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ポイントは“再現性”と“時代の先取り”。新規ゲーム会社でもしっかり資金調達する方法【CEDEC2022】

「XR CLOUD」の本城氏と「東京クロノス」の岸上氏が語る

【CEDEC2022】

開催期間:8月23日~25日

左からmonoAI technology代表取締役社長の本城嘉太郎氏、MyDearest代表取締役CEOの岸上健人氏

 コンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC 2022」。今回はゲームを作り上げる際の資金運用に関するノウハウを紹介する講演「ゲーム会社を創業して10億円以上資金調達する方法」について語られた内容を紹介する。

 本公演ではmonoAI technologyの代表取締役社長を務める本城嘉太郎氏と、MyDearest代表取締役CEOの岸上健人氏が登壇。完成までに多くの資金を必要とするゲーム制作において、自社で資金調達をする際の注意点や苦労話、成功の秘訣が語られた。

 岸上氏はMyDearestにて「東京クロノス」や「アルトデウス: BC」といったVR向けタイトルを手掛けているが、当時これらを制作するにあたってベンチャー企業に出資してくれるベンチャーキャピタルを行なった。当初は100社ほどにオファーを出したものの、出資してくれた企業は5社ほどだったという。自社タイトルとして大きく成功したのが2020年にリリースされた「アルトデウス: BC」からで、こちらがリリースされるまでは様々な苦労があったようだ。

 改めて振り返ると「アルトデウス: BC」および、本作の前にリリースされた2019年発売の「東京クロノス」の売れ行きによって周りの見方が変わったとした。具体的には2作連続でヒットと遂げることで「“再現性”があるから」という理由で大きな資金を調達できるようになっていたという。また、オリジナルのIPでゲームを作ることによって会社の資産にもなるため、株価がつきやすいのだという。

「東京クロノス」
「アルトデウス: BC」

 一方の本城氏は2005年にmonoAIを創業し、2021年には大規模仮想空間基盤「XR CLOUD」をリリースするなど、様々な取り組みを行っているが、タイミングが重要であるともコメント。自身にとっては常に「メタバース」が中心にあったが、2021年にFacebookがMetaへと社名の変更された際に大きな流れが来たのだという。これにより「メタバース」への関心が広まり、多くの資金を集めることができるようになったとし、「大手がやっていない、この先にブームが来そうなコンテンツに前もって投資する」ことが大きな成長生むきっかけにもなるとした。

 また、これから資金を集めるための知識や注意点として本城氏は、一時的なリスクを取ることが大切であると言及。コンテンツを作り上げる上でお金の問題が解決できると、自分の頭の中で考えていることが実現できるようになる。これによってより良いコンテンツの創出が可能になるとした。これについて岸上氏は、お金があると「新しいことができるから」として他社でキャリアを積んだベテランのスタッフが集まるきっかけにもなるため、リスクを取って出資をもらい、よりよいコンテンツ作りをするのだという。

 資金調達の手段として、企業が新株を発行し事業のために資金を調達する「エクイティファイナンス」だけでなく、クラウドファンディングや仮想通貨を使った資金集めもありなのではないかと本城氏はコメント。生み出したいコンテンツがまだ形になっておらず、紙の企画書の状態であったとしても、現在は様々な資金の調達方法が生まれている。そのため当時とは違った資金調達の可能性について言及していた。

 講演の終盤には参考になった書籍も紹介された。ここでは岸上氏が「起業のエクイティ・ファイナンス」と「PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話」をピックアップ。本城氏は「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」を紹介した。いずれも資金調達における考え方の参考になったという。

 昨今のゲーム制作においては莫大な時間と多くのスタッフを起用する資金が必要になる。今回の講演では様々なコンテンツを生み出してきた2人の過去や、今改めて考える成功の秘訣が語られた。ゲーム業界でコンテンツを作り上げるための資金集めを考えている人に対し、考え方を伝授する内容になっていた。