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「セガ 3D復刻アーカイブス2」インタビュー Part2

3D復刻初のメガドライブベースのアーケード基板「C2ボード」を3DSへ

「ぷよぷよ通」- 3D復刻初のメガドライブベースのアーケード基板「C2ボード」を3DSへ

――ちなみにアーケードの「ぷよぷよ通」にも、実は4人対戦バージョンがあったということなのですが。そのあたりはいかがでしょう?

堀井氏:それは「アーカイブス2」には入れてないですね。というのも、実は僕もアーケードの4人対戦バージョンは、噂には聞いていたものの見たことがないという程度で。Wiiのバーチャルコンソールを作っていたときにも散々探したものの見つけられなくて。新潟の長岡テクノポリスさんというゲームセンターにあるというお話を最近聞いたので、ぜひ見てみたいのですが……。

奥成氏:通常の「ぷよぷよ通」は基板1枚で最大2人プレイができるゲームなのですが、「ぷよぷよ通」のロケテストバージョンには“2枚の基板を通信させるための別の基板”があるんですよ。それがないと4人プレイはできない。でも、製品ではそれもなくなったようで、セガにもデータが残ってなかったんです。それで、その通信基板が2、3年前にヤフオクで世に出てきて、長岡テクノポリスさんがそれを手に入れられたんですよね。

堀井氏:今回の「ぷよぷよ通」でも「4人通信の存在はどうするの?」とは話しましたが、やはり3DSでは難しい部分があるんです。そもそも「ぷよぷよ通」は1枚の基板で2台を通信させるという仕組みになっているので、アーケード版をベースに3DSで4人通信を実現しようとすると、「基板2枚分が1台の3DSに仮想的に入っている状態で、”2枚と2枚”の基板から出てくるものを4台の3DSに割り振る」っていう、かなり変則的なものになりますね。

 2台の3DSで基板1枚分の処理をさせるという統合をさせてから、初めて3台目、4台目の3DSと通信ができるという形になるので……。もし現物があれば試しはしていたとは思うのですが、簡単にはいかなかっただろうと思いますね。

――なるほど。アーケードの4人通信対戦版はもともとかなり特殊な存在だったし、それを3DSに持っていこうとすると、かなり変則的にもなってしまう、と。ちなみに、C2ボードはメガドライブのアーキテクチャベースのアーケード基板で、実は時系列的にメガドライブ以降のハードを移植するのは「3D復刻」シリーズでも初めての試みですよね。

堀井氏:そうなんですよ。C2ボードは結構メガドライブに似ているとは言え、メガドライブと同じではないわけで。音源周り、サブCPU周りであるとか、違うところだらけです。そこの苦労もありそうだったので、最初はメガドライブの「コラムス」をやるのはどうですか?と提案したんですよね。

――そしたら先ほどのやり取りになって(笑)。そこから実際に「ぷよぷよ通」に取りかかりはじめたのは、今年の4月あたりからですか?

堀井氏:そうですね。Wiiのバーチャルコンソールのときの資料を引っ張り出してきて、「やってみるかー」と。

――やっぱり注目どころとしては、3DS上であのアーケード版の音が鳴るのかというところですよね。

堀井氏:例えば、メガドライブに移植されたときに何が1番変わったかというと、やはり音質だと思いますね。そのあたりは今回はアーケード版をクリアに再現できていると思います。

――C2ボードの音周りは、メガドライブ互換だったんですか?

堀井氏:いえ、メガドライブにはないPCMチップが別についていて、メガドライブにあった主にサウンドを制御していたZ80も削除されており、サウンドも含めて68000だけで賄っています。

――そのあたりは改めて3DSへと新規に手がけたという状態になったわけですよね。

堀井氏:そうなんです。そういう意味では本当に新規で1本起こしている状態なんですよね。でも「アーケード版の『ぷよぷよ通』はWiiで1度やってるでしょ?」って言われてしまうのが、これまでたくさん手掛けてきた分の辛いところですね(笑)。

――高次面に行けば行くほど、どんどん処理負荷が大きくなっていくと思いますが、そういうときのハードの特性と言いますか、独特な挙動に、アーケード版とメガドライブ版の違いがあったり。その微妙なあたりにもユーザーさんの好みが出てくるのかなとも思うんですよね。そのあたりの再現性はどうなんでしょう?

堀井氏:確かに、そのへんもあるだろうなぁー。僕個人は「ぷよぷよ」がすごく上手いという人ではないので、本物と同じになるように作る以外にはやりようがないんですよね。味付けを変えたり、何か手を加えたりということはないです。

――処理落ちしたり、処理負荷に対してどんな動作になるのかというのは、基本的には同じ水準のハードで動かさない限りは揃わないですよね。そのあたりはどのように調整されるのでしょう?

堀井氏:確かにそのままだと揃わないです。そこに関しては、エミュレーターの常として、クロック計算しつつ、そのクロックから溢れたら処理が落ちるということをやらせるわけですが、それをC2ボードのエミュレーションに同じくやっています。ここはもう計算でなんとか揃えていくしかないところですね。

――なるほど、ハードの違いをエミュレーションへの計算で整えて感覚を同じにしていく、と。操作周りの割り込みをきちんと入れたりといった部分も整えていかないといけないのだろうなと思うのですが、それらはアーケード版の「ぷよぷよ通」とメガドライブ版の「ぷよぷよ通」を移植するだと、どちらが厳しくなるのでしょうか?

堀井氏:どうだろう?どっちがどっちとも言えないですけど……、どっちもかなりきつかった感じですけどね。アーケード版を移植するということで言うと、特に音周りは再現度に関して最後まで揉めていましたね。

――揉めていたんですか……。

堀井氏:結局PCMの音が。これは“正しい音なのか”という議論なんですけど。最後まで揉めました。

奥成氏:そこは基板とにらめっこするしかないですから。

堀井氏:基板とにらめっこしつつ、並木さんが理詰めで納得行くまで追求していました。ここは並木さんに解説頂いた方がいいかもしれませんね。

【チーフサウンドクリエイター並木学氏よりコメント頂きました】

――「ぷよぷよ通」で初のC2ボードを再現するということになり、PCM周りを含め、サウンドスタッフの方々は再現性にご苦労があったとお伺いしました。インタビュー中ではPCMの音について「正しい音なのか」と論議になったというお話も出ています。具体的に苦心された点を教えてください。

並木氏:アーケード版「ぷよぷよ通』ということで、メガドライブ版にはないADPCM音源による音声出力の再現が必要でした。おもにキャラクターボイスによるおしゃべりのパートですね。で、それらのボイス素材について実は、僕が入社した2012年よりも前にすでに基板録音されておりまして、その音質はというと非常にクリアなものでした。

 でも、今作開発のために用意された目の前のアーケード基板から聴こえる音声は、もっとノイズ混じりでとてもそんなにクリアな音質ではなかったのです。で、「一体どっちが本物の音なんだ?」という話に(笑)。

 そこで詳しく調べたところ、詳細は省きますが結論としては「どちらも本物の音」でした。クリアな素材の方はというと、それもそのはず。基板上のADPCM音源ICのピンから直接、出力信号をひっぱる工作をほどこして録音されたという、混じりっけなしの逸品ボイスだったのです!ええ、「弊社のサウンドへのこだわりは、自分の入社よりも前からとっくに凄かった!」という事実を目の当たりにしてひとり社屋の隅でこっそり男泣き。エムツーすごいわ……(自社自賛)。

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(山村智美)