レビュー

「ソウルハッカーズ2」レビュー

「デビルサマナー ソウルハッカーズ」から25年。新しく生まれ変わったゲーム内容をお届け!

【ソウルハッカーズ2】

ジャンル:RPG

発売・開発元:アトラス

プラットフォーム:PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC

CEROレーティング:C(15才以上対象)

発売日:8月25日(Steam版のみ8月26日)

価格:
通常版:9,878円(税込)
パッケージ限定版:17,380円(税込)
ダウンロード豪華版:15,378円(税込)

 「真・女神転生」シリーズから派生したアトラス作品といえば、昨今では「ペルソナ」シリーズが真っ先に挙がると思う。しかし、過去には「ペルソナ」に並ぶ人気のシリーズがもう1つ存在した。それが「デビルサマナー」だ。

 「ペルソナ」と比べて「デビルサマナー」は「真・女神転生」のエッセンスを色濃く継承した作品で、悪魔とパーティーを組んで戦うお馴染みのスタイルのRPGとなっている。その後は2008年にプレイステーション 2でリリースされた「デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王」までシリーズが続くのだが、以降は一切音沙汰の無い状態であった。

 そして長い沈黙を破り、「デビルサマナー」シリーズの2作品目である「デビルサマナー ソウルハッカーズ」の次作、「ソウルハッカーズ2」が2022年にまさかのリリースである。勝手にシリーズ終了したと思っていただけに、発表をされたときはかなりの驚きであった。

シリーズ1作目の「真・女神転生デビルサマナー」。本家「真・女神転生」よりもストーリー性を重視した作りになった。画面はセガサターン版
「ソウルハッカーズ2」の前作に当たる「デビルサマナー ソウルハッカーズ」。サイバーチックな世界観はここから生まれた。画面はニンテンドー3DS版
近未来から大正へと時代を変えた「デビルサマナー 葛葉ライドウ」シリーズ。「ソウルハッカーズ2」でも登場する、葛葉一族を深掘りした作品。画面はPS2「デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王」

 今作「ソウルハッカーズ2」ではシリーズ初の女性主人公。アングラ感全開の前作とは打って変わり、サイバーかつポップな雰囲気をまとった、まさに現代版の「ソウルハッカーズ」といった形になっている。

 キャラクターデザインに三輪士郎氏を迎え、大きく変わったビジュアル面で過去作のファンから少々不安気な声も上っていたりもするが、肝心のゲーム性は実際どういったものになっているのか、プレイして見えてきた「ソウルハッカーズ2」の内容をお届けしよう。

【『ソウルハッカーズ2』PV04】

これぞ大人のRPG! アトラス節全開のダークな世界観

 初めは何てことない日常から始まり、徐々に盛り上がりを見せていくのがRPG定番の流れだが、本作は“世界の終わりが迫っている”という、冒頭から終末感全開の展開を見せる。

 ある2人の人間の死が終焉のトリガーとなっており、2人の死を阻止するために、人智を超えた存在「Aion」のエージェント「リンゴ」と「フィグ」が人間の世界に降り立つところから物語が始まる。

大いなる存在によって世界の終わりが予言されている。ダーク感を開幕からブッ込んでくる

 開始5分から引き込まれる超展開だが、リンゴと共に戦う仲間キャラクターとの出会いも普通じゃない。「アロウ」、「ミレディ」、「サイゾー」の3人のデビルサマナー(悪魔召喚師)がパーティーメンバーとして加わるのだが、3人とももれなくダークサマナーが所属する組織「ファントムソサエティ」の手によって命を奪われてしまう。

 ゲーム序盤からメインキャラクターがあっけなく死んでいき、仲間たちとのファーストコンタクトは“すでに絶命している状態”という、なんともアトラスらしいブラックな魅せ方だ。もちろん亡骸のまま仲間になる訳はなく、リンゴが持つ「ソウルハック」という超常的な力によって復活を遂げる。

ソウルハックで死者の魂にアクセスして、現世へと呼び戻す

 キャラクターの関係性も面白く、アロウは日本を陰で防衛する組織「ヤタガラス」に所属し、それに対してミレディは世界を終わせるために動く「ファントムソサエティ」のデビルサマナーなのだ。

 アロウとミレディは互いに敵対関係であり、もう1人のサイゾーはフリーランスのデビルサマナー。全員が異なる立ち位置の人間なのだが、利害の一致で供に行動するという“大人な関係性”も王道とは一味違う格好良さがある。

 行き当たりばったりで集まった3人なだけあって、パーティーメンバーながら表面的な部分しか分からず謎が多い。彼らがどういった人間なのか、ゲームを進めるにつれて徐々に明かさていくのも本作の見所である。

