもらいたいですねー。
――先ほど堀井さんの野望として、サーバーを立ててデータ共有して……というお話ありましたが、今後にもっとやってみたいことというのは、あったりするのでしょうか。例えば、初心者な人にもっとアドバイスをしていくガジェットとか。
久保田氏:初心者にはあまり関係ないスコアラー向けのガジェットをどかして、その代わりに大きく「次は右に避けるんだ!」って表示するみたいな。
佐藤氏:アドバイスガジェット!(笑)。
堀井氏:ナビみたいな! それをやるのにどれほどの手間がかかるのかを想像するだけでも恐ろしい……! でも、もしそれをやれるのならオンラインでプレーヤーの皆さんのお力を借りたものにしたい気がしますね。データ集積でもいいし、オンライン会話的なものでもいいし。
久保田氏:某ダークファンタジーRPGみたいに、他のプレーヤーからのメッセージを置けるとかもいいかもしれないですよね。「ここで注意!」みたいな感じで。
堀井氏:その方式だと必ずノイズが混じるけどねっ!
久保田氏:そういう嘘情報も踏まえて楽しむっ!
――オンラインガジェットがもしできたら、かなり夢が広がりますねー。
堀井氏:広がるんです。広がるんですけど、サーバーが必要ですよね。なんとかいずれ……!
M2STGで最多となる7つのゲームモードを収録!幻のケツイこと「IKD 2007 SPECIAL (2007 CAVE MATSURI VER.)モード」も専用ガジェットを用意して収録
――今回のプレイモードですが、DLCで提供される「IKD 2007 SPECIALモード」も含めると7つもあるということで。多いですねー。
久保田氏:モードも最多です。このうち「アーケードモード」と「IKD 2007 SPECIALモード」は、原作をそのままに収録しているものですね。
「IKD 2007 SPECIALモード」は2007年のイベント「ケイブ祭りだヨ!全員集合」に限り公開された“幻のケツイ”ですが、池田さんから頂いたROMのデータを収録しています。原作そのままという感じですね。
――「SUPER EASYモード」については、制作過程の苦労を先ほど福井さんからお話頂きましたが、最終的にできあがった特徴について改めて教えてもらえますか?
久保田氏:M2STG恒例の「初めてプレイする人でもクリアできるぐらいの難易度」を目指したものですね。
まず、弾幕の量を圧倒的に減らしています。ただ、アーケードの練習になるように弾幕の特徴やその避け方は変えないようにしています。また、被弾する瞬間に自動でボムを発動してくれるオートボムも搭載しています。ボムは最初から6個持っているので、実質的には6回被弾してもミスにならないということになりますね。
これまでにイベントで試遊して頂いた時にも、全員がエンディングまでたどり着けていました。ちなみに「SUPER EASYモード」は1周で終わりにしているものの最後にドゥームが登場するようにしていますので、文字通り「誰でもドゥーム様に会える」モードになっています。
同時に「SUPER EASYモード」では「2周目突入条件情報」のガジェットは関係がないものになるので、暗くなりますね。
――「IKD 2007 SPECIALモード」の収録についてはどうだったのでしょう、やはり苦労がありましたか?
久保田氏:普通のアーケード版と仕様の違うところがあるので、いろいろと苦労しましたね。「IKD 2007 SPECIAL」の特徴として、倍率チップが出る時の敵との距離設定が通常のアーケード版と違うんですね。アーケード以上に敵により近づいて倒さないと「5」チップが出なくて、それ以外の距離ではほとんど「1」チップになっちゃうという仕様になっています。
なので……ガジェットの「チップレーダー」の表示もそれに合わせて変えています。「5」チップ以外はほとんど「1」チップ判定の距離になっていて、「2~4」チップが出る距離はわずかで、逆に取りづらくてレアなぐらいですね(笑)。
――なるほど、「2周目突入条件情報」のガジェットも表示が変わってますね。
久保田氏:「IKD 2007 SPECIAL」は1周のみの仕様なので、ここは別のものにしています。「IKD 2007 SPECIAL」では“1番多く獲得した倍率チップが5チップの状態でステージクリアすると“1機UP”するんですよ。それをリアルタイムに表示しています。
――「1UP EXTEND OK!」というのが光っていますけど、これが5チップ以外を1番多く取ったら消えちゃうと。
福井氏:そうです。「IKD 2007 SPECIAL」は5チップを取るのが大変なので、この1UP表示がついたり消えたりころころ入れ替わるというドラマが生まれて、結構面白いんですよ。
久保田氏:「IKD 2007 SPECIAL」は、実は慣れるとアーケード版よりも1UPのチャンスが多いモードでもあるんです。チキンプレイをしていると1チップばかりになっちゃうので攻めこまないといけないのですが、がんばって5チップを多くとり続けられれば毎ステージごとに1UPするので4機増えるんですよね。
――上手い人には優しいみたいな。
久保田氏:やや優しいですね。弾幕加減はそうでもないんですけど。「IKD 2007 SPECIAL」は池田さんのそういう調整が入っているモードなので、それに合わせたガジェットを用意したというわけですね。
実は、「IKD 2007 SPECIAL」をアーケード版とはまた別に解析しなければいけなかったのが大変だったんですよ。
――内部的な違いが結構あったのでしょうか?
