2017年12月7日 07:00
「エージェンツ オブ メイヘム」は12人の個性豊かなヒーローが、3人でスクワッド(チーム)を組み、バッタバッタと敵をなぎ倒す爽快なオープンワールドアクションだ。悪に立ち向かうチーム「MAYHEM」は、世界征服を狙う「LEGION」と激しい戦いを繰り広げていく。
部隊となるのは近未来の韓国・ソウル。ハイテク高層ビルが建ち並ぶ中、焼き肉屋や屋台があるオリエンタルな雰囲気の楽しい都市だ。LEGIONはこの街に隕石を降らせたり、地面を反物質に変えようとする巨大掘削マシンを持ち込んだりする。MAYHEMの出番だ!
本作を開発したのは「セインツロウ」シリーズを手がけたDeep Silver Volition。オープンワールドアクションを得意とするデベロッパーならではの遊びごたえたっぷりな作品となっている。本稿では「エージェンツ オブ メイヘム」のユニークなゲーム性と、その感触を語っていきたい。
ヤクザ、空賊、ギャングにフーリガン! イケてる濃い奴らが悪に立ち向かう!
「エージェンツ オブ メイヘム」の大きな特徴はノリノリのアメコミ調世界観にある。プレーヤーを出迎えるのはちょっと懐かしい感じもするアニメ風のオープニング。空から戦闘ポッドが飛来し、中からコンバットスーツを着た悪の集団が襲いかかってくる。これを察知した正義のヒーロー達が銃を手に現場に急行していくのである。非常にコテコテの、だからこそ独特のユーモアを感じさせるオープニングである。
MAYHEMは品行方正な正義のチームではない。元銀幕スターの「ハリウッド」は悪のリーザー「ドクター・バビロン」の言葉に「もっと悪役はこういう台詞を言わないと」などとダメ出しをする。無法者の女空賊「フォーチュン」は悪態をつきまくるし、水兵だった「ハードダック」は彼女以上に乱暴だ。
さらに元ヤクザのヒットマンである「オニ」、ギャンググループを複数取りまとめる「キングピン」、ドイツのサッカークラブの熱狂的なフーリガン「レッドカード」などどちらが悪役かわからないようなメンバーまでいる。そして彼らをまとめ上げるのが正体が謎に包まれた、毒舌の美女「ペルセポネ」である。この強烈なヒーロー達がソウルを舞台に暴れ回るのが「エージェンツ オブ メイヘム」なのである。
本作は個性豊かでアクの強いヒーロー達とコテコテの悪役のバトルという雰囲気と、しっかりしたゲーム性が大きなセールスポイントだ。「エージェンツ オブ メイヘム」は3人のヒーローでスクワッドを組んでミッションに挑戦する。ヒーロー達は戦い方や能力もまちまち。ハリウッドはオーソドックスなアサルトライフル、ハードダックはショットガン、「ラーマ」は弓で戦うし、「イエティ」はガスを発射する冷凍銃を使う。射程距離や特性に合わせヒーローを交代させて戦っていく。
3人のエージェントで「スクワッド」を組み、フィールドに出れば方向キーを押して好きなタイミングでエージェントを交代できる。3人はそれぞれシールドとHPを持っているので、大ダメージを受けた場合など倒される前に交代すれば回復させることができる。また、キャラクターは基本的に3段ジャンプとダッシュが可能で、かなり自由に戦場を駆け巡ることができるが、空中ダッシュができないキャラクターがいたり、ダッシュの代わりに一定時間姿を消すステルスを持っている者もいる。
そして、そのしっかりした戦闘の感触に思わず夢中になってしまうのだ。敵に対して照準を合わせ撃つ抜く感触、ダッシュを駆使して距離を取ったり大きな攻撃をかわす爽快感、さらにド派手で強力なスペシャルアビリティや、カットインまではいるMAYHEMアビリティがある。
ピンチになったらキャラを交代、激しい攻撃をくぐり抜けながら、敵を殲滅していく。筆者は特に空中ダッシュで敵の範囲攻撃をかわす感触が好きだ。キャラを変えると攻撃ががらりと変わる。各ヒーローならではの戦い方をとっかえひっかえ使いこなしていくのがとても良い。「俺すごい戦いしてる!」という気持ちになれる。
そして「オープンワールド」である。街にはサブミッションや、収集要素がたっぷりだ。街には様々な所に宝物が隠されているし、キャラクターを強化できる「ダーククリスタル」がある。メインミッションそっちのけで、街を探索し、色々なことに挑戦したくなってしまう。しかもミッションそのものも多彩なのだ。
まずヒーローを増やすこと自体がミッションであり、さらにヒーロー達のバックストーリーを掘り下げるミッションもある。LEGIONの作戦の阻止やMAYHEMの行動範囲を広げるミッションもあり、本当にボリュームたっぷりだ。本作からは開発者達の「オープンワールドアクションの楽しさってこういうことだろう?」という明確なメッセージを感じることができる。「もうひたすらこの世界、この街で遊びたい!」と多くの人が本作の感触に夢中になるだろう。オープンワールドアクションが好きな人に、強くオススメしたい作品だ。
ヒーロー達の個性をさらに強化、育てる楽しさを追求
ヒーローの成長要素や、活躍に関してもう少し掘り下げたい。ヒーローは多彩な成長をしていく。レベルを上げていくことで「アップグレードポイント」を入手し、キャラクターを育てていける。攻撃力を強化したり、MAYHEMアビリティの持続時間を増やしたり、個人だけでなくスクワッド全体に効果を及ぼすものもある。
