「イースVIII -Lacrimosa of DANA- スーパープライス」レビュー

イースVIII -Lacrimosa of DANA- スーパープライス

次回作を前に“イース”に触れるなら今が絶好のチャンス!名作アクションRPGの魅力をシリーズの特徴とともに改めて紹介

ジャンル:
  • アクションRPG
発売元:
  • 日本ファルコム
開発元:
  • 日本ファルコム
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
4,500円(税込)~
発売日:
2019年6月20日

 1980年代にパソコン向けとしてリリースされた第1作から30年以上にわたってシリーズを重ねている、日本ファルコムのアクションRPG「イース」シリーズ。9月26日にはナンバリング第9作となる次回作「イースIX -Monstrum NOX-」が発売予定となっている。

 「イース」シリーズは根幹となるコンセプトを引き継ぎつつも、時代に合わせてゲームデザインもグラフィックスも進化を続けてきた。“冒険家”アドルによる世界各地での冒険を描く本作は、シリーズ各作品ごとに舞台が異なり物語も独立しているため(例外としてI・IIのみ前後編という形でワンセット)、どの作品からプレイしても基本的に問題ない。

 とはいえ今からシリーズに触れるなら、やはり現時点の最新作である「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」が1番のおススメ。2016年にPS Vita版が、翌2017年に新要素も追加されたPS4版がリリースされ、PCやNintendo Switchにも移植されるなど現行環境で手に取りやすく、またゲーム内容もここ数作品の集大成と言えるようなものに仕上がっている。

 そんな「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」の“スーパープライス版”が、6月20日に発売された。価格がこれまでより安くなった上に、パッケージ版の初回特典およびダウロード版の早期購入特典として、現在PlayStation Storeで有料配信中のDLCがすべて入手可能となっている。

 「PlayStation Awards 2017」でユーザーズチョイス賞を受賞するなど既に高い評価を得ている本作ではあるが、「イース」に興味があるなら絶好とも言えるこの機会に、本作の魅力をシリーズ自体の特徴やDLCの内容も含めて改めて紹介したい。シリーズ未経験の方はもちろん、シリーズのファンだが最近の作品は未プレイという方も参考にしていただければ幸いだ。

謎と神秘に満ちた舞台で繰り広げられる冒険、そして出会いと別れの物語

 「イース」シリーズは、生涯をかけて幾多の冒険に挑んだ冒険家アドル・クリスティンを主人公とする作品。世界観としては魔法が当たり前のように存在するファンタジーではなく、各作品の舞台ごとの伝承などにもとづく神秘に触れ、その謎に挑んでいく、というのがシリーズのお約束となっている。

 「イースVIII」の舞台となるのは、近海を通る船が謎の沈没を遂げるという絶海の孤島、セイレン島。乗っていた船の沈没によってこの島に流れ着いたアドルは、同じく漂流してきた船の乗客や船員達と協力して脱出の手段を模索しつつ、他の漂流者を探して救出するため、また苛酷な環境で生き抜くため、島の探索を進めていく。

主人公のアドル。乗っていた船が謎の巨大海洋生物に襲われて沈没し、セイレン島へと流れ着く

 ゲームの前半は、島の外とは明らかに異なる生態系を持つ“古代種”と呼ばれる生物が大きな障害となる無人島サバイバル的な内容で、過去作品とはまた違った新鮮なプレイ感。島がその“真の姿”を見せる後半は、未知の文明の遺跡探索など“いつもの「イース」らしさ”もどんどん加速していく。

いわゆる恐竜などの本作における呼び名である“古代種”。このような生物がなぜ存在するのかも本作の謎のひとつ
ゲームを進めると島は当初と大きく異なる様相を見せる。遺跡探索は「イース」シリーズの定番だ

 また、とくにコンシューマへの移行以降、そのときどきのゲームシーンのトレンドを取り入れながら進化しているように見受けられるのもシリーズの特徴で、「イースVIII」では拠点構築がこれにあたる。島の各地に点在する漂流者達を救出したり資材を集めることで、拠点の施設を増やしたり防衛力を増強させるのも本作の楽しみとなっている。

漂流者達によって築かれた拠点“漂流村”。更地だった場所が人が増えるにつれて賑わい、発展していく

 「イース」シリーズといえば、各作品ごとのヒロインの存在も欠かせない。ひとつの冒険が終わればまた次の舞台へ旅立つというシリーズの宿命として、出会いがあれば別れもある、という切なさも「イースらしさ」のひとつと言えるだろう。ヒロインは作品ごとにさまざま、そして再会を願いつつの別れから“永遠の別れ”まで、別れの形もさまざまだ。

 「イースVIII」ではどうか……は、もちろんネタバレになるので言えないが、ひとつ言えるのは「ヒロインを取り巻く物語のスケール」という点においては、あらゆる意味で過去最大級であるという点。また新たな試みとして「ダブル主人公」という要素が導入されており、アドル達の物語の合間に、彼の夢といった形でヒロインの少女「ダーナ」を操作するパートが挟まれる。アドル達の冒険の舞台とは雰囲気の異なる場所で繰り広げられるダーナ視点の物語が、アドル達の物語とどう関わってくるのかは本作を牽引する大きな謎のひとつ。そして2つの物語が集束する瞬間は、シリーズ屈指の名場面と言える美しく感動的なものとなっている。

