「ハースストーン 突撃!探検同盟」レビュー

ハースストーン

DCGの常識を打ち破る新カードの登場で環境はどう変わるのか? その戦い方を動画で解説!

ジャンル:
  • デジタルカードゲーム
発売元:
  • Blizzard Entertainment
開発元:
  • Blizzard Entertainment
プラットフォーム:
  • Windows PC
  • iPhone/iPod touch
  • Android
価格:
基本無料(アイテム課金)
発売日:
2019年8月7日

 Blizzard Entertainmentは、PC/モバイル向けデジタルカードゲーム「ハースストーン」において、8月7日に最新拡張パック「突撃!探検同盟」をリリースした。ドラゴン年の2つ目となる今回のパックでは新キーワード能力である「蘇り」が登場したり、2017年の拡張パック「大魔境ウンゴロ」以来となる「クエスト」カードが登場したりと、非常にプレーヤーをワクワクさせる要素が詰め込まれている。本記事では今回のパックによって齎される環境の変化や注目要素について考察していきたいと思う。

新レジェンドの数だけデッキが作れる!?新拡張の特徴はアーキタイプの増加にあり

 早速「突撃!探検同盟」のレビューを開始していくのだが、まずはこちらの動画を見てほしい。

【ハースストーン -「突撃!探検同盟」新能力紹介トレーラー】

 この動画では「突撃!探検同盟」で登場した新キーワードや新たなデッキタイプを実際のゲーム模様を交えて解説している。この動画を簡略的に説明すると新キーワード「蘇り」と約2年ぶりに再登場したキーワード「クエスト」、さらに一部カードによって強化された「ハイランダー」構築の3つの要素をフィーチャーし、それぞれの特徴や能力、代表カードの使い方などを取り上げているのだ。新拡張で追加された要素にまだ疎い視聴者は是非1度拝見してから本記事を読むことで、より理解度を高められるはずだ。

 さて動画で取り上げた3つの要素は全て「突撃!探検同盟」にて登場・強化された部分なのだが、これによってデッキのアーキタイプが非常に多くなった事からまず取り上げたいと思う。それぞれの特徴や能力については動画内にて解説しているので、本記事では省略させていただく。

今回の「クエスト」は全て共通でヒーローパワーを変化させる効果を持っている

 まず何といっても「クエスト」の存在だが、今回も全てのヒーローに1枚ずつ「クエスト」カードが与えられた。そして今回の「クエスト」の共通点としてクエスト達成後に「新たなヒーローパワー」を獲得するという能力が備わっている。「新たなヒーローパワー」はどれも非常に強力であり、殆どの場合はクエストを達成する為に必要な要素とも上手く噛み合っている為「新たなヒーローパワー」がバトルにおいて腐ってしまう場面は中々訪れないだろう。

例としてハンターの場合はミニオンを20体召喚する事が達成条件となる
クエストの達成には1枚で複数体のミニオンに化ける「イナゴの大群」や「自己増殖型メナス」などのカードと相性が良い
そして獲得するヒーローパワーは「自分ミニオン全てパワーを+2する」というもの。ミニオンの大量召喚を要求するクエスト達成条件と能力が噛み合っている

「クエスト」は既存で活躍していたデッキに雑に投入するカードではない

 クエストを達成する為に必要な要素と「新たなヒーローパワー」が上手く噛み合うように出来ているという事は、逆を言うとこれまで使ってきたアーキタイプのデッキに何も考えず「クエスト」を投入してもあまり効果が出ないという事が言える。加えてどの「クエスト」もそれぞれのリーダーらしい達成条件を持っているのだが、達成条件を意識してデッキを組まないと上手く達成する事ができないようになっているのだ。この事から言えるのは、「クエスト」はこれまでのデッキを単純に強化するカードではなく、「クエスト」をフルに活用するデッキを新たに構築する事を前提として登場したカードという事だ。これによって各ヒーローに強力なアーキタイプが単純に1つずつ増えたという事が分かる。

