【特別企画】
ソニーの4K/144Hzゲーミングモニター「INZONE M9」ファーストインプレッション
直下型LED部分駆動で実現された“真のHDR”の衝撃!
2022年6月29日 10:04
- 【INZONE M9】
- 7月8日発売予定
- 154,000円前後(税込)
- 【INZONE M3】
- 発売日・価格未定
ソニーが満を持してゲーミングデバイス市場に本格参入した。その第1弾としてゲーミングモニターとゲーミングヘッドセットが発表された。ソニーといえば、テレビ「BRAVIA」をはじめ、長年、業務用/民生用のAV機器を開発してきたメーカーである。そのソニーが投入したゲーミングモニターが、27型4K/144Hz対応の「INZONE M9」と27型フルHD/240Hz対応の「INZONE M3」の2モデルである。今回、短い時間だが、実際にINZONE M9の実機を試すことができたので、ファーストインプレッションをお届けしたい。
ゲーミングモニターとして丁度良い4K/144Hz/27型を採用
ソニーは、ゲーミングブランド「INZONE」(インゾーン)を冠するゲーミングモニターとして、INZONE M9とINZONE M3の2モデルを発表した。どちらも27型液晶パネルを採用しており、外観はほぼ同じだが、上位のINZONE M9は4K/144Hz対応で、下位のINZONE M3はフルHD/240Hz対応となる。
パネル方式はどちらもIPS方式だが、バックライトの方式が異なり、INZONE M9は直下型LED部分駆動、INZONE M3はエッジ型LEDとなる。簡単に棲み分けを説明すると、MMORPGやオープンワールドタイプのアクションゲームに向いた製品が画質重視のINZONE M9、FPS/TPSに向いた製品がフレームレート重視のINZONE M3となる。
4K対応モニターは27型クラスが主流だが、フルHD対応モニターは24~25型クラスの製品が多い。しかし、「INZONE M3」は、一回り大きな27型パネルを採用している。INZONE M9と部材を共通化することでコストダウンを図るという狙いもあると思われるが、今後はフルHDでもより画面が広く、迫力のある映像が楽しめる27型クラスが標準になってくると思われる。
発売日はINZONE M9は7月8日だが、INZONE M3は2022年内発売予定としか明らかにされておらず、価格も未定である。ここでは、先に発売されるINZONE M9を紹介する。
まずは、INZONE M9の外観から見ていきたい。ホワイトとブラックを基調としたカラーリングと、よくあるスタンドの中央に大きな台座があり、台座に繋がった1本の柱で支えるタイプではなく、3本の脚で支える構造を採用している。カラーリングもデザインも、どこかPS5に似た印象を受ける。スタンドの機能は、上下の高さ調節と上下の角度調節(チルト)のみという、比較的シンプルなものだ。左右に回転させるスイベルや画面を縦に回転するピボットなどの機能はないが、ゲーミングモニターは基本的に決まった場所で決まったユーザーが使うことが多いため、そう問題にはならないだろう。また、狭額縁設計で場所をとらず、前面のデザインもシンプルでスッキリしており好感が持てる。
中央に大きな台座がないので、キーボードを使わないときに奥に収納したり、斜めに配置して利用できることもメリットである。中央の脚にケーブル収納穴が空いており、ケーブルもスッキリと取り回せる。
DCI-P3を95%カバーする広い色域と色深度、高コントラストが魅力
INZONE M9が最もこだわっているのが、ゲームへの没入感向上のための表示画質である。まず、モニターの基本性能ともいえる表示色域の広さだが、「INZONE M9」は、デジタルシネマ向けの色空間規格であるDCI-P3を95%カバーしていることがウリだ。PCモニターで一般的に使われるsRGBよりもDCI-P3のほうがより広い色空間の規格であり、sRGB100%カバーが、DCI-P3では約72%カバーに相当する。
色深度については10bit対応で、最大10.7億色の表示が可能であり、グラデーションのマッハバンド(縞模様)が出るようなことはない。さらに、INZONE M9は、バックライトしてハイエンドテレビと同じ、直下型LED部分駆動を採用していることも特筆できる。
直下型LED部分駆動とは、液晶パネルの直下(真裏)に数多くのLEDを配置し、画面全体をいくつかのエリアに分け、映像の明るさに応じてそのエリアのLEDの明るさをリアルタイムに制御する技術である。同じ画面の中に明るい場所と暗い場所が混在する場合、暗い場所ではバックライトを暗くし、明るい場所ではバックライトを明るくすることで、コントラストをさらに高めることができるのだ。一般的なモニターでは、直下型LEDではなく、液晶の端にLEDを並べて配置し、その光を導光板によって画面全体に広げるエッジ型LEDを採用しているため、そうした細かな制御はできない。直下型LED部分駆動を採用したゲーミングモニターはASUSなどからも登場しているが、高価でありまだ製品数も少ない。
