2017年12月5日 13:14
皆様は「Total War」シリーズをご存じだろうか。壮大な戦場、軍団規模の戦い。1人の兵士となって戦うのではなく、全軍を指揮する司令官として戦いを勝利へ導くシミュレーションゲームだ。
それにマルチプレイ要素が加えられ、総勢20人のプレーヤーが集い各々3部隊を率いてぶつかり合う本作「Total War: ARENA」では、オンラインゲームらしい成長システムとシミュレーションゲームならではの概念を取り入れて軍対軍の激しい戦いを演じる。本稿は11月24日~12月4日の期間で行なわれた誰でもプレイできる「オープンウィーク」に合わせて突撃を敢行し、つたない戦術知識をオーバーヒートさせて必死に戦ってきた筆者が本作の魅力を語るものである。
集いし古代の英雄たち。どこかで見かけたアノ人も
本作は「ローマ」、「ギリシア」、「蛮族」の3勢力のどれかに所属する11人の司令官たちから1人を選び(初期は3人)、3つの部隊を引き連れて行動する。司令官にはローマに「カエサル」、ギリシアに「アレクサンドロス大王」や「レオニダス」など、映画やゲーム、書籍にと様々な方面で有名な英雄も登場している。
英雄たちはそれぞれ逸話や伝説からなるスキルを3つ所持しており、これと部隊の特性をうまく組み合わせることで最高のパフォーマンスを発揮する。同じWargamingが提供している「World of Tanks」で例えれば、搭乗員が司令官、戦車が部隊といったところか。育成の方法は大きく異なるため、のちに解説する。
ところで「レオニダス」は映画「300」にも登場している、筆者お気に入りの司令官だ。戦闘時には後述の槍兵たちと優れた防衛力で味方や前線の維持に役立ってくれるし、渋いイケメンというのが英雄然としていていい。スキルには近接した相手を盾で殴りつける「シールドバッシュ」、盾を上に向けて矢や投げ槍からの攻撃に強くなる「影に潜伏」、そして「ファランクス」形態と最高に相性のいい「戦線維持」があり、何が何でも相手の攻撃に耐えてやるという気迫と戦意に満ちた構成だ。まさに守護者のように、後ろに控える仲間たちを守り支える司令官となっている。
アドレナリン溢れる、地味で激しい戦闘模様
ひとつだけ悲しいことを申し上げる。「Total War: ARENA」において、”無双”というものは(全くと言っていいほど)存在しない。相手をバッタバッタとなぎ倒せる瞬間がくることもあるが、それはおおむね相手のポカと自軍の動きがクリティカルに噛み合った場合にのみ体験できる。
そんなアドレナリンダダ漏れタイムを体験できる瞬間を少しでも多く勝ち取るためには、まず味方の動きを観察し、自分が動かすユニットの特性を理解することが必要だ。ゲームではマッチングの待ち時間でユニットごとの動き方や基本的な戦術を図解してくれるが、ここでは基本操作とともに筆者が体験したこと、周辺の情報をかき集めて考えたことをお伝えする。
忘れたら爆散必至!こまめな戦列形成
まずは基本的な操作。ゲーム中では左マウスボタンでクリック、またはドラッグして範囲選択する、数字キー1~3で個別にユニットを選択できる。地点を右クリックするとその場所へ移動し、右マウスボタンをドラッグすると動かした方向を向いて立つ。このあたりはチュートリアルで何度も教えられるが、右マウスボタンドラッグによる戦列形成を忘れて全滅してしまう部隊が多いためここでも申し上げておく。
マッチョが出て殴る「剣兵」
剣と盾を持ち、己の筋肉と鎧を頼みに突撃するユニットカテゴリ。近接攻撃に強く小回りが利き、ツリーによっては強烈な体当たりをお見舞いする「突撃」や「ピルム」と呼ばれる投槍を投擲できるなど、わかりやすく攻撃的な立ち回りが可能なユニットとなっている。
そんなオレ様系優等生の彼らは、ローマの「ゲルマニクス」や蛮族の「アルミニウス」と相性がいい。とくに「ゲルマニクス」は距離が短いが高い威力を誇る「重装歩兵突撃」を持っているため、剣兵の司令官にちょうどいいのだ。もともとローマの兵士は重装の鎧に身を包んでいるということもあり、初心者にも熟練者にも扱いやすいツリーとなっている。
