「SAMURAI SPIRITS」レビュー

SAMURAI SPIRITS

剣戟格闘ゲームの元祖にして最高峰、一撃必殺のバッサリ感は健在! 剣客たちの死闘がついに幕を開ける!!

ジャンル:
  • 格闘
発売元:
  • SNK
開発元:
  • SNK
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
価格:
7,200円(税込)より
発売日:
2019年6月27日

 2018年9月に突然の発表で格ゲーファンを震撼させたSNKの剣戟格闘ゲームのシリーズ最新作、「SAMURAI SPIRITS」がPS4/Xbox Oneで6月27日に発売された。

 「サムライスピリッツ」シリーズは1993年に1作目がアーケードでリリースされ、素手で戦うという当時の格闘ゲームの固定概念を壊した作品である。“武器”というポイントに比重を置いており、他の格闘ゲームでは味わえない刀による1撃の重さ、攻撃力の高さが最大の特徴である。この新しさはファンの心を掴み、アーケードだけでも10作品のシリーズ作品が製作された。

 そしてシリーズ最後の作品となった「サムライスピリッツ閃」から約11年振りの新作となる本作だが、これまでのシリーズにあったジリジリとした死合いの緊張感を踏襲しつつ、さらに洗練されたゲームバランスに進化している。今回、新生「SAMURAI SPIRITS」を触っていき、ゲームのプレイ感や新キャラクターの使用感など、本作の魅力をお伝えしたいと思う。

読み合いのジリジリ感と豪快な1撃がクセになる、本作ならではの真剣勝負!

 今作の時代背景は初代「サムライスピリッツ」(以下、「初代」)以前。プレイアブルキャラクターも「初代」や「真サムライスピリッツ」に登場したキャラがメインとなっている。それに加え、ハイパーネオジオ64の「SAMURAI SPIRITS~侍魂~」、「SAMURAI SPIRITS2 アスラ斬魔伝」よりヒロインの色、「サムライスピリッツ零」の主人公格である徳川慶寅など、「真サム」以降の作品で人気の高かったキャラクターも一部参戦。さらに今作からの新キャラクター3人を含めた総勢16名の剣客たちが死闘を繰り広げる。

【総勢16名の剣客たち】
プレイアブルキャラクターは個性豊かな16人。武器はキャラによって様々
人気の高い色と慶寅。色はハイパーネオジオ64の2タイトルにしか登場していないので、今回の参戦は貴重だ
今作から参戦の新キャラクター3人も、「義賊」、「大工」、「風水師」と個性が強く、良い味を出している

 「SAMURAI SPIRITS」は、近年の格闘ゲームの主流であるコンボをメインとしたゲーム性ではなく、立ち回りや読み合いを主軸に置いたゲームバランスである。1撃で3~4割のダメージを与えられる高火力な強斬りをいかに叩き込んでいくか――というのが本作の戦いの醍醐味である。

 先の説明だけだと大味なゲームに思えるかもしれないが、「SAMURAI SPIRITS」の戦いには“深い読み合い”や“高度な駆け引き”が凝縮されている。威力が高い強斬りは発生が遅くヒットさせることは容易ではない。牽制技で注意を逸らせて隙を突くことや、相手の守りを破る「防御崩し」などのテクニックを駆使することが重要になってくるのだ。もちろん考えていることは相手も同じで、いかに相手の行動の上をいくかという攻防がかなり熱い。コンボゲーと違って難しい操作は要求されないので敷居は低いが、突き詰めると奥が深く、遊べば遊ぶほど面白くなるゲーム性である。

【シンプル操作ながら奥深い戦闘システム】
「サムライスピリッツ」の代名詞でもある強斬り。1撃の威力が凄まじい
攻撃を通すには、防御崩しなどのテクニックが必要不可欠

 通常攻撃すら強力な本作だが、さらに威力が高い一撃必殺級の大技も存在する。その1つが「武器飛ばし必殺技」だ。ダメージを受けると「怒りゲージ」が溜まり、最大になると「怒り頂点」状態になる。怒り頂点時は攻撃力が大幅に上がり、武器飛ばし必殺技が使用可能になる。武器飛ばし必殺技はその名の通りヒットさせると大ダメージに加えて相手の武器を吹っ飛ばし、素手の状態にすることができるのだ。なお、武器飛ばし必殺技は、後述の「怒り爆発」状態でも使用が可能だ。

 素手の状態になると必殺技のほとんどが使用できなくなり、武器を持った状態と比べて攻撃の威力やリーチが激減するので圧倒的優位に立てる。1度相手の武器を奪ったら取り返されないように嫌らしく立ち回っていくのが勝つためのセオリーだ。

【戦況を有利にする武器飛ばし必殺技】
怒りゲージがMAX中ならば武器⾶ばし必殺技は何度でも使⽤可能。ヒットさせれば武器を奪って戦いを有利に運べる

 本作最大の威力を誇る必殺技、それは「秘奥義」だ。武器飛ばし必殺技と違いどのタイミングでも使うことができるのだが、全てのラウンドを通して試合中1回しか使用できないという制限がある。ヒットすれば1撃で7割もの体力を奪えるとんでもない技なのだが、発生がとても遅く直に当てるのは難しい。

