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今こそ「再生の日」。「Fallout 76」B.E.T.A.レポート

これは間違いなく「Fallout」で、新しい体験ができる「Fallout」だ!

11月15日 発売予定

価格:7,980円(税別)

CEROレーティング:Z(18才以上のみ対象)

 2018年のE3の直前に電撃的に発表された「Fallout」シリーズの最新作「Fallout 76」。オンライン“専用”タイトルになった本作は、筆者を含めシリーズファンからは期待と不安が入り混じった複雑な感想を持ったのではないだろうか。

 徐々に明らかにされる情報からも謎が多いというか挑戦的な内容が多く、想像が膨らむばかりだった。そして11月に入りいよいよ発売直前というところで、予約購入者向けのクローズドβテストにあたる「B.E.T.A.」が実施され、短い時間だったがゲームの序盤を体験できた。

 最初に結論を書く。数時間程度のプレイでは本作の奥行きを掴み切ることはできない。だが現時点では本作は紛れもない「Fallout」シリーズの最新作で、終末戦争後のアメリカを描くオープンワールドを楽しめるRPGとしてもシングルでもしっかり楽しめるし、チャレンジングな要素を盛り込みつつオンラインRPGとしての楽しみ方もできる印象だ。それでは筆者がプレイできた内容をお届けしたい。

クレイジーな世界観、偏執的な作り込み……、紛れもなくこれは「Fallout」シリーズの最新作だ!

 「Fallout」シリーズはオープンワールドRPGとして有名になった「Fallout 3」をはじめ、前後に複数の作品が発表されている。舞台となる地域や時期は異なるものの、「Fallout史」はシリーズ作品間で共有されている。本作もちろんその中の話になるのだが、時系列や背景設定などを紹介すると長くなるので最小限にまとめたい。

 Fallout史では、資源を巡った争いなど国家間で緊張感が高まっていき、2077年に大戦争ーーつまり核保有国による核兵器の行使によって大破壊が行なわれた。地上は破壊し尽くされ、空からは放射性物質が降り注ぐ。

 本作はその大戦争から25年後の2102年、「Vault 76」の住民であるプレーヤーが「アメリカの再建」を目的に旅立つというところからスタートする。プレーヤーは、プレーヤーより一足先にVaultを出て本作の舞台である「アパラチア」に降り立ったVault 76の監督官(Vaultのリーダー的な存在)の女性が残したログを追っていくのがメインのストーリーで、このメインストーリーを追っていくだけでも楽しめる。

 本作には今のところ核戦争を生き残った人間は存在しない。世界にはロボットと変異した生き物、そして本作で初めて登場する「スコーチ」と呼ばれる敵性生物が登場する。二足歩行で銃を使う程度の知性はあるものの理性は失っているようで、コミュニケーションの余地もない。ストーリーを進めていくとこの生物がなぜ生まれたのかに言及されていく。

 スコーチという新参者はもちろん、敵キャラクターは終末世界オールスターといった具合で、理性を失ったグールのフェラル・グールや、巨大に変異した生物スーパーミュータント、2つの頭を持った牛バラモン、そして放射線の影響を受けて変異・凶暴化した野生動物などは今作にも登場している。そして一部のプレーヤーにトラウマを植え付けたゴキブr……いや、ラッドローチも健在だ。ありがたいようなありがたくないような。

Vault 76を出て広大なアパラチアへと旅立つ。まずは監督官のログを辿っていくのだ
終末世界に登場するユニークなエネミー達も「Fallout」シリーズの魅力だ

 そしてオープンワールドRPGとしての「Fallout」の魅力のひとつ、偏執的なまでの作り込みは今作でも健在だ。監督官のログを頼りに彼女の後ろを真っ直ぐについていっても良いのだが、少し寄り道するとキャラクターの死体と持ち物、彼らの記録が残ったホロテープやターミナルが残っているのを見つけることができる。

 「こんな世界になってしまったのは僕が悪い子だったからだよね。謝るから許して……」という少年の悲痛なメッセージから、あるエンジニアのバグ報告に対する能天気なレスポンスなど、ストーリーに直接関係がない部分にも圧倒的に細かな探索要素が用意されているのはさすがとしか言いようがない。