HOLD THE LINE!「槍兵」
「300」を観たことのある方にはなじみ深い「HOLD THE LINE(戦線を維持せよ)」の言葉。ギリシアツリーに「ホプリタイ」として初期から君臨し、大盾による高い防御力、隙間無く生えるハリネズミのような槍をはじめとした「ファランクス」と呼ばれる優れた防御陣形。何者にも負けない、「防御こそ最大の攻撃」とまで言わせそうな堅牢な盾の絆がここにある。
最前線に立ち、そこにいるだけで味方には心強く、相手には危険なユニットカテゴリ「槍兵」。独特の防御陣形である「ファランクス」を展開すると、ユニットの情報に「疲労」のゲージが追加される。この疲労が一定値に達するまではあらゆる近接攻撃に耐え、近づく者を弾き飛ばし槍衾のもとに相手を押しつぶしていく。疲労が限界に達してしまう前にファランクスを解くかスキルで疲労度を回復し、次の攻撃に備えるのだ。
遠距離戦のスペシャリスト、投射攻撃
いつの時代も、遠くの敵を一方的に攻撃する遠距離攻撃というものは脅威になりうる。「Total War: ARENA」の世界でもそうだ。
「投射攻撃」と大きなくくりで呼ばれる「弓兵」や「投槍兵」、「投石兵」などの攻撃は、自軍の近接攻撃を行なう兵士たちを「あらかじめ援護しておく」攻撃だ。接近しようとする敵に槍や矢を浴びせ、数を減らすことで接近戦を挑む自軍の兵士に有利な状況を作り出しておくのが役目となっている。
ここで注意しておかなければいけないのが、投射兵の攻撃には「誤射」の概念があること。投射攻撃はすべて味方にも命中してしまうため、射線や着弾地点に味方がいないことを確認しつつ戦う必要がある。これはローマ剣兵などが装備している「ピルム投げ」や槍兵たちの「ファランクス」にも言えることで、自分のユニットであっても容赦なく誤射してしまう。
また高低差を味方に付けることも重要だ。高い場所からの攻撃は敵をまんべんなく攻撃でき、味方を誤射してしまう危険も少ない。崖などの地形のへりにユニットを移動させれば地形に沿うように兵士を配置できるため、これも有効活用していこう。
走れ、走れ、走れ!「騎兵」
騎兵突撃。中世や古代の戦場において馬の突進とはこの上ない恐怖であり、心強い援護である。しかし「Total War: ARENA」における騎兵突撃は、いつも危険と隣り合わせの博打ともいえる行動……筆者にはそう見えた。
馬にまたがり高所からの攻撃が可能、万能な「騎兵」!最初はそう考えていたが、実際のところ、というか最初期から使用可能な騎兵である蛮族の「騎手」はそうではない。歩兵より足が速い、孤立した投射兵を狩ったり仲間の視界を確保するなどの小さな活躍を積み重ねていく地味なユニットだ。
フィールドの各所には大きな目のアイコンで表わされる「やぐら」が点在しており、これを占拠していると周辺の視界が広がり敵の居場所がわかりやすくなる。また平原においても通常よりちょっとだけ広い視界が役に立ち、敵の位置を知らせる斥候として役に立つ。
そして、騎兵の真価は強靱な歩兵に守られた投射攻撃兵たちを狙ったときに発揮される。厄介な攻撃力をもっている代わりにペラペラな装甲の奴らを踏み越えるように移動線をつくり、スキル「騎兵突撃」を使おう。強靱な馬体と長大な馬上槍で一網打尽にできる。――はずだ。熟練した弓兵使いはいつでも歩兵と共に動いているため、そういったユニットたちが孤立する一瞬の間隙を狙って突撃を行なうことでヒーローになれるだろう。
壮大な戦の舞台となる大規模マップ(その一部)
・テルモピュライ
映画「300」の戦場にしてスパルタ兵最後の抵抗を見せた要衝、「炎の門」と呼ばれた大渓谷がマップ北部に位置し、南部には双方の陣地へつながる獣道がある。北、南、中央がそれぞれ独立しており、行き来がしにくい。
・マラトン
広大な平野と鬱蒼とした森林のあるマップ。中央の平野で戦っていると、北側の丘から弓兵の一斉射を受けたり南の森から奇襲を受けやすい。各所にある水場は移動を阻害し、難題の多い戦場となっている。
・カピトリヌス
