「Xbox Series X|S」レビュー
Xbox Series X|S
2020年11月9日 00:00
Xbox Series X|Sタイトルの拡充に期待。Bethesdaの出方によっては世界が変わる
コンピュータは「ソフトがなければただの箱」と言われてきたが、それはゲーム機も同じだ。現行世代は、Nintendo Switchが、PS4やXbox Oneの数倍の差を付けて売れまくっている。それはNintendo Switchがハードウェア的に優れているかというよりは、「あつまれ どうぶつの森」や「大乱闘スマッシュブラザーズ」、「ポケットモンスター ソード・シールド」のように、そのプラットフォームでしか体験できないタイトルが提供できるかどうかが大きく影響している。
その点でXbox Series X|Sは、PS5と比較してローンチタイトルで大きな遅れを取っている点は否めない。「Halo Infinite」は予想通り遅れたし、「Forza Motorsport」の新作などまだ影も形もない。ファーストパーティーのローンチタイトルはまさかのゼロだ。これは「Marvel’s Spider-Man: Miles Morales」や「リビッツ!ビッグ・アドベンチャー」、「Godfall」といった複数のPS5タイトルをキッチリ揃えてきたPS5とは対照的だ。
Xbox Series X|Sは、過去3世代の後方互換を備え、ゲームのサブスクリプションXbox Game Passを擁することによって、ローンチ時点から数千タイトルに及ぶタイトルラインナップを誇る。これはゲーム史上前代未聞の出来事で、これ自体は素晴らしい話だ。でも、だからといってローンチタイトルがなおざりでいい、ファーストはゼロでいいということにはならないだろう。
日本マイクロソフトは、Xbox Series X|Sの発売にあたり、ローンチタイトルのラインナップを発表しなかった。何度か問い合わせてみたものの、米国で発表されたタイトルが日本で出るのか出ないのかすら今なおわからず、その結果として「Yakuza: Like a Dragon(邦題:龍が如く7 光と闇の行方)」の無期延期という本来は避けられる悲劇を引き起こしてしまっている。
ローンチタイトル不足を過去のものとして未来に目を向けると、個人的に楽しみにしているのは3つだ。1つは、「Microsoft Flight Simulator」だ。ローンチには間に合わなかったが、PC版は依然としてヘビーな存在で、ハイエンドPCでも4Kだとかなり重くなる。これがXbox Series Xではどうなるのか。日本との親和性が高く、ぜひ日本語版での登場を期待している。
2点目は「Forza Motorsport(仮称)」だ。「Forza」シリーズとしては異例の前作から4年をあけて、“天変地異でも起きない限り”2021年秋にリリースされるはずだ。気になっているのはその際のターゲットフレームレートをどこに設定するのか。「Forza」シリーズはゲーム機の上限である60フレームにこだわってきた。現行の「Forza Motorsport 7」では、Xbox One Xでシリーズ初となる4K/60fpsを実現。となれば、Xbox Series Xでは、当然上限である4K/120fpsにチャレンジしなければならない。果たしてそれは可能なのか、今からワクワクしている。
3点目は、Bethesdaのタイトルがどういう扱いになるのかだ。既報の通り、Microsoftは75億ドル(約7,850億円)で、Bethesda Softworksを傘下に持つZeniMax Mediaの買収を発表した。「Fallout」、「The Elder Scrolls」、「DOOM」、「Quake」、「Dishonored」、そして三上真司氏率いるTango Gameworksのタイトルなど、Bethesdaが擁する強力なラインナップがすべてMicrosoftのものとなる。
現在開発中の「Starfield」や「The Elder Scrolls VI」や、現在水面下で間違いなく開発しているであろう「Fallout 5」がどういう扱いになるのかはまだ誰にも分からない。ただ、Bethesdaが昔からXboxと蜜月だったのは公知の事実で、このままXbox Series X|S独占に移行する可能性も十分にある。
1つ判断の目安になりそうなのは、買収が完了する2021年会計年度終了時点、つまり2021年6月30日の時点で、いわゆる“次世代機戦争”がどのような状況になっているかだ。拮抗していれば、決定打としてXbox Series X|S独占もしくはタイムエクスクルーシブに踏み切る可能性もあるし、現在のようにどうしようもないぐらい差が付けられていれば、何事もなかったように同時発売になるかもしれない。まさかの両者共倒れになっていれば、Bethesdaがこれまで軽視してきた任天堂プラットフォームへの本格展開やクラウドへの流れが促進されるだろう。いずれにしてもBethesdaの動きはゲーム業界に大きな影響を与えるのは間違いない。引き続き注目していきたい。
真の実力を発揮するのは2021年以降
個人的にXbox Series X|Sは、歴代のXboxの中でももっともお気に入りの1台になった。本命はやはり上位モデルのXbox Series Xだが、プレビューでも詳しく取り上げたとおり、Xbox Series Sも絶妙な落とし所を実現した傑作機で、理想を言えば両方欲しい。
確かにファーストパーティのローンチタイトルがゼロというのはガッカリだが、「アサシン クリード ヴァルハラ」や「Call of Duty: Black Ops Cold War」、そして「サイバーパンク2077」と、サードパーティーに強力なラインナップが目白押しだし、Xbox Game Passや後方互換タイトルもたっぷりある。遊ぶタイトルには困らない。
読者の中には「めちゃめちゃ欲しいのに、買えないんだけど?」という方も多いと思う。気休めにならないかもしれないが、11月10日のローンチ時点では、Xbox Series X|Sのスペックをフルに活かした次世代ゲーミングはまだ誰も楽しめない。HDMI 2.1世代のモニターはまだマーケットに出回っていないし、Xbox Series X|Sが備えるクラウドサービスProject xCloudは、2021年前半までサービスが延期された。そのクラウドサービスが頼みの綱とする5Gサービスも、まだまだ対象エリアは限定的だ。その上「Halo」も「Forza」もまだ完成まで時間が掛かる。だからまだ慌てる必要はない。
そうした事情は踏まえた上で、ぜひXboxファンは、過去の資産をより優れた環境で堪能するためにXbox Series X|Sに手に取って貰いたいし、不運にもこれまでXboxに縁がないゲームライフを送ってきたゲームファンは、本体プラス数百円の投資で、Xbox Game Passをフル活用した次世代のXboxライフを送れる大チャンスだ。Xboxコミュニティの仲間入りを果たすこの絶好の機会を日本のゲームファンはぜひ逃さないようにして欲しい。
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