2019年8月9日 17:37
アークシステムワークスは、PS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用耐繊アクションゲーム「キルラキル ザ・ゲーム -異布-」を7月25日に発売した。価格は、パッケージ・DL版が6,800円(税別)、限定版「人衣魅徹弩 撲枢(リミテッドボックス)」が10,000円(税別)となっている。
2013年に放送されたTRIGGER制作のオリジナルアニメ「キルラキル」をゲーム化。数多くのアーク作品の制作に携わっているエープラスが開発していることもあり、アニメ調の3Dグラフィックスとド派手な演出で原作の持ち味を再現されているのが特徴的だ。
対戦格闘ゲームを主に展開してきたアークシステムワークスの新境地となる対戦アクションゲーム。格闘ゲームファンであり、「キルラキル」ファンでもある筆者の視点から、本作のプレイ感をお伝えしたいと思う。
簡単操作で強力なコンボや必殺技が決まる痛快なゲーム性!
本作は複雑な操作が不要で、誰でも簡単に熱いバトルを楽しむことができる。原作アニメのファンだが、アクションゲームが苦手で敬遠しているという人には、ぜひとも本稿で「キルラキル ザ・ゲーム -異布-」のゲーム性をチェックしていただきたい。今回のレビューではPS4版をプレイしているため、ボタン表記はPS4に準ずる。
ゲームに入る前に、プレイしてまず初めにテンションが上がったのはその映像力の高さだ。原作アニメと比べても全く違和感の感じさせない3Dで描かれたキャラクターモデリング。アニメの表現そのままにヌルヌル動く様は原作ファンにはたまらない仕上がりである。
ここからは、ゲームの肝となるアクションバトルについて触れていこう。本作のバトルは3Dフィールドを縦横無尽に駆け回ることができ、自由度の高い戦闘が繰り広げられる。先に述べた、誰でも簡単に楽しめる理由としてはとにかく操作がシンプル。戦いに必要な基本アクションは「打撃」・「ガード」・「ブレイク攻撃」の3つのみ。これらはどれも1ボタンで行なうことができる。
□ボタンの接近攻撃と、遠い相手を牽制する△ボタンの遠距離攻撃、相手のガードを崩す〇ボタンのブレイク攻撃を状況に応じて使い分けて戦っていく。この攻撃アクションがいちいちダイナミックで、特殊なカットイン演出が入るのもニヤリとさせられる。
基本のアクションに加え、戦闘で溜まっていくSPゲージを使用すれば原作さながらのド派手な必殺技を繰り出すことも可能。通常攻撃同様に「接近技」・「遠距離技」・「ブレイク技」の3種類があり、ヒットさせれば強力なダメージを与えられる。必殺技のコマンドはL1ボタンを押しながら□(接近技)、△(遠距離技)、〇(ブレイク技)でそれぞれの技を簡単に出すことができる。
通常攻撃から必殺技へと繋げて確定でヒットさせるコンボ要素もある。コンボといっても格闘ゲームとは違い、必殺技のコマンド入力などもないので簡単に高火力のコンボを叩き込むことができる。お手軽なコンボながらガッツリと大ダメージ食らわせられるのがかなり爽快だ。この痛快さは格ゲーやアクションゲームが苦手な人にこそ味わってもらいたい。
アクションゲーム初心者でも簡単かつ爽快に戦えるのが最大のウリだが、シンプル過ぎるゲーム性故に最初に触ったときは正直を言うと“もしかして底が浅いのではないか?”とも思ったが、プレイをしているうちにそれが早合点だったことに気づかされた。本作はプレイをすればするほど、駆け引きの奥深さが見えてくる内容となっていた。
相手の攻撃に合わせてステップで回避して隙を突くことや、相手が回避することを読んで回避行動を潰す「回避読み攻撃」、上からの奇襲を落とす「対空攻撃」など、格闘ゲームさながらの高度な読み合いも味わうことができる。あまりにも簡単過ぎると大味な対戦になってしまうが、絶妙なゲームバランスでアクションに自信のあるプレーヤーも十分に楽しめる内容となっている。この匙加減は、初心者から上級者までが楽しめる格闘ゲームを数多く送り出してきたアークならではだろう。
原作アニメの世界観や空気感をしっかりとゲームに落とし込んでいるのもポイント。原作お馴染みの「戦いながら会話するシーン」を再現した「血威表明縁絶」システムはかなり斬新。始動技の「血威バースト」を当てると舌戦ジャンケンに展開する。主張側(攻め手)と反論側(受け手)が互いに「愚弄(グー)」、「挑発(チョキ)」、「罵倒(パー)」の3属性から選んで相手を論破していく。
主張側が論破すれば、体力回復、SPゲージ回復、与ダメージなど、メリットが沢山ある。さらに「血威レベル」が1上がり、キャラクターの性能が強化される。論破できれば見返りは大きいが、反論側に負けてしまうと逆にダメージをもらうというデメリットもある。血威バーストにはSPゲージも使用するので、余裕があるときや絶体絶命のピンチで一発逆転を狙いたい場面などで有効だ。
プレイアブルキャラクターの性能も、原作での特徴を押さえているのもファンのツボを押さえている。中でも面白かったのが「蟇郡苛」と「犬牟田宝火」の2人だ。蟇郡は原作同様に、攻撃を受ければ受けるほど強化されるという設定が活かされ、相手から攻撃を受け続けて最大までダメージチャージをすると、とてつもない強力なアクションを発動できるようになる。
そして、もう1人の犬牟田は情報分析を得意とする設定のキャラクターで、遠距離攻撃をヒットさせると専用のアナライズゲージが溜まり、消費することでダメージが通常よりアップするなどの特徴がある。これ以外のキャラクターも原作のエッセンスが凝縮されている。これぞキャラゲーのお手本というような、原作リスペクトを感じ取れる作りである。
ストーリーモードやオンライン対戦など、白熱のモードが充実!!