例としてパラディンの「クエスト」は新キーワード「蘇り」を持つミニオンを5体手札から召喚する事だが
達成には「蘇り」を持つミニオンを大量に入れる必要がある為、既存のパラディンデッキにただ投入する事は難しい
しかしデッキを「クエスト」に寄せる事でその真価が発揮される。新たに得られるヒーローパワーで「蘇り」持ちミニオンを量産し盤面制圧を可能とするのだ

「ハイランダー」構築によって真価を発揮するカード達

 続いて「ハイランダー」についてだが、この構築自体は以前から組むことが可能であり、中には1度組んだという方も居ると思われる。しかしこれまでは「ハイランダー」に拘る要素があまり存在しなかったのだ。言うなれば「デッキを組んでいたらハイランダーになった」という場面はあったが「ハイランダーを組む!」と言う感じにデッキを構築していたプレーヤーは少数派だと筆者は思っている。それが今回登場した「デッキに重複するカードがない場合~」というテキストを持つカードにより「ハイランダー」としてデッキを構築する意味が出たのだ。このテキストを持つ「偉大なるゼフリス」は共通カードである為、全ヒーローが「ハイランダー」構築をする意味を獲得した訳だが、中でもハンター、ドルイド、メイジ、パラディンは専用のレジェンドカードがこのテキストを持っている為「ハイランダー」構築を1つの強力なアーキタイプとして獲得したと言っても過言では無いだろう。

ハンターのレジェンドであり、召喚時に8/8で「突撃」持ちの「キングクラッシュ」を呼び出す能力を持っている。元の「キングクラッシュ」が9コストである事を考えると非常にお得なカードだ。いきなり出てきた8/8と2/4を倒すのはかなり難しいだろう
ドルイドのレジェンドであり、手札のカードを複製する能力を持っている。ハイランダー構築の中で相手に有効なカードやレジェンドを増やせるというのは非常に強力。他のカードと組み合わせればこのカードを使いまわして複製ループも可能だ
メイジのレジェンドであり、召喚時に敵ミニオンへ10ダメージを割り振って与える能力を持っている。劣勢の場面で一気に盤面を取り返せる火力を秘めているのだ
パラディンのレジェンドであり、各ヒーローが持つヒーローパワーのパワーアップ版をランダムで1つ獲得できるミニオン。マーロックである事を活かせるため、活躍の場は多い
中立のレジェンドであり、その場に最適な「勝利のカード」を加えられる能力を持っている。劣勢であれば盤面除去や「挑発」ミニオンを呼び出せるカード、トドメの場面であればパンプカードやバーンカードなど、その用途は場面によって変わる
「ハイランダー」推奨のレジェンドは登場するだけで戦況を一気に変えたり、トドメを刺すパワーを秘めている

各キーワードに焦点を当てた他ヒーローのレジェンドたち

 そして下記のテキストを持つレジェンドを今回獲得していないヒーローは、それぞれ各キーワードを強化するようなレジェンドを獲得している。例を挙げるのならばウォリアーは新レジェンドの「アルマゲジロ」の登場によってキーワード「挑発」を主軸とした構築が可能になり、ローグも新レジェンド「斂葬のアンカ」の登場によってキーワード「断末魔」を主軸とした構築が可能となっている。プリースト、シャーマン、ウォーロックのいずれも今回登場したレジェンドはそれぞれ構築をキーワードや戦術に寄せることで真価を発揮するカードが与えられている為、これにより各ヒーローは新レジェンドによって新たに強力なアーキタイプを獲得したと言えるのだ。

