「仁王2」レビュー
仁王2
その身に秘めた妖怪の力を御し、幾千万の落命を乗り越えて強くなれ!!
- ジャンル:
- アクションRPG
- 発売元:
- コーエーテクモゲームス
- 開発元:
- コーエーテクモゲームス
- プラットフォーム:
- PS4
- 価格:
- 8,580円(税別)~
- 発売日:
- 2020年3月12日
2020年3月11日 07:00
コーエーテクモゲームスは、3月12日にPS4向けアクションRPG「仁王2」を発売する。本作は「戦国×妖怪×死にゲー」の要素が見事に融合された「仁王」シリーズの最新作。昨年11月に配信されたβ体験版や直近では3月1日までの期間限定で配信された最終体験版でも、数多くのプレーヤーの鼻っ柱をへし折ってきたことで、読者の皆様の記憶に新しいだろう。
かく言う筆者もβ体験版では「山姥」に追いかけ回され、ボスの「鎌鼬」の前に屍の山を築くことになった「仁王」ルーキーの1人。基本的なシステムなどはβ体験版のときと変わらないため、まだゲームの概要についてご存じない方は関連記事も併せてご覧いただければ幸いだ。
当時も半泣き状態でプレイしながら記事を書き上げたものだが、クリアできないとさえ思える絶望的なまでの難易度も、遊べば遊ぶほど攻略の糸口が見つかり、一筋の希望の光が差し込む。今回の製品版のレビューでも、そんな絶妙なゲームバランスを含めた「仁王2」の魅力について、存分に紹介していきたい。
衝撃のオープニングを経て、金髪ツインテール娘、再臨!
アクションゲームとしての完成度や、戦国時代と妖怪を織り交ぜた重厚な物語が高評価を得た前作「仁王」から約3年。その待望の続編である本作「仁王2」は、人と妖怪の間に生まれた主人公と後の豊臣秀吉となる「藤吉郎」の2人による立身出世の物語だ。体験版でも美麗なティザームービーに目が釘付けとなったが、今回も初っ端から気になる謎がてんこ盛りで、否応なしにストーリーへの期待も高まる。
オープニングの後は自分好みのキャラクターを作成。体験版と同じく、チュートリアルで初期装備の武器や守護霊の選択を経て、必要に応じて基本操作を練習する流れは変わらない。β体験版で筆者を虜にした「金髪ツインテール娘」は製品版でも健在のため、リベンジの意味合いも込め、今回も迷わずくノ一スタイルでプレイを開始! なお、外見は後からでも変更できるが、製品版では妖怪化した後の姿も細かくカスタマイズできるようになった。これからの険しい戦いを乗り越えるためにも、ここでじっくりキャラクタークリエイトを楽しむのも一興だろう。
初期装備の武器は2つまで選ぶことができ、選ばなかった武器も後で入手すれば自由に変更できる。筆者も今回は最初に「二刀」と「薙刀鎌」を選択したが、後から攻撃力を優先して強力な「刀」に変更してプレイしたので、状況に応じて使い分けるのもありだ。また、上・中・下段を切り替える「構え」のシステムによって振りの速さや威力、モーションが武器ごとに異なるのも本シリーズならでは。慣れない方は、チュートリアルで感触を確かめておくのがお勧めだ。
本作からの追加要素である「妖怪化」発動後の姿や攻撃の特性を左右する守護霊は、「真神(猛タイプ)」、「天御鳥(迅タイプ)」、「影鰐(幻タイプ)」の3つから選ぶことになる。それぞれのタイプによって一時的に妖怪化して放つ「特技」も変わってくるため、こちらも体験版を未プレイの方は使用感を確認しておきたいところだ。なお、β体験版ではミッション中に守護霊を自由に憑け替え可能だったが、製品版では最初のミッションは選んだ守護霊で進めることになる。ストーリーが進行して他の守護霊を入手するまでは憑け替えができないため、やや注意が必要だ。
チュートリアルを終えると、最初のミッションでは夜桜が舞う村を訪れることに。ミッション画面では「推奨レベル1」などと書かれているが、だまされてはいけない! 「最初のミッションだし、意外と簡単かも?」なんてことは全くないので、初心者の方も安心? してほしい。前置きが長くなったが、ここからはいよいよ楽しい地獄の始まりだ!