堀井氏:通常版とはアドレスが変わっちゃってるんですよね。
福井氏:差分はそこまでないんですけど、新しいプログラムが加わっているので他のコードも結構アドレスがずれているんですよね。なので何かするにしても、そこのずれたぶんだけ別のアドレスを指定するように用意しなければならないので、全体の解析をこっちでもやらなければいけなかったんです。
――なるほど-。解析が必要なものがさらに増えたけど、ガジェットのためになんとかやりきったと。
次は「CUSTOMモード」ですけど、こちらはいつものように設定を好きにいじれる文字通りのモードですよね。
久保田氏:そうです。この「CUSTOMモード」だけに用意している設定項目も多くありますね。例えば「ケツイボムの再現」はCUSTOMモード専用になっています。
――「ケツイボムの再現」は、言うなればバグの再現ですよね。
久保田氏:基板のNEWバージョンでは潰されているバグなわけで、それを再現するのとかは作り手からすると「やめて!」っていう感じだと思うのですが。そこもCUSTOMモードならONにできます。
――「表示ちらつき」の項目もありますが、これもこだわりの項目に感じますね。
久保田氏:僕らはアーケード版通りの「表示ちらつき」ありで各種のモードを作っていたのですが、開発の終盤に池田さんから「ちらつかないようにできませんか?」って言われたんですよ。そこで「アーケードモード」と「SUPER EASYモード」だけは原作再現としてちらつかせていますが、他のモードではちらつかないようにしています。
――池田さんとしては心残りのあるポイントだったのでしょうか。
福井氏:そうみたいです。基板の制約で「ちらつかざるを得なかった」というところで、今回はその制約がないのだから、「ちらつかないキレイな画面にした方がいいんじゃない?」という提案を頂きました。
堀井氏:視点が違いますよね。我々にとってはアーケード版そのものが原点であり至高でありバイブルなんだけど、池田さんは自分が作ったものであり「今ならこうする」というのがあるんですよね。
――なるほど。CUSTOMモードのオプションとは別に「OTHER SETTING」もいつものようにありますが、これはどのモードでも変更可能な、難易度とは関係のない設定ですよね。
久保田氏:そうです。「OTHER SETTING」はどのモードでも変えられますね。難易度に直接関わらない項目なのですが、変えると多少は有利になるかもしれない項目もありますね。自機のおおまかな当たり判定を表示するとか、ボスの形態変化ポイントをガジェットだけでなくゲーム内のHP表示にも出すとかは有用だと思います。
佐藤氏:そのあたりの設定をいじると、最近のケイブシューティングに若干近くなりますね。
福井氏:ですねー。今回もたくさんの設定項目がありますので、好きなように変えて楽しんでもらえればと思います。
好きなところを徹底的にトレーニングできる「アーケードチャレンジ」と、ミスしたところをひたすらにプレイしてランキングを競う「絆育成」
――「DEATHTINYモード」についてはインタビュー後編でお伺いしますので、次はメニューの並びでは下の別枠にあって特殊な感じがする「アーケードチャレンジ」と「絆育成」ですね。この2つは名前的にもちょっと謎めいた感じがします。
福井氏:この2つは開発の初期から構想していて、練りに練ったものです。
堀井氏:作る前には「フォルツァ」みたいなものがやりたいって言ってたときもあったよね。
福井氏:ありましたね(笑)。「フォルツァ」事件は1月ですね。
――「フォルツァ」って、レースゲームの「Forza Motorsport」ですか?
