素晴らしきかな魂アイテム
【魂レビュー】サン・アタックや登場シーンも完全再現! 可動に特化した超合金の新たな可能性「超合金魂 GX-82 無敵鋼人ダイターン3 F.A.」
2019年3月26日 12:00
【ライター:池紀彦】
アクションフィギュアと洋ゲーとスマホゲー大好きライター。「テクテクテクテク」終わるのはちょっと早計だったと思う。今回は超合金魂を語るって事で合体変形の「超合金魂 GX-03 超電磁ロボ コン・バトラーV」も購入してみた。合体ギミックに惚れ惚れ。(絵:橘 梓乃)
“この日輪の輝きを恐れぬのならば、かかってこい! ”
“破嵐万丈”という、波乱万丈をもじったその名前が全てを表すような、豪快な主人公を中心に物語が展開する合体変形ロボットのアニメーションが「無敵鋼人ダイターン3」だ。日本サンライズ創設初期のオリジナル作品で、1978年放送のタイトルであり、あの富野由悠季監督が手掛けた事でも知られる、アクションとギャグの要素が強めのヒーローロボット物である。
主人公の破嵐万丈自身は2枚目半で大富豪というベタな設定で、そんな金持ちの青年とそれを支える謎の経歴を持つ執事、そして主人公のサポートとしてアシスタントの金髪美女が2人と少年トッポというメンバーで、人類の平和を守るために、メガノイドと呼ばれるサイボーグたちと戦う物語となる。
こうして部分的に設定だけ聞くと、アメコミのバットマンに酷似しているようにも感じるが、制作サイドは和製007を意識したとの事で、確かにアシスタントの金髪美女や破嵐万丈からはそんな印象を受ける。その他にも、オープニングでライトセーバーのようなビームサーベルで敵と戦うカットを見せるといった「スター・ウォーズ」の影響や、アメコミによく使われる効果音を書き文字で見せる演出などを見るに、アメコミや映画など、当時のアメリカの映像作品の流行を色々と模索して取り入れていたようにも感じられる。
とはいえ筆者がリアルタイムでTVを見ていたあの頃は、ただ純粋にトッポの立場を羨み、破嵐万丈のカッコよさに憧れる素直なスタンスで見ていた記憶がある。実際のところ、当時5歳の筆者が本放送で見たか、再放送だったかさえも記憶があやふやだが、「ダイターン3」の印象は、典型的なスーパーロボット物、正義のヒーローという憧れのイメージが強烈に残っている。
何より筆者の心に今なお残るのはその主題歌のインパクトだ。ロボットのカッコよさもさることながら、物静かなイントロから「1、2、3! 、ダイターンスリーィ! 」というセリフで始まる歌い出しは今なお衝撃的なカッコよさだ。歌自体も全体的にテンションの高い歌声で、当時のロボットヒーローの主題歌らしく、ひたすらにダイターン3のすごさを語りかける典型的なロボット物の主題歌でこちらのテンションも上がる。本編の決めゼリフ「ダイターン3!カムヒア」もうまく歌詞に練りこまれ、ぼんやりとした本編の記憶を、よりカッコよく鮮明な物に変えてしまう。やはりロボット物の主題歌はこうでなくては、という勢いに満ち溢れている。
筆者は本作の前身である、「無敵超人ザンボット3」も非常に大好きな作品だった。そして本作、「無敵鋼人ダイターン3」を経て、今なお新作が作られる「機動戦士ガンダム」へと繋がっていく当時のラインアップはどれも楽しく視聴していたよき思い出として印象に残っている。とはいえ「ザンボット3」と「ガンダム」が印象的なストーリーだったのに対して、「ダイターン3」のストーリーの印象がほとんどないのが不思議だった。そこで今回、記事を執筆するにあたって、「ダイターン3」本編を何本か見直してみる事にした。
視聴するにあたって、書籍を紐解いて設定などを調べてみると、テーマそのものは実はかなり奥が深い。火星開拓のために万丈の父の手により開発されたメガノイドというサイボーグたちが人類に敵対し、一大勢力となる。メガノイドたちは普通に暮らしていると人間と見分けがつかず、人間離れした能力を発揮する事でその正体が見えてくる。これらメガノイドを生み出した父を憎み、そしてメガノイド自身を憎む万丈は最終的にメガノイドたちをすべて滅ぼすことで物語は幕を閉じる。
