「ファイヤープロレスリング ワールド」レビュー

ファイヤープロレスリング ワールド

暑さをぶっとばす熱いゲームがやってくる! 新日本プロレスとのコラボで蘇る、伝説のプロレスゲームをプレイ!!

ジャンル:
  • スポーツ
発売元:
  • スパイク・チュンソフト
開発元:
  • スパイク・チュンソフト
プラットフォーム:
  • PS4
価格:
5,800円(税別)
 
9,800円(税別)
( 限定版)
発売日:
2018年8月9日

 プロレスファンにとって、夏といえばフェスでも花火大会でもなく、新日本プロレス真夏の最強決定戦「G1 CLIMAX」の季節であろう。現在、大会真っ只中ということもあり、プロレス熱が最高潮なときである。

 そんな熱いタイミングに合わせ、スパイク・チュンソフトは、プレイステーション 4用ソフト「ファイヤープロレスリング ワールド」を8月9日に発売する。13年の長い沈黙を破って蘇る、プロレスファン待望のシリーズ最新作なのだ。今回、発売前に一足先に触れる機会をいただいたので、この熱をぶつけてプレイしていきたいと思う。

変わらない“ファイプロらしさ”を残しながらも、かつてない進化を遂げる

 「ファイプロ」といえば、シリーズを重ねても変わらない操作感、そして徹底したこだわりを見せる2D表現。それらの伝統は本作でも受け継がれており、シリーズのファンも納得の仕上がりになっている。

 そして本作の目玉の要素ともいえる「ファイプロ」の変革、それが今最も勢いのあるプロレス団体「新日本プロレス」とのコラボだ。これまでのシリーズに登場した選手は、“どこかで見たことある気がしないでもない”が完全にオリジナルレスラーのみであったが、今作は新日本プロレスに所属する現役レスラー総勢39名が、実名でプレイアブルキャラクターとして登場している。これは新日ファンにはたまらなく嬉しい。新日選手以外にも、過去作とは方向性が違うタイプではあるがオリジナル選手ももちろん存在する。

新日本プロレスの第一線で活躍する選手たちが参戦。コスチュームも現在と過去のものから選択できる
新日選手はモデリングから技のモーションまでバツグンの再現度!
オリジナルの選手たちもプロフィールが細かく設定されている

 遊べるゲームモードは「オフラインプレイ」、「オンラインプレイ」、「クリエイトモード」、「ファイティングロード」の4つ。各モードの内容は後述するので、まずはオフラインモードでさっそく試合をしてみた。

 キャラクター選択画面には新日の名だたる選手がずらりと並んでいる。筆者が迷いなく選んだのは混沌の荒武者こと「後藤洋央紀」選手だ。入場シーンではスモークから姿を現わす後藤選手。昔ながらの2Dグラフィックスだが、選手の特徴を細かく捉えており再現度はかなり高い。

 一部の選手は入場テーマ曲に本物の楽曲が使われているのだが、残念ながら後藤選手のテーマ曲「覇道」は未収録のようで、オリジナル曲をバックにリングへ上がる。対するは、聖なる暴徒という厨二心をくすぐるニックネームのオリジナルキャラ「トレバー・ダライアス」が相手だ。

 試合での攻撃方法は大きく分けて「打撃」と「組み技」の2種類。組み技は「ファイプロ」特有のシステムで、双方のキャラクターが接触すると組み合いの状態になり、ここで攻撃のターンを握るための競り合いが発生する。“組み合った瞬間”にタイミングよくボタンを押すことで技が発動。ジャストタイミングにボタンを押せた方の選手が技を仕掛けられるのだ。

 このボタンを押すタイミングが最初はなかなか難しく、慣れるまでは一方的に相手から技を食らいまくっていた。しかしプレイしていると段々と感覚がわかってきて、こちらも反撃に出られるようになってきた。

 組み状態からの技は、押すボタンによって「小技」、「中技」、「大技」の3種類に変化する。その名の通り小技は威力が低く、大技は高威力のド派手な技だ。威力が強いのなら大技ばっかを連発すれば良いじゃないかと思われるかもしれないが、そうはいかないのが「ファイプロ」の面白いところ。

 大きなモーションの大技は、開幕で食らわせようとしても簡単にするりとかわされてしまう。現実のプロレスでもそうなのだが、初めは打撃や小技でダメージを与えて体力を奪い、疲弊してきたところを中技、そして最後に大技といったように段階を踏んで大きな技を食らわせていくのがプロレスのセオリーなのだ。