目的のために互いを利用し合うという割り切りの関係性
始めは壁を感じるが、物語が進むにつれてどう変わっていくのかも注目だ

「ペルソナ」ファンも入り易い、新しく生まれ変わったゲームシステム

 ここからはゲーム部分に触れていこう。

 本作はダンジョンを攻略しながらストーリーが進んでいくスタンダードなRPGスタイルだ。王道でありながら本作ならではの要素も光り、ダンジョン内では自分の仲魔(悪魔)が別行動で探索をし、回復してくれたり、アイテムを探してくれたりと戦闘以外でもリンゴたちをサポートしてくれる。この新システムの導入により、これまでの作品以上に仲魔への思い入れが強くなる。

 シリーズの醍醐味である、悪魔を仲間にする「悪魔交渉」も本作ではダンジョン内を探索する仲魔が交渉相手を見つけてきてくれる仕様になった。交渉内容もシンプルになり、悪魔の要求に1回応えれば必ず仲魔になってくれる。過去作のように金やアイテムを散々もらった挙句に仲魔にならずに帰っていくという悪魔的な行動をとらなくなった分テンポよく仲魔を増やせるのはとてもいい。悪魔との会話や駆け引きを楽しむ従来の交渉システムが好きな筆者としては少し寂しい気がするが、それは「真・女神転生」シリーズで楽しむとしよう。

一緒にダンジョンを探索してくれることで、仲魔がより身近に感じられるようになった
悪魔交渉の他愛もない会話も味だったのでなくなったのは残念だが、ゲームの快適さの面で見れば断然今作の方が親切設計である

 ダンジョン内にいるのはもちろん仲魔だけではなく、敵悪魔も徘徊している。今作ではシンボルエンカウント形式となっており、フィールド上でエネミーシンボルに攻撃を当て、ダウンしたところを接触することで先制やバトル開始時にダメージを与えるボーナスアタックが発動。戦いを有利に運ぶことができる。

 逆にダウンを取らずに敵と接触してしまうと敵に先制を取られることも。本作はザコ敵であっても手強く、たった1回の先制攻撃で味方パーティーが崩壊なんてことも普通にありえるので確実にダウンを奪って戦うのが重要になる。

攻撃で敵をダウンさせて、そのまま無視することもできる
全体攻撃のボーナスアタックは確率で発動する

 ダンジョンの中には攻撃をしてもダウンがとれない「リスキーエネミー」という敵も稀に出現する。コイツが桁違いに強く、過剰にレベル上げをしていなければ勝つことが難しい強敵である。

 基本的にはリスキーエネミーとの戦闘は避けるのがベターなのだが、一度発見されるとこちらを執拗に追いかけ回してくるから厄介極まりない。逃げ進んだ先にリスキーエネミーがもう1体いたときの絶望感はぜひ一度味わってもらいたい。

普通の敵とはちがい、リスキーエネミーは紫の大きなシンボルとなっている
まともに戦ったら全滅もありえるので、つかまったら逃走が吉
倒せば膨大な経験値が入るので、勝てるようになればレベリングにうってつけの相手だ

 RPGの要といえる戦闘周りについても触れていこう。

 前作までは主人公とパートナーキャラ、それに加えて悪魔というパーティー構成であったが、本作では人間4人のパーティで“仲魔は装備扱い”という大胆な仕様変更がなされている。

 装備する悪魔によってキャラクターが使用できるスキルやパラメーター、耐性や弱点などが変化するので、敵のタイプや状況に合わせて随時仲魔を変えていくという、戦略性の高いバトルが楽しめる。

これまでのシリーズでは孤独な戦いだったが、今作では人間4人の大所帯
キャラクターが使えるスキルは悪魔に依存する
戦闘中でも仲魔を切り替えられるので、臨機応変な使い分けが重要になる

 近年のアトラス作品は「真・女神転生3」から登場したプレスターンバトルをベースにしたものが多かったが、本作では戦い方によって行動回数が増減することはないオーソドックスなスタイルとなっている。

 だがもちろん「弱点をついて大ダメージ、以上!」なんて何の捻りもないバトルシステムをアトラスが採用する訳もなく、本作の目玉ともいえる新バトルシステムの「サバト」がある。

 「サバト」は、敵の弱点をつくことで仲魔を場に召喚していき、パーティー全員の行動終了時に召喚した仲魔が敵に全体攻撃を仕掛けてくれるというバトルシステム。弱点をつけばつくほど仲魔がどんどん召喚されて火力も大幅に上がっていく。一発で特大ダメージを与えられるのは痛快の一言。強敵のボス戦では特にサバトが攻略のカギになってくるので積極的に弱点を狙っていきたい。

弱点を当てると仲魔の影が出現。サバトのスタンバイ完了だ
ターン終了時に仲魔による一斉攻撃が発動。サバトは全体大ダメージなのでザコ戦もサクッと終わらせられて便利である