ウォリアーのレジェンドで手札の「挑発」を持つミニオンのステータスを「+2/2」する能力を持っている。生き残り続ければ毎ターンパワーアップを繰り返すため、攻撃は他のミニオンやヒーロー自身に行わせるのがベストだろう
ローグのレジェンドで「雄叫び」によって手札の「断末魔」を持つミニオンのコストを1にした上でステータスを「1/1」に変更する。強力な断末魔を持つ高コスト体のミニオンを簡単に並べる事を可能とし、ローグにはカードを連続で使用する事で真価を発揮する「コンボ」というキーワードがある為、そちらとも高相性と言える
シャーマンのレジェンドで「オーバーロード」時に味方ミニオンの攻撃力を+2する能力を持っている。オーバーロードに寄せた構築で使用する事もできるが、一部のオーバーロード呪文と一緒に別のデッキへ出張する事も十分可能だろう。マーロックの速攻デッキと合わせれば一気に勝負を決められるはずだ
ウォーロックのレジェンドで自分の「悪の手先」のステータスを対戦中全て「4/4」にする「雄叫び」を持っている。1コストで「4/4」が大量に並ぶのは非常に強力であり、「悪の手先」の数だけこの効果を活かせるため専用構築する事で真価が発揮するカードだろう
プリーストのレジェンドで他のミニオンの体力を自身と同じにする能力を持っている。他ヒーローの専用レジェンドと見比べるとキーワードで縛っている訳では無いため汎用度は高いと言える。だがその真価を発揮するのは味方を強化する事に特化したプリーストデッキであると言える。このカードの体力を強化すればその後召喚されるミニオンも超強化されるため、突破が困難になるのだ
どちらも新レジェンドを中心としたデッキでの勝負模様。どのカードも既存に囚われず新たにデッキを組むことでそのポテンシャルをフルに活用する事ができると言える

数多く生まれたアーキタイプ。それが意味する事とは?

 さて、ここまで何度も「アーキタイプ」と繰り返してきたが、それが冒頭で述べた新アーキタイプの増加に繋がる。ズバリ「突撃!探検同盟」は強力な「新アーキタイプ」を組めるカードが数多く収録されているのだ。ここまで紹介したレジェンドだけでも各ヒーローは「突撃!探検同盟」によって2つの強力なアーキタイプを獲得している。勿論レジェンドカード以外にも強力なカードは数多く収録されている為、その他のアーキタイプもまだまだ生まれているだろう。それらを踏まえると今回の新拡張はこれまでに比べ数多くの可能性を生み出しているパックなのだ。アーキタイプの多さはゲームのマンネリ化や停滞を防ぐ為、その点で今回のパックは非常に素晴らしい。

 そしてこれが意味するのはデッキの多様化だ。当然これまで台頭していたアーキタイプも「突撃!探検同盟」によって強化を受けているので、今の環境は非常に多くのデッキが活躍していると言える。勿論アーキタイプによって強さの上下はあるのだが、数多くのアーキタイプの中から相手がどのタイプのデッキかを予想しながら戦うのは非常に面白い。また、着実に固まっていくメタゲームの中で自分がどのアーキタイプを使うかを考えるのもカードゲームの面白い部分であり、その選択肢が多いのはゲームとしても良い事だろう。プレーヤーに新しい刺激を与え続けるBlizzardの手腕には頭が上がらない。

新カード&アーキタイプが与える環境の変化とは

 上記でアーキタイプが増えたことをお伝えしたが、では実際の対戦環境にどのような影響が出ているのかを取り上げたい。まず今回登場した「クエスト」を使用したデッキは現在の対戦環境でかなりの頻度で使用されている。現在がリリース直後という事もあると思うが、特にパラディン、プリースト、シャーマンの「クエスト」はカードパワーが高いため見かける事が多い。いずれもクエスト達成後の巻き返し力と安定力が非常に高く、単純なカードパワーだけでは新たに得たヒーローパワーが生み出すアドバンテージを返せないため、非常にポテンシャルが高いデッキと言えるだろう。

【「クエスト」を活用したデッキはヒーローパワーにより相手をどんどん追い詰めていく】
中でも派手な効果を持っているのはシャーマンの「クエスト」で得られる「ヴィアナールの心臓」。ヒーローパワーを使うと「雄叫び」を2回起動できる
雄叫びを2回使用すれば手札や盤面のリソースを増やす事も容易。「悪の手先」とも高相性なのでどんどんカードが増える
レジェンドの効果も2回使用可能。トドメに「シャダウォック」を出せれば勝負は頂きだ

