インタビュー

「ハースストーン」eSports Manager Matt Wyble氏インタビュー

2018年はeスポーツ要素を全方位に充実。「もっと日本人選手の活躍を期待している!」

1月18日~21日開催

会場:Beurs van Berlage

 「ハースストーン」は、デジタルカードゲームとしては、グローバルで展開し、毎年世界大会を行なっているほぼ唯一の存在だ。Blizzardの他のタイトルと切磋琢磨する形で、独立したeスポーツ部門を持ち、世界大会を頂点とした各種eスポーツイベントを企画、マネジメントしている。

 「ハースストーン」の世界大会「Hearthstorn Championship Tour 2017 World Championshipでは、そのeスポーツ部門を率いるMatt Wyble氏にインタビューすることができたので本大会の手応えと、2018年の抱負について話を伺ってみた。

2018年はマスターズシステムを導入し、プロ選手を直接支援

「ハースストーン」eSports ManagerのMatt Wyble氏
「ハースストーン」の大会は、場所や時期に関わらず、常に同じフォーマットで開催されている
本大会で、唯一ハンターデッキを採用したOrange選手(スウェーデン)。惜しくも予選リーグ敗退となったが、レアデッキで孤軍奮闘する姿に惜しみない声援が送られていた

――「ハースストーン」のオフラインイベントは、国や地域を問わず常にまったく同じフォーマットで実施されている。これは何故なのか?

Matt Wyble氏:我々は「ハースストーン」のeスポーツも、ゲームの一部だと考えている。ステージや放送の内容、会場のデザインなどはできる限り統一し、参加者にゲームの一部だと思って貰えるようにしたいと考えている。

――HCTが初めてBlizzCon以外の時期、場所で開催されるが、なぜこのタイミング、このオランダが選ばれたのか?

Wyble氏:これが第1回目のBlizzCon以外の大会となる。なぜタイミングをずらしたかというと「ハースストーン」の拡張版のローンチスケジュールに合わせてWorld Chanpionshipを開催したいと考えた。今出ている最新の拡張版「コボルトと秘宝の迷宮」が、1年間の最後を飾る拡張版で、その最新の拡張版を含んだデッキで対戦して貰うのがふさわしいと考えたんだ。HCTは、ツアーと名付けられているとおり、今後、色んな地域をツアーしながら開催する。2017年のシーズナル大会も、バハマや、上海、ロサンゼルスなど、色んなところで開催された。我々のゲームのファンは世界中にいるので、世界中のファンに参加する機会を与えたいと考えている。

――ということは次のWorld Championshipも、BlizzCon以外のどこかで開催されるのか?

Wyble氏:それについては時間を掛けていろいろリサーチしているが、現時点で言えることはまだ何もない。ただ、将来的には日本でもたくさんの色んなイベントを開催したいと考えている。

――アムステルダム大会の感想を聞かせて欲しい。

Wyble氏:素晴らしい世界選手権になっていると思う。初日は、グループAリーグの予選の、DOCPWN選手と、TOM60229選手の第3試合がクレイジーな展開でおもしろかった。今回のようなイベントは単なるコンペティションではなく、フェスティバルのようなもので、ファンが試合を観ることも目的だが、それ以外にも実際にトーナメントに参加したり、開発者に会ったりなど、フェスディバルという側面でもおもしろいイベントになっていると思う。

――本大会のメタについてどのように考えているか?

Wyble氏:本大会は開催時期をずらしたこともあって、拡張版のリリースから2カ月ぐらい時間があったので、研究し尽くされて、非常にレベルの高い、スマートなプレイを観ることができておもしろい点だと考えている。デッキについても、同じヒーローでも色んなデッキが観られるようになった。違うタイプのドルイド、プリースト、ウォーロックなどがそうで、本大会のデッキでもっとも成功しているのはハンターで、1人しか使っていないが、現状勝率100%になっている。

――本大会では、ドルイド、ウォーロック、プリーストなど採用クラスが固定化していて、ハンターやメイジ、ウォリアーなどがあまり採用されない状態になっている。この点についてどのように考えているか?

Wyble氏:興味深いのは、大会ごとに、全然使われるヒーローが変わっていて、ある大会だと9クラスすべていることもあるし、ある大会では1クラスに集中することもある。我々としては常に新しい変化を大会ごとに取り入れていきたい。

――Wybleさんが所属しているBlizzardのeスポーツチームは、どの程度開発チームに対して関与できるのか?