 秘奥義を確実に食らわせるには「弾き返し」というテクニック重要。相手の攻撃に合わせて弾き返しのアクションを繰り出すと、攻撃を受け止めて相手を一定時間無防備にさせることができるので、そこが秘奥義を決める最大のチャンス。かなり有効なテクニックではあるのだが、弾き返しのタイミングが結構シビア。失敗してしまうと相手の攻撃が直撃してしまうので、安定して成功できるように練習は必須だ。

【最大火力の秘奥義】
弾き返しを決めれば、ド派手な演出の秘奥義を確実に食らわせられる。1撃で相手を瀕死にまで追い込むことができる

 最後の切り札ともいえる「一閃」も強力だ。怒りゲージを消滅させることで「怒り爆発」が発動。一閃はこの怒り爆発状態の間に1度だけ使用することができる技で、無敵の状態で相手目がけて高速の一太刀を浴びせる。怒りゲージが変化し、時間で減少する怒り爆発ゲージの量で威⼒が変動するが、3〜7割のダメージを⾷らわせることができる。⼀閃は技の発⽣も早く距離も⻑いのであらゆる場⾯で活躍する。相⼿からしたら怒り爆発状態中はいつ⼀閃が⾶んでくるかわからないので、それだけで圧を掛けることができる。

 怒り爆発は開幕から使うことができるが、1度爆発してしまうとその後のラウンドも怒りゲージが無くなってしまうので、攻撃力アップや武器飛ばし必殺技が使用できなくなるというリスクもある。どこで怒りを爆発させるか、その見極めも重要になってくる。

【怒り爆発と一閃】
秘奥義に匹敵する威力の一閃。写真は最大ダメージ

 この記事を執筆しているのはゲーム発売前なので、オンライン絡みのモードはプレイできなかったのだが、オフラインで遊べるモードが実に充実していた。物語を楽しみながらCPUと戦っていく「ストーリーモード」をはじめ、全キャラクターを相手に勝ち抜き戦を行なう「総当たり戦モード」、体⼒が無くなるまで戦い続ける「サバイバルモード」、制限時間にどれだけ相⼿を倒せるかを競う「タイムトライアルモード」など、遊び応えのあるボリューム感。

 その中でもメインのモードであるストーリーモードを主人公の覇王丸でプレイ。覇王丸をはじめ、お馴染みのキャラクターたちは必殺技や攻撃など過去作とあまり大きな変化はなく、昔プレイしていた頃と同じ感覚で動かすことができる。戦闘も通常攻撃のたった1発で体力をゴッソリと減らせるこの爽快感、これこそがまさに「サムライスピリッツ」だ。

 原点回帰を謳っているだけあり、出血や切断表現なども健在。シリーズのファンなら「コレだよコレ!」となること間違いない。残虐表現が苦手なユーザーへの配慮も忘れておらず、オプションでオンとオフを切り替えることができるので安心していただきたい。

 ストーリー後半のライバル戦ではイベントシーンが挿入される。覇王丸のライバル戦の相手はもちろん牙神幻十郎だ。2人は同門であったのだが、幻十郎が秘める邪悪を師に悟られ破門となった。その後は人斬りとなり、覇王丸の命を狙っているという因縁の関係。これまでのシリーズではフルボイスで2人の掛け合いは見られなかったので、ファンとしてはたまらない演出だ。ストーリーの最後には驚きのラスボスも待ち受けているので、どんな相手なのかは自分の目で確かめてもらいたい。

【覇王丸ストーリーモード】
過去作と遜色ない、豪快なアクションの覇王丸。
ストーリーモードではファン必見のイベントシーンが盛り込まれている

旧キャラに負けない個性が光る、3人の新キャラクターに迫る

 ここからは今作で新たに加わった3人のキャラクター、「鞍馬夜叉丸」、「ダーリィ・ダガー」、「呉瑞香(ウー レイシャン)」について触れていこう。体験版の第1弾でも使用できた夜叉丸は、父を無実の罪で処刑された過去を持ち、幕府を憎んでいる。代々伝わる天狗の力を用いて、義賊「烏天狗」として暗躍するダークヒーローポジションのキャラクター。

 長巻を扱う夜叉丸は、リーチと火力の両方に長けている万能キャラクターで、必殺技は3種類と他のキャラと比べて少なめなので初心者も入りやすい。最大の特徴は、怒り頂点状態では全ての必殺技性能が強化される。中でも空中飛び道具技の「凩」は強化版だと相手を大きく打ち上げ、そこから「雁渡」で拾うことができる。怒り頂点時限定の連携だが、このセットだけで体力の4割を奪えるので覚えておいて損はないコンボだ。