細部までの圧倒的な作り込みはさすが!ターミナルの記録などは隅から隅まで読みたくなる

新システムの「C.A.M.P.」からリニューアルを遂げた「V.A.T.S.」システムまでユニークなポイントに注目

 さてゲームシステム面についても紹介していこう。特に気になるのが新システムの「C.A.M.P.」、そして「Fallout」シリーズ定番の一般的なRPGの能力値にあたる「S.P.E.C.I.A.L.」、そして特殊スキルにあたる「Perk」、そして攻撃をサポートする「V.A.T.S.」だろう。これまでのシリーズ作品と異なっている部分もあるので、注目していただきたい。

 まずは「C.A.M.P.」から紹介していく。これはいわゆる拠点構築的なシステムだ。壁や床で建物を作り、ベッドや収納施設など設置して生活環境を整え、タレットやトラップで防衛するということができる。ファストトラベルの地点としても使用できるので、文字通りの「キャンプ」的な使い方になりそうで、探検して戦利品を集めてキャンプに帰ってきて、ジャンク品はばらしてアイテムにしたり、食料や飲料を準備したり、睡眠をとってまた探検に出るといった具合になるだろう。

「キャンプ」というか「拠点」レベルでカスタマイズできる「C.A.M.P.」システム。序盤はできることが少ないが、各種作業台などの設置も可能で文字通りの拠点になりそうなシステムだ

 そして「S.P.E.C.I.A.L.」と「Perk」は大きく関連する部分なのでまとめて紹介していく。これはStrength、Perception、Endurance、Charisma、Intelligence、Agility、Luckの頭文字をとったシステムだ。本作はすべてのパラメーターが1から始まり、キャラクターのレベルアップ時に1ポイント獲得し、好きなパラメーターにポイントを割り振っていく。

 本作では「Perk」はカードとして表現されている。Perkカードはレベルアップ時に加え、特定のレベルになったときに「Perkカードパック」という形で入手できる。

 PerkカードはS.P.E.C.I.A.L.とリンクしており、それぞれコストが決められている。例えばあるカードはCharismaでコストが2、あるカードはStrengthでコストが1といった具合だ。PerkカードはプレーヤーキャラクターのS.P.E.C.I.A.L.の値だけ装着することができるので、満遍なくパラメーターを割り振れば幅広いPerkを使うことができる。

 ミソになるのはPerkカードパックから入手できるPerkカードがランダムなことだ。引き当てるPerkカードをどのように組み合わせるかがポイントになる。ちなみにカードは付け替え可能なので、パーティプレイ時のPerkと、ソロプレイ時のPerkなど変更をすることもできる。ランダム性がありつつもある程度コントロールできるという絶妙なバランスになっている印象だ。

レベルアップごとにS.P.E.C.I.A.L.にポイントを割り振ることができ、これがPerkカードのキャパシティになる。どんなPerkカードを入手できるかもポイントになりそうだ

 そして「V.A.T.S.」システムも過去作から変更が加えられている。過去作では使用すると世界が一時的に止まり、射撃武器の場合は攻撃するターゲットの部位を選択することができた。各部位には確率が表示され、例えば足を攻撃すると移動速度を遅くできるといった戦略性があった。

 今作ではオンラインということで流石に時間を止めることはできないので、リアルタイムにAIM(狙い)をサポートするような動きになり、敵そのものへの命中率が表示され、部位狙いの概念もなくなった。あくまでもサポートレベルなので明後日の方向を向いていると攻撃を当てることはできないが、ターゲットの方を向けばノーマルの状態よりは遥かに攻撃が当てやすくなる。妥当な落とし所になったという印象を持った。

時間を止める機能はさすがになくなったものの、狙いのサポートという意味では有効な「V.A.T.S.」システム。今作でもお世話になりそうだ

チームを組んで役割分担をすれば楽しいし、ゆるいマルチプレイも楽しい!