INZONE M9では、直下型LED部分駆動によってDisplayHDR 600の認証を取得しているが、実際にいくつかのゲームでの明るさの差が大きなシーンを見てみたところ、他社のDisplayHDR 600取得済み製品と比べても、実際のコントラストの高さは上回っているように感じた。
VRR対応で表示の乱れもない
液晶の応答速度そのものも1msと高速で、動きの速いシーンでも残像感はほとんどなかった。また、VRR(可変リフレッシュレート)にも対応しており、画面が引き裂かれたようになるティアリングや動きのカクツキなども防げる。VRRは、VESAが規定した「Adaptive-Sync」と、NVIDIAが規定した「NVIDIA G-Sync」、HDMI 2.1規格で規定された「Variable Refresh Rate」のすべてに対応しており、すべてのポートでGPUのメーカーを問わず利用可能だ。
また、ホラーゲームなどでは暗い部分が潰れたりしがちだが、暗い部分の輝度を持ち上げて視認性を上げるブラックイコライザーも搭載されている。ブラックイコライザーを有効にすることで、暗闇で見えなかった敵もはっきりと視認できるようになる。また、クロスヘアやフレームレートの表示機能も備えているのが、ゲーミングモニターらしい。ブラックイコライザーなどの設定は、INZONEシリーズの設定アプリ「INZONE Hub」で行う。INZONE Hubは高機能かつ操作が分かりやすく、ゲームタイトル毎に設定を保存することも可能だ。
実際に、「ELDEN RING」をプレイして画質を確認してみたが、直下型LED部分駆動+ブラックイコライザーの威力は絶大である。「ELDEN RING」では、明るい部分と暗い部分のコントラストの差が大きいシーンがよく出てくるが、他社のモニターでは黒く潰れて見えなかった部分もしっかりと描き込まれていることがよくわかった。また、動きの速い中ボスとの戦闘においても応答速度が高速なため、ブレや残像のない美しい画面で快適にプレイができた。タイミングがシビアなパリィなども、INZONE M9なら成功しやすい。また、パネル表面がノングレア処理されているため、外光の映り込みが抑えられており、目への負担も少ないと感じた。一度、INZONE M9の高画質になれてしまうと、もはや他のモニターには戻れないほどだ。
USBハブ機能やオートKVMスイッチ機能も備え、OSDメニューの操作もしやすい
インターフェースも充実しており、映像入力としてDisplayPort 1.4が1系統とHDMI 2.1が2系統の合計3系統が用意されているほか、USB Type-B(アップストリーム)が1つ、USB Type-A(ダウンストリーム)が3つと、USB Type-C(DP Alt Mode対応)が1つ用意されており、USBハブとしても利用できる。また、入力機器を切り換えた際に、自動的にキーボードやマウスの接続先を切り換えるオートKVMスイッチ機能を備えているのも便利だ。
画面モードやブラックイコライザーなどの設定は、OSDメニューによって行うが、このOSDメニューの表記も丁寧で分かりやすい。OSDメニューの操作は、モニター背面のスティック状のデバイスで行うが、このスティックも操作しやすかった。よくある4つや5つのボタンで操作するタイプでは、慣れないと目的の項目を選ぶのに時間がかかり、イライラすることがあったが、本製品は快適に操作が行えた。ただし、赤外線リモコンなどは付属していない。他社のゲーミングモニターでは、リモコン操作が可能なものもあるので、リモコンにも対応して欲しかったところだ。
なお、スピーカーは2W×2を搭載。FPS/TPSなどをプレイする場合はヘッドセットを使うか、MMORPGなどで美しいサウンドを楽しみたいなら、きちんとした外付けスピーカーを使うのが一般的であり、同時発売されるINZONE Hシリーズとの併用が望まれるところだ。
直下型LED部分駆動によるコントラストの高さとブラックイコライザーが魅力
INZONE M9は、INZONEブランドのゲーミングモニターの中でもフラッグシップとなるモデルであり、ソニーがBRAVIAで培ってきた高画質技術を活かした、優れた製品に仕上がっている。特に、直下型LED部分駆動による高いコントラストは、エッジLED採用製品では決して真似ができないメリットだ。ブラックイコライザーの効果も大きく、潰れていた暗い部分もしっかりと見えるようになる。「ELDEN RING」のような、光と影のコントラストが大きいファンタジー系ゲームを、制作者が意図した通りの映像で楽しめることが魅力だ。FPS/TPSプレイヤーでも144Hzあれば十分と感じる人も多いと思われる。そうした人にもおすすめだ。価格はやや高価だが、それだけの価値はある製品だといえる。特に、同時に発表されたゲーミングヘッドセット「INZONE H9」と組み合わせれば、最高の没入感を得られるだろう。