2018年11月16日 16:01
ついに第2次世界大戦を舞台にした「バトルフィールド」という祭りが開演した。この書き出しを書くたびに震える。16年ぶりに第2次世界大戦を舞台にしたFPSとして帰ってきた。個人的な話で恐縮だが、筆者が人生で1番プレイしたFPSで、その後のゲーマー人生にも大きな影響を与えた作品が本シリーズの最初の作品「バトルフィールド1942」なのだ。
「バトルフィールド」シリーズは圧倒的に他のFPSと違った。32人 vs 32人なんて広大なマップを大人数でプレイできるFPSなんてなかったし、歩兵はもちろん戦車や戦闘機、果ては潜水艦から駆逐艦まで操作できるという、当時としても、いや今見ても異色でカオスなタイトルだった。そこに大ハマリしたのだ。
そのカオスさはシリーズを通して受け継がれていき「バトルフィールド2」から続くナンバリングタイトルやスピンオフ作品でも進化し発揮されてきた。だが筆者は第2次世界大戦でこのカオスさが楽しみたかったのだ。
筆者は特に歩兵戦が大好きなのだが、第1次世界大戦が舞台だった「バトルフィールド1」はいささかアナログすぎるし、「バトルフィールド2」以降の近現代戦では技術の進歩で戦車やヘリが強すぎる。第2次世界大戦はゲームとして見たときに歩兵とビークルのバランスが取れている絶妙な舞台だと思う。そんな「バトルフィールド」シリーズが16年ぶりについに第2次世界大戦に帰ってきてくれたのだ。否応なしに期待が高まるというものだ。
そして「バトルフィールドV」ではその期待値を大きく上回る作品としてローンチされた。カオスでお祭り感じ溢れるコアとなるシステムはそのままに、16年という時間の中で進化したグラフィックスやサウンドの表現力、そして洗練されたゲームシステム……これを待ち望んでいたのだ。そこでレビューで各魅力を語っていきたい。
なお、本作の発売日は11月20日であるが、今回は発売日の前に先行してプレイできた。これは、EA(Origin)のサブスクライブ型の新サービス「ORIGIN ACCESS PREMIER」での特典である。月額1,644円(税込)または年額10,644円(税込)で、Originに登録されている多くのタイトルが遊び放題になり、「バトルフィールド V」や、「Anthem」といった新作が先行してプレイできるサービスが始まったのである。いちはやくプレイしたい、という方はこちらのサービスの検討もオススメしたい。
最新の「Frostbiteエンジン」の表現力に震える、これが最新の第2次世界大戦だ!
本作では第2次世界大戦を舞台に連合国と枢軸軍の戦闘を描く。メインは最大64人対戦のマルチプレイだが、第2次世界大戦を生きた兵士やレジスタンスを主人公としたシングルプレイキャンペーンも用意されている。
語りたいことが多すぎるのだが、まず、両モードに共通する“この世界”について語らせて欲しい。何よりも注目して欲しいのは圧倒的な第2次世界大戦の空気感だ。派手でスピード感がある現代戦に比べると、ローテクである。対象を追跡してくれるような高性能な対戦車兵器はないし、空中に静止して機銃掃射をするような攻撃ヘリは存在しない。対戦車バズーカ1つとっても距離が離れると放物線を描くように大きく落ちるので、特に遠距離だと当てるのは難しいし、航空機の機動力も劣る。これこそが第2次世界大戦なのだ。
そんな第2次世界大戦を「バトルフィールド」シリーズを通して進化してきた表現力や、建造物の破壊などを可能にした最新のFrostbiteエンジンで描く……この時点でもう最高すぎる。
特にビジュアル面の表現は圧巻の一言につきる。巻き上がる砂埃、燃え盛る炎ともうもうと上がる黒煙、視界を舞う煤……。さすがに筆者は戦場に降りたことはないが圧倒的なリアル感を感じさせてくれる。また天候の表現も素晴らしく体を叩きつけるような吹雪や、雨が降ると水溜まりができるなど、当然のことながら表現力は圧倒的に進化している。
サウンド面も素晴らしい。筆者は戦場に降り立ったことがないのでリアリティとは言えないのだが、兵士が走る足音、衛生兵を呼ぶ叫び声、銃声、エンジン音、爆発音……、戦場の混沌とした空気がビリビリと伝わってくる。特にオプションにはサウンドプリセットという項目があり、ガチで勝負を狙うなら上下左右の音が聞き分けやすい「3Dヘッドホン」一択だろうが、ダイナミックさを感じるという意味では「WAR TAPES」が1番だ。
筆者は肩掛けスピーカーを使用してプレイしているのだが、この美しいグラフィックスとダイナミックなサウンドのおかげで、プレイしていると完全に戦場にトリップしてしまい時間が過ぎるのを忘れてしまうほどだ。可能であればサウンドシステムもぜひこだわってほしい。
32 vs 32人のカオスなマルチプレイは健在。分隊単位の活動が勝敗を握る!
