「ハースストーン: 天下一ヴドゥ祭」レビュー

ハースストーン

新たな獣や海賊に要注意! トロルたちの大喧嘩が始まった

ジャンル:
  • デジタルカードゲーム
発売元:
  • Blizzard Entertainment
開発元:
  • Blizzard Entertainment
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
基本無料(アイテム課金)
発売日:
2018年12月5日

 トロルたちの大喧嘩がいよいよ始まった! Blizzard EntertainmentのPC/モバイル向けデジタルカードゲーム「ハースストーン」の新拡張パック「天下一ヴドゥ祭」の配信が12月5日よりスタートした。

 世界中で大人気の某漫画に出てくる武道会に似た名前を冠したこの大喧嘩は、一世代に一度、アゼロス中のトロル部族がグルバシ闘技場に集まり、彼らが持つロア(獣の精霊)のうちどれが最強かを決めるために戦う、200年続く一大イベントだ。

【「天下一ヴドゥ祭」トレーラー |「ハースストーン」】

 「天下一ヴドゥ祭」の主催者は、新たなシャーマンヒーロー「ラスタカン」。全能なるザンダラリの神王で、史上最強のトロルのひとりだ。

 「天下一ヴドゥ祭」では、9人のトロルの闘士が集まりそれぞれチームを作る。各チームはロアの名を掲げ、闘士たちはそのロアの名代として闘技場に挑む。「ハースストーン」ならではの究極の大げんかに参戦するのは、アゼロスの歴史に名高い最強のトロルたち。その中には、クラシックな有名ボス隻腕の斧使い「ズルジン」や、ラスタカンの娘タランジ王女、「ハースストーン」には初登場となる新キャラクターである卑劣なトロルの海賊フックタスク船長なども登場する。

 新拡張パック「天下一ヴドゥ祭」には、9人のヒーロークラスにそれぞれ10枚、中立カード45枚の計135枚の新カードと、1人用のコンテンツ「喧嘩祭」が収録されている。

 新要素として追加されたのは「血祭」。自分の攻撃力(ダメージ)が相手の体力を上回っていた場合に、効果が発動するというものだ。さらに、全クラスにロアと呼ばれる強力なレジェンドミニオンと、この「ロア」の力を顕現させる「精霊」が追加された。「精霊」は、スタッツが0/3のミニオンで、強力な常時発動能力を持っている。さらに、精霊たちは1ラウンドの間「隠れ身」を得られる。

 「チーム精神」では、全部で9つのチームが存在し、それぞれが強大なるロアを担ぐ。「ハースストーン」の9つのクラスのひとつにそれぞれ対応している。1人用のコンテンツ「喧嘩祭」と関わりがありそうだ。新拡張パックのカードがどんな変化をもたらすのか、さっそく開封したパックから出てきたカードを使ってデッキを組み対戦を実施してみた。

新要素「血祭り」を持つカードを対戦シーンとともに紹介

 キーワード「血祭」を持つカードは、自らがミニオンを攻撃し、相手の残り体力を超えるダメージを与えて殺した時に、追加効果を発動する。倒した後、攻撃したミニオンが死んでしまっても発動する。例えば「ダフ屋」の場合、攻撃して死んでしまったとしても、その後で、追加効果となる「カードを2枚引く」が発動し、カードを2枚ドローする。

【ウーンダスタ】
「ウーンダスタ」が攻撃した後、「血祭り」の効果が発動し、盤面に5/5で隠れ身を持った獣ミニオン「獰猛なヒナ」が召喚された。
【ダフ屋】
「ダフ屋」がミニオンを攻撃。血祭りの効果が発動し、2枚カードが引けた
【そのほかの「血祭り」を持つカード(一部)】
アイアンハイド・ダイアホーン
エサ付きの矢
グルバシ・チキン
サイのロア・アカリ
スルスラズ
爆炎波

新拡張パック「天下一ヴドゥ祭」レジェンドカード

ドルイド

戦ドルイド・ローティ
ラプターのロア・ゴング

ハンター

オオヤマネコのロア・ハラッジ
ズルジン

メイジ

ドラゴンホークのロア・ジャナライ
呪術司マラクラス

パラディン

大祭司ジカール
トラのロア・シャヴァーラ

プリースト

死のロア・ブワンサムディー
タランジ王女

ローグ

サメのロア・グラル
フックタスク船長

シャーマン

ゼンティーモ
カエルのロア・クラッグワ

ウォーロック

女大祭司ジェクリック
コウモリのロア・ハイリーク

ウォリアー

戦将ヴーン
サイのロア・アカリ

中立

グリフター
モジョー使いジヒィ
ダ・アンダテイカ
ウーンダスタ
魂剥ぐロア・ハッカー
【パック開封時に獲得できたレジェンドカード(一部)】
事前に発売された2種類のバンドルパックを購入し、配信後ログインするだけでもらえる6パックの計73パックを開けて5枚のレジェンドカードが入手できた。
パック開封の際も、太鼓の音とともに花火が上がる演出

