「HGUC 1/144 ナラティブガンダム C装備」レビュー
HGUC 1/144 ナラティブガンダム C装備
サイコフレームが多いほうが有利に働くのよ! 最終決戦装備をカッコ良く再現!
- ジャンル:
- プラモデル
- 発売元:
- BANDAI SPIRITS
- 開発元:
- BANDAI SPIRITS
- 価格:
- 2,530円(税込)
- 発売日:
- 2019年3月9日
2020年3月11日 00:00
今回取り上げるのは「HGUC 1/144 ナラティブガンダム C装備」である。本商品の発売は、2019年3月9日。1年も前のガンプラであるが、HGUCシリーズのスタンダードなガンダムタイプのガンプラとして組みやすく設計されていること、筆者が好きなガンダムであり、何より「ガンダムUC」から「閃光のハサウェイ」、さらに続くプロジェクトへ引き継ぐためのガンダムとして劇中で印象的な活躍をした機体、ということで、今回レビューしていきたい。
このナラティブガンダムは、映画「機動戦士ガンダムNT」に登場する機体。この機体の特徴はA~Cまでの豊富な装備を作戦ごとに換装して全く違う姿になることにある。C装備の大きな特徴はRX-0ユニコーンガンダムの”サイコフレーム”を最小限の加工で全身に貼り付けたり装甲を割って内装したものであり、技術を継承していることがわかる。そして劇中終盤に最終決戦仕様として出撃する機体なのである。
商品では新規造形パーツによりC装備を完全再現し、全身にまとったサイコフレームをクリアパーツで表現。各部は内部フレームに装甲をかぶせてさらにサイコフレームのパーツを貼り付けるという構造となっているが、それによってプロポーションが破綻したり重量に負けることもなく、カッコイイポージングが可能だ。
今回のレビューでは本商品を組んでいくことに加え、ナラティブガンダムC装備の魅力も語っていきたい。映像のスピードが速いため判りにくかった機体のディテールも細かく確認できるだろう。今回は塗装も行なわない素組ではあるが、組み立てやすさや構造・設計・可動・プロポーションなどにも触れていきたい。
「やせっぽち」と言われたナラティブガンダムをサイコフレームで厚着させる
このC型装備以前に、A装備として発売されていたナラティブガンダムだがC装備ではA装備の大きなブースターユニットではなくサイコフレームと呼ばれる「サイコミュチップを金属粒子ほどの大きさで封じ込めた構造材」を使用した装甲材を表面に貼り付けている状態を再現したガンプラだ。
ナラティブ本体はA装備のものとそれほど変わらないが設定どおりに装甲が割れていたり、いくつかのC装備専用パーツと武装が付属しているが特殊で大型の装備は無いためスタンダードなガンダムのプラモデル=ガンプラとしても楽しめる。
C装備の特徴であるサイコフレームのパーツは通常のランナー1枚分とそこそこ大量なパーツとなっており、細かい部分まで再現できるのがうれしい。設定どおりに”貼り付ける”という作業となっているのも作っていて楽しいポイントだろう。
サイコフレームはクリアーパーツとなっていて正直形状が把握しにくい。細かいパーツもあるので破損や紛失に注意が必要だ。ランナーとゲート部分を慎重に見極めてゲート側を大きく切り取るほうが失敗は少ないだろう。
冒頭でも書いたとおり、サイコフレームは構造材であるが発光する設定のためクリアーで成型されているのだと思われる。しかしながら赤いクリアーパーツをナラティブガンダムの白い装甲にかぶせてしまうとピンク色になってしまうので、どうしても気になる場合は裏から塗装するなど対策が必要だ。ここは制作者のセンスと技量を必要とするがぜひチャレンジしたいポイントだ。
それでは早速組んでいこう。本商品はスタンダードなガンプラといえるHGであるが、部品数は多い方で、そのランナー数は11となる。HGシリーズは部品数の少ないキットが多いが、本商品の場合は内部フレーム構造を持ち、それに外装を装着しサイコフレームもかぶせる構造になっているため、通常のHGより多めなのだ。箱を開けた瞬間はそのボリュームに難しそうと思うかも知れないが、組み始めたら特に難しいこともなく組み上がるだろう。