福井氏:そうですそうです。いろんな人が繰り返し遊べるものにしたいっていう気持ちから、「Forza」シリーズにあるようなアシストや、チューンナップパーツを手に入れていって、自機を強くできるっていう要素を考えていたんです。パーツはゲーム内通貨でいろんなものを購入できるように……などを考えていたのですが、見積もったら「それは1年かかっても完成しなくなるからさすがに止めよう」となりました。
久保田氏:プレイすることで手に入るゲーム内通貨を貯めていって、その通貨でオプションの項目やプレイモードも開放できるようにする……とかを話していたんですけど、それを作るのにはすごい時間がかかるので(笑)。
堀井氏:M2STGとして枠組はあまりつけないようにしているんですけど、その要素はさすがに止めましたね(笑)。
――それはもう、新しい遊びかたのゲームみたいになりますね。ちょっとやってみたい気もしますけども。
堀井氏:確かに……、いずれやるかもしれないですねー。
久保田氏:ちょっとしたところから、やっていきたいものではありますね。
福井氏:あと「Forza Motorsport」にもありますが、プレイを巻き戻せる「リワインド」の機能を入れたいと考えたんです。それは今回の新要素である「アーケードチャレンジ」に繋がっていますね。
――お話を伺っていると福井さんの構想には「上手くプレイできないという人にどうやって遊んでもらおうか」という意識が強いのを感じますね。「SUPER EASYモード」から入って、だんだんと開放される要素を入れて繰り返し遊んでもらおうとしたり、プレイをやりなおせるリワインドの機能を考えていたり。
福井氏:ですね。特に「プレイできる要素を開放していく」というものはやりたかったんですけど、もうひとつの需要である「ゲームのどの場面にも好きにアクセスしたい」というのとぶつかってしまうんです。例えばアーケードをすでに遊びこんでいる人なら練習としてボス戦をやりたいわけで、段階を追ってアンロックさせるという遊ばせ方が邪魔になってしまう。そこで今回は段階的なアンロックは控えめにして、最終的に両方の人に楽しんでもらえる仕様にしていますね。
――ユーザーさんには初心者の人もアーケードに慣れている上手い人も両方いますし、バランス感覚の難しいところですね。
福井氏:そうなんですよ。そこで今回はその両方の人を繋ぐというか、初心者の人が上手い人になるためのステップアップになる、「アーケードチャレンジ」というモードをつくってあります。もうひとつの「絆育成」というモードも、同時期に企画がまとまったものです。
――なるほど。では、その「アーケードチャレンジ」から、どのようなモードなのか教えて頂けますか。
久保田氏:これはもうプレイの仕方もUIも、他のモードとは全然異なっています。「アーケードチャレンジ」は“ステージを細かくわけてプレイするモード”ですね。「ステージの前半」、「ステージの後半」、「中ボス」、「ボス」、「ステージの通しプレイ」、とチャレンジ項目がわけてあり、さらに1周目、表2周目、裏2周目もそれぞれ別で、全てあります。
――全5ステージの1周目、表2周目、裏2周目が全部バラバラに分割してあって、それをすぐにプレイできると。
久保田氏:そうです。それで例えば「ステージの前半」を選んだのなら、その範囲をクリアしたらプレイはそこで終わります。
福井氏:範囲をクリアしたら選択画面に戻りますね。
――なるほど、完全な部分プレイですね。特定シーンクリアのチャレンジが全ステージ分。
久保田氏:ですね。一応「ステージの通しプレイ」と「全ステージ通しプレイ」というチャレンジもありますが、それは分割範囲のシーンを上手くクリアできるようになったあとに挑んでもらいたいものですね。
ただしこれは、プレイし始めは好きなチャレンジを選べるわけではなくて、最初はロックがかかっていて、1周目のステージ1前半からスタートしていきます。先の範囲をアンロックするには「プレイするだけ」でOKです。なので誰でもプレイさえしていけば全項目をアンロックできて、好きなところをいつでも練習できるようになります。
――先ほどのお話にあった「プレイの積み重ねで開放する」というのを邪魔にならない程度に入れてあるんですね。
福井氏:すぐにドゥームとかを練習したい熟練プレーヤーさんもいるとは思うのですが、初心者の人にステップアップしていってもらいたいというのもあるので、その間を取ったという感じですね。アンロックするにはプレイするだけでいいので、熟練者の人はスタートしてキャンセルしてを繰り返せば10分程度で全部アンロックできると思います。最初だけ少し我慢して頂ければ。逆に初心者の人は、1面からクリアして開放していくというのを目指してもらえればと思いますね。
――これは難易度は「アーケード版」になっているのですか?