 そして「クエスト」デッキの流行により早期決着を狙うデッキも台頭し始めた。「クエスト」デッキはクエスト達成後の制圧力が高いため、時間を掛けることは得策ではない。となれば早期決着を狙えるアグロ系のデッキの使用が増えるのも必然と言えるだろう。加えて「クエスト」デッキは基本的に最初のターンはクエストの発動が優先されるため、1ターン目に召喚されるミニオンが放置されがちだ。後攻の場合は「コイン」を使用することで盤面を維持する事も可能だが、それでもクエスト達成の為に序盤は動かざるを得ない事を考えれば、素早いデッキに対応できないケースが多々ある。中でも今回登場した「登場!マーロック鮮鯛」を使用したパラディンデッキの引き倒し力は驚異的だ。マーロックは基本的にコストが低いため「プリズムレンズ」を使用すると早期段階で「登場!マーロック鮮鯛」を発動でき、盤面を埋めた後一気にゲームを決める事ができる。マーロックが横並びと速攻を得意としている事も噛み合っていて非常に早く相手を倒すことができるのだ。

【「突撃!探検同盟」で新たに生まれた速攻デッキ「マーロックパラディン」】
「プリズムレンズ」を使用する事で「登場!マーロック鮮鯛」を早い段階で使用する事が可能
最速4ターンで自分の盤面をマーロックで埋める事が可能。このように「クエスト」を用いるデッキに対しては準備が整う前に圧力を掛けられるデッキが有利に立ち回れる

 そんな上記2つのデッキどちらに対しても戦えるコントロールタイプのデッキも今環境では活躍している。代表的な例を挙げると、横ならべを得意とするデッキに対しては「出陣の道」や「怒りの厄災」などの除去を飛ばす事ができ、「クエスト」の後半の追い上げに対しても「狂気の天才ドクター・ブーム」や「文書管理官エリシアーナ」などで勝ち筋を幾つも用意できるコントロールウォーリアー等だ。他にも1枚1枚のカードパワーが高く、カードの種類数によって対応力に優れている「ハイランダー」構築のデッキもここに分類され、中でもフィニッシュ力とカードパワーが高いハンターのデッキなども活躍していると言えるだろう。

【コントロールタイプのデッキでは除去手段と勝ち筋が重要】
ウォーリアーには豊富な除去手段と強力な勝ち札が揃っている
横並べしてきた相手に対しても一斉除去が可能であり
豊富な勝ち手段で戦況を常に有利に進められるはずだ

 他にも数多くのデッキが活躍し成績を残しているが、大きく分類すると現在(8月12日段階)ではこのようなデッキタイプの区分分けになるのではないだろうか。そして実際の所いずれも非常に良いパワーバランスを保っているようにも見える。端的に言ってしまえば今環境はかなり良い。デッキの相性不利などは存在するが、不利な相手にも対策カードやプレイングでカバーが可能なため、非常にプレーしていて気持ちが良いのだ。また前述していた通り様々なデッキが活躍している為戦っていて飽きが来ないのが素晴らしい。

 今環境を語る上で、筆者があくまで個人的にどのタイプのデッキにも投入必須だと感じているカードを紹介しよう。それは「全体除去」ができるカード。それも「ダメージを繰り返せるタイプ」か「ダメージに関係なく倒せるカード」だ。理由としてはミニオンを横並べして速攻を仕掛けるデッキに対して当然有効である点と、コントロールタイプのデッキに対しても巻き返しの一手やトドメの一手に使用でき、活躍の場面が非常に多い。「突撃!探検同盟」では「災厄」という名前のカードが一部ヒーローに与えられており、非常に高い除去能力をそれぞれ持っている。他にもこれまでのカードで除去が行えるカードは多数存在している為、今環境で有効打となる「全体除去」を皆様も探してみては如何だろうか。

【どのデッキに対しても刺さるのは全体除去が可能なカード達】
前者は繰り返しダメージを与えられるため「蘇り」などに有効で、後者は体力や「聖なる盾」を無視できるためコントロール相手に大活躍するだろう

ドラゴン年で生まれる新キーワードは「横並べ」を意識しているのか?