ただ、実際に作品を見直してみると、万丈の過去にまつわる重いテーマのエピソードは一部のみで、その殆どが1話完結でシンプルな作りのコメディタッチのエピソードが多い。導入パートは非常にシンプルにまとめられ、前半のうちにダイターン3を呼び出し、ダイターン3が登場して巨大化したメガノイド「メガボーグ」との戦いが始まる。前後半ともに随所にギャグのエッセンスが盛り込まれ、富野監督自身がギャグを描くのに苦労したと語るほど、細かい喜劇的な要素が盛り込まれた作りに終始している。
この作りなら、確かにストーリーの印象はあまり残らず、破嵐万丈のアクションやキャラクター同士の絡みによるギャグ、そしてダイターン3の合体変形ロボットとしてのカッコよさが目立つ作りとなるため、これを子供の頃に見ていたら確かに憧れのヒーローとしての破嵐万丈以外は記憶に残らないだろうなと、その構成に改めて感心させられた。
ということで、今回は「超合金魂F.A.」シリーズの中から、筆者の心に残るただひたすらカッコよかったダイターン3のアクションを存分に再現できるという「超合金魂 GX-82 無敵鋼人ダイターン3 F.A.」を購入したので、是非紹介させてほしい。
フルアクションに特化し、低価格で手に入る超合金新シリーズ「超合金魂F.A.」
2018年8月より発売開始した「超合金魂F.A.」シリーズは、第1弾が「ボルテスV」、第2弾が「ダイターン3」、そして第3弾として「闘将ダイモス」が2019年1月に発売している。とにかく可動箇所を多く持たせ、テレビアニメのロボット本来の柔軟な可動を実現し、劇中でのポージングがあれこれ再現可能というのが特徴となる。
ラインアップから見てもわかる通り「超合金魂F.A.」ではいずれも合体/変形ロボが採用されているが、本シリーズでは、いずれも変形や合体のギミックは搭載していない。今回紹介するダイターン3もダイファイターやダイタンクには変形せず、常にダイターン3の状態のままだ。
というのも、これら合体/変形ロボはまず合体/変形ありきで作られてきた物ばかりのため、どうしても可動域に制約が生まれ、その結果として、合体/変形は楽しいが、普段飾りのポージングに物足りなさを感じてしまう物が多い印象だった。
今回、実際にその動きを見てみようと思い、ちょっと古めの製品となるが「超合金魂 GX-03 超電磁ロボ コン・バトラーV」を購入して動きを見てみた。こちらは2008年に再販されたが、元の商品は1999年に発売されたものである。確かに合体ギミックについてはアニメで見たままの通り忠実に再現されており、合体させている間はテンションが高まる。
合体後も、腕はかなりよく動くし、超電磁ヨーヨー、超電磁スピンといった特定の技や武器についてはそれなりに再現性が高い。一方で足回りの可動についてはかなり難があり、自立はできるものの、正直なところ自在にポージングがさせられるとは言えない。
同社の「超合金F.A.」のコンセプトによると、理想は合体/変形も可動も両立する事だが、可動域を十分に確保するのが物理的に不可能な場合もあれば、巨大になりすぎてしまう場合もあるため、これまでと明確にコンセプトを分けて、合体/変形のギミックの代わりに、ロボットとしての“可動”を最大限に楽しめるようにしたのだという。
さらに、大型化してしまった場合は高コストになってしまうというデメリットも生まれてしまうが、「超合金魂F.A.」シリーズでは低コスト、低価格というのも特徴の1つとなっており、定価で15,000円前後で購入できるのは、合体変形の超合金魂シリーズと比べると、オトク感が高い印象だ。
筆者がこのコンセプトに心惹かれたのは、コスパの高さも大きいが、やはりアニメ内の動きを再現できるというところだろう。やはり可動中心のシリーズはどれもテンションが上がる。超合金魂でも可動が低価格で楽しめるというコンセプトは大歓迎したい。
また「超合金魂F.A.」シリーズのもう1つの特徴としてはロボットのデザインが、かなりスタイリッシュに仕上がっている事だ。コンセプトアーティストに大張正己氏を起用している事もあり、腰回りが引き締まり、顔のサイズも小さく、かなりスマートになった印象を受ける。本製品も、当時のアニメのデザインより額の日輪のマークが小さめになっていたり、胸部がコンパクトになっているなど、オリジナルの雰囲気をそのままに、現在の流行りをうまく取り入れた作りに仕上がっている。