福井氏:そこがこの「アーケードチャレンジ」のポイントで、難易度を選べます! プレイする範囲を選んだあとに難易度を1~10まで選択できるようになっているんです。難易度1辛は「SUPER EASYモード」と同じで、難易度10辛は「アーケードモード」のと同じ難易度ですね。
――10段階の区切りといい、UIの色といい、福井さんがもう「1辛」とか「10辛」って言っちゃってますし、ここはもうカレーの○辛という言い方でいいですか?(笑)。
全員:(笑)。
福井氏:もうそれでいきましょう(笑)。「難易度いくつ」という言い方より「○辛」の方がわかりやすくて早いですからね。
――わかりました(笑)。難易度もすぐに変えてプレイできるというのは嬉しいですね。
福井氏:クリアするとご褒美として「アワード」というメダルがもらえるようにしてあります。難易度1辛でもプレイしてクリアすればメダルが出ますので、初心者の人はそこから各面の範囲をクリアしていって、少しずつ上達していって欲しいです。
佐藤氏:最終的にアーケードの難易度でノーミスノーボムでクリアすれば金メダルがもらえます。
福井氏:高い難易度でクリアするほどメダルが立派になっていきますね。ステップアップしていって金メダルを目指してもらいたいです。
――プレイしたいところに短時間でアクセスできて、難易度も調節できて、メダル獲得の遊びこみもあると。
堀井氏:そうなんです。短時間にアクセスできるのが良いところで、ゲーセンで苦手な場所を練習しようとしてもそこまで進めるだけでも大変ですからねー。
――後半の練習はそう易々とできないですし、嬉しいですね。ちなみにこの難易度の1辛~10辛のところに「レコメンド」という表示がついてますが、これは?
久保田氏:これはオススメの難易度ですね。例えば1辛でしかプレイしていないチャレンジなら2辛をオススメして、全くプレイしていないところなら1辛をオススメされます。ゲーム側から「これぐらいの難易度でやってみたらどうですか?」と提案するようにしているんです。
――すごい。エムツーさんの進化を感じる……!
全員:(笑)。
堀井氏:進化しているっ! 時間はかかっているがっ!
久保田氏:以前は「機能は用意してあるので、設定や使い分けは自分でやってください」と言ってましたからね(笑)。
それに実は「おまかせ選択」という機能もここにはあって、アーケードチャレンジのメニュー画面で△ボタンを押すだけで、適した範囲と難易度のチャレンジがすぐに始まります! 細かな設定とかがよくわからない、めんどくさいという人は、このおまかせ選択を押してもらうだけでいいです!
――なんの設定もしなくてもワンボタン!これぞ真の初心者な人でも大丈夫というものですね。
久保田氏:ゲーム側でしっかりお膳立てするようにしているんです!
――なるほど。これはもう本当にトレーニングモードですね。シューティングのトレモ。
福井氏:コンセプトとしては、トレーニングモードと、ミッションに挑んでいくようなクエストモードみたいなものとを合わせたような感じですね。
久保田氏:実はまだ大事な機能があるんです。チャレンジを選択してプレイが始まってから、弾にあたってミスをすると……。
――ミスする前に画面が早戻しされていく!これがさっきの話にあったリワインド!
久保田氏:そうなんです! リワインドするんです! 「アーケードチャレンジ」中にミスするとトレーニングフェイズへと突入し、ミスする前の5秒前へと戻っていきます。そしてそこから“10秒間”生き残ってもらいます!
――ミスする5秒前に戻って、10秒間生き残る!
久保田氏:そうです! そして見事に生き残れば、ミスを克服したということで成功を知らせる音が鳴るんです。
――あ、今「ピロンッ」って鳴りましたね。これでトレーニングフェイズ成功と。
久保田氏:ちなみに、このトレーニングフェイズ用にガジェットもいくつか変わっています。スコアの横にある数字は「リトライ回数」ですね。2周目条件ガジェットがあったところは「トレーニングインフォ」というガジェットになって、リトライを成功させる回数とリトライからの生き残り時間を表示しています。左下の「バトルアチーブメント」もアーケードチャレンジの獲得メダルのものに変わっていますね。
――なるほどチャレンジ全体で20回のリトライ回数があって、トレーニングフェイズは1回でも成功すれば元のチャレンジの続きがプレイできるんですね。
久保田氏:1回成功すればいいというのは実は「ノーマル トレーニング」のお話で、もうひとつ「スパルタ トレーニング」という設定も用意してあります。流れはノーマルと同じですが、スパルタではミスした箇所を3回成功しないとダメです!
