「Xbox Series X|S」レビュー

Xbox Series X|S

“快適さ”を劇的に進化させるXbox Velocity Architecture

 ゲーム機としては、Xbox Series Xは、8コア3.8GHz駆動のAMD Zen 2 CPUと、RDNAアーキテクチャ採用の1.825GHz駆動のGPUを搭載し、ゲーム機として初となる4K/60fpsを標準動作とした。姉妹機のXbox Series Sはスペックを落とし、1440p/60fpsを標準に、アップスケールで4K対応する。

 ここまでなら、単に“ハイスペックなXbox One”だが、Xbox Series X|Sでは、Xbox Velocity Architectureと呼ばれるアーキテクチャを採用することで、圧倒的な起動時間やロード時間の短縮を実現。前世代よりグラフィックスクオリティを高めながら、ロード時間を短縮するという、これまでの次世代機の常識を覆すことをやってのけている。

 考えて見ればこれは凄いことだ。グラフィックスクオリティが上がれば、それだけデータサイズが増える。4Kの高解像度で美しいグラフィックスを実現するためには、データそのものも高画質でなければならず、自ずとサイズは大きくなる。従ってストレージのアーキテクチャが同じなら、ロード時間はどんどん長くなる。それがこれまでの常識だった。

 Xbox Series X|Sの最大のポイントは、グラフィックスの進化ではなく、快適さの進化だ。下記は、Xbox Series X|S世代のタイトルのベンチマーク結果だ。「DiRT 5」、「Gears Tactics」、「Gears 5」に加えて、ようやくXbox Series X|S版が動作した「ウォッチドッグス レギオン」、そして新たにXbox Series X|Sへの最適化が完了した「Forza Horizon 4」の計5タイトルで計測した。

【Xbox Series X|Sベンチマーク結果】
「Gears 5」(2019年、The Coalition)
「Gears Tactics」(2020年、The Coalition)
「Forza Horizon 4」(2018年、Turn 10 Studios/Playground Games)
「ウォッチドッグス レギオン」(2020年、Ubisoft)
「DiRT 5」(2020年、Codemasters)

 いずれもXbox Series X|Sに最適化されており、Xbox One X|Sよりも美しく、フレームレートも向上しているにも関わらず、起動時間は劇的に短くなっている。これが今世代の真骨頂だ。

 これは単純に起動のみのテストだが、このスピード感は、それ以外のセーブデータのロード、エリアチェンジの読み込み、ステージ間の読み込み、ファストトラベル等、大量のデータ読み込みが発生するタイミングでの待ち時間がすべて短くなる。

 その上で大きな魅力といえるのが、4K/60fpsを安定して出せるパフォーマンスを実現したところだ。4K自体は、すでに現行世代で実現している。Xbox One X、PS4 Proがそうだが、実際は4Kであってもアップスケールだったり、本当に4K出ていたとしても30fps固定、あるいはフレームレートが安定しなかった。

 Xbox Series Xでは、余力を持って4K/60fpsに対応している。最大120fpsを実現するスペックを搭載しているためそのくらい当然かもしれないが、PCでも現行世代のゲームを4K/60fpsで動作させるのはハードルが高いだけに、実際にプレイするとその快適さに衝撃を受ける。起動の速さ、ロードの短さ、クィックなレスポンス、その上で美しいグラフィックスでの4K/60fpsのゲームプレイ。Xbox Series Xでは、こうしたゲームシーンが当たり前になる。

【Xbox Series X「Forza Horizon 4」4K/60fps(ドライブ編)】
ここから紹介する動画はぜひYouTubeで4Kで見て貰いたい。より美しくなったグラフィックスで4K/60fpsで悠々動作するXbox Series X

【Xbox One X「Forza Horizon 4」 4K/30fps(ドライブ編)】
3年前は4K表示自体が画期的だったが、今改めてプレイすると30fpは厳しい

【Xbox Series X「Forza Horizon 4」4K/60fps(高速編)】
高速でも撮ってみた。コクピットビューからスピード感たっぷりの映像だ。やはりフレームレートが高いと高速時のハンドリングが全然違う

【Xbox One X「Forza Horizon 4」4K/30fps(高速編)】
高速帯に入ると操作がクルマが見えにくくなり、途端にゲームの難易度が跳ね上がる

クイックレジュームはやはり最強

 そして2度のプレビューでも紹介してきたが、Xbox Series X|S固有のクイックレジューム機能はやはり最強だ。クイックレジュームとは、PCのように複数のゲームを多重起動した状態で、わずか数秒で別のゲームに遷移できる機能を指す。

【Quick Resume Trailer】

 今回筆者は、Xbox Series X、Xbox Series S、Xbox One X、Xbox One Sの4台を、何十回と抜き差しを繰り返しながら使い倒したが、現行モデルのXbox One X|Sは、動作の遅さ以前に、クイックレジュームがない事にイライラさせられた。

 クイックレジュームのある生活に慣れるとわかるのは、人間は、今やっていることを片付けずに次のことを始めたくなる生き物であるということだ。クイックレジュームの本質は、複数タイトルを同時に立ち上げられることではなく、今やっているタイトルをそのままにして、次のタイトルに移行できるところだ。

 たとえば、「GTAIV」などのお気に入りの後方互換タイトルを遊んでいたとしよう。そのときに「Gears 5」でも「フォートナイト」でも何でもいいが、フレンドやコミュニティからオンラインプレイに誘われた際、Xbox Series X|Sなら何のためらいもなくそのままジャンプインできる。Xbox Oneや他のプラットフォームなら、途中までのプレイ状況を諦めるか、セーブまで行かなくてはならないし、いずれにしてもゲームを起動し直さなければならない。その天秤で面倒くささが買ってしまう場合、「ごめん、『GTAIV』でローマンのお使い中だわ」といって断ることになる。

 Xbox Series X|Sなら、そのまま行って、マルチが終わったらそのまま戻ってくるだけだ。コミュニティ活動を阻害せず、それでいて思いっきり自分のゲームライフに打ち込める。クイックレジュームはまさにゲームコンソールの歴史においてゲームチェンジャーといっていい機能だと思う。

 注意点としては、オンラインゲームではクイックレジュームは効かないところと、動画のキャプチャは強制的に中断させられるところ。そこさえ気をつければ、Xbox Series X|S内では複数のゲームにまたがって遊び放題だ。

【クイックレジューム】
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