レビュー

「スプラトゥーン3」レビュー

完成形に近い「スプラトゥーン」! バトルの進化やフレンドと繋がる新機能、5年越しのアップデートを実現

【スプラトゥーン3】

9月9日 発売

価格  パッケージ版:6,578円

ダウンロード版:6,500円

 9月9日にNintendo Switch用シューティング「スプラトゥーン3」(以下「スプラ3」)が発売された。2021年2月の「ニンテンドーダイレクト」で存在が明かされ、2022年に入ってからはTwitterで徐々に情報が公開されてきた。その焦らしにヤキモキした「スプラ」プレーヤーの方もいるのではないだろうか。実際に筆者もヤキモキしたプレーヤーの1人だ。

 そもそも「スプラトゥーン」シリーズは、2015年にWii Uにてリリースされた「スプラトゥーン」より続くオンラインシューティング。カラフルなインクでエリアを塗った面積を争う「ナワバリバトル」や、イカとヒトを融合したキャラクター「インクリング」などが本シリーズから生まれ、任天堂の新たな看板タイトルとして人気を誇っている。本作は、2017年にSwitchにてリリースされた「スプラトゥーン2」の5年ぶりとなる続編で、キャラクターやブキなど主要な要素を引き継ぎつつ、舞台を“ハイカラ地方”から“バンカラ地方”に移すなど、新たな要素を加えている。

 そして発売となった「スプラ3」は、総合的に見て「スプラトゥーン」ならではの遊び体験がさらに完成形に近づいたタイトルだ。もちろん前作でも前々作でもゲームとして完成していたが、本作ではバトルシステムの進化やフレンドと繋がる新機能、前作からの改善点など、「スプラ」というゲームを改良しつつ、「スプラ3」ならではの“色”を加えたことで体験の満足度が上がっている。

 その「スプラ3」ならではの色は、「スプラ」プレーヤーやSwitchユーザーたちの心をつかみ、発売後“3日間”で“トリプル”ミリオンを売り上げ、シリーズ3作目に相応しい記録を打ち立てた。そして9月24日からは、「スプラ3」初となるフェスが開催されるなど、その勢いはしばらく衰えそうにない。

 そこで本稿では、新要素の紹介や変更点を中心に、5年ぶりの新作となった「スプラ3」をレビューしていきたい。

【スプラトゥーン3 紹介映像】

“塗る”ことに特化した「ナワバリバトル」。「スプラ」のバトルがさらに完成に近づく

 まずは「スプラ3」のバトルマッチから見ていく。「スプラ3」では主に「レギュラーマッチ」と「バンカラマッチ」の2つのバトルが存在する。まずは「レギュラーマッチ」だ。

 「スプラトゥーン」の基本形となる「レギュラーマッチ」は、別名「ナワバリバトル」とも言われる。広大なステージにて4vs4でインクを塗りまくり、塗った面積が多かったチームが勝利する。オンラインゲームで“相手を倒す”ことに慣れていないプレーヤーでも、インクを塗ることで活躍できるため、初心者にもオススメなゲームモードだ。

まずは「スプラ」の基本形・レギュラーマッチのナワバリバトルをプレイ
敵を倒した数ではなく、よりステージを塗った方が勝ちというシンプルなルール
ジャッジ君が瞬時に塗ったエリアを測定。「これ負けたな……」と思っていても、勝つときがあるのだ

 そんなナワバリバトルだが、初代「スプラ」から「スプラ2」ではシステムがほとんど変化しなかった。変化しなかったとはいっても、ナワバリバトル自体が完成していたため、変化させる理由がなかったというのが正しいだろう。だが「スプラ3」では、シリーズで初めて「ナワバリバトル」にメスが入っている。

 「スプラ2」まではスポーン地点が用意され、チーム4人が同じ場所からスタートしていた。だが「スプラ3」では、“スポーン方法”を変更。空中に浮かぶ装置「スポナー」が登場し、空中から一定エリアの中で、スタート地点を決めることができるようになった。最初は「あまり変わらないのでは……?」と思っていたが、これがナワバリバトルにとって、大きな変更点となっている。

「スプラ2」まではスポーン地点が用意されており、チーム4人が同じ場所からスタートしていた
「スプラ3」ではスポーン方法を一新。スポナーと呼ばれる機械に乗りながら、空中からスタートする。