堀井氏:ミスしたならば3回抜けろ、ボムもダメ!
久保田氏:スパルタではボムで強引に突破するのもトレーニング成功とはみなしません! ミスして5秒戻されて10秒間生き残るのは同じですが、10秒生き残ってもまた戻されて、3回同じところをやることになります!
――反復練習!
堀井氏:ボムなしというのもアーケード版をクリアできるようにするため、というのをかなり意識していますね。
――1回成功しただけだとまぐれかもしれないから、ミスしたところを3回成功するまでやれと。ボムももちろんダメと。
堀井氏:君がちゃんと身につけるまでっ!
久保田氏:まぐれ避けは許さないっ!
――スパルタ教官! でも、これは上達していくのに良いですね。シューティングが上手くなりたい人のためのトレーニング器具というか。ついに時代が来ましたね。
福井氏:全人類対応ですね(笑)。これまではこういう練習も中断セーブとロードで自分でやっていたと思うのですが、初心者の人はそういう機能を使いこなして練習するというところまでいかないですよね。そこをなんとかサポートしたいっていうのが狙いだったんです。
――エムツーショットトリガーズのインタビューをし続けた僕も感動しています(笑)。
全員:(笑)。
久保田氏:これを作るのは正直大変でした(笑)。
――難易度を10段階と細かに作られたのはなぜでしょう?
福井氏:初心者の人がステップアップしていくのには細かに段階があった方がいいだろうと考えたんです。特に後半の難しいステージになるとそれが顕著になります。
あと、この難易度調整は「SUPER EASYモード」を苦労して作ったものをより活かしていて、実は「SUPER EASYモード」と「アーケードモード」の中間を計算式で自動生成できるようにしています。ですので難易度を100段階にすることもやろうと思えばできちゃうんです。
――なるほど、終盤のステージや裏2周目などを考えたら、易しい難易度から細かに難易度の区切りを用意してもらわないと、ステップアップしていけなくて途中でつまづいてしまうと。
福井氏:そうなんですよ。自分も、例えばニガテな場面の練習をするときに、6辛はノーミスノーボムでいけるんだけど7辛は結構ミスするんです。そうするとレコメンドは6辛でクリアしたら7辛をオススメしてくるものの、7辛でミスするとまた6辛をオススメするように戻るんです。
――ちゃんと見てる。
福井氏:そうして6辛に戻って繰り返し練習していると、ちゃんと7辛もクリアできるようになるものなんですよ。
――できない難易度を何度もやらせるよりも、ギリギリでクリアできる難易度をやった方が伸びると。確かにそうですね。
福井氏:もちろん荒療治でやっていきたい人は、レコメンドを無視して自分で難易度を選んでもらって大丈夫です。
――難易度を決める画面のところに「地獄レート」という数値もありますが、これは?
久保田氏:やり込み要素になるレーティングですね。シーケンスをクリアしたときの金/銀/銅メダル次第で、レーティングの点数がもらえるようになっています。例えば銅メダルでクリアすると350点ぐらいもらえます。ちなみにこの点数は変動制になっていて、毎回銅メダルクリアだと350点から下がっていきます。
金メダルクリア1回でゴールドプレーヤーで4000点、金メダルクリアを3回するとSUPERゴールドプレーヤーで5000点。銀メダルも1回はシルバープレーヤーで2,000点、銀メダル3回でスーパーシルバープレーヤーで3,000点。銅メダルは3回取ればスーパーブロンズプレーヤーで1,000点になります。
――これはがんばってプレイした証拠というわけですね。
久保田氏:そうです。貯まったレートが減ることもないので、がんばってプレイを重ねてくれれば、いずれは9,999点でカンストしますね。
福井氏:ただ、例えばシルバープレーヤー状態だと3,999点から上にいけなくなります。カンストさせるには上達して金メダルを取ってゴールドプレーヤーに昇格しないとダメですね。
――これはなぜ「地獄レート」という名前に?
福井氏:「ケツイ」といえば絆と地獄というワードということで、もうひとつの「絆育成」というモードに「絆ポイント」と名称を使っているので、こちらでは「地獄レート」としている……というところですね。
――なるほど。ちなみにちょっと気になっていたのですが、「アーケードチャレンジ」で全てのチャレンジを10辛で金メダルにするというのは……できる人います?