具体的なゲーム性として、やはり本作の最大の魅力と言えるマルチプレイモードから語りたい。「バトルフィールド」シリーズの代名詞とも言える最大32人 vs 32人のプレーヤーが1つのマップで戦い、歩兵だけでなく戦車や航空機などのビークルがまで登場するというスケールの大きさとカオスさを包み込んだマルチプレーヤーモードは本作でも健在だ。
本作には狭いエリアで多数の歩兵同士がぶつかる雪山のマップ「Fjell 652」から、広めのマップでビークルが活躍する乾いた土地「Hamada」、障害物や進行ルートが多い市街地戦の「Rotterdam」や、生い茂る草で隠れ場所が多い「Twisted Steel」など、8マップが収録されている。
どのマップもそれぞれ特徴があり、筆者がプレイ開始し始めてから1週間程経つが、隠れやすい場所や気づかれにくい侵攻ルートなど新しい発見がまだまだある。そしてさらに本作の新要素「陣地構築」というシステムで土嚢を積んで遮蔽物を作ったり、鉄条網を作って歩兵の進行路を防いだり、同じマップでも戦い方が異なるのが良い。ゲーム開始時からある民家などの建造物は壊れマップは変化していくし、陣地構築で新たな遮蔽物を作成することができる。本作のマップはまさに生きているのだ。
また戦車や航空機はやはり人気がある。戦車は本作では地上の王様といった風格で、破壊力のある主砲はもちろんガンナー席にあるマシンガンが歩兵から見ると脅威だ。戦車の装甲に守られているので通常の攻撃手段ではダメージが与えられない上に、マシンガンで弾幕を張られる。戦場では会いたくないトップクラスの存在だ。
そんな戦車にも天敵がいる、航空機だ。地上戦では圧倒的な驚異となる戦車だが空からの攻撃に対抗する手段はほぼない。上手い航空機乗りになると高高度から急降下して的確に戦車を撃破してくれる。筆者は航空機の操作が得意ではないので熟練の航空機乗りには憧れしかない。もっともこちらにも対空車両や対空砲といった天敵がいる。この3すくみのようなバランスが良い。
そしてマップによって戦車や飛行機のポップが異なる。完全な歩兵戦というマップは今の所見たことがないが、「HAMADA」というマップでは広大なエリアに多くの戦車が投入され、戦車同士の戦いと航空機による爆撃が繰り広げられる。かなり狭く歩兵がメインのマップ「Fjell 652」には戦車は出現しないものの(雪原なので戦車が活躍できる場所はないのだろう)、航空機は登場する。これが歩兵としては本当に驚異で、10人単位でワーワーと拠点の取り合いをしているところをきっちりと空爆されたりする。本当に戦況をひっくり返すほどの強さで、歩兵としては空気を切る航空機の音が聞こえたときは絶望を通り越してマゾヒズム的な気持ちよさすら感じる。
またマルチプレイではインスタントに1マップ1モードがローテーションしていくモードと、複数日に渡って作戦が行なわれる「グランドオペレーション」という2モードがメインだ。後者はちょっとしたストーリー仕立てになっており、初日は「エアボーン」という空挺降下から始まる。
その後次に続く作戦日では「ブレークスルー」といった「コンクエスト」モードなどといったモードが展開される。初日の結果によって次に続く作戦日の結果が変わるのが面白いところで、良い成績を残すとビークルのリスポーン速度が早くなったりとメリットが生まれるようになっている。またストーリー仕立てになっているのが自分が主人公であることを感じられるので面白い。
「グランドオペレーション」は複数の作戦日に渡るのでプレイ時間は長くなるが、1マップ単位でプレイすることもできる。こちらのモードで王道なのは拠点を奪い合う「コンクエスト」だ。マップ上の拠点を多く占拠することで敵チームのチケット(わかりやすくいうとライフ)を減らすことができる。相手から拠点を奪うという攻めの視点は重要だが、防衛も重要になるモードだ。
他にも歩兵戦がメインの「ドミネーション」や、2チームでキル数を競い合う「チームデスマッチ」といったモードもプレイできる。
マルチプレーヤーモードでは「突撃兵」、「衛生兵」、「援護兵」、「偵察兵」の4種類の兵科があり、明確に役割分担がなされている。公式では「消耗戦」と表現されているが、本作では補給無しに戦い続けることは難しい。1度に持てる弾薬の数はそれほど多くないし、体力の自然回復も殆ど期待できない上に、回復に使用する救急袋は消耗品で基本的に1個しか持つことができない。