 本作には体力ゲージなどは一切無いので、ダメージがどのくらい蓄積されてるかは相手を見て判断しなければならない。ダウンからの立ち上がりが遅かったり、動作の後に息切れをしだしたらダメージを受けている証拠だ。

 弱っている素振りを見せたらたたみ掛けだ。後藤選手の大技「牛殺し」を食らわせて、ダウンしたところを起き上がらせ、そのまま背後から相手の首筋に自らの膝を打ちつけるという殺人的なフィニッシュホールド(必殺技)、「GTR」をお見舞いする。虫の息になっているところをフォールで3カウントを取って見事勝利。フォールは余力がある場合ならボタン連打で返すことができるが、必殺技を食らった状態からの切り返しは困難だ。

 始めは組み合いから攻撃のチャンスをなかなか握れないが、慣れてしまえばそう難しくもなく、技をガンガン決められてとても爽快だ。好きな選手を操作して、リアルで見てきた必殺技を自分の手で繰り出せるということに感動すら覚える。

 格闘ゲームのように複雑なコマンドなども特にないので、感覚さえ覚えてしまえば誰でも簡単に遊ぶことができるのが「ファイプロ」の良さである。

キャラクター同士が接触すると、この組み合いのモーションが発生
ボタンを押すのはまさにこの瞬間! 競り合いに勝てば攻撃の権利を得られる
成功すれば強力な技を繰り出せる! 組み合いを制した者が勝負を制する!!

 1対1の試合も面白いが、仲間と協力して戦うタッグマッチも多人数バトルならではの面白さがある。タッグマッチは4対4の最大8人タッグで遊ぶことができ、チームメンバーの操作はCPUか2Pのプレーヤー、または自分で全てのキャラクターを操作することも可能だ。

 敵と味方が入り乱れるタッグマッチではチームワークが勝敗を分ける。体力や状況に応じて行なうパートナーとのチェンジ。仲間と協力して繰り出せるツープラトン技や、敵にやられそうになっているときのフォールカット(妨害)など、仲間と力を合わせなければならない局面が多いのだ。これは友達と一緒にタッグを組んで遊べばかなり盛り上がるだろうと思う。製品版が発売されたらすぐに遊びたいモードである。

自分の好きな選手同士でタッグを組める。8人タッグはまさに入り乱れの大乱闘

 試合ルールが豊富に用意されているのも「ファイプロ」シリーズならでは。打撃のみで戦い、相手からKOを奪うK-1ルールの「S-1ルールマッチ」や、リングを囲んだ金網によじ登り、どちらが先に金網の外に出られるかを競う「金網デスマッチ」など、計7種類の試合ルールで対戦することができる。

 中でも面白いのは「バラ線発破デスマッチ」だ。リングにはロープの代わりに有刺鉄線が張られていて触れると爆発を起こす。さらに規定の時間以内に決着がつかないとリングが大爆発し、両者共に大ダメージを受けてしまうというデンジャラスルールなのだ!

 試合のルールが変わるだけで戦い方やゲーム性そのものがガラリと変わってくるので、飽きることなく対戦が楽しめる作りになっている。

ルールごとにそれぞれの面白さがある。バラ線発破デスマッチの破天荒さはぜひ体験してもらいたい

際限の無いエディットの自由度! どんなレスラーでも作れるクリエイトモード

 そして「ファイプロ」シリーズの代名詞ともいえるのがクリエイトモードだ。圧倒的な自由度の高さがウリで、本作未登場の実在レスラーはもちろん、ゲームやアニメ、特撮のキャラクターなんかも作れてしまうのだ。

 筆者も何かを作ってみたくなりクリエイトモードを触ってみた。レスラーのエディットはゼロから作る「素体から作成」と、プレイアブルキャラクターを元に手を加えていく「モデルから作成」の2つから選べる。エディット方法はどちらも同じなので、好みの方を選択しよう。

 選手の容姿をエディットするレスラーメイクの項目では、顔から足までの9カ所の部位を数百あるパーツの中から選んで作成していく。パーツ数がとにかく膨大で、顔のパーツだけでも600個以上あるのだから驚きだ。これだけのパーツがあれば、作れないものがないのも納得がいく。

 各部位にはレイヤーが9つずつ用意されており、1つの部位に複数のパーツを重ねて使うことができる。例えば、顎ヒゲの覆面レスラーを作りたいのなら、顔のレイヤーに覆面パーツをセットし、2つの目のレイヤーにヒゲのパーツをセットすれば完成。パーツの組み合わせで思い通りのキャラクターを作ることができる。

