「FINAL FANTASY VII REMAKE」レビュー
FINAL FANTASY VII REMAKE
蜜蜂の館エピソードは必見! 「FFVII」を“濃密”に再構成したスクエニ渾身の一作
- ジャンル:
- RPG
- 発売元:
- スクウェア・エニックス
- 開発元:
- スクウェア・エニックス
- プラットフォーム:
- PS4
- 価格:
- 8,980円(税別)
- 発売日:
- 2020年4月10日
2020年4月6日 19:00
プレイステーション 4用RPG「FINAL FANTASY VII REMAKE」(以下、FFVII REMAKE)は、想像以上にボリュームたっぷりの作品である。
なんと言っても容量は80GBとちょっと(製品版相当のレビュー用ロム)。80GB超えはまさに超大作級であり、「FFVII」というモンスタータイトルを真正面からリメイクする気合を、この容量からひしひしと感じてしまう。
ではその容量が何に割かれているかというと、「FFVII」世界をより美しく、感動的に、なおかつ濃密に描いていること。スラムの寂れ具合、ウォールマーケットのギラギラとしたいかがわしさといった街並みの空気感のみならず、バレット、エアリス、ティファたちの揺れ動く心の機微までも読み取れるような、声優の演技と細かい表情の変化が表現されている。
「FFVII REMAKE」はその名前通り、1997年に発売された「FINAL FANTASY VII」のリメイク作である。大筋のストーリーは共通であるものの、オリジナルの要素やエピソードがたっぷり盛り込まれているため、「FFVII」でありながら全く新しい作品としても楽しめる。
「FFVII」は、筆者が10代のときにプレイして衝撃を受けたタイトルだ。その「FFVII」が現代の技術で蘇り、よりリアルさを増したクラウドたちを操作できるだけですでに筆者にとっては数億点の価値がある。そんな常時の多幸感がある上で、探索、アクション、ストーリーと見どころが本当に多い本作の魅力を述べていきたい。
なお本稿は、事前にプレイした内容をもとに記事を執筆している。内容には多少のネタバレを含んでいるので、ご注意いただきたい。
「FFVII REMAKE」はストーリーの密度が濃い!
「FFVII REMAKE」を通してプレイして思うのは、本作の最大の魅力はストーリーだということ。もとよりストーリーの評価が高い「FFVII」なのだから当然と言えば当然なのだが、「FFVII REMAKE」ではその描かれ方の密度が違う。
冒頭にも書いたが、本作のカットシーンではキャラクターたちの表情が本当に細かく変化する。クラウドが素っ気なく「興味ないね」と言う同じセリフであったとしても、相手を拒絶しているのか、照れ隠しなのかがもうダイレクトに伝わってくる。また、エアリスやティファは「こんなん惚れてまうやろ!」と思うほどクラウドと距離感が近い。こちらをじっと見つめてみたり、柔らかく微笑んでみたり。エアリスもティファも、本当にかわいくて困る。
かわいいのだから人気者なのは当たり前で、七番街スラムでティファと連れ立って歩いていると、街の人々は「ティファちゃん、ティファちゃん!」とティファにばかり声をかける。そうなると不思議なもので、「いま、美人で人気者のティファと一緒に歩いているんだ俺は」という謎の優越感(とても気持ちいい)に浸れる。「クラウドって、こんな気持ちで街を歩いていたのかな」と思ってしまいます。
また濃密という点では、オリジナルストーリーもどんどん入ってくるのがポイント。ストーリーラインについては「原作をベースとしながら再構成、再解釈をしている」ものなので、たとえば伍番魔晄炉の突入前には、アバランチメンバーのジェシーの実家に帰るというエピソードが入っている。
ジェシーはゲーム冒頭からグイグイ来るタイプであり、クラウドへのアプローチが原作以上に超積極的。ジェシーの実家へはバイクに乗ることになるのだが、背中にジェシーがいるわけですよ。それで思い切り密着してきて、耳元で意味深な言葉を囁いたりするわけですよ。これ、ジェシーにも惚れてしまう! もう、本当にとてもいいシーンです!!!
さらに七番街スラム、伍番街スラム、ウォールマーケットといった街では、サブストーリーを濃く味わえる。たどり着く街ではクラウドは「なんでも屋」として、困っている人々を助けるために奔走する。
ゲーム中で「なんでも屋」としてのクエストをプレイする機会は何度かある。メインストーリーを進めるためには飛ばしてもいい要素ではあるのだが、ミニゲームもたっぷり入っていて楽しいし、挑戦することで経験値が稼げたり、貴重なアイテムが手に入ることもある。「FFVII」世界の体験という点では、スラムの人々の暮らしや、ウォールマーケットの住人のどうしようもなさがより深く知れる。
個人的には、ギャグ路線強めのウォールマーケットのミッションはお気に入り。バラエティ豊かで楽しいので、サブストーリーは積極的に受けて損はないはずだ。
アクション要素もあるがRPG的。そのバランス感がいい!
