レビュー

【PS5 Pro】「PlayStation 5 Pro」レビュー

PSSRの実力はいかに! 本体の起動時間や画質の変化を検証

【PlayStation 5 Pro】

11月7日 発売予定

価格:119,980円

PS5 Pro

 11月7日、いよいよ「PlayStation 5 Pro(PS5 Pro)」が発売となる。これまでに外箱、外観などをチェックしてきたが、本稿ではいよいよその本体性能やゲーム体験について語っていきたい。これまでのレポートと同様、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)より提供いただいたPS5 Pro本体を使用する。

GPUが強化されたほか、AIアップスケーリング「PSSR」に対応

 まず前段として、PS5 Proの特長を振り返っておきたい。PS5 Proのハードウェアとしての主な強化ポイントは、GPUのアップグレードだ。現行のPS5から引き続き、AMD製のCPU/GPUを使用していると思われるが、公式の発表ではGPUのCU数が67%増加しているほか、GPUメモリの速度が28%高速化していると説明されている。

 公式の発表において具体的なGPUのスペックなどについての情報は公開されていないが、現行のPS5内蔵GPUのCU(Compute Unit)数は36のため、67%の増加だとCU数は60前後と予想できる。こうした性能向上により、ゲームプレイ時のレンダリング速度は最大45%アップしているという。そのため、高品質なビジュアルを維持したまま、より高フレームレートの動きを保持したり、高解像度なテレビなどでも映像品質を下げることなく、大迫力の美麗なビジュアルが楽しめる。

 加えて、レイトレーシングの性能もアップしたほか、新たにAIによる機械学習を活かした解像感向上技術「PlayStationスペクトルスーパーレゾリューション(PSSR)」が導入されている。このAIによるアップスケーリングにより、映像のディティールを大幅に追加することで、鮮明なビジュアルを実現するとしている。

 その他、無線LANは最新のWi-Fi7に対応するほか、内蔵SSDも従来の1TBから2TBへと容量が倍になっている。なお、PS5 Proには光学ドライブ内蔵モデルは用意せず、従来モデルで言うところのデジタル・エディションと同じ、内蔵SSDのみのタイプが用意される(ユニットを別途購入で装着は可能)。

スペック比較表PS5(CFI-2000A01)PS5 Pro
CPUx86-64-AMD Ryzen "Zen2", 8 cores/16 threadsx86-64-AMD Ryzen "Zen2", 8 cores/16 threads
GPU10.3 TFLOPS AMD Radeon RDNA 2-based graphics engine16.7 TFLOPS, AMD Radeon RDNA-based graphics engine
RAMGDDR6 16GBGDDR6 16GB、DDR5 2GB
ストレージ1TB SSD2TB SSD
Wi-Fi規格Wi-Fi6Wi-Fi7
PS5 Pro Enhanced-
PSSR-
8K出力-
ゲームブースト-
サイズ約358×216×80mm(幅×奥行き×高さ、デジタル・エディション)約388×216×89mm(幅×奥行き×高さ)
重量約3.2kg(ディスクドライブ付き)、約2.6kg(ディスクドライブなし)約3.1kg
付属品DualSense ワイヤレスコントローラー × 1、横置き用フット × 2、HDMIケーブル × 1、電源コード × 1、USBケーブル × 1、印刷物一式 × 1DualSense ワイヤレスコントローラー × 1、横置き用フット × 2、HDMIケーブル × 1、電源コード × 1、USBケーブル × 1、印刷物一式 × 1
価格79,980円(通常版)、72,980円(デジタル・エディション)119,980円

 こうした事前情報を踏まえた上で、実際に起動してみたPS5 Proを眺めていたが、メニュー表示や設定項目の殆どは従来のPS5と同様で、現行のPS5であってもシステムアップデートを最新にすることで、ほぼ同じ項目が表示される。

 この中でPS5 Proならではの項目としては、設定の「スクリーンとビデオ」の「映像出力」にある「PS4ゲームの画像品質を向上」という項目だ。説明によると一部のPS4ゲームが、より高い画像品質で楽しめるようになるとされており、2160p、または1440p(60Hz)での表示時に有効になる。ただし、ゲームによっては正常に動作しない場合もあるようで、そのような事象が発生した際にはオフにできるようになっている。

 他にも解像度の項目をよく見ると「8K出力を有効にする」モードも用意されていた。編集部にはすぐに使える8Kディスプレイがなかったため、今回は試せていないが、8K解像度のテレビなどがある環境で使用する場合には、PS5 Proは大きなアドバンテージとなりそうだ。