 これだけ作り込まれていて、クレイジーな世界「アパラチア」を探検できるというだけでも反則的に面白いのだが、オンラインRPGとして見ても本作ならではのシステムが上手くマッチしていてよくできている。

 先程も紹介したとおりS.P.E.C.I.A.Lシステムがあり、大雑把にいうと特定の能力に特化すると相対的に他の能力が弱くなる、つまり満遍なく能力を獲得すると器用貧乏になるというシステムになっている。ゲームを進める場合は高いスキルを持った方が有利なので、例えば鍵開けなど器用さを特化して、ハッキングのインテリジェンスは低いままで進める、というように、プレイスタイルに応じて能力を特化した方がゲームを進めやすい。

 そのためこれまでのシリーズ作品では「1週目はまずは銃を上手く扱えるように成長させていって、2週目は直接戦闘にかかわらない部分を強化して人との交渉やハッキングなどをメインにしたプレイスタイルで……」というような遊び方が多くなっていた。

 だが本作は他のプレーヤーと協力できるのだ。極端に言えば戦闘はチームメンバーにまかせて、自分はハッキングやピッキングなど探検に特化する事ができる。廃墟の中を探検しながら、「あー、今のスキルじゃこの鍵開けられないわ」、「自分ピッキングスキルあるので開けますよ。中に回復アイテムあるので回収しましょう」といった具合に役割分担できる。

 役割分担まで行かなくてもソロで戦うのと、複数人で戦うのでは戦力が圧倒的に違うし、惜しくも敵に倒されてしまったとしても回復アイテムがあれば復活させることができる。弾薬などの消耗品もお互いで融通しあうこともできる。「(意思が通じる)仲間が心強い」という今までの「Fallout」シリーズにはなかった体験だ。極限の状況で、理性を持った生身の人間がどれだけ貴重かを改めて感じることができた。

 またゲーム内では「ウェーブ状に襲いかかる敵を排除しろ」というものであったり、「食品工場の機械が動くまで防衛しろ」という突発イベントが発生する。これはソロでもプレイ可能なのだが、他のプレーヤーと協力してミッションに立ち向かうこともできる。チームを組んでいなくてもOKだ。

 コミュニケーション手段はボイスチャットとゲーム内のエモートしかないのだが、今のところは複雑なことを求められることもなく、とにかく出現する敵を協力して倒せばOKという感じだったので不都合を感じることはなかった。むしろソロではとても捌ききれないほどの敵が襲ってくるし、イベントをクリアするとアイテムももらえるので参加しない理由はない。

 ちなみにオンラインRPGなのでいわゆるPKが多く出現するかと思ったが筆者がプレイした範囲では1人しか出会わなかったし、それもほぼ影響がない範囲だった。というのも本作のPvPは仕掛ける側に不利になっているのだ。まず他人を攻撃してもフルにはダメージを与えられない。相手から反撃があった時点(応戦する意思があった時点)でフルダメージが与えられるようになる。つまり攻撃されても無視してしまえばよほど執拗な相手でない限り諦めてしまう。

 また諦めずに攻撃され続けて仮に死んでしまったとしてもジャンクパーツをその場に落とすくらいのペナルティしかなく、装備や貴重なアイテムは落とさないし、経験値の減少などもない。逆にプレーヤーを倒した側は賞金首として同じワールドの他プレーヤーから追われる身となってしまう。

 この条件でPKをするのはかなり厳しい印象だ。というのは筆者も無類のPvP(PK)好きで、「せっかくの世紀末だから他のプレーヤー襲いまくってヒャッハーしてやるぜ」と考えていたのだが、現状の仕様ではデメリットが大きすぎたため大人しく善人プレイをすることになってしまった。好みはわかれるところだが、無法者ロールプレイは茨の道と言わざるを得ないだろう。

「Fallout」の世界に意思を持った他の人間がいるのは非常に面白く、ゲームとの相性も良い。とりあえずエモートでコミュニケーションをとればだいたい大丈夫
突発で発生するイベントをクリアすると報酬がもらえる。特殊な効果がついている装備ももらえるので積極的に参加したほうが良いだろう

 というわけでプレイできた時間は非常に短かったのだが、それでも「触れてみないとわからない体験」ができた。しかしまだまだ気になる所だらけで、RPGとしてはメインストーリーの続きは気になるし、エンディングはあるのかは気になる。マルチプレイ面でもエンドコンテンツや、キーとなりそうな核兵器の使用はどうなっているのだろうか。まだまだアパラチアでやりたいことはあったのだが発売日までお預けになりそうだ。

 「Fallout 76」は11月15日、プレイステーション 4/Xbox One/PCで発売予定だ。

※本作の「V.A.T.S.」システムの部位攻撃ですが、読者から「部位攻撃ができるPerkカードがある」と指摘がありました。こちらは正式サービス後に確認し、レポートしたいと思います。(11月10日追記)