素晴らしきかな魂アイテム
【魂インタビュー】白黒アニメ版主題歌と共に鉄人を動かす楽しさ! 「超合金魂 GX-24R 鉄人28号 『鉄人28号』(1963) 楽曲搭載バージョン」
2018年11月27日 12:00
BANDAI SPIRITSの岡崎聖氏は“熱い魂”を持っている企画担当者である。今回話を聞いたのは11月23日に発売されたばかりの「超合金魂 GX-24R 鉄人28号 『鉄人28号』(1963) 楽曲搭載バージョン(以下、「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」)」だ。
「超合金魂 GX-24 鉄人28号」、元々は2004年に放映されたTVアニメ「鉄人28号」に合わせ、2004年に発売されたものだ。2004年のアニメは監督を今川泰宏氏が務め、原作者横山光輝氏が「鉄人28号」の原作漫画を描いていた昭和30年代(1955年から1964年))を舞台に、原作漫画や1963年の白黒TVアニメそのままの質感の鉄人を活躍させる、異色のアニメだった。
今回の「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」は、まさにその頃の時代をモチーフに、漫画のカラー原稿に描かれていた鉄人の質感を塗装で実現、1963年のアニメの楽曲を取り入れた商品となっている。
……正直、原作漫画や白黒アニメの時代は、オッサンである筆者ですら生まれる前の話であり、GAME Watch読者にとっても縁遠い部分があると思う。しかし、「超合金魂 GX-24R 鉄人28号 『鉄人28号』(1963) 楽曲搭載バージョン」はとても魅力的で、世代を超えた“おもちゃ”アクションフィギュアとしての楽しさがある。
そして、熱を持って想いを語る岡崎氏の話は面白く、ぐいぐいと引き込まれ、なにより商品を手にする岡崎氏が提示する、“おもちゃの遊び方”に強く共感させられた。今回は商品の特徴に加え、「楽曲があるからこそ伝わる想い」、50歳代のユーザーへ訴えかける「今だからこそできるハイクオリティの思い出装置」といった岡崎氏が本商品へ込めた企画者としてのエネルギーも紹介していきたい。
音声ギミックにより、新しい遊び方を提示する「楽曲搭載バージョン」
「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」は、原作漫画及び1963年に放映されたTVアニメ版の鉄人28号をモチーフとしたアクションフィギュアだ。
「鉄人28号」そのものを知らない人のために説明を入れておこう。鉄人28号とは、第2次大戦中日本軍が極秘裏に進めていたロボット兵の最新モデルだが、この計画を察知した米軍により開発工場を破壊され、歴史の闇に葬られてしまう。しかし謎の男により鉄人が復活、少年探偵・金田正太郎と彼をバックアップする警察庁の大塚署長、そして鉄人計画に関わった敷島博士は鉄人復活の謎を探っていく……。
原作漫画の初期では“鉄人28号の争奪戦”が大きな要素となっている。鉄人28号は非常に強力な存在であるが、リモコン(操縦機)によって操られるロボットで、悪の手にリモコンが渡ってしまうと恐ろしい敵になってしまう。一方、正太郎が操れば心強い味方になる。漫画後半や、アニメでは「正太郎と共に戦う正義のロボット」というイメージが強くなり、多くの子供達がリモコンを持ち、鉄人と共に悪の怪ロボットと戦う自分の姿を夢想した。鉄人28号は“人が操縦し戦う巨大ロボット”の元祖と言える存在であり、様々なリメイク作品も生まれている。
「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」は、商品としては2004年に発売された「超合金魂 GX-24 鉄人28号」のリメイク商品となる。丸い胴体に細い手足、鉄兜のような頭部、とがった鼻に丸い目と、原作漫画そのままの姿を再現。外装のほとんどがダイキャストで手に持つとずっしりと重い。股関節に引き出し関節を使っており、デザインを保ったまま、様々なポーズが楽しめる。