Wyble氏:開発チームがゲームバランスについて最終的な責任を持っていて、彼らはもの凄く色んな事を考えていて、トッププレーヤーの意見も参考にしているし、カジュアルプレーヤーのことも考えている。すべてのプレーヤーにいいように最善の選択ができるようにしている。

ハースストーン・マスターズシステムの概要

――本大会で2017年度の大会は終わるが、2018年はどのような年にしたいか抱負を聞かせて欲しい。

Wyble氏:今年は数多くの変更を予定している。まず1つ目はマスターズシステムで、誰が本当に一番強いのかという判断をする上で、大きな役割を果たしてくれる。何故このシステムを導入するかというと、トッププレーヤーがより安定してお金を稼げるようになり、投資した時間に対して見返りを与えたいと考えたためだ。

 2つ目が「ツアーストップ」。これは従来のメジャー大会を進化させたもので、色んな地域で大会を企画していて、様々な地域から参加することができて、上位に入ればHCポイントが貰える仕組みになっている。

 3つ目は、「ハースストーングローバルゲーム」、HGGと呼ばれるもので、去年もあったが、国の代表を選んでワールドカップのように国別対抗戦を行なう。それぞれの国のユーザーが代表を応援するというところがおもしろい。

 4つ目は「ハースストーンチーム」。現在の「ハースストーン」では、すべてのトッププレーヤーが、チームを組んで切磋琢磨している状況になっていて、そういう彼らチームに対してサポートしていきたい。トップチームに対する見返りを提供するプログラムを計画している。

――マスターズシステムは、言わばBlizzard公認のプロ選手ということになるが、最高ランクの3つ星の選手は何人ぐらいを想定しているのか?

Wyble氏:私も計画のすべてはまだ把握していないが、日本のプレーヤーも含めてたくさんの人が到達してくれることを願っている。一定のポイントに到達した人が慣れるシステムになっていて、何人かはわからない。そのしきい値も変わってくるだろう。

――では本大会に参戦している16名は自動的に3つ星に認定されるというわけではない?

Wyble氏:世界大会への出場に関係なく、全員平等にポイントを稼いで貰うことになる。興味深いのは、誰が最初に三つ星に到達するのかだ。おそらく、2018年の後半に最初の3つ星プレーヤーが誕生してくるだろう。というのは3大会の合計値が基準になるので、3シーズン目の終了後に決まると思う。

――プロチームを資金的に支援するということだが、チーム単位のプロリーグは検討されているのか?

Wyble氏:将来的にはもっと色々なプランを計画しているが、現在公表しているのは、公式でチームをサポートするそのファーストステップとなる。

――メジャーに変わる存在となる「ツアーストップ」は日本でも開催されるのか?

Wyble氏:開催したいね(笑)。ツアーストップに限らず、もっともっと多くのイベントを日本でやっていきたい。日本語版がスタートする前から情熱を持ったファンがたくさんいることを知っている。実際、HCTでも多くの好成績を収めているプレーヤーが多い国なので。

――しかし、日本人プレーヤーはWorld Championshipに参加できなかった。他の国と比較して、何が足りないと考えているか?

Wyble氏:ひとつは世界のトッププレーヤーは仲間がいて、他の仲間と切磋琢磨する環境がある。それはとても重要なことだ。もう1つは大きなトーナメントの参加経験も必要だ。ラダーでプレイするのも重要だが、実際に大会で受けるプレッシャー、緊張は大会経験を通じてしか高められない。その辺りが足らなかったのではないか。

――日本のプレーヤーに向けてメッセージを。

Wyble氏:もっともっと日本人選手に活躍して欲しい。2018年こそは、日本人の誰かが世界選手権に出場すると思う、日本人プレーヤーは素晴らしい実績を残しているし、このインタビュー記事を読んで、まったく「ハースストーン」をプレイしていない人も、そこを目指して到達するかもしれない。たとえば、この前、UYA選手が、シーズン選手権に出場したが、彼は学校の先生をしながら、仕事と「ハースストーン」を両立させてそこまで来れた。そういった有望なプレーヤーも生まれている。近所の「炉端の集い」に参加するところから初めて、世界選手権への出場を目指して欲しい。