素晴らしきかな魂アイテム
【魂レビュー】これぞ決定版! 遊びやすい変形と、大スケールのディテール表現、「DX超合金 VF-1J バルキリー(一条輝機)」
2019年1月15日 12:00
【ライター:勝田哲也】
超合金と洋ゲーを愛するライター。「DX超合金 マクロス」シリーズは個人的に強い想い入れがああって、集めており、今後もどんな商品が出るか楽しみにしている。「Sv-262H ドラケンIII」の一般機なども出て欲しい!(絵:橘 梓乃)
2018年7月のインタビュー以来、待ちに待った「DX超合金 初回限定版 VF-1J バルキリー 一条輝機(以下、「DX超合金 VF-1J」)」がついに発売された。本商品は、これまでの「DX超合金 マクロス」シリーズの1つであるが、その“原初”たる、最初の可変戦闘機「VF-1」への挑戦、これまでになかった1/48スケール相当での表現と、新しい取り組みを行なっている。
実際に手にしてみると、やはり、細部をチェックする楽しさ、練り込まれた変形シークエンス、随所に感じられる開発者の想い、改めて感じるVF-1の格好良さなど、触ってみて改めて喜びがこみ上げてきた。
変形の手順や開発者のこだわりなどはインタビューで紹介をしているが、本稿では実際に商品を手にした感触、感じられる楽しさ、実際に手にしたからこそ得られる気持ちなどを語っていきたいと思う。
実在の戦闘機のシルエットを感じさせる、VF-1ならではのファイター形態
「VF-1バルキリー」は、アニメ「超時空要塞マクロス」の主役メカで、飛行機形態の「ファイター」、ロボット形態の「バトロイド」、そして中間形態と言える飛行機にて脚が生えた「ガウォーク」の3段変形ができる“可変戦闘機”だ。
設定的にVF-1は、後にマクロスと呼ばれる異星人の巨大戦艦が地球に落下し、それによりもたらされた超技術によって現行兵器を遙かに超える技術を獲得した人類が、宇宙船から計算される宇宙人、身長約10mの巨人と格闘ができるように人型への変形能力が与えられた戦闘機である。その後可変戦闘機はマクロス世界を代表する兵器となり、時代が進むごとに様々な可変戦闘機が生まれ、通称の“バルキリー”も引き継がれていく。
アニメファン、ロボットファンにとってVF-1は衝撃だった。それまでロボットの変形の多くが、手足を揃えて直立姿勢になり小さな翼が出るようなものだったが、複雑な変形により、より説得力のある「いかにも飛びそうな飛行機」に変形するのだ。そして当時のタカトクトイスが発売した変形玩具はこの変形をかなり忠実に再現、後のアニメロボット、玩具へ強い影響を及ぼす。VF-1は、「エポックメイキングな存在」なのである。
「DX超合金 VF-1J」は、そのタカトクトイスの玩具のコンセプト、「本物志向でありながら、構造的に強く、遊びやすい変形玩具」を目指し、そして「VF-1商品の決定版」となるべく生まれた商品だ。アニメ放映から36年を経て、これまでの様々なアプローチの集大成と言える商品が発売されたのだ。その人気は凄まじく、かなり多めの出荷があったにもかかわらず、店頭に置かれてもすぐに売り切れてしまうほどで、改めてユーザーの人気を実感した。
早速商品を見ていこう。VF-1のファイター形態は、米海軍が使用していたF-14に似た可変翼の戦闘機となる。「DX超合金 VF-1J」の最大の特徴は“大きさ”である。VF-1は設定上の全長は14mほど。実在の戦闘機のF-14は19m弱と一回り以上も大きい。F-16は15m、F-35は16m弱と、比べると現用戦闘機でも小型の部類と言える。その機体を1/48スケール相当、約30cmの大きなサイズで立体化している。
この大きさは、実はこれまでの「DX超合金 マクロス」の1/60スケール相当の商品に近いサイズである。今回は作中の最新鋭機であるVF-31と並べてみたのだが、商品としての全長はそれほど変わらない。ちなみにVF-31の設定上の全長は19.31mという大型の戦闘機だ。2つの商品は縮尺が大きく異なる。並べると「DX超合金 VF-1J」のパーツの大きさが実感できる。1/48相当のスケールだからこそ、VF-1の詳細なデザインが楽しめるのである。