メニュー画面は現行のPS5と同様だ
PS5 Proの設定画面には解像度の項目に「8K出力を有効にする」スイッチと「PS4ゲームの画像品質を向上」というスイッチが新たに追加となっていた
こちらは従来のPS5の設定画面。解像度項目の次はいきなり「VRR(Variable Refresh Rate、可変リフレッシュレート)」の項目となっている

起動時間をチェック。スリープの“入り”に差を確認

 SSDが更新されたということで、起動時間やスリープ復帰についてチェックしてみた。テストは電源を完全にオフにした状態から、電源を入れて起動し、画面上に「コントローラーのPSボタンを押してください。」の表示が出るまでの時間を5回計測してその平均を取った。

 PS5 Proだけでなく、現行のPS5でも同様にテストして比較してみたが、PS5の平均起動時間が約22.7秒だったのに対して、PS5 Proは約21.3秒で、時間としては1秒ちょっとながら僅かに早くなった。感覚的にも画面上に注意事項が出てから操作可能になるまでのゴールドのキラメキの時間が、PS5 Proの方が僅かに短いような印象だ。極めて僅かな差でしかないので、見方によっては長年使い続けたPS5と今回新たにセットアップを終えたばかりの新品のPS5 Proの差とも取れるし、PS5 Proのパフォーマンス向上の成果とも取れる結果となった。

 同様にスリープ(レストモード)からの復帰時間についてもチェックしたが、こちらはPS5 Proが平均13.6秒かかったのに対して、現行のPS5では12.9秒となり、1秒未満の差ではあるがこちらはPS5の方が速く復帰できる結果となった。ただし起動直後のメニューが展開する画面においては、PS5 Proの方が滑らかに展開するのに対して、PS5の方はややカクツキが感じられるような動きに見えた。

 レストモードを試していて気づいたのは、完全に落ち着くまでの時間に差があるようだった。PS5のレストモードは、ディスプレイ出力が落ちた後も暫く本体が眠るまでのアイドル時間がある。こちらははっきりとは計測していないのだが、かかる時間は現行のPS5の方がより長くかかっており、PS5 Proは短時間で眠りについていた印象だ。

 いずれにせよ、数値だけでみれば電源オフからの起動はPS5 Proの方が僅かに早く、逆にレストモードからの起動は初期PS5の方が早かったが、どちらも極僅か。実感としては、誤差レベルと言えるだろう。

PS5とPS5 Proで起動時間を比較したグラフ。電源オフからの起動ではPS5 Proが僅かに早く、逆にレストモードからの復帰はPS5の方が早い結果となった

ゲーム起動時間は僅かに高速化。PS4ゲームの画質も向上!

 続いてはゲームの動作についてみていこう。まずはゲームの立ち上げ時間について、PS5とPS5 Proとで違いがあるかをチェックした。

 このチェックで試したのは、PS5版の「Rez infinite」。PS5メニュー画面の「ゲームをプレイ」を押してから×ボタンを連打し続け、途中のメッセージやデモをスキップしてタイトル画面が表示されるまでの時間を測定した。結果としては現行のPS5では約12.4秒で起動したのに対して、PS5 Proでは約11.8秒での起動となった。

 多少強引なテストではあるものの、一応PS5 Proの方が僅かに早くゲームが起動したような印象を受けた。今回はロードも短いシンプルなタイトルをチョイスしたが、ロード時間の長いゲームではより恩恵がありそうだ。

ゲーム起動時間の比較にはPS5版「Rez infinite」を使用した。メニューからゲームを開始してからXボタンを連打してどのくらいの時間でタイトル画面が表示されるかを測定した
もちろんだが、ゲーム自体の動作はPS5もPS5 Proも遜色なく快適にプレイできた

 続いては設定項目にもあった、PS4タイトルの画像品質の向上についてもチェックした。使用したタイトルはPS4版の「Bloodborne」だ。本作は2015年に発売されたフロムソフトウェア開発のアクションRPGとなっている。

 実際に起動してプレイしてみると、その動作がバッチリなのは言うまでもない事だが、画像品質向上の効果が各所で感じられた。例えば冒頭の薬品などが置かれた棚を拡大して見てみると、微かではあるがディティールが少し増しているように見えた。PS5では表現しきれていない細かいところが、PS5 Proではよりはっきりと描写される、といった印象だった。

 下記画像では角度が若干異なるため、光の当たる位置の違いなど影響しているが、冒頭に登場する獣の体毛はかなりリアル。通してプレイすれば、強化されたGPUパワーが画質向上に貢献していることを感じられそうだった。