 ここまで「突撃!探検同盟」のカードや環境について取り上げてきたが、次はこのパックが「ドラゴン年」の2パック目である点について考察してきたい。ハースストーンでは1年に3回拡張パックをリリースし、それらを1つの周期として「〇〇年」と呼称しているのだが、これはカードがスタン落ちをする際に重要になってくる周期でもあるため、プレーヤーはカードをチェックする際その年毎に確認をする事が多い。

 さて、そんな中で筆者が注目したのは今回の新キーワード「蘇り」だ。1度だけ倒されても体力を1にして盤面に戻るこの能力。「断末魔」をもう一度発動できたり「挑発」を併せ持っていれば2度攻撃を防ぐ盾になったり、はたまた1度倒されても大丈夫なので単純に戦線維持として利用されたりと、非常に使い勝手の良い強力なキーワードだ。そしてこのキーワードの強さは「盤面でのリソースが消えにくい」という風に言い換える事もできるだろう。

 では続いて、同じドラゴン年で前弾の「爆誕!悪党同盟」で登場したキーワード「悪の手先」について触れていく。これは各カードに「悪の手先を加える」という能力が備わっており、「悪の手先」は全て1コストで汎用性の高い「雄叫び」を持っているミニオンである事が特徴だ。相手を除去しながらついでに「悪の手先」を手札に加えたり、単純にミニオンを召喚したときに効果で「悪の手先」を加えたりと、ミニオンの頭数が途切れれずに様々な効果を使用できるのがこのキーワードの強みだ。

 この2つは現状ドラゴン年で登場した新キーワードなのだが、このどちらも「ミニオンを横並べにする」事に関して非常に強力な性能を持っているのである。これが意味する事はドラゴン年のカードが使用可能の間はスタンダードにおいてミニオンの横並べは非常に容易く、強力な戦法になるという事である。これは完全に予想だが、次に登場するドラゴン年最後のパックでも横並べが強いキーワードが登場する可能性もある。どちらも軽い火力の全体除去が刺さるキーワードとなる為、どちらにしろ全体除去が手放せない年になりそうであると筆者は感じている。

 因みにドラゴン年は各パックで登場するカードのストーリー拝啓にかなりの力を入れていると最初に報じられている。今回の「突撃!探検同盟」でもその節を垣間見る事ができ、「ハイランダー」系のカードが与えられたヒーローとそうでなかったヒーローの関係性を考えてみると非常に面白い発見ができるはずだ。皆さんも是非カードの背景ストーリーも含めてドラゴン年を楽しんでみてほしい。

これだけは作っとけ! 今後必須となる新カードを紹介

 最後に「突撃!探検同盟」のカードの中で今後も長く活躍が見込まれ、恐らく必須級となってくるカードを紹介していきたいと思う。毎弾何枚か「中立」のレジェンドの中で幅広いデッキで活躍しているカードが必ず登場しているのだが、今弾でも当然そんな化け物カードが生まれている。非常に強力なカードなので、持っていない人は是非入手を検討して頂きたい。それでは早速1枚目を紹介しよう。

【前代未聞の能力を秘めている新レジェンド「偉大なるゼフリス」】

 最初は「偉大なるゼフリス」だ。このカードの強さは何といってもその能力。簡単に説明するとCPUが盤面と公開されている情報を元に判断して「その場に最適なカード」を3枚候補に挙げ、その中の1枚を手札に加えるというとんでもない能力だ。恐らくカードゲーム界隈でも他にあまり例を見ない能力だろう。「勝利のカード」とは逆転のカードにもトドメの1枚にも多種多様に変化する。言ってしまえばこのカード1枚で勝ち筋が1つ増えたり負け筋が1つ消えたりする。コストも低いため終盤に召喚して能力を発動し、そのまま「勝利のカード」を発動して勝ち……なんて事も多々起こる。

