素晴らしきかな魂アイテム
【魂レビュー】原作を超えたアニメ場面を作り出す喜び。 「ROBOT魂 量産型ゲルググ&C型装備 ver. A.N.I.M.E.」
2018年11月20日 12:00
【ライター:勝田哲也】
超合金と洋ゲーを愛するライター。仕事の合間に「レッドデッドリデンプション 2」の狩りにひたすらハマり、バッグをついにコンプリート。今回の撮影でライトが「DX超合金 VF-25F リニューアルVer」に当たってしまい、機首部分のジョイントを壊してしまった。筆者の宝物であり、サポートに連絡しているのだが……できれば直って欲しい(絵:橘 梓乃)
「ゲルググ」は、アニメ「機動戦士ガンダム」において、“遅すぎた傑作機”と言われているMS(モビルスーツ)である。ガンダムの強さを象徴する武器ビーム・ライフルを携行し、カタログスペックではガンダムさえも上回る。しかし実戦に投入されたのは一年戦争末期であり、パイロットも学徒兵中心だったために戦場では大きく活躍しなかったと言われている。
「ROBOT魂 <SIDE MS> MS-14A 量産型ゲルググ&C型装備 ver. A.N.I.M.E.」は、量産型ゲルググと、C型装備、通称「ゲルググキャノン」を組み替えで再現できるアクションフィギュアだ。「シャア専用ゲルググ」は一般販売が行なわれたが、本商品はプレミアムバンダイ専売となった。本商品は3月の発売だったが、紹介する機会を逸してしまっていたので、今回取り上げておきたい。店頭では「シャア専用ゲルググ ver. A.N.I.M.E.」が入手可能であり、こちらの参考にもして欲しい。
筆者は様々なレビューで言及しているが“一般機”が大好きである。ゲルググの量産型は原作での活躍シーンがあまりないが、「ガンダムに匹敵する高性能量産機」という設定はロマンをかき立てるものがある。しかもゲルググキャノンも再現可能という、“お得感”が購入の決定となった。レビューでは本商品の魅力に迫っていきたい。
ビーム・ライフル、ナギナタ、シールド、これこそがゲルググだ!
量産型ゲルググは、他の量産型MSと比べて極端に活躍の場が少ない。まず、“量産型の敵”という新しい概念をロボット史にもたらし、番組前半ではほぼ唯一と言っていい“敵のMS”として登場したザクは別格だが、グフはランバ・ラルの先行量産型以外にも強敵として登場したし、ドムは黒い三連星の乗る機体もラルのグフと同じように、一般機と違いがなかった。
さらに、水陸両用MSも量産型MSは強敵として印象に残る活躍があるのに、ゲルググにはないのである。これはいくつか理由があると思う。ゲルググで大きく活躍するのは、赤いシャア専用ゲルググである。しかし、「ガンダムに匹敵する高性能機」であるゲルググに乗ってすら、シャアはアムロに圧倒されてしまう。
アニメの後半は強いインパクトを持つ巨大兵器MA(モビルアーマー)の脅威がドラマの中心となり、番組中盤のような強いMSは求められなかった。シャアもまた、ゲルググでは勝てず、より強いMS、「ジオング」に乗ることとなる。ニュータイプとして覚醒したアムロには、“高性能のMS”ではもう太刀打ちできない。ゲルググはドラマの演出という視点で見れば、量産型MSとしての見せ場が用意できなかった機体だったのではないだろうか。
そういった背景を持つゲルググをモチーフとしたのが「ROBOT魂 量産型ゲルググver. A.N.I.M.E.」である。ガンダムと同じようにビームライフルとシールドを標準装備、リック・ドムが提示したスカートの中に多数のバーニアを搭載した機構を受け継ぐその姿は、「進化したMS」をストレートに感じさせる、強そうで、かっこいいフォルムである。……しかし、印象的な活躍シーンや、ポーズはないのである。不遇の機体だったというところが実感できる。
しかし、商品としての「ROBOT魂 量産型ゲルググver. A.N.I.M.E.」はとても魅力的だ。まず、ver. A.N.I.M.E.ならではの可動範囲、アニメの設定画に近い雰囲気なのに、引き出し関節や、深く折り曲げられる関節設計で非常に自由度が高い。関節を動かし、ギミックを確かめながら色々な関節を動かしていくのが楽しい。