そこで味方に弾薬を補給できる「援護兵」や、救急袋を配ることができる「衛生兵」は前線を維持するには欠かせない存在なのだ。歩兵戦はもちろん対戦車兵器を持っていて前線で活躍できる「突撃兵」も大事だし、敵をスポットしたり、機銃などに張り付いている敵兵を遠距離から確実に仕留められる「偵察兵」も欠かすことができない。この4種類の兵科のバランスは絶妙だ。ここにビークルの要素が加わってくるのだが、意外とバランスが取れているのが面白いところだ。戦車は歩兵や爆撃機にで破壊されるし、爆撃機も戦闘機からの攻撃や地上からの対空砲で対抗できる。
敵をスポットしてくれる偵察兵、そしてアサルトライフルを手に突っ込んでいく突撃兵の後ろを衛生兵と援護兵がサポートする。そうこうしていると遠くから聞こえる唸るようなエンジン音、体に響くほどの主砲の爆音、敵戦車に出会ってしまったときの絶望感はゾクゾクする。(兵科にもよるが)対抗する手段がなく、隠れることに徹していると、風を切る音と共に急降下してくる味方の航空機の爆撃で敵戦車が破壊される……。これぞまさに「バトルフィールド」でしか体験できない唯一無二の体験だ。
そして本作では4人1組の中隊単位での活動を強く推奨する作品になっている。ソロでプレイしてもどこかの分隊に放り込まれるし、フレンド限定の分隊を作ることもできる。4種類の兵科があるのでバランスよくわかれればそれはそれで活躍できるだろうが、極端な話全員衛生兵でも問題ない。この懐の広さも「バトルフィールド」ならではだ。(さすがに全員偵察兵で一箇所から動かずにキャンプし続けるのなどはどうかと思うが)。
分隊で活動すると分隊ごとにポイントが貯まっていき、このポイントを使用することで追加のビークルを要請したり、空爆的な要素であるV-1ロケットを要請することもできる。そういった意味でも分隊でも活動は大きなメリットがある。
そして何度も試合をしているとキャラクターが成長していき、新しい武器やスキンなどがアンロックされていく。このシステムはプレーヤーのモチベーションにも繋がるし、長くプレイしてもらうという意味でも昨今のFPSとしては定番となってきているシステムだ。ある程度プレイしないと使えない武器があるのは気になるが、武器の“種類”で言えば基本的に初期から殆どが選択できるので、実はβテストがその仕様だったのだが、「ある程度プレイしないと対戦車兵器が使えない」というようなことはなくなった。
その代わりにアンロックシステムとして力が入れられているのが見た目にかかわる要素だ。武器のスキンはもちろん自キャラの服装、自分のキャラクターまでカスタマイズできる要素はかなり広い。これらはプレーヤーのランクアップやゲーム内で入手できるポイントと交換する形で入手できる。いわゆるルートボックスやマイクロトランザクションのようなシステムはない。
影を感じさせるシングルキャンペーンモード「大戦の書」もたまらない!
「バトルフィールド」シリーズといえばやはりマルチプレイがメインになってしまうのだが、シングルキャンペーンの「大戦の書」も良い。 エピソード式になっており、現時点では3エピソードがプレイできる。
第2時世界大戦もののシングルキャンペーンといえば華々しい英雄談的なエピソードが登場するのがお約束だ。例えば映画「プライベート・ライアン」でもお馴染みの「ノルマンディー上陸作戦」などメジャーな戦場を舞台に、「熾烈な戦闘を繰り広げて、仲間との友情が生まれ、最終的には枢軸軍に勝利してハッピーエンド」という展開になりがちである。というのもやはり史実をテーマにしているので、ドイツ軍が圧倒的な科学力で世界大戦に勝利していたり、朝鮮人民軍がアメリカ本土まで占領する、というようなぶっ飛んだストーリーにしづらいのは間違いないだろう。
そこで本作がフィーチャーしたのが、あまり他のゲームや映画で描かれない人物やエピソードだ。発売のタイミングではパルチザンの戦いを描いた「北極光」や、ドラグーン作戦に参加したアフリカの自由フランス軍ににフィーチャーした「ティライユール」、強盗などを繰り返してきたイギリス人のチンピラが犯罪歴を抹消することを条件に軍隊に入隊させられ、イギリス人らしい皮肉をいいながらもミッション任務をこなしていく「旗なき戦い」がプレイできる。
どれも歩兵戦がメインでボリューム的には2~3時間程度といったところだ。基本的には1本道のルートで、できるだけ敵に見つからないようにしつつ、ステルスで敵を倒して銃弾を補給したり、マップに配置されている武器を拾いながらマップを進んでいく。難易度は跳ね上がるが、正面から銃をぶっ放しながらいくこともできる。