戦闘は、アクション一辺倒ではないバランスがとてもいい。その肝となっているのが、マテリアと武器の成長要素だ。
本作では、通常は「たたかう」の連続攻撃のみ使用可能で、ATBゲージが溜まることでアビリティや魔法が使えるようになる。「たたかう」だけではとても敵に勝てないのでマテリアを装備して行動の幅を広げたり、装備する武器を成長させる必要がある。
フィールドを駆け回って敵に攻撃するところは確かにアクションだが、緻密に攻撃するならコマンドメニューを開いて、プレイを一旦止める(厳密には超スローモーション)ことが肝心。アクションでありながら、プレイ中の思考そのものはRPG的なものとなっている。
また装備は、種類ごとに装着できるマテリア数が決まっているのもポイント。武器性能が良くてもマテリアの装着数が少ないと不便だったりするし、マテリア枠があれば多少のステータスの差は気にならなかったりもする。「FFVII REMAKE」においても、マテリア付け替えの試行錯誤が面白いし、マテリアが変われば戦闘の手応えもガラリと変わる。
敵には攻撃一辺倒では倒せない個体も多く、一度「みやぶる」で敵の弱点を調べたり、行動の隙を突いて特定の攻撃を当てることで活路が見出せたりする。RPGらしく、敵の特性に合わせて「誰でどんな行動をするか」が攻略する上では欠かせない。
さらに、敵の攻撃はすべてが避けられるわけではないので、回復行動も大事。誰に「かいふく」マテリアを装備させるのか、「かいふく」マテリアは何個持っていたらいいのか。考えることが準備段階からもう楽しいのである。
総合エンタメとなった「蜜蜂の館」エピソードが見逃せない!
「FFVII REMAKE」の中でもとくに筆者が気に入ったシーンが、「蜜蜂の館」エピソードだ。
ストーリーとしては、「コルネオの館」への潜入に必要ということで、クラウドが女装するところがハイライトとなっている。……のだが、度肝を抜かれたのはクラウドのメイクアップ&ドレスアップシーンが超絶力の入ったエンターテインメントショーになっていたこと。
「蜜蜂の館」には客席と大きな舞台があり、クラウドは舞台上で、絢爛な音楽と大勢のバックダンサーの踊りに囲まれながら華麗にメイクアップされていく。その異様に壮大なスケール、いつの間にか仕上がっていく女装クラウド、そして最高潮の盛り上がりとともに迎えるフィニッシュ。これはもうインパクト大すぎる「再構成」だし、筆者は久々に心の底から笑わせてもらった。
「蜜蜂の館」に至るまでも紆余曲折あって、地下闘技場で戦うことになったり、ドレスアップしたエアリスと一緒に街を歩いたりといろいろある。ウォール・マーケットは街の入り組み具合もネオンの輝きも力が入っているところばかりなので、細かいところまで注目するほど楽しめる。この街だけはとにかく必見だ。
「FFVII REMAKE」は全力にして意外性アリの渾身作
「FFVII REMAKE」は全体をストーリーを辿りながら一本道を進みつつ、見逃したクエストやアイテムは後である程度は取りに戻れるような作りとなっている。どのエリアも特徴的で奥が深く、探索しがいのあるところばかりだ。
あまり多くは語らないが、「『FFVII』だとここはこうだったよね」と思っていると意外な展開に話が進んだりするので、ストーリーを楽しむ上でもいい意味で油断ならない。
往年の「FF」と言えば戦闘勝利時にファンファーレが鳴り、特定のポージングを取ることが一種のアイコンであった。「FFVII REMAKE」ではフィールドの移動と戦闘がシームレスなのでファンファーレやポーズを取るタイミングがないのだが、ある場所ではしっかりとファンファーレ&ポージングを見ることができる。
ほかにも様々にあるのだが、再構成&再解釈とは言いながら、「FFVII」を作っていた様々な要素を取りこぼすことなく、新たな「FFVII」像を作り出すことに成功しているのが「FFVII REMAKE」ではないかと思う。ファンがニコニコし、そして驚くような展開で「FFVII REMAKE」プレーヤーすべてを満足させる。そんな高い志がプレイの手触りから伝わってくる作品だ。
©1997, 2020 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA/ROBERTO FERRARI
LOGO ILLUSTRATION: © 1997 YOSHITAKA AMANO
※本作は1997年に発売された「FINAL FANTASY VII」(原作)のリメイク作品です。ミッドガル脱出までの原作を元にオリジナルの要素を加えた作品となり、複数作で展開予定の第1作目です。
※画面は開発中のものです。