対戦中に出会った注目カードを紹介

集団ヒステリー

5マナ:「プリースト」の呪文カード
「全てのミニオンに他のランダムなミニオンを攻撃させる。」

 プレリリースイベントなどでも、注目されていた「プリースト」の呪文カード。対戦中もやっぱり強かった。ランダムな攻撃で盤面のミニオンがほぼやられてしまった。かなり強力なAoE効果を持つことがわかる。「プリースト」との対戦時、今後、このカードのケアも頭に入れてプレイする必要がありそうだ。

まず、5/3の「デビルザウルス」と、5/1の「呪われた門弟」、1/2の「デビルザウルス」が盤面にある。「デビルザウルスの卵」が一番左の「デビルザウルス」を攻撃。卵は割れて断末魔が発動し、5/5の「デビルザウルス」が1体登場。「デビルザウルス」は1ダメージを受けて5/2になった。次に、真ん中の「呪われた門弟」が5/2の「デビルザウルス」を攻撃。ともに5ダメージを受けて死んでしまった。結局残ったのは5/5の「デビルザウルス」1体のみだ

大砲連射

6マナ:「ローグ」の呪文カード
「ランダムな敵1体に3ダメージを与える。味方の海賊1体につき1回これを繰り返す。」

 盤面に海賊が並ぶと、かなり強力なAoE(全体除去)効果を発揮する。「ローグ」の8マナレジェンドカード「フックタス船長」や、中立ミニオン「シャークフィンのファン」とのシナジー効果が強い。

 このカードは、コンボが決まると本当に気持ちいい。盤面の海賊1体につき、ランダムに3ダメージを与えるので、一気に盤面を取れるだけでなく、フェイスにもダメージを与えることができる。

盤面に海賊ミニオン7体が並んでいる所に「大砲連射」を使用すると、盤面にミニオンが1体もいなかったため、3ダメージ×7体分の21ダメージがすべて相手ヒーローのフェイスへ飛んだ

ズルジン

10マナ:「ハンター」のレジェンドカード
「雄叫び:この対戦で自分が使用した呪文を全て使用する(対象はランダムに選択)。

 今回の対戦中、何度かハンターと当たったが、10マナカードなので、なかなかこのカードを見る機会がなかった。さらに何度か対戦を経てようやくズルジンを見ることができたが、10マナと最高に重いカードだが効果はかなり強力だ。秘策ハンターならば、序盤からしっかり使用しておけば全ての秘策がセットされる。

秘策ハンターとのシナジー効果が抜群!

板渡らせの刑

4マナ:ローグの呪文カード
「ダメージを受けていないミニオン1体を破壊する」

 大型ミニオンの「山の巨人」や、挑発持ちの「リッチキング」や「マリゴス」など、やっかいなミニオンを1枚で処理できる強力な呪文カード。4マナなので、序盤に登場する4マナの中立ミニオン「躯の駆り手」なども即死させることができる。

 配信初日に対戦していて一番感じたのは、筆者が今いるランク20~17くらいまでのレベル帯では、前回、前々回の拡張パック公開の時と比べて、デッキタイプの偏りがなかったことだ。対戦する度に、様々なデッキタイプに当たって、いろいろなカードを見ることができ、同じクラスでも全然別のタイプのデッキに当たる機会が多かった。ところが、やはり3日目くらいになると「ウォリアー」と「ハンター」が多くなってきた。新カードが登場したばかりなので、新しいカードをより多く試したいためか、デッキに入れるカードに制限がある「偶数・奇数」デッキも少なめだった。今後対応したデッキも徐々に見られるようになるだろう。

 もうひとつ感じた大きな違いは、圧倒的に1試合にかかる時間が長くなっていることだ。特に筆者のいるレベル帯では、対戦時間が短いのが特徴だ。それはアグロデッキを使用する人が多いからだ。「ハースストーン」は、とにかく対戦回数がランクアップへの近道とも言える。勝率40%をキープできれば、対戦回数を増やせば自ずと順位が上がってくると言われている。そのため、1回の対戦時間が短くてすむように素早く相手を倒せる「アグロデッキ」の使用頻度が上がる傾向にある。今回、対戦時間が長くなったということは、カードにまだ対応し切れていない部分もあるにせよ、「コントロールデッキ」などを使う人が増えているためだと思う。一番長い対戦は約40分間だった。

 今拡張版の新要素である「血祭り」も、盤面に並べてすぐに発動するというよりも、徐々にパワーアップして勝利につながるというイメージだ。実際、その効果を発揮する前に倒されてしまうことも対戦中多かった。