各種色分けは見事にランナー分けされているほか、ガンダムの特徴である目(ツインアイ)とセンサー類がシールになっている。肩部バーニアなどが気になる人は部分塗装と全体のスミ入れ・つや消しコーティングで十分見ごたえのある作品にできるだろう。
サクサクと組み立てられ密度の濃さも楽しいキット
説明書に従う形で各パーツを組み上げていこう。最初に組み上げていくのは、ボディと頭部だ。本商品は、他に「A装備」が発売されており「RX-78GP03 デンドロビウム」のアームド・ベース「オーキス」を思わせる大型ブースターパーツとドッキングする。ナラティブガンダムはこのドッキング時の可動の必要もあってか、上半身と腕周りの可動が素晴らしい。
肩の付け根である程度前後・上下させられるし肩全体を前にスイングさせることができる。これがただの1軸での回転ではなく構成するパーツがうまい具合にかみ合ってストッパーやパーツの軸受けにもなって、剛性も増しているところに設計のうまさを感じた。
胴体は設定どおりコア・ブロックとなる。映画「機動戦士ガンダムNT」発表時にはコア・ファイターの登場は告知されておらず、設定画やA装備を見て「おや?」と思った人も多かったのではないだろうか。劇中ではC装備で出撃する段階でようやく活躍の機会を得るのだが、キットでは非変形のコア・ブロックの状態ではあるもののキャノピーもクリアパーツで再現するなど手が込んでいてドッキングしてもプロポーションが破綻することがない。
設定上ナラティブガンダムの一部の装甲は無いのだが、コア・ブロックをカバーする腹部の装甲も無い。これは往年のガンプラ「1/100 ガンダム」の腹部がコア・ブロックがむき出しだったことへのアニメーションスタッフからの”ガンプラへのオマージュ”と捉えているがいかがだろうか。
RX-0ユニコーンガンダムの肩についているサイコフレームのセンサーパーツが脇下にあることを確認できるのが立体のいいところだ。そして”サイコフレーム=内部”という認識でいると組み立ての際に外装の内側に貼り込もうとしかねないので注意が必要。
頭部は複雑な造形を、6色ものパーツで構成しているところがグッとくるポイントだろう。筆者は昔からガンプラを作り続けているが、「1/144でここまでできるのか!」と思わず心が動いてしまった。特にセンサーとツインアイの細かさはかなりのもので、クリアー素材でもあるため破損や紛失に注意が必要だ。センサー類にシールを貼ってマスクと顎を組み付け、後部ヘルメットとライトグレーの耳パーツに組みつけて固定した状態のほうがツインアイのシールを貼り付ける作業は行いやすいだろう。
この繊細な顔の造形は、細かい部分のスミ入れをしてやるとさらにディテールが際立ってグッと締まるのでチャレンジしてみてほしい。シールの貼り込みの際ははがれの原因になるので手や指先の油分を除去してピンセットを使うことをオススメする。
続いて腕部を組み立てる。前腕はメカフレームに外装とサイコフレームを取り付けていくが、極力合わせ目が出ないように設計されており関心させられる。上腕は装甲がないので細めの部位となるがポリキャップレスの関節にもなっている。前後でデザインが異なるので気を付けよう。肩は上腕とのバランス的に大きく見えるがそれはサイコフレームが装着されたためもあるだろう。
可動は上腕が肩と前腕との接続箇所でロールできるのでポージングの際にかなり有利なポイントだ。キットには残念ながらビーム・ライフル保持用の左手がないので劇中での右手にビーム・サーベルと左手にビーム・ライフルという再現はそのままではできない。別売されているハンドパーツを移植してみるのもいいと思う。
腰部は一般的なガンダムタイプに見られる足の付け根と腰の前後左右にパーツを垂れ下がらせる構造になっている。HGシリーズでおなじみだがフロントアーマーは左右がつながって成型されている。接続基部がボールジョイントを2つ繋げている形状なのでここを切り離すだけで左右独立して動かせるようになるのでチャレンジしてみてほしい。