 同じスポーン地点でスタートすると、最初に塗る場所が重なってしまうため、初動の“塗り効率”が悪かった。だが、空中から好きな場所にスポーンすることで、味方が分散してスタートする。各々の場所から塗り広げることができるので、ナワバリバトルにピッタリなスタート方法だ。実際にプレイしてみると、味方それぞれが別の地点から塗り広げるため、エリアがどんどん塗り拡がっていく。

 明確なスポーン地点がなくなったことで、自陣まで押し込まれてしまった際の“リス地狩り”も減少。先述のように好きな場所からスタートできるため、自陣まで押し込まれてしまっても、逆転する機会が発生するだろう。

画像ではわかりにくいが、味方が着地する場所が表示される。なお、どこからでもスタートできるというわけではなく、スタート地点周辺のみとなっている。

 また、「スプラ3」で追加された「マテガイ放水路」や「ゴンズイ地区」などの新ステージは、いずれも広大な面積を誇る。ナワバリバトルでは“塗りポイント”を稼ぎやすく、実際に大台の1,000ptに到達する試合が多く感じた。また、ステージが広いため、狭いステージに比べると“対プレーヤー”のシーンも少ない。

 より“塗ること”に特化した「スプラ3」のナワバリバトルは、歴代「スプラ」の中で最も完成に近いバトルだろう。

新ステージ「ユノハナ大渓谷」。敵陣地までがもの凄く遠い
こちらも新ステージの「マテガイ放水路」
「マテガイ放水路」は高低差もあり、高所からインクを放つことで、塗りポイントが稼ぎやすいマップだ

ガチ要素はそのまま、より挑みやすくなった「バンカラマッチ」

 続いて「バンカラマッチ」だ。「スプラ2」までのプレーヤーは「ガチマッチ」という方が馴染みがあるのではないだろうか。「バンカラマッチ」では、前作に引き続き、ガチエリアやガチヤグラなど4つの試合ルールが時間交代で開催され、より“エクストリーム”なバトルが展開される。

 まず「スプラ3」では、先述の通り名称が「ガチマッチ」から「バンカラマッチ」へと変更になった。変更理由などは明かされていないが、少し“ガチ”要素が和らいだ印象だ。

「スプラ2」までのプレーヤーは、“ガチマッチ”や“ガチマ”の方が親しみがあるかもしれない

 また、スタート方法がナワバリバトルと同じく変更されているほか、マッチシステムが大きく変更。フレンドとプレイできる「オープン」のほか、プレーヤー自身の腕を極める「チャレンジ」の2つに分かれた。「オープン」ではフレンドと一緒にプレイすることができるが、「チャレンジ」では“挑戦料”を支払い、オンラインで巡りあったプレーヤーと共にプレイする。

 ゲームルールは、オープンとチャレンジともに一緒で、ガチヤグラ・ガチエリア・ガチホコ・ガチアサリの4つが開催される。バンカラマッチでは敵を倒すと、勝敗を左右する“カウント”を有利に減らすことができるので、ナワバリバトルに比べると“プレーヤー対プレーヤー”のバトルが展開される。

こちらが「スプラ3」のバンカラマッチ。フレンドとプレイできる「オープン」と……
オンラインで巡りあったプレーヤーと共にする「チャレンジ」が登場する
画像はガチヤグラの様子。バンカラマッチでは“敵が減る”と有利になるので、敵を倒そうと必死になる

 そのほかにも「ウデマエメーター」が変更。前作までは負け続けることでメーターが割れ、ウデマエが降格していた。だが「スプラ3」からは、ウデマエの降格が廃止され、メーターには次のウデマエまでのポイントが表示される。これで「次負けたら降格してしまう……」という気にならず、「バンカラマッチ」に挑みやすくなった。

 「ナワバリバトル」からのステップアップとしてプレイできる「バンカラマッチ」。フレンドと気軽にプレイできるオープンと、これまでの“ガチ要素”を引き継いだチャレンジにわけることで、“気軽にプレイ派”と“ガチで挑みたい派”の両方の願いを叶えるシステムを実現している。

「スプラ2」のウデマエメーター。おかげさまで“ボロボロ”になっている
「スプラ3」のウデマエメーター。ウデマエの降格がなくなり、次のウデマエまでのポイントも表示されている

 なお、レギュラーマッチ・バンカラマッチ共通の要素として、「スプラ3」では自らのチームが敗北しても、勝利チーム側のエモートが流れるようになった。“負け”を感じる要素の1つとして、前作では敗北したときに、イカちゃんが残念がる様子が映し出されていたが、それを解消することで“負け”を感じにくくなったのも、今作の進化点といえるだろう。