フォルムを崩さず現在の技術の粋をこらした遊びごたえ、というのがver. A.N.I.M.E.の面白さだ。背中はカバーを開けて引き出すことで、ビーム・ナギナタと、シールドを接続できるジョイントが出てくる。首もかなり長く引き出すことができ、上を向いたり、顎を引くことが可能だ。
今回注目なのが、スカートの処理。スカートの前パーツを押し込むことができ、足の付け根の引き出しと相まって腿を上げることができる。足はどこまで曲がるか、肩の自由度はどうか、デザイン以上に高い自由度に色々な関節の可動を試したくなってしまう。
武装に関して筆者は始めて知ったのだが、ゲルググはビーム・ライフルを持つとき、トリガーに2本の指をかけるのだ。ネットで調べてみたところ、この2本指で引き金にかかっているのが伝統らしい。この決まりをきちんと守っているのがver. A.N.I.M.E.ならでは、といえるだろう。アーモンド型の盾も背中につけたり手に持たせたり、ポーズのアクセントになってくれる。
そしてゲルググを象徴する武器がビーム・ナギナタ。柄の両方にビームの刃が出る特徴的な武装だが、「ROBOT魂 量産型ゲルググ」では何と柄の長さが3つも用意されている。特に長いものは「こんなのあったっけ」と思ったが、そう、シャア専用ゲルググが、何と柄でガンダムのビーム・サーベルを受けるシーンがある。この長い柄はそのときに使う物だろう。こういう細かいこだわり1つ1つが、ver. A.N.I.M.E.のファンを魅了しているのだ。
換装でゲルググキャノンに、フィギュアの動きがアニメの作画にピタリとハマる
そして「ゲルググキャノン」である。ビーム・キャノンと大型スラスターがついたバックパックを装備、頭部も大きな補助カメラがついている物に換装する。さらに前腕に「三連ロケットランチャー」に「バックラーシールド」を取り付ければ換装終了だ。
ゲルググキャノンはMSVに登場した機体で、大型バックパックのビーム・キャノンと、補助カメラによって向上した索敵能力により中距離支援を可能にする。近づかれた時の場合のロケットランチャー、必要最小限のシールドと運用思想がきちんと見えるのが好感触だ。
ゲルググキャノンの頭部はモノアイのスリットが細くなっており、厳めしい雰囲気となっている。上半身の武装を変えただけだが雰囲気が大きく変わるのが楽しい。筆者はこういうコンパーチブル仕様に弱い。1機で2度おいしい、というのもあるが、例えば任務で装備を換装するという妄想も楽しいのではないだろうか。頭部を元のままにしたり、通常のゲルググの右手にロケットランチャーを追加してみたり、自分なりのオリジナル装備を考えるのも楽しい。
やはり“一般機”はいい。確かにシャア専用機は大きな魅力であるが、自分なりのゲルググ像や、活躍シーンを想像するのが楽しい。ガンダムに匹敵する高性能量産機であるゲルググ、確かにアニメでは活躍シーンがポーズをとらせてみると様々な想像がふくらんでくる。そしていざ触ってみると、デザインとしての独特の格好良さ、そして元のデザインを最大限に活かしながら多彩なポーズ付けが楽しめる本商品の魅力を実感でき、量産型ゲルググそのものの愛着が強くなってくる。
「機動戦士ガンダム」は1979年のアニメだ。そのMSのデザインは、現代の価値観から見ると、ちょっと野暮ったく、そしてシンプルに感じるかもしれない。しかし、独特の迫力と、筆者達ファンにとっては胸をかき立てるカッコ良さがある。ver. A.N.I.M.E.のすごいところは、現代のアクションフィギュアとして、非常に多彩で、自由なポーズをとらせながら、アニメの作画の雰囲気を表現できるところだ。
ポーズをつけると「ガンダム」の一場面のように脳内でアニメとして作画されているMSの姿が浮かび上がり、目の前のフィギュアと合致するのである。アニメの再現だけでなく、フィギュアを動かすことで自分だけの「機動戦士ガンダム」を見ているような気持ちにさせてくれる。この感覚は自分でも驚きだった。今回、改めてver. A.N.I.M.E.の魅力を実感できたと思う。
ver. A.N.I.M.E.シリーズは、フィギュアファンはもちろんだが、やはり濃い「機動戦士ガンダム」ファンに手に取ってもらい、この感覚を味わってもらいたい。ver. A.N.I.M.E.は再販なども行なわれ、店舗で購入できる商品も多い。まず手にして、動かしてみて欲しい。
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