【鞍馬夜叉丸】
優秀な突進技を持つ夜叉丸。コンボに組み込めば高い火力を叩き出せる
怒り頂点状態限定の凩から雁渡のコンボ。お手軽だが大ダメージを与えられるので実用性が高い

 主力として使っていきたいのはダッシュ強斬りだ。発生が早いうえに中段攻撃となっているので、相手のしゃがみガードを潰すことができる。他にも、しゃがみ強斬りが防御崩しから確定で入るので、これもかなりのダメージソースになる。王道の覇王丸と比べると飛び道具や対空技の面では少し弱いが、新キャラ3人の中ではもっとも素直な性能で扱いやすいキャラクターとなっている。

【夜叉丸の主力】
初見殺しのダッシュ強斬り。ガードするのが困難な攻撃だ
ガードが固い相手に有効な、防御崩しからのしゃがみ強斬り
怒り爆発中は武器飛ばし必殺技の威力も格段にアップする

 2人目の新キャラクターは、女船大工のダーリィ・ダガー。巨大なノコギリのような武器を扱う、見た目通りのパワフルで豪快なキャラクターだ。パワーキャラの割に発生の早い技を多く持っているのも特徴で、中距離技の「巻波」や、突進技の「波刃乗り」は奇襲としての使い方も有効。しかし、波刃乗りは技後の硬直が長く、外してしまうと痛い反撃をもらってしまうので乱発は厳禁だ。

【ダーリィ・ダガー】
ダーリィ・ダガーは高火力で豪快な戦い方ができる
巻波や波刃乗りなど、発生の早く使い勝手の良い技が揃っている

 必殺技の「落波」は溜めが可能で、最大まで溜めると地上全範囲にガード不能の一撃を与えることができる。強力な技ではあるが溜め時間が長いので、相手と十分に距離をとって溜めるのが良いだろう。

 高火力の立ち強斬りが防御崩しから叩き込めるのも非常に強い。後ろ方向への防御崩し限定で、タイミングも少しシビアで目押しが必要ではあるが、これを覚えておけば大きなダメージを簡単に食らわせることができる。力で圧倒したい人にはおすすめのキャラクターだ。

【ダーリィ・ダガーの主力】
溜め時間は長いが、威力が高く、ガード不能という性能の落波
後ろ防御崩しから強攻撃が入るので、積極的に狙っていきたい

 最後のキャラクターは、風水の力で戦う神獣使いの呉瑞香。扱う武器は風水羅盤。設置技や当身技などを持つ、3人の中でもっともテクニカルなキャラクターだ。立ち回りの基本は、地面に設置する技の「⽩⻁-天羅地網-」で相手の動きに制限を掛け、飛び道具の「玄武‐排山倒海‐」で圧を掛けつつ、飛んで来たら対空技の「青竜‐星馳電掣‐」でキッチリ落として着実にダメージを与えていこう。呉瑞香は通常攻撃のリーチは短くヒットさせ辛いので、必殺技を軸に戦っていくのがポイントだ。

【呉瑞香】
設置、飛び道具、対空と、優秀な必殺技が揃っている

 設置技の「白虎‐天羅地網‐」はヒットさせると相手を高く打ち上げ、そこから様々な技で追撃することが可能。怒りゲージが溜まっていない状態ならダッシュ強斬り、怒り頂点状態なら武器飛ばし必殺技を叩き込むことができ、これだけで体力の6割を奪うことができる。設置技を近距離でヒットさせたとき限定だが、追撃で秘奥義を食らわせることも可能。使える状況は限られているが1コンボで8割の特大ダメージを叩き出せるのだ。

 他とは大分違う立ち回りが必要だが、斬り合いがメインの「SAMURAI SPIRITS」では珍しいタイプの面白いキャラクターであった。距離を詰められるとかなり厳しいが、一定の距離をキープして戦えばかなり強いように思えた。

【呉瑞香の主力】
設置技から強力な追撃を決められるのが強味。写真右下は追撃で秘奥義を決めたシーン。凄まじい威力だ

 本レビューでは、アーケードスティックとPS4の純正パッドの両方でプレイしたが、本作が複雑な操作が不要なうえ、ボタンの同時押しなどもLRボタンにしっかりと割り振られているので、どちらのコントローラでも遊びにくさは一切感じなかった。体験版では遅延が報告されていたが、そこもしっかりと改善されており、タイミングが重要な弾き返しなどもかなり成功しやすくなっていた。

 プレイした感想としては、過去の「サムライスピリッツ」を色濃く継承しているという一言に尽きる。一撃必殺級の爽快感や初代をオマージュしたOP。さらに、楽曲も懐かしのBGMのアレンジ版が収録されていたりと、過去作へのリスペクトが込められた作りに賞賛を送りたい。

 発表から注目を集めている「ゴーストシステム」や、格闘ゲームの目玉である「オンライン対戦」は残念ながらプレイすることはできなかったが、そこは発売後の楽しみにとっておくとして、今回はゲーム自体の面白さを十分過ぎるほど体験することができた。本作の醍醐味でもある対人戦を早くプレイしたくて仕方がない。