本商品の大きな特徴は「発光ギミック」。その丸い胴体に発光装置を内蔵しており、スイッチを入れると黄色に目が光り、付属のリモコンを近づけると暴走状態の赤い目に変わる。今川監督版の「鉄人28号」ではコントロールされている状態と、そうでない状態での目の色の変化が強調されており、主題歌のフレーズ「敵に渡すな大事なリモコン」を実感できる商品となっていた。
「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」の最大の特徴は、この発光ギミックに、「サウンドギミック」を追加したことだ。14年の技術の進化は、鉄人のボディの容積に、発光ギミックだけでなく、音声ギミックの搭載も可能にしたのである。音声ギミックは鉄人の“胸”と“お腹”で切り替えることができる。
まずスイッチを入れると鉄人の目が黄色く光る。この状態で胸にリモコンを近づけると番組主題歌「鉄人28号」の楽曲が流れる。この楽曲は2番、そして番組終了時のスポンサーのジングルまで入っている、当時のファンがグッとくる非常にリッチな内容だ。
岡崎氏が提唱する本商品の遊び方はここからだ。主題歌を聞き気分を高揚させながら、リモコンをお腹に近づける。すると鉄人の目が赤く変わり、「ガオ!」と吠えるのだ。「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」では赤い目は暴走状態という解釈ではなく、正太郎が命令したときや、攻撃などに転じるとき、鉄人が吠える「ガオ!」の時の“表情”なのである。今回はその場で映像も撮ったので、岡崎氏自身の言葉で本商品の音声、発光ギミックを見ていただきたい。
収録楽曲は2曲で2曲目は「正太郎マーチ」。この曲も2004年版アニメ「鉄人28号」に使われていたが、2004年版と違いボーカルはなく、音楽のみ。この曲は1963年版では劇中曲や次回予告のバックに使われていたとのことだ。音声ギミックを追加しリニューアルした「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」。次の章では岡崎氏のこの商品への思い入れをたっぷり語ってもらおう。
当時のファンにもこの商品の魅力を届けたい! ハイクオリティの“思い出装置”
「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」は、商品の素材や構造は2004年版と全く同じ物なのだが、大きく違うのが塗り(塗装)なんだと岡崎氏は語った。塗装は2005年に発売された「超合金魂 GX-24M 鉄人28号(ブルーメタリックバージョン)」に近いのだが、装甲のフチや、関節周辺に黒いグラデーション塗装が施されている。
これにより、原作者である横山光輝氏のカラー原稿、コミックスの表紙の鉄人の雰囲気に近いものになっている。筆者は実は「超合金魂 GX-24M 鉄人28号(ブルーメタリックバージョン)」を持っているのだが、商品を前にすると塗装が全然違うと感じた。「超合金魂 GX-24M 鉄人28号(ブルーメタリックバージョン)」は当時は“原作漫画風”というアピールだったが、「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」はコミックスの中から出てきたような、よりカラー原稿に近い塗装になっている。
「もちろん横山先生のカラー原稿も色々な色があり、アニメ版は白黒なので鉄人の色の解釈は厳密には決まっていないところもあります。僕も結構この色にたどり着くのには悩みました。過去の「鉄人」の商品や企画ブレーンの方達とも相談して、その上で当時この商品を買って下さった方にも“今回はまた違うぞ”と思っていただけるような色を目指しました」と、岡崎氏は語った。神戸市には“実物大”の「鉄人28号」の像があり、こちらも原作に近い色として最近青い塗装に変わったのだが、岡崎氏はこの立像も見に行って参考にしたとのことだ。
そして音声ギミックである。まず、元々の「超合金魂 GX-24 鉄人28号」は目が光るギミックのみだった。ここに音声ギミックを仕込めたのは、胴体が丸くて大きい鉄人だからこそできた。そして音声ユニット、発光ユニットが小さくなったからこそ実現できたギミックである。