 これまでのシリーズでは悪魔を召喚&維持するのにマグネタイトというポイントが必要だったのだが、本作ではシナリオ上従来の召喚システムとは異なるためか、マグネタイトシステムは存在しない。これは新規ユーザーもとっつきやすいだろう。

 悪魔を装備するという仕様は、従来の「デビルサマナー」シリーズからは大きな変更点だ。昨今の「ペルソナ」シリーズでは主人公がペルソナを付け替えることができるため、「ペルソナ」ファンにも馴染みが深いシステムだろう。さらにこちらは主人公リンゴだけでなく、仲間すべての悪魔を自由に変更可能だ。戦略性は広がり、面白さは折り紙付きである。

最強の悪魔作りにサブクエスト、やり込み要素も充実

 ストーリーを追う以外にも、本作にはやり込み甲斐のある遊びがこれでもかと詰め込まれている。

 まずは何といっても最強の悪魔作りがもっとも熱の入るポイントだろう。悪魔と悪魔を掛け合わせて新しい悪魔を生み出す、シリーズではなくてはならない「悪魔合体」システムは本作でも健在。シルク・ドゥ・業魔殿というサーカステントで合体を行なうことができる。合体は、手持ちの2体の悪魔を合体させる「2身合体」と、特定の悪魔を複数体合体させて強力な悪魔を生み出す「特殊合体」に加え、後述で触れる「検索合体」、「オススメ合体」が用意されている。

悪魔合体の館とは思えない華やかさのシルク・ドゥ・業魔殿
2身合体はお手軽に合体でき、特殊合体は特定の悪魔を揃えなくてはならないので敷居が高い。条件が厳しい反面、強力な悪魔を生み出せる

 これまでのシリーズでも散々体験してきた悪魔合体だが、やはり手持ちの悪魔がより強力な悪魔にグレードアップする瞬間は飽きることなく今でも心躍らされる。強さが格段に跳ね上がったときの全能感、そしてお気に入りの悪魔と供に戦えるという充実感は普通のRPGでは味わえない感覚だ。

 合体で作れる悪魔はリンゴと同じレベルまでという制約があり、“目的の悪魔を作る素材は集まっているけれど作れるレベルまでが遠い”というときの歯痒さは尋常じゃない。しかし、そのレベル制限があることで常にプレイのモチベーションを高く保て、目標レベルに近づいていく過程をも楽しむことができる。まさに悪魔的ゲームバランスといえるだろう。

筆者が真っ先に作りたかったモー・ショボー。しかしレベルが全然足らない
レベリングの末、目的の悪魔が作れたときの喜びは、まるでエンディングを迎えたかのような達成感(やや誇張)

 悪魔合体システム自体に大きな変化はないものの、使いやすさは目を見張るほどの進化を遂げている。合体可能な範囲からベストな悪魔をチョイスしてくれる「オススメ合体」の実装をはじめ、中でも特に素晴らしいのが「検索合体」メニューの充実さである。作りたい悪魔の種族や得意な属性、さらには欲しいスキル属性など、とにかく詳細な絞り込みで作りたい悪魔を検索することができるのだ。膨大な数の悪魔がいる中、欲しい悪魔を簡単に見つけられるようになったのは非常に便利である。

オススメの悪魔が常に表示されているので、何を作るか迷っている際にとても助かる
細かい検索条件から欲している悪魔を見つけ出せる驚きの便利機能

 悪魔は合体で強くするだけではなく、キャラクターと同様にレベルを上げて成長させることができる。パラメーターの上昇や様々なスキルの習得、さらに悪魔合体で強力なスキルを引き継ぐことも可能。下位悪魔であっても成長次第で一線級で活躍させられるのは悪魔好きとしては嬉しい限りである。

自分の推し悪魔がいつまでも使える良心設計

 悪魔召喚に使う道具COMPを「COMP SMITH」というショップで改造も可能。改造することによって攻撃力の上昇や消費MP軽減など様々な特殊効果を付与させ、キャラクターの強さを底上げできるのだ。

 改造にはお金の他に特定の素材が必要となり、素材は仲魔からもらえたり、敵からドロップで手に入れることができる。効果の高い改造となると簡単には手に入らない貴重な素材を集めなければならないので、ひたすらダンジョンに籠っての悪魔狩りが捗りそうだ。

強化できる性能はCOMP(キャラクター)ごとに異なる
敵が手強く感じたら素材を集めてCOMPを改造。これだけで戦いがかなり楽になる

 やり込みの定番であるサブクエスト系の要素もしっかり用意されている。「Clubクレティシャス」という店では、デビルサマナーにしか解決できない様々なリクエストを受注することができる。特定の人物にアイテムを届けるお使い的なものから指定された悪魔の討伐、さらには悪魔に関するクイズなど、その内容は多岐にわたる。