全体的に小さく、また行き来がしやすいため西側の森、中央の丘、東側の丘のどこからでも増援が来やすいマップ。森は面積が小さく、部隊を隠そうとすると見つかりやすい。
「士気」が大事すぎる、モチベーション第一の戦場
仕事をするとき、ゲームに打ち込むとき。いつ何時でもやる気――「士気」は大事だ。「Total War: ARENA」においては「士気」が数値化され、ユニットの体力の上に表示されている。これが上限を超えている場合は通常より高い能力を発揮するが、思わぬ方向からの攻撃を受けたり孤立してしまうとあっという間に減り、「もう無理!帰る!」と敗走を決めてしまう。
自分の右側または左側に部隊がいると、その安心感からか士気が回復する。後方に部隊がいる場合でもそうだ。「俺、ここにいると安心する」そんな感じだ。部隊アイコンの上に「その部隊がどこから守られ、士気が向上しているか」が表示されるため、仲間と一緒に戦えることは最高だと思っている寂しがりのマッチョたちをどう配置したら元気にできるかを考えてやろう。
少々難易度が高い育成
ここまで述べてきたユニットたちをうまく動かすには、知識と経験からなるプレーヤースキルはもちろんなのだがユニットに合ったスキルを持っている司令官の育成が必須なのだ。ここが筆者が感じるハードルである。
まず最初に「フリー経験値」について述べておかねばならない。戦闘が終わり、ユニットたちには専用の「ユニット経験値」が配分され、司令官には「司令官経験値」と「フリー経験値」が配分される。フリー経験値はあらゆる司令官、ユニットの育成時に使うことができる文字通り「自由」な経験値で、ユニットに新たな装備を与える際に足りない「ユニット経験値」を補うために使ったり、司令官のレベルアップ、スキル強化、そして新しい司令官を雇う際にも使用する。課金通貨である「ゴールド」を使用すれば、「ユニット経験値」を変換することもできる。
このフリー経験値を溜めるには戦闘を続けなければいけないが、どうせなら自分が好きな――たとえば「カタパルト」とか「戦犬」と呼ばれる特殊ユニットを使いたい。「カタパルト」はローマの「カエサル」と、「戦犬」は蛮族の「ブーディカ」と相性がバッチリなため、他の司令官で頑張って部隊を解放する!そして司令官を雇い、いざ戦場!となればよいのだが、ここに大きな落とし穴がある。司令官の「ティア(ランクやレベルのようなもの)」が部隊のティア以上でないと使用できないのだ。
「カタパルト」はティアIII、「戦犬」はティアIVから初めて登場するため、雇ったばかりのティアIの司令官ではそれらを使うことができない。ここでも「WoT」で例えてみると、戦車を買ったはいいけど搭乗員が育っていないので乗れません、ということ。もちろん司令官を育成すれば新たなスキルも解放され、プレイは各段に楽になる。なのだが、先述のとおり司令官と部隊には相性というものがある。初期から使用可能な第1スキルには汎用性が高いものが多いが、相性がそれほど良くない司令官と部隊の組み合わせはプレイにも支障が出てくる。
ゲーム中のあらゆる育成に必要になってくるフリー経験値。溜めるには継続したプレイと根気強い挑戦が必要なため、使用する際はよく考えて大事に使いたい。
まだクローズドβテスト中ということで難点はあるが、一瞬の巻き返し、味方との連携がうまくいった瞬間がたまらない中毒性をもたらす。先ほど述べたような狙い通りのユニットの動きができれば、アドレナリンはダダ漏れのテンション最高潮でプレイできるだろう。
筆者は「レオニダス」と「アカイア・ホプリタイ」の組み合わせで襲来する敵すべてをファランクスで蹴散らした瞬間があったが、そのマッチで両チーム最大の防御ポイントを得られ、マッチの終了時に大きく筆者のユーザー名とレオニダスの雄姿が現われた瞬間は最高の快感を感じられた。もちろんオンラインゲームであるから味方の失敗や相手の上手な動きが重なってボロボロに負けてしまうなど自分ではどうにもできないことが起きてしまうが、それを含めて余りある爽快感を感じられるゲームだと感じた。
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