苦痛と快感に満ちた戦いの連続! 「仁王」よ、私は帰ってきた!
ミッションの地に降り立つと、さっそく「餓鬼」のお出迎えだ。最初に遭遇するザコ敵でも、油断すればあっさり殺されるのが「仁王」というゲーム。それを筆者はβ体験版で骨身に染みるほど思い知ったため、ここは慎重に敵の攻撃をかわし、ヒット&アウェイで危なげなく撃破! あー気持ちいいぜ……。何とか幸先のいいスタートを切ることはできたが、先に進むと早くも絶望を味わうことに。大型の妖怪「牛頭鬼」の登場である。こんな序盤で? 何かの間違いだろ? 武者震いを抑えながら果敢に挑むものの、一撃で体力を半分以上も削られ、あっさりと「落命」(ゲームオーバー)。嗚呼、私の金髪ちゃんが……!
本シリーズでは攻撃、防御、回避と、いずれのアクションをとっても気力ゲージを消費するため、闇雲にボタンを押していると気力がすぐに切れてしまう。この状態で攻撃を受けるとしばらく動けなくなるのは敵も同じなので、自身の気力を管理しつつ、如何に相手の気力を削るかが重要なのだ。そんなことは百も承知のはずが、いざ強大な敵を前にすると焦ってしまい、その後も落命を続けてしまう筆者。難易度が高い分、幾度もの落命を乗り越えて敵を倒したときの快感も半端じゃないが、なかなか先に進めないと精神的にも結構しんどい……。そんな方のために、本作では様々な救済措置も用意されている。
たとえば序盤で遭遇する牛頭鬼も、実は落ち着いて逃げ回っていれば先に進めるルートが見つかり、戦闘を回避できる。また、本作では近接武器の他にも弓などの遠距離武器や忍術、陰陽術などの様々な攻撃手段が用意されているため、敵の動きを冷静に観察して行動すれば状況を打破できることも多い。さらに、敵や宝箱から入手できる装備品は消費気力を軽減したり、特定の敵へのダメージが増えたりと様々な特殊効果があるため、装備の組み合わせを工夫するだけでも、プレイ感覚が変わってくるはず。
どうしても先に進めないという場合は、「義刃塚」と呼ばれるスポットでNPCの「すけびと」を呼び出したり、オンラインモードで「まれびと招喚」や「常世同行」を行ない、他のプレーヤーに協力してもらうことも可能だ。ホントにどうしようもなくなったら人に頼ればいいし、あくまで孤高のソロプレイに励むのもいい。もちろん、強敵をやり過ごす方法を考えて先に進むのもありだ。そんな遊びの幅も、「仁王」シリーズの特徴だろう。死にゲーらしく難易度が高いのは事実だが、決して理不尽というレベルではなく、プレーヤーの遊び方によって異なる攻略方法を許容するゲームデザインは、ついついもう一回! と思わせる中毒性があるのだ。
意外と救済措置も多い本作だが、それは高難度だからこそでもある。ザコ敵でも致命傷を与える技を持っていたり、死角から急に敵が飛び出してきたり、弓で遠くから攻撃すれば楽勝と思っていたら兜に邪魔されて返り討ちに遭ったり……。挙げていくとキリがないほど初見殺しの罠が多く、ミッションの道中と言えども一瞬の油断もできず、常にプレーヤーの観察力と腕前が試されることも忘れてはならない。
また、本作から追加された新要素である「常闇」にも注目したい。妖怪が生み出す常闇の空間内では、敵の妖怪に与える気力上限ダメージや得られる妖力量も増える代わりに、妖怪の攻撃力が上がり、こちらの気力回復が遅くなるというデメリットもある。ボス戦を除けば常闇のエリアを無視して進むことも可能ではあるが、エリア内の敵をすべて倒して常闇が消滅すると貴重なお宝が入手できたり、セーブポイントの「社」が解放されたりと、様々なメリットもある。敢えて危険を冒すかどうかはプレーヤー次第、というのが如何にも味な作りだ。
ボス戦で体感する汗と震え、後に訪れるカタルシスのコンボ!