 クリア報酬はお金やアイテムの他にショップのラインナップが増えるなんてものもあるので、リクエストをこなすことでゲームの進行が有利になる。

過去作にも登場した「マダム銀子」からリクエストを受注できる
リクエストは、ストーリー進行の合間にサクッと手軽に楽しめる

 ストーリーの本筋とは別にある広大なダンジョン「ソウル・マトリクス」もかなりの遊び応えがある。ソウル・マトリクスは、ソウルハックで蘇った3人の記憶を具現化した空間となっており、キャラクターごとに用意された3つのダンジョンを攻略していく。

 ダンジョンを進んでいくと、キャラクターの過去が垣間見えるビジョンクエストが発生し、メインのストーリーでは語られなかった仲間たちの秘密が明らかになっていく。ネタバレになるので詳しくは書けないが、仲間たちの意外過ぎる一面を見られたりするので必見だ。

ソウル・マトリクスは、本編のダンジョンと比べてかなりの広大さ
仲間の隠されていた部分が見られるビジョンクエスト。攻略を進めればキャラクターへの感情移入度がグッと上がる

 ゲーム本編と同等レベルで先の気になる部分なのだが、このダンジョンは簡単には踏破することができない。ソウル・マトリクスでは随所に進行を妨げるゲートが存在し、解放するには仲間との絆である「ソウルレベル」を一定まで上げる必要があるのだ。

 ソウルレベルはゲーム中に発生する選択肢や、「Barヘイズルーン」で仲間と酒を飲むなどのイベントで上げることができる。通常のレベルと違い、好きなときに好きなだけ上げるということができないので、ソウル・マトリクスを重点的に攻略していくというよりは本編のストーリーと並行して進めることになる。

既定のソウルレベルに達していれば、進む道が拓かれる
仲間とのコミュニケーションでソウルレベルを上げられる

 本作は遊び尽くすのにどれだけかかるのか想像ができないほど遊び応えのあるボリュームとなっている。さらにDLCでは新キャラクターの「ナナ」が活躍する追加シナリオ「Lost Numbers」もあり、推奨レベル10〜99の複数のリクエストで構成されているとのことで、こちらもかなり骨太な内容が予想される。

新規ユーザーと古参ユーザーのどちらも楽しめる“ニュートラル”を貫いた傑作

 今回「ソウルハッカーズ2」を数十時間プレイしたが、RPGに定評のあるアトラスが手掛けた作品だけありクオリティの高さは文句の付け所がなかった。

 地味ながらプレイしていて感心させられたのが“徹底したゲームの快適さ”である。街で別の場所に移動したいときは、わざわざ出口まで操作せずともオプションボタンを押すだけでアクセスマップから別の場所へ一瞬で飛べたり、ダンジョン内で体力を回復する際もいちいちメニューを開く必要なくワンボタンでパーティメンバー全員を回復できる。さらにバトルは高速オートも備わっていたりと、とにかくかゆい所に手が行き届いた完璧な作りとなっている。

街にいるときはもちろん、ダンジョンからも一瞬でアクセスマップに移行することができる
オートバトルでは、高速で通常攻撃を繰り返す。レベル上げ作業などで重宝する

 「ソウルハッカーズ2」とナンバリングタイトルになっている訳だが、世界観やストーリーなどは前作と直接的な絡みは特になく、前作をプレイしていなくても本作単体で100%楽しむことができる。2と聞いて躊躇している人も安心してもらいたい。

物語の中心となるメインキャラクターは、すべて今作から初登場となる人物

 新規に優しい作りなだけに、逆にコアなファンからは“前作とは完全なる別物”とマイナスに捉えられてしまいそうだが実際はそうではない。ヴィクトルやマダム銀子などの過去作からの続投キャラや、ヤタガラスとファントムソサエティなどの組織が健在だったりと過去作をプレイしていればニヤリとできる要素が詰まっている。個人的には葛葉一族がこの時代にもまだ存在していたことに感動した。

 そしてDLCでは「デビルサマナー ソウルハッカーズ」のパートナーキャラである「ネミッサ」が登場することも決まり、これはもう紛れもなく「ソウルハッカーズ」の正統的な新作といえるだろう。

ヤタガラスや葛葉など、過去作の設定が生きているのはファンとしては嬉しいポイント
3Dモデルのネミッサが見られる日が来ようとは。金子一馬氏のタッチが良く出ている

 新規がおいてけぼりにされない入り易さと、コアなユーザーへのファンサービス、その両方が絶妙なバランスで共存している「ソウルハッカーズ2」。どちらの層にも遊んでもらいたい1本である。