PS5 Proの「PS4ゲームの画像品質を向上」機能を有効にした状態の「Bloodborne」のワンカット
一部を150%まで拡大したところ
PS5で同じカットをスクリーンショットしたところ。角度がちょっとズレているため、光源のズレによる変化も見られるが、ディティールが全体的に向上している印象だ
同じ場所を150%まで拡大したところ。棚に置かれた瓶や朽ちた布切れ、柱の模様などのディティールがPS5 Pro版と比べて少しぼんやりしている
冒頭に登場する獣もかなりリアルに描かれていた

 一方で元々の画像品質が高いタイトルでもあるため、明るい場所のビジュアルなどは一見すると、現行のPS5の方もなかなかきれいな映像だ。だが、主人公のローブの留め金やボタンのように細かいポイントをチェックすると、PS5 Proの方が彫りや装飾のディティールがかなり細かく描かれているのが分かる。ハードウェアだけでこれだけの変化が見せられるのなら、色々なタイトルでプレイしてその画質向上の成果をチェックしたくなる。

PS5 Proでの明るい場面での主人公のワンカット。傷だらけのガラスの描写などがかなり細かく描かれている
PS5で同じ場面を見たカット。一見するとPS5でもかなりきれいなビジュアルが楽しめる
同じ場面での拡大(PS5 Pro)。よく見ると、洋服のボタンや鎖で繋がったボタン内の模様のディティールなどがかなり高解像度で描かれているのが分かる
同じ場面での拡大(PS5)。PS5版ではボタンの模様などは若干ぼんやりした印象だ

PS5 Pro専用の「PRO」モードを備える「The Last of Us Part I Remastered」

 続いては「PS5 Pro Enhancedタイトル」の中から「The Last of Us Part I Remastered」をチェックしていく。PS5 Pro Enhancedタイトルとは、ゲームメーカー各社がPS5 Pro向けに無償で提供するアップデートのことで、該当タイトルは、PS5 Proの強化されたGPUを活用し、映像品質の向上や、フレームレートの向上など、PS5 Proならではのゲーム体験が楽しめる。

 現段階でリリース予定のタイトルとしては、「Alan Wake 2」「アサシンクリードシャドウズ」「Demon’s Souls」「ドラゴンズドグマ2」「FINAL FANTASY VII REBIRTH」「グランツーリスモ7」「ホグワーツ・レガシー」「Horizon Forbidden West」「Marvel's Spider-Man 2」「ラチェット&クランクパラレル・トラブル」「ザクルー:モーターフェス」「THE FIRST DESCENDANT」「The Last of Us Part I/II Remastered」などが発表されている。

「FINAL FANTASY VII REBIRTH」のPS5 Pro対応版
「Demon’s Souls」のPS5 Pro対応版
「Horizon Forbidden West」のPS5 Pro対応版
「EA SPORTS F1 24」のPS5 Pro対応版
「ホグワーツ・レガシー」のPS5 Pro対応版

 これらの中でも「The Last of Us Part I/II Remastered」については既に原稿執筆時点でもPS5 Pro向けのアップデートが配信されており、PS5 Pro発売前ながら、新たな機能がチェックできた。

 本作では起動直後にいきなりPS5 Proの機能が確認できる。というのも初回起動時の画面設定において「レンダリングモード」の項目にPS5 Proで起動すると「PRO」という項目が追加されているからだ。

 これまで「レンダリングモード」は、4K解像度で出力する「解像度」モードと、60fps優先の「パフォーマンス」モードの2つがあった。「PRO」を加えて、3つのモードから選択できるようになっている。

 「PRO」は、どちらかというと「パフォーマンス」の上位版に位置する。パフォーマンスは60fpsをターゲットとし、解像度1440pでレンダリング、出力は1440p/アップスケール4Kとなる。

 一方のPROは1440pでレンダリングするまでは同じながら、映像をPSSRの超解像度技術を使って4K出力できるというものになる。フレームレートのターゲットは60fps。つまり、PSSRの効果をチェックするのに最適というわけだ。直の4K出力ではないのが残念だが、単なるアップスケールではないところが大きなミソと言えるだろう。

PS5 Proで「The Last of Us Part I Remastered」を起動した直後の画面設定。PROモードが選択可能になっており、選択する事でPSSRによる超解像度技術が適用される
PS5で起動した場合、サムネイルなどは同じだが、従来と同様、解像度モードかパフォーマンスモードしか選択できない。今回はパフォーマンスモードで比較を試みた