細かく筋彫りされたパネルライン、詳細なマーキング、エンジンの吸気口……。VF-1はその後の可変戦闘機と比べるとシンプルなデザインだが、目を近づけるとその緻密な情報量に圧倒されてしまう。角度を変えてずっと眺めていたくなる。「NO STEP(乗るな)」の注意書きがちゃんと読めるのが楽しい。他にも判別可能な注意書きは多く、実在の戦闘機としての“雰囲気”に強く貢献している。
着陸脚の後輪部分がハの字型になっていたり、メインエンジンの噴射口部分の処理、頭部の機体への収納など随所のこだわりが楽しい。コクピットはアニメ版に忠実な、股の間に操縦桿があるタイプになっているのもきちんと確認できる。VF-1は劇場版「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」では随所にリファインが行なわれ、コクピットのデザインも変わり、操縦桿は右側面になっているのである。VF-1にこだわりを持っている人ほど、チェックするのが楽しくなってしまうだろう。
VF-1の特にファイター形態には、やはり実在の戦闘機に通じるデザインの味がある。36年前に生まれたアニメロボットが、ここまで精密さを感じさせる商品として表現されていることにやはり感動がある。「なんだかスゴイ時代だ」と改めで現在を実感できる。手に持って眺めていると、「DX超合金 VF-1J」が人気を集めていることを、なんとなく納得してしまうのである。
しっかりとしたバランスがうれしい、ガウォーク形態
それではバルキリー玩具ならではの遊び方、変形をしていこう。VF-1はエポックメイキングな存在だけに過去に様々な商品が存在しており、本商品は「変形させやすさ、構造上の強度」に注意が払われている。変形は複雑ではあるが、練り込まれており、各部品の素材にまで注意が払われている。
ファイター形態から、“中間形態”とも呼ばれるガウォーク形態へ変形させていく。まず足部分のロックを外し、折り曲げる。この時膝部分は大きく引き出すことができ、鳥脚のような逆関節状に曲げることができる。足だけを出し手などはファイター形態そのまま、という変形も劇中で大きく見られた。VF-1をはじめとした可変戦闘機は、エンジンブロックを動かすことで、垂直離着陸が可能となる。
腕部分は基部が大きくスライドし、1度1番後ろまで下げてから左右に展開する。基部の蝶番部分のパーツはかなり強度が必要な上、本体とこすれる部分であるため、「DX超合金 VF-1J」では耐久性の高い軟質パーツが使われている。この基部パーツは展開した後再び最前部までスライドし、胸部パーツにロックさせる実際の兵器だったら構造的にかなり無理があるが、この機構により、バランスの良いガウォーク形態が実現できているのだ。
垂直尾翼を折りたたみ、ランドセル部分を機体に重ねる。ガウォーク形態ではこのバックパックからランドセルが伸びる。これまでの商品では省略されることが多い部分だが、「DX超合金 VF-1J」ではアンテナパーツを差し込むことでランドセルからアンテナが伸びる様を再現可能だ。
翼の角度などを調整することでガウォーク形態の完成となる。筆者は「DX超合金 マクロス」シリーズのガウォーク形態が好きだ。各部が展開しながらも飛行機としてのシルエットも保っていて、各パーツの収まりがしっかりしている感じがある。飛行機ともロボットとも違い、特にスーパーパーツをつけていると、高速移動しながら武装を一斉発射できそうで想像力が刺激される。
「DX超合金 VF-1J」はスーパーパーツはもちろん、ミサイルも別売だが、ガンポッドをしっかりと構えられる。本商品ではアンテナ同様、立体化では省略されることの多い「ガンポッドのベルト」も立体化している。歩兵が長時間銃を携帯するときや、行軍するときに必要となるベルトだが、このベルトを着けたガンポッドは独特の味がある。またガンポッドそのものの大きさも、機体に比べると大きめで、ここも好感触だ。
「DX超合金 VF-1J」は3形態全てのプロポーションに力を入れているという。ガウォーク形態もとてもしっかりしたバランスだ。膝関節に回転軸があるので、足もハの字に開き、しっかりと地面に接地できる。見ていてカッコ良く、充実感がある。
ディテールアップパーツでさらにマッシブに! バトロイド形態