「キルラキル ザ・ゲーム -異布-」というタイトルにもなっているように、本作ではアニメとは少し違った異布(IF)の物語が楽しめるストーリーモードを収録している。アニメでは、主人公「纏流子」のライバルキャラとして登場した「鬼龍院皐月」の視点で物語が描かれる。
ストーリーモードは3Dムービーで展開し、物語の合間にバトルパートが挿入されるという形式。ノベルゲームのように物語を読み進めるのではなく、「GUILTY GEAR Xrd」シリーズ同様のアニメを見る感覚で楽しめるのがとても良い。
アニメにはないゲームならではの展開が詰め込まれており、ゲームオリジナルの皐月の新衣装「純潔神髄」が登場。皐月が身にまとう神衣純潔の最終形態だけあり、圧倒的な強さを誇る。性能がケタ違いに高いということもあり、ストーリーモード以外では使用することができないのは少し残念である。
メインとなる「鬼龍院皐月」編をクリアすると、「纏流子」編も解禁されるのでストーリーモードのボリューム感はなかなかなもの。原作を知らない人でも本作だけで内容が理解できるストーリー構成となっているので、「キルラキル」を未体験の人にもこの暑苦しいほどの熱いストーリーを体感してもらいたい。
対戦ゲームの目玉ともいえるオンライン対戦モードももちろん実装。勝敗が記録されない「プレーヤーマッチ」と、勝敗結果によって段位が変動する「ランクマッチ」の2つが用意されている。オンライン対戦をするならば、それはもちろん勝ってスカッとしたい。緩くいろいろなキャラを触ってきたが、ここからは自分にしっくりハマるキャラクター選びが重要になる。
自由にキャラクターを操作できる「トレーニングモード」に籠り、それぞれのキャラクターの技性能やコンボなどを確認していった結果、持ちキャラはストーリーモードでも使ってきた鬼龍院皐月(二刀流)に決定。接近戦を得意とするインファイターだが、遠距離攻撃のリーチの長さや追尾性の高さもあり、遠近どちらでも活躍できる高性能なキャラクターだ。さらに移動スピードも速く、一気に相手の懐に潜り込めるのも強味。強いて欠点を挙げるとすれば、攻撃力が若干低いという部分だろう。
キャラも決まり、真剣勝負のランクマッチをプレイ。数十戦試合をしたが、対戦相手の6割強が自分と同じく鬼龍院皐月(二刀流)であった。やはり強キャラなのだろうと確信した。
下のランク帯での戦いでは、素早く敵を追尾して攻めに転じることができる「追尾ダッシュ」を多用してくるプレーヤーが多かった。追尾ダッシュは成功すればコンボにまで持ち込むことができるので見返りは大きいのだが、ダッシュ中は無防備状態なので対空攻撃や必殺技で簡単に迎撃される危険性がある。
初めのうちは、追尾ダッシュを対処しているだけで勝ち星を上げられたが、段位が上がるにつれ対戦相手がどんどん手強くなってくる。“相手の行動の裏をかいて攻める”というのが対人戦の基本となるのだが、プレーヤーのレベルが上がるにつれて無駄な動きが少なく、なかなか手が出せない。互いに出方をうかがって、遠距離攻撃で牽制し合うジリジリ感がたまらない。
ガードを固めているのを読んでブレイク攻撃での崩しや、追尾ダッシュで相手の迎撃を誘って、直前でダッシュキャンセルをして隙を突くなどの高度な読み合いがかなり熱い。この感覚はCPU戦では味わえない、対人戦ならではの面白さである。
オンライン対戦を存分に堪能し、対人戦をしてみた感想としては、格闘ゲームに引けを取らない白熱の対戦が楽しめた。格闘ゲームならば初心者と上級者とでは高度なコンボなど“できることの幅”がそもそも違うが、本作はその点において“全プレーヤーが同じ立ち位置で戦うことができる”。その分、読み合いや立ち回りが重要になってくるが、初心者であっても対人戦のステージに簡単に立てるゲームバランスは素晴らしいの一言だ。
今回紹介したモード以外にも、大量発生する敵キャラをなぎ倒していく1対多数戦の「カバーズチャレンジモード」や、CPUと連続で戦い続ける「勝ち抜きチャレンジモード」。キャラクター3Dモデルを使ってゲーム内でジオラマを作成できる「デジタルフィギュア」など、遊べるモードが豊富に用意されている。
原作ありのゲーム化というと、完全なるファン向けでゲーム自体は残念なクオリティというイメージがどうしてもあるのだが、本作はその固定観念をぶっ壊すようなしっかりと作り込まれた作品であった。強いて残念な点を挙げれば、原作の登場人物の都合上しょうがないといえばしょうがないのだが、プレイアブルキャラクターが隠しキャラを含めて10人という少なさが気になった。今後、DLCでキャラクターが追加されているとのことなので、そこに期待したいところである。
本作は原作のファンはもちろんのこと、「キルラキル」を知らない人でも1つの対戦アクションゲームとして十分に楽しめる内容となっている。本作を少しでも気になったら、このゲームから「キルラキル」の世界に入るのもありだろう。