 部位ごとにパーツのサイズを拡大・縮小することもできるので、腕がゴリッゴリのレスラーや、顔がバカデカいネタキャラなんかも作ることができて面白い。これは拘りだしたら丸1日クリエイトモードだけで遊べてしまう気がした。

 容姿以外にもカスタムできる部分は多く、レスラーネーム&プロフィールをはじめ、バトルスタイルや技、ボイスやパラメータの設定までとことん細かく設定することができる。

 筆者も自分の理想とするオリジナルレスラーを作った。昼過ぎから作成を初めて、完成した頃にはまさかの夕方という驚きの時間経過であった。あーでもない、こーでもないと試行錯誤しながらの作成は時間を忘れるほどの面白さだった。

 レスラーの他にレフェリーのエディット、さらにはリングやベルトのデザインまでも自分でカスタムできてしまう。自分だけの理想のプロレスが創造できるこの土台作り、製作の熱過ぎるプロレス愛には感服するばかりだ。

膨大なパーツを組み合わせて思い通りの選手が作れる。作った選手はどのモードでも使える

新日本プロレスを舞台に描かれるストーリーモード、「ファインティングロード」

 本作の目玉モードの1つである、新日本プロレスを舞台に描かれるストーリーモード、「ファインティングロード」についても語っていこう。

 主人公は新人レスラー「ヤングライオン」となり、新日本プロレスの名選手たちと交流、ときに激突を重ねて成長し、新日本プロレスの頂である「IWGPチャンピオン」の座を目指す――といった物語だ。自分の分身となる主人公はクリエイトモード同様に細かく作ることができるので、ストーリーにグッと感情移入できるだろう。

 物語は主人公が新日本プロレスの門を叩き、入門テストを受けるシーンから始まる。ファイティングロードはテキストを読み進めるアドベンチャータイプの形式だ。立ち絵には実際に所属する選手達の写真が使われ、台詞の一部にはボイスもある。レスラーたちの名演技にも注目してもらいたい。

 ストーリーの合間に試合が挟まれ、従来のバトルに突入する。このモードではただ試合に勝つだけが目的ではなく、「試合評価を00%以上で勝利」など、試合ごとに課される勝利条件を満たさなければならない。

 勝利条件にほぼ必ず設定されている“試合評価”だが、これは試合内容の見応えが評価されるのだ。相手の攻撃を一切受けず、一方的に攻めるだけの試合は格闘技ならば歓声ものだが、プロレスとしては評価されない“つまらない試合”だ。

 プロレスは受けの美学。相手の技を受け、食らっても立ち上がり、そこから相手を打ち負かすという戦いこそプロレスなのだ。リアルで観てきたプロレスの試合の流れを、自分で作りながら戦っていくのだ。互いに息もあがり、フラフラになりながら最後にフィニッシュホールドで決めるといった流れは、ゲームの中でも鳥肌ものだ。3カウントを取ったときの感情は、プロレス観戦で応援している選手が勝ったときのそれと同じ感覚を味わえた。

 試合を終えるとトレーニングポイントが獲得でき、それを消費してトレーニングを積むことで主人公の能力を成長させることができるのだ。自分好みの方針に育てて、最強の選手を作り出す面白さもこのモードにはあるのだ。

 まだ途中までしかプレイできていないが、これから起こる数々の激闘の末にどんな結末が待っているのか、先の展開が気になるところである。

ファイティングロードでは、普段は見られないような選手たちの貴重な姿も
試合ではただ勝つだけではなく、プロレス的な試合運びで勝利を収めなければならない。面倒のように思えるかもしれないが、これが意外と面白い
無口で有名なSANADA選手。ストーリーでは過剰な程にその設定が誇張されていて笑ってしまった

 今回ひととおりプレイしてみて、「ファイプロ」か「新日本プロレス」そのどちらかにでも関心があるのなら間違いなくおすすめできる作品だと強く思った。

 やはり今やってもレスラーのクリエイトは自由度が高くて面白い。胴着の格闘家を作って必殺技は「Vトリガー」を持たせたりなど、やりたいことがいっぱいある。

 夢のコラボで参戦した、新日本プロレスの名選手たちを自分の手で操作でき、リアルで見たあの必殺技の数々を繰り出せるというだけで新日ファンとしては感激だし、絶対に買いである。

 今回はまだオンラインモードはプレイできなかったが、早く製品版を手に入れて、自分の作ったオリジナルレスラーで世界中のプレーヤーと対戦がしたい! セルリアンブルーのマットに思いを馳せ、本作の発売日を指折り数えて待っている。