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【魂レビュー】「HI-METAL R VF-4 ライトニングIII」。変形させやすく、VF-1からの進化の考察も楽しい可変トイ最新作
2019年4月2日 12:00
【ライター:勝田哲也】
超合金と洋ゲーを愛するライター。筆者は連載前から「DX超合金 マクロス」シリーズを熱心に語っているが、それでも買い逃しを悔いる商品も多い。YF-27の一般機や、VF-171の一般機などは手に入れておくべきだったなあと今でも思っている。マクロスシリーズの新たな展開も期待したいところだ(絵:橘 梓乃)
筆者はBANDAI SPIRITSの「マクロス」シリーズ商品の「DX超合金」シリーズがお気に入りである。また、スケールの小さい「HI-METAL R」シリーズでも「マクロス」関連を集めている。今回取り上げたいのは、「HI-METAL R VF-4 ライトニングIII」だ。
「VF-4 ライトニングIII(以下、VF-4)」は、マクロスの可変戦闘機バルキリーの中でもマイナーな機体と言える。映像出展は1987年のOVA「超時空要塞マクロス Flash Back 2012」で登場したのみ。この時は飛行形態のみで、後にゲームに登場する際、3形態の変形した姿と、変形システムが公開された。トイとしては特にやまとが発売した完全変形モデルがファンの人気を集めたが、筆者は入手していない。今回が初めてのVF-4の立体物である。
このため、以前の商品と比較はできないが、「HI-METAL R VF-4 ライトニングIII」は遊びやくカッコイイとても楽しい商品だと感じた。デザイン的にも“VF-1の進化形”として楽しいアイディアが盛り込まれている。バルキリーはVF-1を基準として様々な進化をしている。VF-11やVF-19、VF-25などとはまた異なる方向性を感じた。今回はまずデザインの面白さ、そして変形システムで商品の魅力を語りたいと思う。
VF-1をどう進化させていくか、河森氏の試行錯誤が伝わるデザイン
VF-4は、「超時空要塞マクロス」のVF-1の後継機である。アニメ本編では、模型として原型機が登場、OVA「超時空要塞マクロス Flash Back 2012」で改めてデザインされたVF-4が登場している。この時は飛行形態のみの登場だったが、その後プレイステーション向けシューティング「マクロス デジタルミッション VF-X」にてガウォーク、バトロイド形態が公開され、以降は様々なゲームなどで登場している。
VF-4の最大の特徴は“三胴型”と呼ばれるフォルム。機首の後ろに大きな2つのエンジンブロックが付いているような形で、通常の航空機とは異なるユニークなフォルムとなっている。この機体構成は、SR-71:ブラックバードというアメリカの超音速爆撃機の影響を受けているという。三胴型の矢じりのようなシルエットからVF-4は「アロー」などとも呼ばれたという。
VF-4は他の可変戦闘機バルキリーシリーズ同様河森正治氏のデザインであり、VF-1の次にデザインされた機体だ。立体物を手にするとデザイン様々な想像がふくらむ。VF-4は強く“次世代の可変戦闘機”を意識していると感じる。三胴型のユニークなデザインでVF-1との違いを明確にし、VF-11やYF-19などに見られるカナードをつけているところが河森氏の好みを強く感じさせる。
VF-4は足のエンジンに重なるように大型のエンジンブロックが搭載されている。これはVF-1では外付けだったスーパーパーツを一体化したというデザインの意図を感じる。このエンジンによりVF-1では説得力が弱かった、ガウォークでの推進、バトロイドでの機動性が確保されているように思える。
固定武装の強化も強く感じるところだ。VF-1は機体そのものの武装はバトロイドでは頭部に取り付けられたレーザー機銃一門だったが、VF-4はエンジンブロック先端に大型のレーザー機銃を左右1門ずつ、さらに12発のミサイルが機体に埋め込むように搭載されている。ミサイルの内装方式はステルス性と共に“作画の軽減”も狙っているように見える。VF-1をデザインした上での“次なる可変戦闘機”を考えた様々なアイディアが盛り込まれていると感じる機体だ。
設定上は、VF-4は宇宙空間の機動性はVF-1を大きく凌駕する反面、大気圏内ではVF-1の方が優秀な場合もあり、大気圏内の活動に優れるVF-5000と併用する形で運用され、主に宇宙空間の戦闘の活用されたという。VF-1の様に様々な領域で活躍する“真の次世代機”はVF-11まで待たなければならない。この設定のため、VF-4は宇宙戦闘機のイメージが強い。
