レビュー
「Voice of Cards 囚われの魔物」レビュー
心を鷲掴みにするストーリ—とカードならではの演出が世界に引き込む
2022年9月13日 00:00
- 【Voice of Cards 囚われの魔物】
- 発売元:スクウェア・エニックス
- 開発元:スクウェア・エニックス
- 発売日:9月13日
- 価格:
- DL版 3,520円(税込)
- 本編+DLCセット 4,356円(税込)
- CEROレーティング:C(15才以上対象)
- プレイ人数:1人
スクウェア・エニックスは、9月13日にプレイステーション 4/Nintendo Switch/PC(Steam)用RPG「Voice of Cards 囚われの魔物」を発売した。
本作は、テーブルトークRPG(TRPG)をモチーフにしたRPG「Voice of Cards」シリーズの3作目となる。キャラクターやマップ、セリフなど、すべてがカードで表現された世界で、ゲームの進行役となるゲームマスターとともに物語を進めていく。本作のゲームマスターは、声優・石川由依さんが務めている。
物語は、人間と魔物が対立する世界が舞台となっている。主人公の少女アルエが暮らす村が襲われたところに1人の少年が現われ、少年とともに世界を旅する。
今回本作の序盤をプレイすることができた。筆者は「Voice of Cards」シリーズは初プレイとなる。TRPGは何度もプレイしたことがあるが、ビデオゲームとTRPGとの融合は初めての体験だ。今回はその体験から感じたことや魅力をお伝えしたい。
すべてがカードで表現された世界はまさにボードゲームのTRPG
本作の最大の特徴は、世界のすべてがカードで表現されているというところだ。キャラクターたちだけでなく、世界も町もダンジョンもすべてがカードで、まるでそのままボードゲームのTRPGの盤面についているような感覚に陥る。
マップでは、プレーヤーが踏み入れていない土地のカードは伏せられた状態になっており、遠くの地形がどのようになっているのか全くわからない。プレーヤーが少しずつ“主人公の位置を示すピン”を移動させることで、近隣のカードを捲られていく仕組みだ。近くに行くまでそこがどんな土地なのかわからない、というのがワクワク感を誘うが、時には不安感も煽られることにもなる二面性を持ち合わせている。
捲られたマップカードは離れてもそのまま表示された状態になる。1度捲られた場所は暗くて見えない、階層が違うなどの縛りがなければ、ジャンプして一足飛びで移動することも可能だ。行ったことがある場所にジャンプして移動できるのは快適で、ストレスなくストーリーを進められる嬉しい機能だ。
マップ上には、オアシスや街などのカードも存在する。街のカードに止まると街の中に入ることができる。街には人々のほかに、武器屋や道具屋、宿屋、遊技場、ペットショップがある。武器屋では、装備することで攻撃力や防御力を上げられる武器や防具、道具屋ではバトル時で使える回復アイテムなどを購入できる。また、遊技場に行けばカードゲームで遊ぶこともでき、勝利すると様々な景品を手に入れられる。
本作のゲームの進行はすべてゲームマスターが導いてくれる。本作ではキャラクターボイスは存在せず、ゲームマスター以外の声を聴くことはできない。いろいろなキャラクターの心情も世界の情景もすべてゲームマスターが語ってくれる。柔らかく優しい声質で淡々と物語を進行していく語り口は、本作のストーリーと相まって心を鷲掴みにされたような感覚に何度も陥る。
ゲームマスターと二人三脚で進んでいく物語は、まさにTRPGをしているように感じるが、リアルのTRPGとの最大の違いは、すべての選択をプレーヤーのみで考えて決定するというところだ。誰とも会話せずに進むTRPGはちょっと不思議な感覚になる。
バトルもカードで! 使役した魔物カードを駆使して戦う
本作では、バトルもカードで行なわれる。マップやダンジョンに魔物が登場するとバトルがスタート。盤面がカードバトルのボードに変更される。
バトルのルールはシンプルで、攻撃力と防御力、HPが記載されたカードを使って相手のHPを削り切るというものだ。相手に攻撃を仕掛けるか、防御するかをターンごとに選択する。
バトルではプレーヤーがターンごとに攻撃や防御、アイテム使用などキャラクターにさせたい行動を手札のカードから選んで決める。攻撃は基本的にキャラクターの攻撃力から魔物の防御力を引いた値が与ダメージとなる。防御を選択した際は、魔物の攻撃力からキャラクターの防御力を引いた値からさらに半分のダメージを受けるだけで済む。魔物から大ダメージ攻撃を受けそうなときは積極的に防御を選ぶのも戦略だ。