楽曲、音声もまたこだわっている。主題歌「鉄人28号」、BGM「正太郎マーチ」は当時TVの音声として使われていた物をそのまま収録、「ガオ!」という叫び声もTVで使われていたものを使っている。主題歌は男性4人のボーカルグループ「デューク・エイセス」が歌うものだが、レコード版など様々なバリエーションがあり、その中であえてTV版を使っているとのこと。TVで使われていたフルコーラス版で、2番、そしてオープニング終了時のスポンサーのジングルまで収録されている。「これは僕のこだわりなんですよ」と岡崎氏は語った。
「正太郎マーチ」は、次回予告や、番組の前の「今回の鉄人は……」というコーナーのBGMで使われた。また、鉄人が活躍するときなど、BGMとしても頻繁に使われた。当時のアニメは番組内で使用する楽曲はそれほど多くなく、「正太郎マーチ」、主題歌も様々な場面で使われたという。
岡崎氏はアニメ放送の1年後に生まれた。もちろん本放送を見た記憶はないが、その後「鉄人28号」は人気アニメとして繰り返し再放送される中、岡崎氏の心にしっかりと刻み込まれていく。岡崎氏は後にバンダイに入社するが、その原動力はキャラクターへの愛情、強い想いである。その中で岡崎氏は、キャラクターやヒーローの“戦闘シーンの楽曲”を常に覚えていく。アニメ「鉄人28号」で覚えた楽曲がこの2曲であり、岡崎氏にとって最初に覚えた曲であり、心の奥底に刻まれた曲とのことだ。
「正太郎マーチは、鉄人が活躍する曲なんです。だからこそ、音を鳴らしながらね、こう遊ぶのが楽しいんですよ」と岡崎氏はニコニコと笑みを浮かべて鉄人の手足を動かす。それは“おもちゃで遊ぶ人”というテーマの絵を見ているようで、こちらもうれしくなってくる。玩具、模型、ホビー、アクションフィギュア……様々な呼び方があるが、手に持った商品を媒介に、自由にキャラクターを空想する経験を持つ人なら心の底から共感できる姿だ。岡崎氏がユーザーへ提示する商品のテーマは、鉄人を遊ぶ岡崎氏自身の姿に集約していると感じさせられた。
「僕でさえ鉄人は幼稚園の時の再放送です。この商品の本当のストライクゾーンは僕よりもさらに上、60代の人でも喜んでくれると思います。おもちゃは世代を超えた楽しさがありますが、子供の頃の楽しさ、憧れは特別なものがある。この年になると若い頃の記憶は特別で、子供の頃の記憶は、この年になると、何もかもが美しい(笑)。だからこそ年配の方にこの玩具の魅力を届けたい。それは難しいですが、何とかこの商品の存在を知ってもらいたいですね」と岡崎氏は語った。
その岡崎氏がこだわり、当時のファンがグッとくる音声を追加することとなった「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」だが、あえて商品の金型は以前のままであり、音を出すためのスピーカー穴を開けていない。「ダイキャストの外装を持つ鉄人だからこそ、穴は開けたくない」、そういう岡崎氏のこだわりで、音を外に出すための穴を開けずにどこまで音が聞こえるか、それを検証しながら進めていったという。
結果、関節の付け根など様々な隙間から音が漏れ聞こえることがわかった。そしてこの漏れ聞こえる「音質の悪いこもった音」だからこそ、ラジオや、当時のテレビの音の感じが出たのである。「当時の『鉄人』の曲が、このこもった、アナログ風の音で聞こえる。この雰囲気はね、僕より年配のお客様にとっては、当時を思い出して涙が出ちゃうんじゃないかな、と思うんですよ」と岡崎氏は語った。
手に持って遊ぶ、岡崎氏が提示する魅力的な“おもちゃ”の世界
岡崎氏は「SDガンダム」の担当者としてファンにも知られている。先日の「TAMASHII NATION 2018」では「アイアンリーガー」の試作品を出しファンを喜ばせたり、「機動武闘伝Gガンダム」などかつて担当していたノウハウを活かし、当時子供達だったファンへ向けて、新製品を生み出し続けている。