そして、変形のデザインとしてはエンジンブロック下部が足に、エンジンブロック前部が腕となる。胴体は折り曲げられ直立したときは地面とコクピットブロックが水平になる。胴体が折り曲げられる方式はこの後のYF-30やVF-31へのデザインの流れを感じさせる。
ガウォーク、バトロイドの大きな特徴は、エンジンブロックの下から伸びる腕の構造だろう。機体後部がそのまま残っているような構造は他のVFには見えないラインで、特に流線型の頭部は強い印象を残す。
このVF4の立体物である「HI-METAL R VF-4 ライトニングIII」はオリジナルギミックとしてVF-1のガンポッドを同梱、ガウォーク、バトロイド時に手で持てるだけでなく、ファイター形態でも接続パーツで機体の下に取り付けられる。「VF-4の初期生産型はVF-1と部品の共有が行なわれていた」という設定を思わせ、ニヤリとさせられる所だ。
「HI-METAL R VF-4 ライトニングIII」はバトロイド時の全高は約15cm。「DX超合金マクロス」シリーズと比べるとコンパクトだがディテール表現はしっかりしており、手に持って機体デザインの面白さをたっぷり楽しめる。金属パーツを使用し、ロック機構も活かした変形システムは、「DX超合金マクロス」シリーズからのフィードバックも感じさせられかなり満足の高い商品となった。次は細かく変形システムを紹介していこう。
シリーズを通じて練り上げられた完成度が実感できる変形システム
可変トイの最大の特徴である変形の流れを紹介していきたい。ファイター形態からガウォークへの変形はまず足ブロックの分離からスタートする。機体下部の足のカバーを外し、エンジンブロックから足を分離、膝部分のシャッターパーツを取り外して膝を伸ばし、つま先を引き出して足の形にする。
足の付け根や膝部分は金属部品が使われており、機構的にしっかりしている。金属パーツを使っているため力をかけても簡単には壊れないという安心感がある。感心したのがふくらはぎ部分を隠すシャッターパーツ。「DX超合金マクロス」シリーズのVF-19での機構を思わせる。
腕を引き出すところも構造的にシンプルでありながらしっかりしている。肘部分が数ミリ伸びるところや、肘の様々な角度に曲がる構造などこちらもシリーズのフィードバックを受けての設計だと感じだ。拳を引き出したところでガウォークへの変形完了となる。拳は差し替えで、ガンポッドが握れる大型のものにできる。平手パーツも用意されている。
VF-1がかなり薄いパーツで腕を吊り下げていたのに比べると、VF-4のガウォークはデザイン的によりしっかりしているように見える。股間のボールジョイントがバトロイド形態と同じように使えるので、足の自由度も高い。
次はガウォークからバトロイドの変形だ。ここからはより変形がダイナミックになる。まず機首を折り曲げる。そして機首下部についていたミサイルパーツを持ちあげる。子のミサイルパーツは変形時のロックの役割を果たしているのが楽しい。ロックを外すことで機体下部のプレートの自由度を上げ、中央の支柱パーツを引き出しながら機体上部を分離させていくのだ。
そして底面パーツを折りたたんでいく。VF-4はVF-31同様地面とコクピットブロックがが水平になる。ここに機体上部をかぶせていくのだ。機体上部をかぶせる際、首の基部ブロックを持ちあげる。カバーを開閉し部品を動かし、基部ブロックの位置を調整することで首がしっかりと前に出る。
背骨に当たる金属パーツの凹凸を折り曲げた機首ブロックの所に合わせることで固定、胸部分にもロック機構があり、慣れないとちょっと調整が難しいが、数回試すとコツがつかめてしっかりと固定できるようになる。胸パーツ、背中パーツを折り曲げることでバトロイド形態に変形完了となる。
「HI-METAL R VF-4 ライトニングIII」は、筆者のバルキリーコレクションにおいてかなり満足のいく商品だ。やはり変形システムの堅調さが良い、要所要所に金属パーツが使用されていて分割ポイントもわかりやすい、これまでの商品開発が活かされた完成度の高いアイテムだと感じた。
無い物ねだりをすれば、やはりもう少し腕が動いて欲しかった、というところだろうか。デザインそのもので、機体上部のパーツが厚く腕が持ちあげられない。せっかく手に機銃とミサイルがついているのに腕を高く上げた派手なポーズができないのは残念なところだ。とはいえ立ち姿は独特のカッコ良さもある。
個人的な希望としては、「HI-METAL R」シリーズの次なる展開は、VF-11を期待したい。本シリーズの前身である「VF-HIMETAL」ではVF-19が出ていた。こちらもブラッシュアップして販売して欲しいが、やはりVF-11の可変モデルを希望したい。今後のラインナップも期待したいところだ。
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