久保田氏:金メダルはノーミスノーボムなので裏2周とかはかなりやばいです……。
福井氏:裏2周目でボムを撃てないのがかなりやばいですね……。
久保田氏:エリア別ならできると思うのですが、ここにはステージ通しや全ステージ通しもあるので、裏2周目通しのノーミスノーボムは多分達成できる人はいないと思います。
福井氏:ですね、これはもう「人類への挑戦」レベルです。
――やっぱりそういう話になりますよね。これを完全制覇できた人はぜひ、エムツーさんにお知らせしてもらいたいですね。
堀井氏:その人には、人類卒業のお祝い的な何かを贈りたい!
――(笑)。それにしても「アーケードチャレンジ」は良いモードだなと思います。初心者の人でもピンポイントに上手くなっていける。
堀井氏:裏2周はさすがにあれだけど、これでアーケード1周はかなりの人ができるようになるのではないかと。なって欲しい!
――シューティングゲームって後半のステージほど練習ができないから、上達が頭打ちするんですよね。
久保田氏:最初の面ばっかり上手くなるんですよね(笑)。俺がまさにそうで5面とかはなかなか上手くならないんです。それというのも、そもそもそこにたどり着いている回数が少ないからですよね。
――1面は100回以上遊んでも、ラスボスと戦った回数は2桁もいかないというような。
久保田氏:そうそう。そこをこの「アーケードチャレンジ」では単純なステージセレクトとは違った形で、やりこんでいけるような形に仕上げましたので、ぜひこれで1周クリアできるようになって欲しいです。
――ちなみに、福井さんはこのモードを結構早い段階から考えていたのですか?
福井氏:1~3月ぐらいの間に骨格を考えていたものですね。ただ実は、いくつかの機能は、僕がエムツーに入社するときに社長に見せた企画書で近いものを書いていて、「エムツーでシューティングをやるときに、こういう機能を入れたいです!」という話をしたんですよね。
堀井氏:その時、「その機能はすごい手間と時間がかかるよ」っていう話をした気がするねー。
福井氏:しましたね。企画書でも手間と時間がかかるという書き方をしていて。で、今回それが、実際になかなかの時間をかけて完成したんですよ(笑)。
――(笑)。でも、この機能は大事な考え方だなーって思います。
堀井氏:大事なんだけど、これを次のタイトルでもやれって言われたら、サクッとやれるのかどうか……!
――でももう今後は、毎回求められちゃうと思いますよ。
久保田氏:UIや基礎は今回でまとまったので、次からもなんとか!
――モードについて伺う最後は「絆育成」です。
久保田氏:「絆育成」とは何かと言えば、“アーケードモードをミスったときの集合体”なんです。画面には5×5のパネルのようなものが表示されていますが、これは「アーケードモードをプレイしたときのミスしたシーンの記録」が25個並んでいるんです。これを「絆のカケラ」と呼んでいます。
――これは全部アーケードモードをプレイした時の25回ミスした場面なんですか。
久保田氏:そうです。
福井氏:左上が最新のミスした場面で、そこから順に過去25回のミスシーンの記録ですね。
久保田氏:そして、これで何をするのかというと、その「ミスした場面をプレイする」んです。記録を選ぶと、アーケードモードでミスした場面の5秒前からゲームがスタートします。そして10秒間生き残って、ミスした場面を克服するのを目指すんですね。ここは「アーケードチャレンジ」と同様です。
――こっちは「アーケードモード」でミスした場面のトレーニング専用なんですね。となると、プレイ難易度もアーケード版固定?
久保田氏:そうです。アーケードモードをクリアできるようにここで克服していこうというのが目的ですね。
それだけでなく、絆のカケラをクリアすると絆ポイントがもらえるようになっていて、しかもそのポイントの総獲得量で競うオンラインランキングもあるんです。このポイントを貯めていくにはアーケードモードをプレイしてミスしないと絆のカケラが増えませんので、アーケードモードをプレイするほかないです。ちなみに、絆のカケラは1回クリアしてポイントを獲得すると、2回目以降はポイントはもらえません。
――アーケードモードをプレイして、自分で「絆育成」でプレイする絆のカケラを増やして、それを自分でクリアしてポイントを獲得していく?
久保田氏:そうそう、そういうことです。
福井氏:アーケードモードをプレイしてミスするたびに10秒間のミニゲームが自動生成されていくと考えてもらえばいいかと思います。
――でも、やればやるほど上手くなっていくから、だんだんとミスをしなくなっていきますよね?
久保田氏:とは言え、表2周、裏2周とありますから。ミスは結局はすると思います。
――となると、やればやるほど「絆のカケラ」のプレイシーンはステージ後半のえげつないところになっていく?
