「Xbox Series X|S」レビュー

Xbox Series X|S

Xbox Series X|Sの後方互換は、次元が違う

 Xbox Series X|SとPS5が互いにアピールしているポイントの1つが後方互換への対応だ。新型ゲームコンソールにおいて、後方互換への対応は常に注目される。今あるソフトウェア資産が活かせるのか活かせないのか。これはまさにゲーマーにとって死活問題だからだ。

【後方互換機能】
Xbox Series X|Sは、4世代掛けて最強の後方互換機能を実現した

 古くは任天堂が、Wiiでゲームキューブの後方互換を実現し、まったく異質な新ハードへの移行を促進させ、記録的な大ヒットを生んだ。続くWii UもWiiの後方互換をサポートしたが、プラットフォームとしてはうまくいかず、現行のNintendo Switchは一切の後方互換を断ち切っている。

 後方互換をもともとお家芸としていたのはプレイステーションだった。PS2でも、PS3でも後方互換を実現。ところがPS3は新型機以降から後方互換が不完全になり、初期型以降のPS3では、コストカットのために設計を変えた結果、PS2の後方互換が非対応となった。PS4では後方互換を一切サポートしないという決断が下されたが、批判が多かったためか、あるいはXbox Oneが後方互換をアピールし始めた影響からか、PS5ではPS4の後方互換をサポートしている。だが、あくまでPS4だけで、PS、PS2、PS3のタイトルは動かない。

 Xboxはというと、Xbox 360時代からPS3に追いつけ追いこせとばかりに、後方互換機能に注力してきた。Microsoftはゲームビジネスは最後発ながらも、PC OSの担い手として、ゲーマーにとっての魂が、ゲーマーお気に入りのゲームの互換性と、そのセーブデータにあることを理解していた。

 しかしその道程は苦難の連続で、PS3やWiiのように前世代と同じチップを搭載してそのまま実行するというハードウェア的な解決法ではなく、ソフトウェアの会社らしくエミュレーションで解決しようとした。Xbox Oneでは、2013年のローンチの時点では、後方互換を未サポートと見せかけつつ、翌2014年のE3でXbox 360、2017年には初代Xboxの後方互換を表明。いずれも1タイトルずつ、エンジニアが手付けで対応させる手間が必要で“人力”での対応だった。

 Xboxユーザーならご存じの通り、後方互換の実現には長い年月が掛かり、予定よりかなり遅れての提供となった。2019年には次世代機への後方互換に注力するために、Xbox One向けの後方互換タイトルの拡充を一時停止する事態になったりもしたが、MicrosoftはXbox事業の中核機能として一貫して後方互換にこだわり続けてきた。そしてXbox Series X|Sでは、Xbox Oneでサポートしていた初代Xbox、Xbox 360タイトルに加えて、Xbox Oneタイトルも丸ごとひっくるめて3世代の後方互換を実現した。

【Xbox Series Xメニュー画面】
見よこの4世代のゲームが同居した不思議なメニュー画面を

 繰り返すが、Xboxの後方互換はディスクがあれば動くという単純なものではなく、1タイトルずつメーカーの許諾を受けてエンジニアがリビルドし、ディスクもしくはアカウントに紐付けられたデジタル版購入情報をキーに、ダウンロード版をエミュレーションで駆動するという最高に面倒くさい方式を採用している。このためすべてのタイトルが動くわけではないし、手持ちのディスクの動作を保証しているわけでもないという点に注意が必要だ。

【後方互換タイトルの遊び方(ディスク版)】
手持ちのディスクを入れる
インストールする
起動する。Xbox 360互換モードになる
あとは遊ぶだけだ。ディスクはその都度必要になる

【後方互換タイトルの遊び方(ダウンロード版)】
マイコレクションのフルライブラリから、手持ちの中から任意のゲームを選ぶ
今回は2008年にXbox 360向けにリリースされた「斑鳩」をチョイス
インストールする。551MBと非常に軽量なタイトルだ
あとは遊ぶだけ

 しかし、いまあなたがXbox Oneで動かしている後方互換タイトルは基本的にすべてXbox Series X|Sでも動くというのは素晴らしいニュースだろう。「クリムゾンスカイ」(2000年、Zipper Interactive)も動くし、「Splinter Cell」(2003年、ユービーアイソフト)も動く。オープンワールドの金字塔「グランド・セフト・オートIV」(2008年、ロックスターゲームス)も当然動く。しかも単に動くだけでなく、Xbox Series X|Sならではのクイックな起動、ロードの短さに加えて、HDRも自動付与され、さらにクイックレジュームにも対応し、Xbox Series Xワイヤレスコントローラーにもフル対応する。

【大事なセーブデータはクラウド管理で安心】
当時のセーブデータはクラウドから引っ張ってくる
Xbox 360でクリアしたタイトルの1つ「Bioshock Infinite」を起動してみる
セーブデータは2013年当時のものがそのまま残っている
ラスト手前から再プレイ!

 さらに、Xbox Oneユーザーならご存じの通り、セーブデータはすべてクラウドから引っ張ってくるため、Xbox Oneでのプレイ環境を、そのままシームレスに移行できる。しかもだ。セーブデータは、旧から新に移行するわけではなくクラウド同期であるため、Xbox Series X|Sでプレイした後、Xbox Oneに戻れば、Xbox Series X|Sのプレイ状況をクラウドで再同期し、続きをXbox One側でプレイできる。つまりサブ機としてXbox Oneも引き続き活用できる。Xboxの後方互換は、3世代を経てとてつもない領域に突入していることがわかって貰えるだろうか。ゲーマーならXbox Series X|Sを買わない理由がない。ゲーマー歴が40年を超えた筆者の正直な感想だ。

【キャプチャもクラウド経由で楽々】
クラウドという点では、キャプチャ素材の管理もクラウドで楽々

 後方互換の締めくくりとして、Xbox Series Xプレビュー時は動作しなかった初代Xbox タイトルも含めた後方互換タイトルのベンチマークを掲載しておきたい。初代Xboxから、Xbox Oneまで全部速くなるのが、Xbox Series X|Sの後方互換機能だ。

【初代Xboxタイトル】
「Splinter Cell」(2003年、ユービーアイソフト)
「Ninja Gaiden Black」(2005年、テクモ)
「クリムゾンスカイ」(2000年、Zipper Interactive)

【Xbox 360タイトル】
「Fallout 3」(2008年、Bethesda Game Studios)
「Bioshock Infinite」(2013年、Irrational Games)
「Alan Wake」(2010年、Remedy Entertainment)

【Xbox Oneタイトル】
「RED DEAD REDEMPTION II」(2018年、Rockstar Games)
「Tell Me Why」(2020年、Dontnod Entertainment)
「Forza Motorsport 7」(2017年、Turn 10 Studios)