アドルの夢に登場する少女、ダーナ。最初は全く接点がないように感じられる2人の主人公の物語が並行して描かれ、ある1点へと集束していく

雑魚敵を蹴散らしていく爽快感と、歯応え抜群のユニークなボス戦

 シリーズを重ねるにつれ、体当たりから剣を振るっての戦闘、操作キャラクターを切り替えつつ他のメンバーは自動で戦ってくれるパーティバトルと進化を続けている「イース」シリーズだが、「フィールドをスピーディーに駆け回りながら雑魚敵を蹴散らしていく爽快感」は一貫した魅力となっている。一方で、新たなフィールドに突入すると被ダメージが一気に増えたりと、メリハリの効いたバランス調整も特徴だ。

 「イースVIII」もこうしたテイストを引き継ぎつつ、多彩なスキルや強力でド派手なEXTRAスキル、敵の攻撃に合わせてタイミングよく回避を行なうことで敵の動きが一定時間スローになるフラッシュムーブ、キャラクターごとの武器の属性による敵との相性、ジャンプアクションを織り交ぜた攻撃など、これまでの作品で培われたアクションや演出の集大成と言えるものとなっている。

攻撃範囲や特性などの異なる多彩なスキルを駆使して戦っていく
スキルは4つまで同時にセットし、R1ボタンと◯×△□ボタンの組み合わせで使い分けることが可能

 また、それぞれに個性的で手強いボスとのバトルも、「イース」シリーズの醍醐味。ボスの攻撃パターンを見極めてヒット&アウェイを繰り返したり、戦いながらボスごとのギミックを把握していったりといった、アクションRPGのプリミティブな楽しさが詰まった歯応えのあるバトルとなっている。

 「イースVIII」では巨大で獰猛な古代種とのバトルがとくにフィーチャーされており、ボス戦はもちろんフィールドでも、突然現われた古代種によって大ピンチ!なんてこともあったりと、スリルに満ちた冒険を演出している。また、拠点防衛を行なう「迎撃戦」に獣たちの拠点へと攻め込む「制圧戦」と、バトルをたっぷり楽しめる要素も揃っている。

大量に押し寄せてくる敵を撃退していく迎撃戦。資材によって設置・強化したバリケードやデコイなどを活用し、ほかの漂流者達の支援も受けながら戦っていく

アイテムなどを駆使してフィールドを切り拓いていく探索要素

 アイテムを入手したりボスを倒すことで少しずつ行動範囲が広がっていくという、昔ながらのフィールド探索型アクションRPGらしいプレイ感も「イース」の醍醐味。2DトップビューからTPS的な視点へと操作性は変化してきたが、その根本的な手触りは変わらない。

 「イースVIII」では1つの島が丸ごと舞台になっているのが特徴で、ツタに掴まって移動できるグローブなどの“冒険具”を入手することで行動範囲を広げる要素のほか、立体的でダイナミックな構造の自然系ダンジョンも大きな見どころとなっている。また、救出した漂流者の人数が増えることで、その力を借りて障害物を取り除いて先へ進めるようになるのも本作ならではだ。

ツタに掴まって移動できるグローブなど、さまざまな“冒険具”によって道を切り拓いていく
漂流者を救出して拠点の人数が増えることで先へ進めるようになる場面も

 前作「セルセタの樹海」で導入されたオートマッピングによる地図埋め要素もさらに洗練され、何らかの理由でまだ通れない場所や取れない宝箱なども地図上で確認可能。物語を進めていく楽しさと、地図の空白部分を埋めていく達成感が噛み合ったシステムとなっている。

地図の空白を少しずつ埋めていくのは達成感がある。要所要所へのファストトラベルも完備

豊富なDLCでさらに楽しく、遊びやすく!

 「イースVIII」のスーパープライス版の特典として入手できるDLCは、全22種類。序盤~中盤の戦闘が有利になる装備品や、回復アイテム、素材アイテム、レベル上昇アイテムなどとなっている。

 装備品についてはステータスを上昇させるものや特殊な恩恵を得られるものが数種類用意されている。あくまでゲーム中でも入手可能なもので、それらをある程度先取りできるといった形になっており、各1つずつであることもあり著しくゲームバランスを崩すようなものではない。

 DLCはインストールしただけではゲーム内に反映されず、「便利アクセサリセット」、「瓶入りポーションセット」といったセットごとに開封することで利用できるので、「ちょっとこの辺が足りなくて自力では厳しいな」というときに頼る、くらいの使い方がお勧めだ。アクションゲームは苦手だけど世界観やストーリーは気になるといった方が、サクサク進めたいときに使うのもよいだろう。

DLCは必要なセットだけを開封して利用することが可能

 DLCのうち唯一作中で入手できないものは、アドルの仲間として共に冒険を繰り広げる貴族令嬢「ラクシャ」の追加衣装「エタニアン・スカラー」。こちらはステータスなどには影響のない純粋なお遊び要素で、作中のとある文明をイメージした衣装に着替えられるようになっている。

ラクシャの衣装「エタニアン・スカラー」。作中のとある文明をイメージしたものとなっている

 以上、シリーズ自体の特徴も交えて、改めて「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」の魅力について語ってみた。ちなみに「イースIX -Monstrum NOX-」の現在確認できる情報からは、冒険の舞台が「都市」であることやパーティバトルではなく単独でフィールドを駆け巡る様子が伺えるなど、ここ数作とはかなり異なるテイストも感じられる。

 これまで以上の変革に期待しつつ、まずはここまでの集大成と言える「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」で、シリーズのエッセンスに触れてみてはいかがだろうか。なお、今回は「イース」シリーズの導入の一助に、という観点で紹介したが、「イースVIII」自体のより詳細な内容についてはPS Vita版発売時にレビューを執筆したので(PS4版の追加要素には触れられていないが)こちらも参考にしてほしい。