猿鬼から逃げ回り、弓を活用して接近戦を避けながら何とか先に進んできた筆者も、ついに最初のミッションのボス「馬頭鬼」戦へ。社で回復アイテムを補充したり、レベルを上げたりと準備は怠らなかったものの、最後にものを言うのは己の腕のみ。ここまでは逃げるが勝ち戦法で進めてきたが、この先はどうあがいてもガチの勝負! ということで勇んでボスに挑むも、コントローラーを握る手は汗が流れ、武者震いが止まらない。記事の締め切りもあるので気持ちは焦るばかりだが、そんな時に限って手が滑って回避が遅れたり、防御が間に合わず、β体験版で鎌鼬に勝てなかった苦い経験がよみがえる。
しかし、落命を繰り返すこと数十回、ついにその時が訪れた。しばらく回避と防御に徹してボスの動きを観察していたら、攻撃範囲は広いものの、動きは鎌鼬ほどトリッキーではなく大振りで読みやすいことに気づき、少しずつ致命傷を避けられるように。また、敵が大技を繰り出す直前に体が赤く光るタイミングに合わせ、特技によるカウンターが運よく連続でヒット! 気力を削られダウンした馬頭鬼への攻撃の手を休めることなく、敵が常闇を生み出した瞬間に妖怪化で猛攻を仕掛けたところ、気が付くと馬頭鬼の巨体は崩れ落ちていた。
運や妖怪化の恩恵に助けられた感も否めないが、何度も試行錯誤を繰り返した末に掴んだ勝利に、筆者は身体の震えが止まらなかった。数えきれないほどの落命を経たからこそ気づいたが、本作では強敵との闘いこそ、特技によるカウンターを狙って気力を削りきることが重要だ。確かに敵の攻撃は激しく、一見すると無理ゲーとも思える状況は多いものの、トライ&エラーを繰り返し、冷静に観察して対応すれば必ず勝機はある! β体験版での屈辱を倍返しにしてやった高揚感も手伝い、ここ数カ月は味わったことのない快感で、筆者が一気に本作の虜となったのは言うまでもないだろう。落命の数だけ強くなる。死屍累々の向こう側にこそ、真のカタルシスが待っているのだ!
妖怪の力を御しつつ、戦国時代を駆け抜けろ!
喜びもつかの間、あれほど苦戦した馬頭鬼も冷静に考えれば最初のミッションのボスに過ぎない。この先もまだまだ険しい戦いの数々がプレーヤーを待ち受けるので、メインミッションの合間にはサブミッションに挑んだり、クリアしたステージに再挑戦して、やり過ごした強敵と戦ったりと腕を磨くのもいいだろう。
また、今回のレビューでは紹介しきれなかったが、敵の妖怪が落とす「魂代」を装備することで使える「妖怪技」も独特なものが多く、武器を使いこなすことで覚えるスキルとの組み合わせによっても、アクションの幅は大きく広がる。妖怪化した際のアクションとも合わせるとできることがかなり多いゲームなので、焦らず、じっくりと色々な要素を試していくのがお勧めだ。
公式サイトでも紹介されているように、まだ見ぬ多くの妖怪や戦国時代の武将たちがプレーヤーを待ち受ける本作。時に果敢に攻め、時に退き時を心得る。そんな一進一退の攻防の面白さや積み重なった落命の先に見える景色は、きっと前作からのファンや本作を始めてプレイされる方にも満足いただけるはずだ。桜咲く春、様々な人生の節目とも言える季節だからこそ、主人公と藤吉郎のコンビが紡ぐ戦国絵巻の行く末、そして戦国死にゲーとして名高い本作の奥深いゲームデザインを、じっくりと味わってほしい。
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