2018年11月22日 20:53
「Fallout 76」。核戦争後の荒廃した世界の中で、恐怖と狂気に満ちた冒険を繰り広げるオープンワールドRPG「Fallout」シリーズの最新作だ。本作はシリーズ初のオンライン専用のマルチプレイタイトルとして作られているのが最大の特徴だ。これまでのソロプレイと、どう違うのか、というのが最大の注目点だろう。
今作の舞台はアパラチア。アメリカ東北部に位置する山脈地帯だ。核と戦争の猛威は余すことなくこの地域にも降り注ぎ、人々や動物は死に、あるいは変異し、放射能と戯れながら独特の生態系を作っている。秩序も安全も完全に消え去った危険極まりない世界のなかで、核シェルター「Vault 76」は開かれた。プレーヤーは「Vault 76」のメンバーの1人として、死んでしまったアメリカの“再生”を担われたのだ。
弊誌ではクローズドβテストにあたる「B.E.T.A.」の手触りをご紹介しているが、では製品版となって実際のところはどうなのか。本稿ではそのポイントをお伝えしていきたい。
「Fallout 76」は“ソロ”なのか? “マルチ”なのか?
「Fallout 76」をソロプレイ前提として捉えるか、マルチプレイ前提として捉えるかどうかで、大きく印象が異なるゲームだと思う。
そもそも「Fallout」シリーズは、ソロプレイで広大なマップをおっかなびっくり探索するところが面白いタイトルであったので、本作にも同じ手触りを当然期待したいところだ。しかしマルチプレイ要素が入ってくるということは、その感覚が薄まってしまうようにも思う。緻密に構築された世界と、端々まで磨かれたキャラクターとストーリー(とちょっとのバグ)で織りなされる「Fallout」シリーズならではの強い没入感が、もしかしたら損なわれてしまうかもという予感だ。
しかしプレイすればわかるが、本作はソロでもぜんぜんいける。マップを進むとエリアが発見され、ミッションが始まり、そこで何かしらのストーリーが動き出す。特に序盤は「監督官」が残したメッセージを追っていくメインミッションがプレイの足がかりになるのだが、プレイの流れはまさに「Fallout」といった感じだ。
その先も、ずっと1人でプレイし続けることができる。確かにマップ上に他のプレーヤーはいるが、2~3時間誰とも会わないなんてこともしょっちゅうあるし、会ってもすれ違うだけだったり、オンライン専用だからといってマルチに縛られているわけではない。「Fallout」はじっくり探索してナンボというプレーヤーでも、存分に楽しめるような設計になっている。
その上で、マルチプレイも楽しめますよという作りなわけだ。友達とチームを組んでもいいし、行きがけで出会った人とミッションに挑んでもいい。仲間が増えるだけで強敵との戦闘も心強いし、体力が尽きても仲間が助けてくれる。「B.E.T.A.」時でもお伝えしたとおり、敵対プレイのメリットはごく僅かなので、出会った人は大体の場合“アメリカ再生を目指す同志”。出会ったらまずサムズアップやラブのエモーションを送っておくと、「一緒に“再生”がんばりましょうね」なんて気持ちが湧いてきてオススメである。
その点で言うと、一定時間、ランダムで出現するイベントミッションはマルチプレイ向きのコンテンツとなっている。「4つの拠点を防衛せよ」、「巨大モンスターを倒せ」、「ウェーブで襲ってくる敵をすべて倒せ」など、役割分担や連携が大事なミッションが揃っている。
ソロだとさすがにきついが、マルチなら大いに楽しめる。「今までの『Fallout』ではできなかった、友達との冒険や派手な戦闘がしたい」という人には、今作はうってつけではないだろうか。ソロでもマルチプレイでも没入感は最高値なので、一旦ハマれば夜も眠れない日々を過ごすことになると思う。
プレイそのものは厳しくシフト。生き延びるために工夫が欠かせない
「Fallout 76」の基本的なシステムは「Fallou 4」から地続きだが、様々な部分は変更が加えられている。