【対戦中の様子】
対戦の舞台も「天下一ヴドゥ祭」仕様に。今回もギミックが隠されているので、いろいろな場所をクリックしてみよう

1人プレイ用コンテンツ「喧嘩祭」

 12月14日より、1人プレイ用コンテンツ「喧嘩祭」が配信される。トロルの闘士たちや、ロアたちがグルバシ闘技場で戦う「喧嘩祭」。プレーヤーは、トロルの若者「リッカー」となって、アゼロス最強の闘士たちを相手に闘いを挑み、ロアの栄光をかけ他の8クラスと闘っていく。

 勝つ度に戦利品のカードでデッキを強化することができるが、敵もだんだん強くなっていく。負ければそこで終わりだ。開始時、プレーヤーはランダムな3つのチームの「ミコシ」のうち1つを選ぶことができる。各チーム(各クラス)には、それぞれ異なるミコシが3つずつ用意されている。最初に選ぶ3つのミコシは必ず別々のチームのものになる。選べる「ミコシ」はロアごとに3つずつ、計27種類用意されており、「ミコシ」ごとに初期デッキも異なる。

 「ミコシ」はロアから強力な能力を与えられている。例えば「ミコシ」の1つ「ジャラナイトのマント」。これは手札の呪文の数で呪文が強化される。使用する度、持っている能力は弱くなるため戦略を立てて使用していこう。

 「ミコシ」はミニオン扱いで最初から戦場に出る、つまり手札に入っている。「ミコシ」が死ぬと戦場から消える代わり3ターン休眠する。休眠中は能力を失ってしまうため、戦略を修正しなければならない。9チームそれぞれに特別なミニオン、つまりそのチームのスター選手とも言うべき存在を誘うことができる。そのミニオンは、チームの「ミコシ」ととてもシナジーが強いものとなっている。

 優勝者にはカード裏面デザイン「喧嘩祭の王者」が贈られる。是非挑戦して、闘いに勝利し入手しよう。

「ハースストーン」の対戦だけじゃない面白さ

プレリリースイベントの様子

 前拡張版から、ユーザーイベントである「炉端の集い」のシステムが改良され、特定のIPから接続しリリース前に先行購入したパックを開けることができるようになり、先行開封したカードを使用して特別な「酒場の喧嘩」が楽しめるようになった。

 やっぱり、カードを開封する時が一番わくわくする。「レジェンドは何枚出るかな」とか、あの注目していたカードは引き当てられるか、など、期待を膨らませながらパックを開封していく。その楽しみが、より早く味わえるようになり、さらに今回からはコミュニティ間でも体験可能となった。

 今回の公式プレリリースイベントを見て、映画館でのパック開封や、対戦イベントはとても良いなと感じた。なぜなら「ハースストーン」はカードを盤面に置いた際のエフェクトや、セリフ、BGMも魅力のひとつだからだ。よく使われるカードの場合、登場シーンのセリフや、倒された時のセリフを聞くだけで、画面を見ていなくても「あ、あのカードだ」と気づけるくらいだ。今回の拡張版では、中立の5マナミニオン「元チャンピオン」が登場する時のセリフには「蝶のように舞い、ハチのように刺す」という、ボクシングチャンピオンの対戦スタイルを表現する言葉が使われていたり、中立の2マナミニオン「シャークフィンのファン」が倒された時にはユニークなセリフが採用されている。

 対戦シーンの映像はもちろん、セリフやBGMを映画館の大スクリーンでゆったりした椅子に座って鑑賞できるのは嬉しい。今後こうした機会が増えるといいなと思った。残念ながら今回実際に参加することはできなかったが、次回機会があれば参加してみたい。

 新拡張版を遊んでみて、「ハースストーン」の奥の深さと面白さを改めて感じた。今の環境は基本とクラシックカードに加えて、「大魔境ウンゴロ」、「凍てつく王座の騎士団」、「コボルトと秘宝の迷宮」、「妖の森ウィッチウッド」、「博士のメカメカ大作戦」、そして新拡張パック「天下一ヴドゥ祭」とスタンダード環境だけでも、かなりのカードが登場している。その中で遊び尽くすには、時間が幾らあっても足りない。筆者のように、レベル20付近を行なったり来たりしているくらいのプレーヤーは、強いデッキをお借りして対戦し、そのたびに「そういう戦い方もあるんだ」と発見の連続だ。

 また、「ハースストーン」にはデッキごとに正解が存在する。いわゆる勝ち筋だ。その正解を導き出していくという、パズル的要素も楽しめる。レベルアップするためには、勝たなければならないし、その正解を見つけて行かなければならない。何より、勝てると嬉しいし、もっともっと強くなりたいし、より一層勝ちたくなる。

 新拡張パックでは、今のところ、お気に入りのヒーロー「メイジ」の強いデッキが見当たらないのが残念だが、今後、7マナのレジェンドミニオン「ドラゴンホークのロア・ジャナライ」が活躍できるデッキが現われることを期待している。また自分でもデッキ構築をしていきたいと思う。

 新たにカードゲームを始めたいと思っている初心者の人にも、9月から、ランク50~26という新規プレーヤーでも安心して楽しめる環境が導入されている。一度是非遊んでみてほしい。