「サン・アタック」も額を指さす決めポーズも自由自在
「超合金魂F.A.」シリーズは箱のサイズがかなり大きめだが、厚さは控えめだ。今回購入したダイターン3も同様で、本体を引っ張り出した時の第1印象は、正直なところ割と小ぶりに感じた。だがその見た目のサイズ感とは裏腹に手に持つとずっしりと伝わってくる重厚感。指に触れる金属の質感も相まって、この重みと手触りこそ超合金と改めて超合金の魅力を再認識できた。
実際にポージングをあれこれ試してみる。試してみて改めて驚愕したのは上半身のスリムなボディラインと通常のロボットではありえない広範囲の可動域だ。胸部と腰まわりの部分がそれぞれ文字通り“大胆”に開く作りになっており、かなりダイナミックなポーズが取れるようになっている。それでいて顔や胸部のサイズがあまり大きすぎないようになっており、トータルのスタイルの良さが改めて実感できる。
また、肩関節についても腕の付け根部分が前を向くようなギミックが仕込まれており、通常の可動関節ではありえないところまで腕が前面を向くようになっているため、このギミックによりダイターン3の必殺技「サン・アタック」のポーズや額の太陽マークを指差す仕草など、アニメではお馴染みの決めポーズがバッチリ決められるようになっている。
下半身についても、足首や膝周りはかなり柔軟で、安定した自立が行なえる。股関節の動きは左右への開きがかなり柔軟になっているほか、太ももの部分が回転するため、これを活かすことで歌舞伎役者が見栄を切るようなポージングが取れるなど、太めの足を活かしたポージングが取れるようになっている。前後の可動についても超合金とは思えないほどの可動を再現しており、蹴りなどのポーズまでもが再現できるようになっているのが驚きだ。
いずれも関節可動の重要な部分には、いずれも金属製の部品が使用されているため、購入した直後は若干固めに感じる事もあるが、ここに金属部品を使われると遊び倒しても壊れにくそうという安心感があってうれしいポイントだ。
豊富な武器セットが付属、可動で遊び倒せる超合金
武器については、劇中に登場した中でも登場シーンの多かった代表的な武器が3種類付属している。最も多く使用された、ダイターン3を象徴する武器ともいえる槍の「ダイターン・ジャベリン」は残念ながら柄の部分の伸縮ギミックはなく、伸びた状態の物を用意。先端部の開閉などギミック類を省略した代わりに扱いやすくなっている。
劇中では敵のビーム攻撃をかわしたり、多様な使われ方をした扇の「ダイターン・ファン」も開閉ギミックはなく、開いた状態と閉じた状態の物がそれぞれ2個ずつ付属する。2つのファンの柄の部分は結合可能なので、両手にファンを持った状態などが再現できる。ダイターン3ではジャベリンが主流のため、利用頻度が比較的低めだった「ダイターン・ザンバー」は2本付属し、両手に構えさせる事も可能だ。
「超合金魂 GX-82 無敵鋼人ダイターン3 F.A.」に一通り触れることで、「超合金魂F.A.」シリーズの新たな可能性が感じられた。合体/変形ギミックを省略するという大胆な割り切りで、可動アクションフィギュアのようにスタイリッシュな超合金を低コストで、というのは筆者のようなアクションフィギュア大好き勢からすると大歓迎の方向性だからだ。
一方で、関節可動に特化した超合金は昔から発売していたため、同社の方向性としても「超合金F.A.」シリーズの誕生はむしろ必然だったとしている。以前は合体変形可能な「DX超合金」と、可動に特化した廉価版としての「超合金(=スタンダード版)」だったものが、「超合金F.A.」シリーズでは可動だけでなく、バランスのよいスタイリッシュなボディを再現するという、単なる廉価版にとどまらない新たな魅力が加わっていると感じている。
今回の「超合金F.A.」シリーズのコンセプトアートには発売済みの3体以外に「コンバトラーV」と「ザンボット3」も描かれている。これらも引き続き製品化される事になると思うが、この5体にとどまらず、今後もシリーズを継続して続けていってほしいと切に願う。
(C)創通・サンライズ