さらに「スペシャル」、「武器」、「パッシブ」の3つのスロットがあり、これらにはそれぞれ様々なガジェットを装備できる。ガジェットはレベルアップで得られるものや、宝箱から入手したり、基地で開発するものもある。ガジェットの性質は様々で、アップグレードと組み合わせていくことでより多彩な戦い方を追求できる。
ヒーロー達は3段ジャンプの後、壁に武器を突き立ててさらに上に上ることができるものもいる。体の大きさや、歩行速度も異なる。高いところの移動や、規定時間にチェックポイントを走破するサブミッションなどは素早く移動できるキャラクターが有利だ。接近戦と遠距離戦のバランスや、移動力などで3人をどう組み合わせていくか考えるのが楽しい。
メンバーはミッションをクリアしていくことで増えるので、使用頻度の高いメンバーとレベル差が開いてしまう。しかし本作はミッションに調整する際に難易度調節が可能なので、これでレベル差を埋めることができる。もちろん1軍、2軍といったわけかたをしてお気に入りのメンバーのみをとことんまで鍛え上げるというプレイも可能だ。かなり自由度の高いキャラクター育成が楽しめるのだ。
また「控え」のヒーロー向けに世界中のLEGIONの陰謀を止めるためにメンバーを派遣する「グローバルコンフリクト」という要素もある。本作の主戦場はソウルなのだが、グローバルコンフリクトは「世界で戦うMAYHEM」という雰囲気で楽しい。秘密基地を発見し、スクワッドで攻略に向かうという要素もある。
基地では呼び出せる車の変更や、エージェント達の強化、新武器の開発など様々な施設がある。これらを利用するには多くのキャッシュや、リソース、宝箱で手に入る設計図などが必要となる。レベルが低いメンバーを鍛えるためにサブミッションや探索に活躍させたりもできる。メンバーによってミッション中の会話が大きく異なる。この掛け合いの多彩さも「エージェンツ オブ メイヘム」の魅力なのである。
ド派手で楽しいストーリー、オープンワールドの楽しさはこういうことだ!
「エージェンツ オブ メイヘム」はやはりストーリーと演出が良い。特にメインミッションの演出はド派手だ。人工衛星を巡り戦うミッションでは、衛星軌道上からのレーザー攻撃を避けながら、スーパーカーのブーストでぶっ飛ばしながら現場に急行する。目の前の寺院がレーザーで真っ二つに裂けたりする演出もある。
敵の幹部の1人、オーガスト・ゴーントは歌で民衆を洗脳し、MAYHEMに敵対させようとする“アイドル歌手”だ。肉体美を見せながらちょっとナヨナヨしているところがいかにもアイドル風なのだが、この敵の“正体”がスゴイ。なんと音痴なのである。マイクのチューニング機能をぶっ壊すとBGMとして流れていたゴーントの歌が調子はずれになるのである。この演出は面白い。ファンを操って調子に乗っていた男がボロボロになっていく様が楽しい。
他にもLEGIONは、巨大なマシンを設置したり、周囲を吹き飛ばすゴーレムを送り込んだりしてくる。街のど真ん中に巨大な重機が設置されていたり、ゴーレムの力によってクレーターができ、ビルに車が突き刺さっていたり、地形がダイナミックに変化しており、かなりの迫力だ。街をまるごと3Dグラフィックスで再現しているオープンワールドだからこそ、景観を変化させるこういった演出が際立つのだ。
各ヒーローのサイドミッションにも注目だ。ラーマは故郷を蝕む伝染病の治療方法を追っている。ラーマは最初「ペルセポネに利用されているだけではないか」と思っていたが、物語を進めることで伝染病とLEGIONの繋がりが明らかになってくる。元ヤクザのオニはかつてのライバルである「ナガタ」がLEGIONに協力しているのがわかってくる。
ハリウッドは不気味なストーカー女につきまとわれる。ハリウッドの気を引くために車を暴走させるのだが、コレを止めても中には誰もいず、「私はここよ!」と次の車が暴走し始めるのだ。ハリウッドは彼女に振り回されてヘトヘトになる。女の様子がドンドン狂気に走って行くのがコワイ。
「エージェンツ オブ メイヘム」はメインストーリーはもちろんサイドミッションも魅力的だ。何より、たくさんのヒーローで遊ぶ方が楽しい。他にもアイテムの収集、探索、資金回収や地域開放ミッションなど本当によりどりみどり。ついつい色々な方向でやりこんでしまう。繰り返すが「セインツロウ」でオープンワールドを研究したDeep Silver Volitionならではである。
これらのミッションにスクワッドを投入するのが楽しいのだ。「こいつはレベルが低いから、補助でこいつを入れよう」、「ごつい男メンバーばかりになってしまった」、「こいつのアビリティが好きだ」などなど、色々なことを考えてヒーローを投入していく。時には「この組み合わせ間違ったかな?」と思うこともあるが、そういうときこそ燃える。不利な戦いをプレーヤーテクニックで覆していく楽しさがあるのだ。
「エージェンツ オブ メイヘム」はボリュームたっぷりな正当派オープンワールドアクションだ。昨今は様々な凝ったタイトルが出ている。特に今年のホリデーシーズンは海外ゲームが充実していて目移りしているユーザーもいると思うが、「がっつり、たっぷり、オープンワールドを遊びたい」という人に本作をオススメしたい。各地域にあるミッションをつぶしていく感触は、ちょっと懐かしい感じもある。舞台であるソウルも独特の雰囲気があって楽しい。ぜひ触ってみて欲しい。
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