 「スプラ3」のバトルは、前作までの不便な点を解消しつつ、新たな要素を組み込むことで、「スプラ」のバトルシステムをより完成させていた。また、“負け”を感じにくく、楽しくバトルに集中することができるのも「スプラ3」の特徴だ。では、味方と共闘して“シャケをシバく”「サーモンラン」はどのように進化しているのだろうか……。

「スプラ2」の敗北画面。イカちゃんが物凄く落ち込んでしまう
「スプラ3」では勝っても負けても、勝者側のエモートが映される。あまり“負け”を感じなくなったのは確かだ

“怪しいバイト”がパワーアップ。敵の密度が増したPvEモード「サーモンラン NEXT WAVE」

 続いては前作「スプラ2」から追加されたPvEモード「サーモンラン」だ。「サーモンラン」といえば、ゲーム内の「クマサン商会」が運営している“怪しい”バイト。オオモノシャケを倒すことで獲得できる「金イクラ」を集めながら、制限時間まで生き残るというルールだ。

 「スプラ3」でも、“金イクラを集める”という基本的なルールに変更はない。だが、時折やってくるビッグイベントによって、その難易度は“次のウェーブ”に引き上げられている。それがオカシラシャケ「ヨコヅナ」の存在だ。

怪しいバイト「サーモンラン」の経営者・クマサン
襲い掛かってくるシャケを“シバく”という危険なバイトだが、おカネやギアなど、様々な報酬が手に入る
こちらが“シャケ界のトップ”であるオカシラシャケ「ヨコヅナ」だ。画像では小さく見えるが……

 「ヨコヅナ」は、ごくまれに発生する「エクストラウェーブ」にて出現するオカシラシャケ。いつものようにウェーブ1からウェーブ3までプレイし、“バイト終わった~”と思うと、地面が揺れ動きはじめ「ヨコヅナ」がやってくる。この「ヨコヅナ」だが、これまでの「サーモンラン」を覆すほど強い。

 「ヨコヅナ」は、通常のバトルでも猛威を振るう“オオモノシャケ”を大量に引き連れてくる。さらに攻撃方法は、プレーヤーを“つぶす”のみだが、当たれば一撃で倒されてしまうのだ。前作にて「サーモンラン」にドハマりした筆者は、このエクストラウェーブに6戦ほど遭遇し、全て敗北を喫している。

金イクラをドロップする“オオモノシャケ”と比べると、圧倒的にデカい
目の前まで迫ってくると、もはや怖い。特撮映画の怪獣を彷彿とさせる姿だ
筆者は6戦ほど出合い、全敗中。“次こそは”とリベンジしたくなるのが“ヨコヅナ”だ

 かといって、完全な“負けイベント”とはなっておらず、あと少しでクリアできそうな試合もあった。惜しいところまでいくと、次こそはとリベンジしたくなる。それがヨコヅナ勝利への道のりだ。なおウェーブ3までの戦績でクリア判定となるため、エクストラウェーブに失敗しても、報酬やランクにあまり影響はない。

 エクストラウェーブが発生するかは、ロビーにて確認できる。ロビーでは“ヨコヅナ”の形をしたメーターが表示されており、これが満タンになることで、“いつ出現してもおかしくない”状態になる。満タンになっていれば、“ヨコヅナ”に挑む覚悟を決めた方がよさそうだ。

 「ヨコヅナ」という“大ボス”の追加によって、「サーモンラン」のプレイスタイルも完成に近づいている。だが、「サーモンラン」には“シャケが街を襲う”新要素「ビッグラン」の追加が発表されており、こちらの追加も楽しみだ。

右上に「ヨコヅナ」のようなメーターが表示されている。画像はメーターが“満タン”で、いつ来てもおかしくない状態だ
アップデートで追加予定の「ビッグラン」。一体どのようなモードなのだろうか……

イカちゃんたちの“世界”も変化! “フレンドと繋がる”バンカラ街の新要素

 ここまでバトルを中心にお伝えしてきたが、ここからはイカちゃん(インクリング)たちの世界を紹介していく。前2作までは「ハイカラ地方」を舞台としていたが、「スプラ3」では初めて「バンカラ地方」に舞台が移り変わった。