対戦する魔物には攻撃の中に属性を持つものもある。属性は火・水・雷・風・光・闇の6種類。魔物によっては弱点であったり、逆に耐性があるものもあるので、バトルの際には注意が必要だ。
バトル中にはハプニングが起こることもある。ハプニングはそのターンの中での縛りのことで、回復時に回復量が上がるなどのいいハプニングもあれば、敵味方どちらの攻撃力も上がるといったハプニングが起こることもある。発生したハプニングはターンの前に表示されるので、その効果に応じて戦い方を変える必要がある。
また、今作からは、倒した魔物をカードに封じ込め、バトル中にスキルとして使うことができる。カード化した魔物をキャラクターたちにセットすることでバトルで使えるようになるが、同じ魔物カードを重複してセットすることはできない。そのためキャラクターに足したいスキルをよく検討しながらセットしていく。
セットした魔物カードは、キャラクターごとの手札としてプレーヤーに表示され、攻撃や防御と同様に選択して使用することができる。
魔物のカードにはそれぞれ効果が書かれており、その効果を使用して戦う。カードの効果は「攻撃を4追加し、ダメージを与える」、「3ターン、自身の防御に4追加する」、「対象のHPを9回復する」などがあり、攻撃で使えるもの、防御で使えるもの、回復などのサポートで使えるものなど様々だ。効果の期限もそのターン内に使えるもの、次のターンから数ターン効果が現われるものなどカードごとに異なる。また効果によっては、ダイスを振って効果の大小や成功失敗を決めるといったギャンブル性の高いものもある。
バトル中、魔物カードを使用するには「ジェム」と呼ばれるアイテムを消費する必要がある。このジェムは、バトル時に敵味方のキャラクターに順番が回ってくるたびに1つずつ場に溜まっていく。消費しなければずっと溜まり続けるが、バトル中に消費しなかった「ジェム」は次のバトルに持ち越すことはできないので、うまくそのバトル中に使い切ることをお勧めしたい。「ジェム」の消費量はカードによって異なるが、強いカードほど消費量が多いので、強いカードばかり連発することもできないようになっている。
逆に、「ジェム」が足りている限りは何度でも同じカードを使うことができる。魔物の戦い方をみて、効率のいい戦略であったり、プレーヤー自身の好みの戦い方をすることができるのは非常に魅力的だ。
また、キャラクターはそれぞれ特性を習得することができる。例えば主人公のアルエは回復スキルや回復アイテムを使用した際、HP回復量に5追加することができる「夢見る乙女」という特性を習得する。特性はバトル時に常に有効となるので特段スキルなどにセットする必要がない。
バトル自体はシンプルながらも戦略を考えたり、その場その場の状況を判断するなどかなり頭を使いながら戦う必要がある。
あまりにも切なく衝撃的なストーリーとキャラクターたちから目が離せない
本作はストーリーや演出もかなり魅力的だ。今回筆者は序盤のみをプレイしたが、そのストーリー展開は王道のようで衝撃的な場面も多々あり、感情を揺さぶられた。
主人公以外のキャラクターたちもすべてカードで表現されているのに、ゲームマスターの語りが合わさるとそのキャラクターがどんな雰囲気を醸し出しているのかがキャラクターボイスがなくてもありありと思い描くことができる。
また、キャラクターたちが描かれたカードが黒くなったり、破かれたり、横に倒れるなどカードならではの演出もある。目の前でカードが黒くなったり、破かれると普通にキャラクターたちがいなくなってしまうよりも随分と切なさや悲しさが増しているように感じた。紙を破いてしまう、キャラクターが黒く塗りつぶされているというのはもう元には戻らないということをより濃く感じさせてしまうのかもしれない。その演出がよりストーリーの情景を色濃くしているといっていい。
カードらしい演出はほかにも、マップ上に待ち構えていた魔物を倒すと裏返って更地になったり、見えていたオアシスが蜃気楼だとわかった瞬間に裏返って砂漠になったり、洞窟探検で見つけたトロッコに乗ると、一気にカードが捲れてレールが出来上がるなど、キャラクターたちだけでなくマップやダンジョンなどでも随所に散りばめられている。
ビデオゲームでありながら、TRPGという形は非常におもしろい。今回筆者は本作からこのシリーズをプレイしたのだが、前の2作もぜひプレイしてみたい。何よりプレーヤー1人でTRPGが楽しめるというのが新鮮だ。
世界観とゲームマスターの声も相まって没入感も高く、カードで表現された世界を旅するのも非常に斬新で楽しい。TRPGを新しい感覚で遊ぶことができると感じたので、TRPGが好きな人にはもちろん、TRPGに興味がある人にオススメしたい1作だ。
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