 そして恐ろしいのはそれだけではない。一見「ハイランダー」構築にしか入らなそうな能力をしているが、実際にはそんな事無いのだ。大量にカードを引くことができるタイプのデッキや、長期戦をする事が主戦術となるコントロールデッキにもこのカードは余裕で投入可能。デッキに重複カードさえなければ良いのでタイミングを見計らえば効果を発動できてしまう。そしてこのカードが齎すゲームへの影響が非常に大きいため、「ハイランダー」でなくても投入した方が強い場面が多いのだ。「ハイランダー」なら勿論、長期戦を行なうデッキであれば必須級のカードと言える。

 そのとんでもない能力はまさにカードゲームの常識を覆す新たな切り札になると言っても過言では無いだろう。

【ゼフリスが齎す「勝利のカード」は状況によって変化する】
もう少しで相手を倒せるという場面では直接バーンを飛ばせるスペルが候補に上がり、そのまま使用すれば勝利が決まる
ハイランダーだけでなくデッキのカードをを高速で無くせるようなデッキにも投入可能。上記で上げた「登場!マーロック鮮鯛」を用いたデッキもその1つだ

 このように「偉大なるゼフリス」はこの1枚が及ぼすパワーが多き過ぎるため、今後も様々なデッキで活躍が見込まれるカードだと筆者は考えている。では、続いて紹介するカードはコチラだ。

【圧倒的汎用度と破壊力を秘めたレジェンド「シアマト」】

 「シアマト」は非常に分かりやすい能力をしているが、その汎用度の高さは他に類を見ない。盤面制圧が可能な場合は「急襲」と「疾風」を獲得、次のターンが不安で守りを固めたい場合は「挑発」と「聖なる盾」を獲得、盤面を維持したいけどダメージを与えなければならないミニオンが居る場合は「急襲」と「聖なる盾」を獲得と、基本どんな場面でも活躍できる。加えて他カードとの組み合わせで一気に化ける可能が非常に高い。一番簡単な例を挙げればシャーマンの「クエスト」によって得られるヒーローパワー「ヴィアナールの心臓」と合わせれば全ての効果を獲得した「シアマト」が爆誕する。他にもパワーを上げた状態で「疾風」が付与されていれば大ダメージを狙えたり、他のカードで「蘇り」を付与することで突破が困難な壁を作ったりと、応用方法が他のカードの比では無い。今後登場するどんなカードともコンボできる可能性を秘めている為、ゲットしておいて損の無いカードと言えるだろう。

【様々な局面で活躍ができる器用な存在】
突破したいがリソースを失いたくないこの場面でも、「急襲」と「聖なる盾」を獲得して盤面を取り返えせるし、防御に回りたいのならこの場面で「挑発」と「聖なる盾」を獲得しても良く、場面場面での起用度が彼の特徴だ
「ヴィアナールの心臓」と合わせる事で全ての能力を得た「シアマト」が完成。攻防完璧なミニオンとなって相手を追い詰める
「疾風」を付与していれば大ダメージを狙う事も可能だ

 この2枚の「中立」レジェンドは非常に活躍の場面が多く、加えて今後も長い期間の間使われ続けるカードだと筆者は考えている。多くのヒーローを使用しているプレーヤーや、今回どのカードを優先してゲットすれば良いのかが分からないプレーヤーなどは、是非この2枚を優先して集める事を強く推奨する。必ずや多くの場面であなたを救ってくれる1枚となるはずだ。

「突撃!探検同盟」の総括

 如何だったろうか。総じて今回の新拡張「突撃!探検同盟」はハースストーンの対戦環境を大きく変化させながらも、その面白さにさらに磨きをかけたような新要素、新カードが数多く見受けられたように思える。DCGの中でも他に類を見ない効果の登場や、新レジェンドが新らしいデッキの構築を促すようなチャレンジ精神に満ち溢れた内容である事も評価できるだろう。このパックから始めるプレーヤーも当たったレジェンドを中心にデッキを組むことが可能なため、新規プレーヤーにも嬉しい内容である事に違いない。熟練プレーヤーも新規プレーヤーも楽しめる、非常に満足度の高い新拡張であったと筆者は強く思っている。是非この機会に皆様も新しいデッキを作製し、現環境の戦いに乗り込んでみては如何だろうか。