たとえば「B.E.T.A.」で紹介した「C.A.M.P.」、「S.P.E.C.I.A.L.」、そして「V.A.T.S.」はその代表だろう。繰り返しになるのでここでの説明は避けるが、前作を踏襲しつつ「Fallout 76」らしいアレンジに落ち着いていると思う。
今回プレイしていて「これは大きいな」とまっさきに感じたのは、「食料」と「水」だ。本作では時間経過でお腹がすき、喉も乾いていくため、定期的な食料と飲料の補給が欠かせなくなった。しかも食べ物も飲み物もほぼ放射能に汚染されているおまけつき。
料理をすると「Fallout 4」では放射能が消えたが、「Fallout 76」ではバッチリ残る。放射能ゲージが「ジジジ……」と溜まるのを承知の上で食べて飲んで、最終的には「RADアウェイ」のゲージ回復でなんとかする、というプレイサイクルが必要になった。
食料は拾ったりクラフトでまあまあ手に入るのだが、序盤はとにかく水がない。時には、酒も放射能まみれの水もとにかく飲んでその場を凌ぐことも必要だろう。「C.A.M.P.」で家の組み立てを考えていてもガシガシゲージが減っていくので、体調管理の難易度は確かに上がっている。
一方で「S.P.E.C.I.A.L.」の食料、飲料関連のPerkが揃っていて、「水分補給で+30%のボーナスが入る」など便利なものがある。お気に入りは「Mystic Power」で、人型のモンスターの肉を食らって体力と食料ゲージを回復するというもの。内容はエグいが、色々節約できて何かと便利な代物だ。
Perkカードはランダムなので、「おっ」というものがいきなり手に入ったりする。筆者は「Mystic Power」がまさにそうで、これによってプレイが楽になった。序盤がきついからこそ、Perkカードは特に注意しておくといいだろう。
また変化というか、より重みが増したと思うのが「重量制限」だ。これは以前からある要素だが、本作では「C.A.M.P.」にそこまでたくさんのものを保管しておくことができなくなっている。前作では探索で集めた物資を拠点に放り込んでおけばあとは気にしなくてよかったのだが、この拠点の保管庫に制限が付いたのだ。
具体的には400という数だ。プレーヤーのステータスにもよるが、大体プレーヤーが持てる最大量の2倍ちょっととなっている。「Fallout 4」のプレーヤーであれば、これが非常に厳しい数字だとわかると思う。そのため長旅で手に入れた物資を積極的に分解し、リサイクルしたり売ったり捨てたりすることが肝心となった。
筆者としてはおすすめなのは、「S.P.E.C.I.A.L.」のStrengthを上げつつ、重量を軽くするPerkを利用すること。Strengthを1つ上げると自身が持てる最大量を「5」上乗せでき、これが結構大きい。Perkには銃やジャンク、薬の重さを何割かにしてくれるものがあるので、合わせて使うことでなんとか乗り切っている状況だ。工夫の余地は他にも色々ある。
ちなみに、この保管庫の重量制限はあまりに厳しいため年内のアップデートでの容量拡大がアナウンスされている。不特定多数のプレーヤーが参加するための制限であることはよく理解できるが、なんとか折り合いをつけてもらえるとプレーヤーとしては嬉しいところだ。
つまりシステム的には、「Fallout 4」よりもサバイバルの厳しさが増している。スティムパックもすぐなくなるし、腹は減るし、喉も渇くし、放射能もたんまり溜まる。そんな時に大量のフェラル・グールやスーパーミュータントに出くわしたらひとたまりもない。確かに厳しいのだが、厳しさの解消には探索が欠かせない。「誰かと協力できればな……あ、マルチか!」と思わずにいられない本作なのである。
見て美しい、住んで楽しい山脈地帯のロケーション
「Fallout 76」をプレイしていて楽しいのは、見るも美しいアパラチアの山岳風景ではないだろうか。海に近かった「Fallout 3」、「Fallout 4」とは違って、鉱山があったりゴルフ場があったり、標高の高い場所ならではのロケーションが多く登場する。