筆者が特にお気に入りなのは「ティライユール」というエピソードだ。主人公は北アフリカの自由フランス軍の若者で「俺たちはフランス軍だ、のフランスの為に戦うのだ」と意気込んで戦場に向かう。だが現地で待ち受けていたのは厳しい差別だ。フランスの軍人からは「誰だお前」といった扱いをされ、十分な装備もなく、十分な訓練も受けていない。だが「フランスの解放ため」という使命と、若さゆえの無謀さで静止する戦友を振り切って一見無謀とも言える作戦に飛び込んでいく。
このエピソード以外もそうだが、プレーヤーが操作するというインタラクティブ性と、それぞれのテーマをドキュメンタリー風に描く表現から感情に訴えかけるものがあった。
ゲーム的に言うと「敵に見つからないように進め」や「マップの収集物を集めろ」というお馴染みのやりこみ要素もあり、難易度も複数用意されているので腕に覚えのあるゲーマーにはチャレンジしがいがあるものになっている。またこちらで特定の条件を満たすと、マルチプレーヤーモードで使用できるスキンがアンロックされるメリットなどもある。ぜひ両方をあわせてプレイしてほしい。
ちなみに「バトルフィールド」の華とも言うべきビークルに乗った激しい戦闘のようなシーンはほぼ登場しなかった。せいぜいジープに乗って移動する程度だ。だが今後のアップデートで追加予定の「最後の虎」はドイツ軍の戦車兵が主人公の物語ということで、熱い戦車戦が繰り広げられるのではないかと期待している。
という形で筆者が感じた「バトルフィールドV」の魅力を語ってきたが「バトルフィールド」ファンには定番のツッコミどころで、なぜか連合軍が「パンツァーファウスト」を持っていたり、史実ではもう少し先に登場するはずの「StG 44」を持っていたりと史実と比べると矛盾はある。さらにバランスが悪いと感じるマップや武器もあるので、今流行の競技性という点から見ると厳しいタイトルではある。また1試合は30分くらいかかるので少し長めだし、バトルロイヤルのようなひりつく緊張感などは客観的に見ていると感じられないので、配信や動画には映えないタイトルだろう。
だが本作は文字通りの“戦場”の雰囲気を楽しむのが楽しみ方なのだ。もちろん勝てれば面白いのだが、試合に負けても1つの試合の中でも「パラシュートで降下して味方の兵士のフォローを受けながら対空砲を爆破できた」というシーンや、「ダウンして拠点を取られそうになったところに衛生兵と彼らの中隊がやってきてそこから逆転する」という様々なドラマが生まれ、最終的に勝っても負けても満足感を感じられるのがポイントだ。
ちなみにβテストをプレイされた読者もいると思うのでフォローしておくと、βテスト時にあった分隊に所属できないバグなど致命的なバグや、試合時間が長すぎる問題など気になる点はかなり改善されている。βテストといえばほぼ完成しているものをプレイできるというイメージだが、本作に関しては「文字通りのβ版だったんだな」と製品版をプレイして感じた。それほどまでに完成度が上がっているのだ。
そして楽しみなのが「タイド・オブ・ウォー」と呼ばれる今後のアップデートだ。プレミアムパスやルートボックスは存在せず、今後登場するマップやゲームモードは無料で追加されることが発表されている。直近のロードマップでは12月に実装される「大戦の書」もそうだし、新マップも登場する。
個人的には3月に実装予定の「Firestrom」というバトルロイヤルモードが気になる。武器はどうなるのだろうか? やはり衛生兵は救急袋を、援護兵は弾薬袋を配ることはできるのだろうか? 偵察兵は敵をスポットすることができるのだろうか? マップ上にある隠れ場所は吹き飛ばされたり、逆に「陣地構築」で拠点を築くこともできるのだろう。このシステムにビークルまで登場するとなるとカオスすぎてどんな展開になるか想像もつかない。
まだ4月以降のロードマップも発表されていないが、新マップや新たな「大戦の書」も追加されるのだろう。これは筆者の妄想だが日本語音声もきっちり収録されているのと、連合国としてアメリカが描かれていないのは不自然……つまり太平洋戦線のマップが追加されるのではと想像している。
これからも成長を続ける「バトルフィールドV」。AAAタイトルが次々と発売されゲーマーとしては忙しい日々が続いていると思うが、熟練兵の皆さんはもちろん、これをきっかけにFPSを始めるという新兵の皆さんを一足先に戦場でお待ちしている。なお、「バトルフィールドV」のデラックスエディションは11月15日からプレイ可能だ。スタンダード・エディションの11月20日より速く遊びたい人は、デラックスエディションか、「ORIGIN ACCESS PREMIER」がいいだろう。
©2018 Electronic Arts Inc. Battlefield and Battlefield V are trademarks of Electronic Arts Inc.