福井氏:そうですね。例えば、1周はクリアできるけど2周目にいけないという人がいて、6ミス10ボム使用だったとします。この人は1回アーケードモードをプレイすると絆のカケラが6個できます。上手くなると今度は2周目にいけるようになり、そこでミスしたら2周目の絆のカケラができていきます。
――難しい場面の「絆のカケラ」をクリアした方が、もらえる絆ポイントが高い?
久保田氏:もちろんです! 獲得ポイント量が雲泥の差になっています。
福井氏:1周目のステージ1のエリア1のミスでできた「絆のカケラ」はクリアしても1ポイントですが、後半のステージなら数万ポイントもらえたりします。
久保田氏:もちろんドゥームはすごいですよ。
――――アーケードモードのドゥームまでいってミスしたら、絆育成にそこのカケラができて、そこで乗り越えるとすごい量のポイントがもらえると。
久保田氏:そうです。ただ、そのためにはアーケードモードでドゥームまでいかないといけないので、それがそもそも大変ですけどね。
――なるほど。例えば、ステージ4とかでミスしてゲームオーバーになるぐらいの人が、絆育成でそのカケラをプレイしてポイントを稼ぐという繰り返しをしていたとして、スコアラーな人がアーケードモードで裏2周のドゥームまで1回でたどりついて数ミスして、そのカケラをクリアしたら、繰り返してがんばっている人のランキング順位を一気に抜いていくみたいなことになると。
久保田氏:なりますね。カケラ1個あたりのポイント単価が全然違うんです。絆育成のポイントランキングで上位を目指すなら、アーケードモードでなるべく先のステージまでプレイして、絆育成でミスの場面からポイントを得て、またアーケードモードに……というサイクルを繰り返すのが一番です。
――えげつない……!「アーケードチャレンジ」は自主的なトレーニングという感じがしましたが、こちらはアーケードモードを強制的にプレイさせる邪悪なマシンのよう!
全員:(笑)。
――ランキング上位を目指すなら、ひたすらプレイしまくって、ひたすら上達するしかない?
久保田氏:そうですねっ!
――恐ろしいっ……!
久保田氏:これはもう完全に「スパルタ」ですね(笑)。
福井氏:間口をできるだけ広くして、初心者の人に“沼”にハマって欲しいんです。そして自らを鍛え上げたい人にはスパルタモードも選べますよー!
堀井氏:間口を広くも納得だし、沼に引き込みたいというのも分かるんだけど、「どこまで連れて行く気だよ!」って感じですよ(笑)。
――「絆育成」っていうモード名からは、もっとほんわかしたものを想像してたんですけど。全然違いましたね。
福井氏:ほんわか要素もちゃんとあります!絆ポイントを貯めるとご褒美コンテンツを開放できるんですよ。
久保田氏:ポイントを貯めることでキャラクターイラストを開放できますので。まずはそれを目指してもらいたいなと思います。
福井氏:ポイントを貯めて4人のキャラクターを開放して、彼らとの絆を深めていってくださいということからの「絆育成」モードなんです。
堀井氏:どちらかというと、同じ絆でも星一徹と星飛雄馬の絆みたいなスパルタな絆ですけどね(笑)。
久保田氏:スパルタで育まれる絆!
――ミスしたところのリトライ練習でポイント稼ぎランキングをやらせるとは……。でも新しい遊び方ですね、斬新。
福井氏:上手くなるにはミスしたところをやるのが効率的、という発想からのものですね。
久保田氏:今回は上手くなってもらうための機能をあの手この手のいろんな形で用意しました!
福井氏:池田さんからは「全人類対応済 弩推奨版」という太鼓判をいただきまして、それを受けて「全人類アーケードクリア計画」というものを掲げています。できるだけ多くの人がアーケード版をクリアできるようにサポートしたいんです。そのための「アーケードチャレンジ」や「絆育成」ですので、ぜひ挑んでもらいたいです!
11月18日開催の「エムツーショットトリガーズ弩感謝祭」は新情報満載! 驚きの発表も?
――11月18日に開催される「エムツーショットトリガーズ弩感謝祭」についてお聞きしますが、こちらは、どのようなイベントになるのでしょうか?
堀井氏:秋葉原Heyの5階廣瀬イベントホールにて、11月18日の13時から18時にかけて開催させて頂くイベントなのですが、弊社のショットトリガーズが約2年続いていることを感謝してのお祭りですね。
これまで弊社が制作したいろんなゲームを展示しつつ、間に合えば新作タイトルの発表もさせてもらいたいなと思います。間に合えばですけど……、間に合わせます!