 映像品質は、従来のパフォーマンスモードにおける4Kアップスケールと比較すると、一見するとそこまで大きな違いは感じられない。しかし細部に注目すると、各場面の背景などが鮮明に描写されていることがわかる。

 荒廃した廃墟の手入れをせずに放置された雑草の荒れ具合、朽ち果てた木材の脆さを感じさせる表現や、水たまりの反射表現、あまり使われていない廃坑の水垢が残った壁面描写などがそうだ。拡大すると、その違いが割とはっきりとわかる。特に大画面でゲームをする場合などは、その恩恵は大きいかと思う。

 また大勢の人が一斉に動き回るような、負荷が高そうなシーンであっても、もちろん破綻することなく高品質な映像のままで気持ちのよいプレイ感が得られる。

PS5 Proにて、「PRO」モードで撮影したスクリーンショット
同じ場面の、PS5での「パフォーマンス」での撮影
上がPS5 Pro、下がPS5。引きで見ると大きな変化はないが、細部の描写が明らかに滑らかになっている

 東京ゲームショウ2024ではPS5 Pro Enhanced対応タイトルとして「FINAL FANTASY VII REBIRTH(ファイナルファンタジーVII リバース)」と「グランツーリスモ7」のビジュアルの変化をお伝えしたが、PSSRだけでも十分にそのパワーが発揮されるようだった。

 PSSRによる変化のよりわかりやすいカットとしては、冒頭において、ジョエルの車が横転した事故直後の車内の様子だ。ここでは車内で苦しむジョエルと娘のサラが車の窓越しに描かれているが、この時の窓の、モヤのような汚れのような模様がPS5 Proでは描かれるようになっていた。

 「PS5 Pro Enhancedタイトル」について、対応内容やアップデート時期などについては全てゲームメーカーに依存するため、どのくらいのタイトルが対応してくるかは不明だが、PS5 Proをよりリッチに楽しむためにも、なるべく多くのゲームタイトルに対応してほしいと願うばかりだ。

PS5 Proの事故直後の車内のワンカットより。ジョエルの顔付近にある窓の汚れのような描写具合がかなりリアルだ
PS5版のパフォーマンスモードではこの辺りの描写はかなり簡略になっていた

4万7,000円の価格差があっても魅力は多い

 もっと検証したいタイトルは山程あったが、時間の関係で今回はここまでとなる。一通り試した結果、GPU強化を活かしたSIE独自の超解像度技術、PSSRの搭載やPS4ゲームの画像品質の向上機能など、かなり多くのゲームタイトルに恩恵がありそうな機能強化だと感じられた。

 PS5 Pro Enhancedに対応しているタイトルはレイトレーシングの強化など、より明確にPS5 Proの性能の違いを感じられると思う。またそうでない場合でも、細かくはなるがやはり変化がある。実際にゲームをプレイしていると、動きの中で高解像度の良さを感じられることがあるだろうし、背景など細部の品質向上は無意識のうちに得られる恩恵があるため、全体を通してみると満足感は高いのではないだろうか。また、普及率はそこまで高くないにせよ、8K解像度出力に対応しているのはかなりポイントが高い。

 PS5 Proは本体価格が10万円越えとなっており、現行のPS5(デジタル・エディション)と比べた場合、およそ4万7,000円ほど高額な価格設定だ。そのため万人に勧められる物ではないし、PS5からの買い替えもそう気軽にできるものではない。

 ただ、内蔵SSDは現行モデルの倍となる2TBで、8K映像出力にも対応するのに加えて、強化されたGPUや最新の無線LAN対応、高性能ながら初期型と比較してコンパクトになった本体、そして何より、今まで述べてきた通り、PS5 Pro EnhancedやPSSRが利用できるなど、魅力的なポイントが多い。

 中でも目玉はPS5 Pro Enhancedだ。PS5ではこれまで、AAAクラスのタイトルでは、性能の限界ゆえに解像度とフレームレートのどちらかを諦めていたところがあった。しかし、PS5 Proではそうした“我慢”をせずに、思い切りゲームのポテンシャルを引き出すことができる。PS5 Pro Enhanced対応タイトルは本稿ではそこまで触れられてないが、本体の発売以降もタイトルは増える予定であり、そこでどのように品質が向上していくかは明らかになっていくだろうと思う。

 とにかく最高品質のゲーム体験をコンソール機で追求したいという人には、PS5 Proは魅力的な選択肢の1つではないだろうか。