たとえば「世界の頂上」と呼ばれている場所は、かつての巨大スキー場だったようだ。スキー板やスキーウェアが落ちていたり、細かいところまでよくできている。雪こそ積もっていないが、スキー客で賑わっていたころの名残と現在の惨状、そしてその間に何が起きたかの一旦を知れる場所だ。メインミッションをプレイしていれば必ず訪れることになるので、プレーヤーには強い印象に残ると思う。
また筆者が気に入っているのは、「ホワイトスプリング・リゾート」。ゴルフ場が併設する高級ホテルで、中にはいるとロボットの従業員が積極的にもてなしてくれる。多数の強力なロボットが警備しているので、中は平穏そのもの。巨大な空間に人は1人としていないが、内装は綺麗だし、椅子にゆっくり座れるし、レストランでは給仕もバッチリと、この世界では珍しく心を落ち着けられる場所だ。
しかもこの場所には、衣服や銃、ジャンク、設計図に至るまで、あらゆるショップが揃っている。NPC側のキャップは共通なので資材売却によるキャップ稼ぎはできないが、必要な資材を揃えるときにはとても便利だ。
また保管庫、各種クラフト台まで完備されていて、「C.A.M.P.」とは別の拠点としても十分使える。筆者は困ったらとりあえずここに訪れて、装備の軽量化と心の平安を取り戻してから次の探索へと向かっている。ロボットたちの礼儀正しい振る舞いも非常に好感が持てる場所だ。
ロケーションという点では、「C.A.M.P.」を広げる場所をどこにするかも悩ましいところだろう。「C.A.M.P.」の移動はワンタッチでできるので最初からそこまでこだわる必要はないが、「このアパラチアでマイホームを持つならどこ?」と思わず迷ってしまう。
川の近くがいいのか、開けた平地がいいのか。敵が襲撃しづらい山岳に居を構えるか。様々な考え方があるだろうが、「C.A.M.P.」を組み立てているのも楽しい時間である。筆者はある時「浄水器」の設計図を手に入れて(それまで水で苦しみまくっていたので、この瞬間は「来た!!」と思わず声を上げてしまった)、それを機に川沿いへと引っ越しを決めた。
浄水器を置いて、隣にジェネレーターを置いて、襲撃に耐えられるように壁で囲って……などとやっているうちにあっという間に容量オーバーのお知らせ。「Fallout 4」でもそうだったが、なんだかんだでこだわってしまうのがニクい要素である。今は無駄の多い設計だし、もしかしたら人様に見られるかも(マルチプレイらしい要素)しれないので、家についてはこれからじっくり研究していきたいと思う。
スピード感が頼もしい! 今後のアップデートにも期待大
総合すると、マルチプレイになったからといって、「Fallout」らしい没入感は本作ではまったく失われていない。プレイの厳しさは増したが、あえてソロで切り抜けるか、マルチによる協力に活路を見出すかの選択肢が与えられたような印象で、ここが「Fallout 76」の大きなポイントになっているだろう。
筆者はあまりバグは気にしない方(特に「Fallouto」はもともとバグっているような世界なので、「多少のバグも世界観の1つくらい」に思ってしまう)なのだが、11月19日のパッチで違和感のあった表記周りがシュッと変わった時は、そのスピード感がとてもいいと思った。
年内のアップデート予定もすでに発表されているし、同じペースで「Fallout 76」が拡張されていくのなら、今後ますます盛り上がっていくことと思う。ゲームはまだ始まったばかりだし、筆者もまだまだプレイし足りない。これから発表されるだろう次の段階、そしてエンドコンテンツには何が待っているのか。まずはアパラチアに隠された謎を解き明かすところからはじめて、その時を待ちたいと思う。
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