そしてもう1つ岡崎氏が担当しているのが50歳代前後をメインターゲットにした、“大人向け”のさらに高い年齢層向けの商品だ。「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」だけでなく、先日ホビーショーで大きくアピールしていた「超合金魂 GX-86 宇宙戦艦ヤマト2202」もこの50代のユーザーがメインターゲットとなった商品と言える。
こちらもやはり楽曲にこだわった商品だ。「『宇宙戦艦ヤマト2202』だから、『宇宙戦艦ヤマト2199』とはやっぱり音楽が違うわけです。こちらも戦闘シーン、ピンチシーンの曲が良い。『2202』だからこそ使うべき曲があるんです。その想いを込めています」。このヤマトの開発にあたり、“商品本体から音楽が鳴る”というギミックの実感が、「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」など様々な商品の仕様に影響しているという。
そして、今回の「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」と共有する、ギミック、楽曲の面白さと共通するコンセプトでまとめられていたのが、ホビーショーでの「超合金魂 GX-86 宇宙戦艦ヤマト2202」の出展だ。ここではサウンド、可動など、岡崎氏のこだわりを流通業者や、会場を訪れた人にアピールしていた。「この“おもちゃ”をどう遊ぶか」、それを大きなリモコンで説明し、実際に商品が動く姿を見せる会場の展示は、岡崎氏のユーザーへの想いが端的に表れていると感じた。
もう1つ、「魂ネイションズの歩み」というのも、今回の商品には託されていると岡崎氏は語った。同じようにリニューアル商品として岡崎氏は、「超合金魂 GX-60R 宇宙大帝ゴッドシグマ(リニューアルバージョン)」も手がけている。「超合金魂 GX-24 鉄人28号」もそうだったが、10年前でも魂ネイションズは現在でも通じる魅力的な商品が出していた。岡崎氏はそれらの商品を、現代のユーザーに届け、かつて商品を買ったユーザーでも欲しくなってしまうような、魅力的な追加要素を加えてリニューアルをしていくという。
様々な商品を手がけていく中で、今回のように、岡崎氏個人の思い入れのあるキャラクター達の商品も作っていきたいのだという。「中高生で楽しかったコンテンツって、自分達が“中高年”になっても楽しい。しかも年を取ると、当時のコンテンツに“愛おしさ”を感じるんです。これは40歳代後半からの方には特に共感していただけると思うんです。だからこそ、僕の中の愛おしさを感じるキャラクターの商品を手がけていきたいですね」と岡崎氏は語った。今回はもちろん話せないが、岡崎氏が持つ想いは今後の様々な商品を手がけていくとのことだ。
岡崎氏は読者へのメッセージとして「鉄人が好きな方には、絶対グッとくる商品です。スイッチを入れずに、リモコンを近づけるだけで音を出せるというギミックも、今まであまりなかったと思うんです。いいものに仕上げました。ぜひ手に取っていただけるとありがたいです」と語りかけた。
筆者自身は石ノ森章太郎氏や永井豪氏の漫画など自身が物心つく前のヒーロー漫画が好きで、横山光輝氏の漫画も「マーズ」をきっかけにハマった。今川泰宏氏のOVA版「ジャイアントロボ」、「鉄人28号」もあって、原作版「鉄人28号」も好きだ。筆者にとって「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」はそのカラーリングが強い魅力だと感じた。
そして何より楽曲をならし、両手で鉄人を動かし、曲の良いところで「ガオ!」と叫ばせる岡崎氏の“遊び方”はやはり見ていてとても共感できる。昨今のアクションフィギュアはポーズをつけて飾り、様々な角度で眺めるのが“遊び”の主流であると思うが、ガチャガチャ動かすちょっと懐かしさを感じる遊びもまた魅力的だと感じた。そういった意味で、「超合金魂 鉄人28号 楽曲搭載バージョン」は、とても「超合金」らしい商品と言えるのではないだろうか。
(C)光プロダクション
※写真はフラッシュで撮影を行なっているため、各部の彩色などが実際の商品と異なります。