 舞台も変わり、バンカラ地方にはバトル以外にも、新要素が追加されている。それが「ロッカールーム」と「ザッカ屋」だ。バンカラ街中央にあるロビーには、ロッカールームが設置されており、プレーヤーが使用するブキやギアを飾ることができるほか、「ザッカ屋」で入手した雑貨やステッカーでデコレーションし、“自分だけの”ロッカーをゲーム内に作り上げることができる

バンカラ地方の中心地・バンカラ街が「スプラ3」の舞台だ
ロビーの一角に「ロッカールーム」が設置されている。
こちらは筆者のロッカー。まだまだ改善の余地がありそう
ほかの編集部スタッフのロッカー。缶ジュースやおやつ、ゲームソフトなど、生活感のあるロッカーだ
ロッカーは、設置するアイテムの位置や角度など、細かく編集することができる

 なお前作までは、ブキを購入する際に“おカネ”を支払っていたが、今作からはゲーム内で手に入る「ブキチライセンス」に変更。その分、ザッカやギアに多くおカネを使うことができる。

 そのほかにも、試合開始前などに表示される「ネームプレート」が登場。プレートを変更できるほか、プレーヤーの“二つ名”を設定することができる。「スプラトゥーン」ではギアで個性を出すことができるが、ギア以外にも個性を発揮する場所が増えた形だ。

ブキを購入する際は、ゲーム内で獲得できる「ブキチライセンス」が必要になる。おカネはブキ以外に費やそう
ネームプレートの編集画面。ゲーム内で獲得したプレートや、二つ名を変更することができる。筆者の場合は「おしゃべりなコーチ」だ

 さらにロビー端末からは、直近の試合を振り返ることができる「メモリープレーヤー」が登場。プレーヤーの操作要らずで、バトル中の視点を録画してくれる機能だ。気に入った試合があれば、サーバーにアップロードすることができる。

 アップロード後は、フレンドにコードを伝えることで、フレンドも同じ映像を見ることができる。“神プレイ”や“面白プレイ”を共有することができる便利な機能に仕上がっている。なお、古い試合は自動的に消去されるため、気に入った試合はすぐに“お気に入り”に登録しよう。

 前作まではプレーヤー間のコミュニティが薄く感じていたが、「ロッカールーム」や「ネームプレート」、「メモリープレーヤー」などの新機能を追加することで、プレーヤー同士の交流も深まるだろう。「スプラ3」のコミュニティは、シリーズで最も完成していると感じる。

ロビー端末では、ネームプレートやメモリープレーヤーを確認することができる
録画された試合はサーバーにアップロードが可能。フレンドと試合映像を共有することができる

まだまだ進化を続ける「スプラトゥーン3」。これからのアップデートやフェスにも期待!

 ここまで「スプラトゥーン3」のレビューをお届けしてきた。初代「スプラトゥーン」、「スプラトゥーン2」とリリースされてきた「スプラ」シリーズだが、本作では初めてバトルシステムにメスが入った。ナワバリバトルは、より“塗ること”に特化し、バンカラマッチでは、“ガチ要素”を薄めつつも、より刺激的なバトルが楽しめる。

 ロッカールーム・メモリープレーヤーなど、個性を発揮する場所やフレンドと繋がる新機能も充実。盤石かと思われた「スプラトゥーン2」を、バトル面・娯楽面・交流面の全方位的に強化することで、「スプラトゥーン」の完成形にさらに近づいた印象だ。

 さらに本作には、“オルタナ”を舞台に繰り広げるストーリー「ヒーローモード」や、ミニゲームと呼ぶには“クオリティ”が高すぎる「陣取大戦ナワバトラー」など、本稿で紹介しきれなかった要素もたくさんある。これらはぜひ一度、ゲーム内でプレイしてみてほしい。

今作のストーリーとなる「ヒーローモード」は設定を一新。オルタナを舞台に数々のステージをクリアしていく
「ナワバトラー」は、イカジャンプ・イカラジオに続くミニゲーム。一見すると普通のカードゲームのようだが、150種類もカードが用意されるなど、作りこみは尋常ではない

 また「スプラ3」は発売後2年間のアップデート実施も発表済み。9月24日からは初となるフェス「無人島に持っていくなら?」も開催されるなど、「スプラ3」の歩みは始まったばかりだ。この機会に「スプラトゥーン」をまだプレイしたことが無い方も、これまでの「スプラ」プレーヤーの方も、「スプラトゥーン3」をプレイしてみては“イカ”がだろうか。

初フェス「無人島に持っていくなら?」は9月24日より開催。お忘れなく!