リアアーマーは展開状態固定での組み立てになるが、そこそこの大きさと厚さなのに胸部の展開機構を体験した後では少々残念に思える。サイドアーマーにも細かいサイコフレームが貼り付けられるのでパーツの切り出しと貼り付け時の紛失に注意が必要だ。
両脚を接続する部分は回転スイング機構が盛り込まれており、「このスケールでこんな機構ができるんだ!」と感心させられた。両脚を若干前に出すことができ、高速機動する劇中のポージングを再現する際の重要な機構になっている。
脚部は全体のデザインが後のRX-93νガンダムやRX-0ユニコーンガンダムに通じるものとなっており、開発系譜を感じることができて楽しい。設定上大腿部に装甲は無いが、この部分は比較的大きなサイコフレームで覆われており機体の構成要素の中でも重要な部位だということがわかる。このサイコフレームパーツは大腿部内側に装着されるので左右間違わないように注意が必要だ。
脛部も同様に左右非対称だから説明書やパッケージをよく見て組み立てる。きれいに切り出すことでパーツの合いや組み合わせもピタッと決まって心地よいし、あまり間違うこともないだろう。
可動範囲はHGシリーズのガンダムタイプとして標準的な自由度を実現しており、膝が二重関節で大きく曲げることができる。内部フレームや外装による多層構造にもかかわらず軽量であるため派手なポーズの保持でも問題ない。
装備はビーム・ライフルとサイコフレーム搭載の大型シールド、2本のビーム・サーベルとなる。ビーム・ライフルは腰部のリアアーマーに接続、シールドはバックパックに背負うこともでき、プレイバリューが高い。説明書にも記載されているが、ビーム・サーベルを抜き差しする際は基部を折らないように慎重に行っていただきたい。
小気味よい組立感覚でサクサク完成
いよいよ完成となる。すべてを組み上げてモビルスーツの形にする。ボディはコア・ブロックの胸部側の2軸ポリキャップと腰部側ボールジョイント接続となるが可動させてみると意外とグラグラする。特に胸部側は可動機構に重きを置いたためか小さいポリキャップが使われており、その軸受けが若干ゆるいようだ。まったく保持できないわけではないが他に比べると軽い力で動いてしまいボディ全体を支えるには少々役不足な印象だ。ポリキャップの軸受けやボールジョイントを瞬間接着剤などで薄くコーティングしてやると渋くなって保持力が上がるだろう。
シンプルなガンダムタイプということもあり全体的な可動はとてもスムーズで範囲も広く、パーツがぽろぽろ落ちることもなくストレスもない。あえて書くならビーム・サーベルの握りが弱いことだろうか。だがHGシリーズの作りやすさがよく出ているキットだと思う。各パーツの精度が高く、顔を見ると頬のチンガードなどとても薄いのによく成型できていて密度感も申し分なくとてもカッコイイ。
今回は説明書通りの素組でのレビューとなったが、MS本体はスミ入れしてつや消しクリアーでコーティング。サイコフレームは裏からシルバーやメタリックカラー、さらに表面をラメで塗ってみても面白いかもしれない。
箱を開けた時の「大変そうだな……」という感想は組んでみるとあっさりと吹き飛んでしまった。両腕・両脚はほぼ同じ構造なので左右同時に切り出して組み立てれば作業の短縮が可能だし、胸部の構造を見ると感動すら覚えてしまう。さらに成型技術の進化を見ることもできて「やっぱりガンプラっておもしろいな!」と思えるのだ。
そういうことがあればいつかはMGシリーズでナラティブガンダムを見てみたいと思うし、実現されればコア・ファイターも完全変形できるんだろうなと妄想が膨らんでしまう。それまでにA/B装備をはじめ、シナンジュ・スタイン/フェネクスなどガンダムNTシリーズを組み上げておこうと思う。
2020年はガンプラ40周年ということもあり、ほぼ1年前のキットであるが「HGUC 1/144 ナラティブガンダム C装備」を組んでみて今後のガンプラの進化・展開に大いに期待したい。
(C)創通・サンライズ