次はバトロイドだ。ここからはより大胆にパーツが移動する。バトロイドの変形にはいくつかポイントがあるが、1つの大きなポイントは、足ブロックの移動だろう。バトロイドの変形時、2つの足は付け根から外れ、背中の1本のアームで移動する。この移動は非常にダイナミックだ。
この変形時、足ブロックを繋ぐ軸から、足の基部を回転させるのだが、これが固い。股の付け根は金属のボールジョイントで接続されているのだが、この構造は、「DX超合金 マクロス」シリーズでは様々な商品で使用されている方式だ。この接続は重い足ブロックをしっかり支え、かつ任意の角度で固定してくれるのだが、固い場合が多く、動かすと細い金属部分が折れてしまわないか心配になる。
強度もきちんと計算されていると思うのだが、強引に動かすのは怖い。足の軸を回転させるのは説明書の通りに足部分だけでやるのではなく、一端機体に接続してから動かした方がの方が安定度が増すかな、とも感じた。
足を一端機体から離したら、上半身を変形させる。コクピットや機体の上部部分を折りたたみ、機体下に収納されていた頭を引き出す。そして胸パーツをスライドさせ、機首パーツなどを動かして、ロボットの上半身に組み上げていく。この時感心させられるのはキャノピーを覆う装甲板が胸から引き出され、しっかりとコクピットを保護するところ。
VF-1のスケールの小さな立体物である「Hi-METAL R VF-1」では差し替えパーツを使わなくては表現できなかった機構を、「DX超合金 VF-1J」ではきちんと部品の可動で実現している。この構造も1/48相当の大きさあってだと思う。
上半身の変形を進めたところでアームを動かし、足の基部を機首部分に接続する。この足の移動はこれまでの立体化でも様々な方法がとられているが、「DX超合金 VF-1J」は機首部分のカバーが開き足の軸が収納されるという形になっている。アームを繋げたままでも、アームを取り外し、機首にしっかりと足を固定することも可能。アームを外すことで腰を回転させられるところが大きな利点だ。
バトロイドへの変形でポイントとなるのが胸パーツと背中パーツを接続するアーム部分。このアームは結構複雑に折りたたまれており、展開して接続パーツになるのだが、取り外したアームをしっかり固定したり、折りたたまれることで変形時、他の部品との接触しないようになっていたり、設計の見事さが感じられる構造となっている。
そしてVF-1のデザイン上の話ではあるのだが、バトロイド形態では背中と胸パーツの隙間が大きく開く。差し替えパーツを使用しない「完全変形」を重視するならこの隙間は“リアル”なのだが、「DX超合金 VF-1J」は隙間を埋めるディテールアップパーツが用意されており、これをつけるとやはり見栄えが増す。筆者は触る前は「隙間埋めパーツは、ない方が説得力あるよなあ」と思っていたのだが、つけるとやっぱりカッコイイ。バトロイドで飾っておくなら、やはりこのパーツは必要だな、と感じた。
「DX超合金 VF-1J」はボリュームが魅力的だ。手にしたときしっかり感じられる満足感、様々に角度を変えて眺める事で驚かされるディテール表現の密度……「良いアイテムを手に入れたな」という充実感がこみ上げる。VF-1という「マクロス」の原初であるこの機体への思い入れが深くなる。この機体が好きだ、という人にはたまらないアイテムだと思う。
ファンにとっては今後のバリエーション展開も気になるところだろう。特に人気の高い「VF-1S ロイ・フォッカー・スペシャル」は何としても出て欲しい、という声は大きい。筆者は個人的に、量産機のVF-1Aが欲しい。そして先日ミサイルパーツの受注が始まったが、スーパーパーツ、そしてアーマードバルキリーにも期待したい。
一方で、かなりの出荷が行なわれたにもかかわらず、買い占められ、高値で取引されている現状はやはり1ユーザーとしてどうにもやるせない気持ちがある。今回は「初回限定」の台座という特典があったが、この台座抜きの再販をすることで、本商品を欲しいと思う人が手に入れやすい環境が生まれて欲しい(再販よりもロイ・フォッカーを、という声があるかもしれないが)。ともかく、これだけの高いクオリティの商品が生まれたことは開発者に感謝したい。そして、今後の展開も注目していきたいところだ。
(C) 1982 ビックウエスト