また、ショットトリガーズ以外でも弊社が作らせて頂いたシューティングタイトルがありますが、セガさんやタイトーさんに協賛頂いて「サンダーフォース」シリーズや「ダライアス」シリーズのプロモーションもさせて頂こうと思います。
久保田氏:「ケツイ」は発売直前ということでもあるので、まだ内容を公開していない「DEATHTINYモード」と「オープニングムービー」を公開させて頂こうと思います。
佐藤氏:オープニングムービーについては実は新曲もありますので、作曲頂いた並木学さんと、動画を作った齋藤久典さんに登壇頂いてのトークも行ないます。
久保田氏:「ケツイ」のステージイベントでは、アーケード版の全一プレーヤーさんに来て頂いて、PS4版「ケツイ」でスーパープレイをしてもらおうというものもあります。どんなプレイになるかは当日のお楽しみですね!
――なるほど。先ほど堀井さんからは「新作タイトルの発表」という言葉もありましたが。ヒントを何か頂けませんか?
堀井氏:……縦シュー!
――「横」か「縦」かで言ったら「縦」!
冬野氏:あれ、「横」は?「斜め」なところもあるよね?
福井氏:えーと、あくまでもスクロール方向ではなくジャンル的なくくりで言うと「縦」っていうことですね。「ケツイ」も場面によって真横とかいきますけど、基本的には縦シュー(笑)。
堀井氏:そのタイトルはアニバーサリーイヤーでもあるので、そこに絡めてがんばりたいですね!
――アニバーサリーですか。初リリースから区切りがいい年を迎えるタイトルということですが……。
久保田氏:……まぁ、例えば30年前だと1988年なので、その年だけでもシューティングは多いんですよね。
堀井氏:1988年だと、「グラディウスII-GOFERの野望-」とかもあるね。
久保田氏:ですね。来年から数えるのも考えたら1989年も入ってきますし、アニバーサリーイヤーというだけだと絞り込むのは難しいですよね(笑)。
堀井氏:あと言えるヒントとしては……俺が過去にTwitterで騒いだことのあるタイトルです!
――なるほどー。それが初公開されて見られるかもしれないということですね。
久保田氏:そうですね。初公開するものは他にも多いのでシューティングお好きな人は来て損がないと思います。
堀井氏:セガの奧成さんや、タイトーの外山さんとの面白話もたくさんします!
佐藤氏:来場された人には、「バトルガレッガ Rev.2016」のポスターを在庫のある限り、全員にプレゼントさせて頂きます。あと、「ケツイ」の予約をして頂いた人で、予約が確認できるものを見せて頂ければ、「ケツイ」のポスターもプレゼントします。
久保田氏:他にも物販もありまして、Heyさんからはイベント限定のオリジナルTシャツが販売されます。ケイブさんも「ケツイ」 関連グッズの販売を。あとガレージキットを手がけられているRCベルグさんの販売もあって、RCベルグさんは「ケツイ」の自機である「ティーゲルシュベルト」と「パンツァーイェーガー」のキットを作られているので、それらを販売するほか、景品としても出して頂けるということなんです。
――イベントも物販も盛りだくさんですねー。
久保田氏:イベントの模様はニコニコ生放送でのライブ配信でもお楽しみ頂けますので、現地に行きたくても来られないという人は、そちらを見て頂けたらなと思います。
――なるほど。堀井さんからは「エムツーショットトリガーズ弩感謝祭」については以上でいいですか?
堀井氏:実は……、ちょっと展示したいものがあるんですよ。来場された皆さんに触ってもらって、その手触りなどの感想をお聞きしたいんです。そういう機会は他になかなかありませんから。
――「手触りの感想をお聞きしたい」となると、これまでとは違った展開やハードでのものでしょうか?
堀井氏:そうですね。ストレートに言ってしまうと「Nintendo Switch」で動かすものです。
――なんと。
Nintendo Switchでの“あれ”とか“あれ”をがんばっていますので、それを実際にプレイして頂いて感想を頂きたい! みなさんぜひ来場頂いて、その手で触れてみてもらいたいです!
前編はここまで。インタビュー後編では「ケツイ Deathtiny ~絆地獄たち~」のオリジナルモード「DEATHTINYモード」や、超高難易度の「DIE-CUSTOM」、さらにサウンドなどについてお伺いしている。掲載は11月29日0時を予定。お楽しみに。
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