インタビュー
「ハースストーン」、「海賊」は「強すぎるため」調整の可能性も?
リードデザイナー、ベン・ブロード氏に「ガジェッツァン」の現状と今後の方針を聞く
2017年1月25日 15:58
ブリザードエンターテイメントのデジタルカードゲーム「ハースストーン」において、12月1日より導入された最新エキスパンション「仁義なきガジェッツァン」。導入よりもう少しで2カ月が経過するが、今回「ハースストーン」のリードデザイナーを務めるBen Brode(ベン・ブロード)氏にインタビューすることができた。
ベン氏は「ハースストーン」のディレクターでもあり、「仁義なきガジェッツァン」などの実装を含めて、どのように今後の拡張パックの要素を構成していくか、また「ハースストーン」をどうより良くしていくかに取り組んでいる人物となっている。
今回は「仁義なきガジェッツァン」の話題を始めとして、今後の課題なども聞くことができたので、こちらをお送りしたい。
「仁義なきガジェッツァン」後の動向は?
――「仁義なきガジェッツァン」ですが、導入してみてゲーム内にはどのような変化がありましたか?
ベン氏: エキスパンションで目標としているのは、ゲーム内にある既存のものを大きく揺さぶることで、新しいユーザー体験を生み出すということです。「仁義なきガジェッツァン」導入以降では、「海賊」デッキなどが増えてくるなど、カードを使った新しいメカニクスが生み出され、使われていっているという変化がありました。
――「仁義なきガジェッツァン」において、課題として挙げられることはありますか?
ベン氏: 今挙げた「海賊」ですが、少々強すぎるのではないかという印象があります。ただいまデータを見て確認しているところですが、バランスが悪いという結論が出るようであれば、調整の可能性もあると考えています。
またファミリー「グライミー・グーンズ」に属するミニオンたちが「早すぎる」という意見も出ていて、我々の想定とは少し異なった感じがあるので、そこが課題になっています。
――その「グライミー・グーンズ」に代表されるマルチクラスカードですが、あまり話題になっていないように思いますが、いかがでしょうか。
ベン氏: 我々としては結構プレイされていると解釈しています。特に「カザカス」はデッキのカギになっていることが多いですね。加えて、「翡翠の精霊」を使用した「翡翠ドルイド」、「翡翠シャーマン」というデッキもよく見かけます。
――そろそろスタンダード環境が変わり、現在の「クラーケン年」が終わる時期が近づいて来ました。新しいスタンダードの目指すコンセプトはありますか?
ベン氏: スタンダード環境の切り替わりは、2017年最初のエキスパンションのリリースからになります。「ハースストーン」全体としてのゴールは、新しい経験を生むことです。ゲームのメカニクスが変化することで好奇心が刺激される、というところが最大の魅力だと考えています。
それでコンセプトですが、現在重要視しているのは、各クラスの中でもユーザーごとに様々な楽しみ方がある、ということです。1つの方法に縛られず、ユーザー次第でいろいろな楽しみ方が生まれるようなものを方向性の1つとして考えています。
――クラスは現在9人いて、これは「World of Warcraft」での初期実装クラスに倣っていると思います。「WoW」ではさらに「モンク」と「デスナイト」が追加されていますが、「ハースストーン」にこの2クラスが入る予定はありますか?
ベン氏: 現在そのような計画はありません。どちらかというと現在は、既存の9つのクラスの特徴をいかに引き出していくかに注力しています。
――ランク戦のシステムについて、調整は考えていますか?
ベン氏: 具体的には把握していませんが、改善の余地はあると考えています。新しくランク戦に入ってきた人が、相手と力の差がありすぎるなどの問題がある状況ですので。
――スタンダード環境には「クラシック」のカードは必ず採用されますが、クラシックのカードが強すぎるために環境から外す、という可能性はあるのでしょうか?
ベン氏: これも具体的なプランはありませんが、スタンダード環境が毎年きちんと活性化するように調整していく必要はあると考えています。その中で、クラシックのカードが強すぎて新規参入しづらいというような問題は避けるべきです。
スタンダード環境の狙いは新しいものを生み出していくことにありますので、既存のクラシックカードには常に目を光らせて、新しいデッキの生まれ変わりの妨げになっていないかは見ていくことになります。
その場合カードの性能を下げる(ナーフ)か、環境から外すかの2つの方法がありますが、これは今後考える課題です。
――どんどん環境が変わっていくとその分複雑化してしまって、初心者が入りづらいことも懸念されます。そのフォローはどのように考えていますか?
ベン氏: それがスタンダード環境を導入した理由です。その環境で勝負するのに必要なカード所持数が、より現実的になります。さらに勝負には、戦略に関する知識ももちろん、試合のニュアンスや感覚なども重要です。ランク「レジェンド」への達成に必要なのは、所持しているカード数だけではないということです。
――これまでカードのデザインで、クレイジー過ぎてボツになったものはありますか?
ベン氏: たくさんあります。というのも、カードをデザインするときには「それまでの常識を覆す」という方針で考えていくからです。
具体例を挙げるとすると、3マナで1/1ですが、「ゲームに連敗すると+1/+1する」という能力を持ったミニオンがいました。連敗するほど、次の試合で強くなるという能力です。ほかには、「マウスオーバーするとダメージを受ける」というミニオンもいました。
――トーナメントシーンで注目しているデッキと、個人的に好んでいるデッキを教えてください。
ベン氏: 先程から話題に挙がっていますが、調整するかもしれないというところで、海賊デッキは注目しています。また個人的には、前半はリスクがありますが、後半に大逆転できるパラディンのコントロールデッキが好きです。
――ゲーム内で複数が参加できるトーナメントモードが実装される、またアリーナモードが他のプレーヤーと練習できるようになる可能性はありますか?
ベン氏: 両方ともとても良いアイデアだと思いますが……、それ以上は答えられません。
――ありがとうございました。