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RTAはゲーム宣伝に役立つか? トップ走者えぬわた氏がRTA×プロモの現在地を解説【CEDEC2022】

“瞬間風速”はVTuber並み。企業と走者の歩み寄りで可能性が広がる

【CEDEC2022】

開催期間:8月23日~25日

 8月23日より開発者向けカンファレンス「CEDEC2022」がオンラインにて開幕となった。本稿では、家庭用ゲームの営業もしているゲーム配信者・えぬわた氏による「RTAを活用したプロモーションで起こす瞬間風速と熱量の保温 / RTAコミュニティについて」を紹介する。

 えぬわた氏は、Nintendo Switch用フィットネスアドベンチャーゲーム「リングフィット・アドベンチャー」のRTAにて活躍した人物。今回のセッションでは、RTA(リアルタイムアタックというゲームの最速クリアを目指すユーザー発の遊び方)をゲームのプロモーションに活用している事例が紹介され、通常のプロモーションとは一味違う伸び方の例などが提示。また、その背景にあるRTAコミュニティの特徴についても語られた。

 なお、本セッションのターゲットは、「RTAをプロモーションとして活用したいマーケター」や「RTAって聞いたことあるけどよく知りません」といった初心者。えぬわた氏は「あくまで個人の見解」であると前置きした上で今回のセッションを実施。セッションでは、「RTAとはそもそもなんなのか」、「RTAをプロモーションに活用する際のポイント」などが紹介された。

RTAとはゲーム配信のカタチのひとつ

 その歴史は遡れば1990年代のゲームメーカー主導で早くゲームをクリアするという遊びから始まる。その後2000年頃にRTAという言葉が生まれた。そから「ニコニコ生放送」のサービスが始まり、次第にRTA配信が浸透。2016年より開催されている「RTA in Japan」の影響も大きく、様々なグローバル企業の協賛や2019年頃からトレンド1位の常連となったことによって大きな注目を集めることになったという。

瞬間風速はVTuber並み!?

 提示されたGoogleトレンドの検索数を比率毎に示した画像では、VTuberなどの人気コンテンツと同様の盛り上がりを、一時的に示しているのが紹介された。

 えぬわた氏は、一時的に盛り上がりを見せたタイミングについて、前述した「RTA in Japan」の開催時期と重なっている点に注目。他にも、ゲーム配信の同時視聴者数でも、20万人ほどの数字を記録しており、コンテンツの強さが強調した。

イベントにおけるゲームメーカーも許諾するRTA企画

 えぬわた氏によれば、RTAコミュニティは異質だという。というのも、「バグ」や「mod」など、メーカー側が公に認めにくい要素を意図的に使って競い合っているからだと語った。現状もRTAコミュニティはグレーゾーンではあるが、公式にRTA走者がプロモーションに起用されたことで、次第にその流れも変わってきているとのこと。

 例としては、セガが「スーパーモンキーボール」において、ゆとりん氏を公式RTAプレーヤーとして起用した他、にじさんじのVTuberがフロムソフトウェアのタイトルで、許諾をもらいRTA実況をしたりなど、公にその活躍を確認できるようになってきていると語った。

 特に「スーパーモンキーボール」にて、ゆとりん氏が公式RTAプレーヤーとして起用された点が大きく、公式生放送などで積極的にプロモーションに活用した事例として紹介された。特にタイトルとRTAの相性がよかったのもポイントとなっている模様だ。

公式RTAの向き不向き

 えぬわた氏によれば、公式によるRTAのプロモーションの際の注意点として、その向き・不向きについても提示。「最新作の関連作品」や「タイムアタック前提のゲーム」、「クリア概念」があるものなどが向いているゲームだという。一方「シナリオが魅力的なゲーム」、「クリア概念がないゲーム」、「オンラインゲーム」、「運要素の強いゲーム」などは不向きだとしてRTAでのプロモーションには向いていないのではないかと提案された。

 ただし、前提として流れがスピーディーなものや、プレーヤーのテクニックがタイムに直結するようなタイトルであることを求める人が多いのも大切だという。

RTAの「瞬間風速」と「熱量の保存」

 えぬわた氏は「瞬間風速」を、配信を見た視聴者が「瞬間的に感情が高まり、そのゲームへの興味関心が最大になる」ことで購買意欲を逃さず購入に繋げられると紹介。一方「熱量の保存」では、「ゲームに関しての興味関心を維持し続ける」ことで次回作や関連策の購入モチベーションを上げることでゲームを手放さなくなり中古市場への流出を防げると語った。

RTAというワード自体が強い

 えぬわた氏はRTAというワードがそもそも検索に引っ掛かりやすいのも、これだけコミュニティが伸びた理由として感じれられると語った。これは動画のタイトルに「RTA」が入っている場合と入っていない場合の再生数の伸びが全く異なることから考えられるとのこと。

 さらに、RTA走者はプレーヤースキルが高く、コメント欄が盛り上がることで高評価に繋がりやすく、サジェストされやすくなることで更なる再生数の増加が見込めるという。

 他にも、えぬわた氏は、有名タレントを起用した動画よりも再生数が多い事例も紹介。当該の事例について、タブー視されていたRTA走者が公式に出演したことによる所謂「バズった」こともあるが、走者のプレイやトークが上手であったこと、「RTA in Japan」の開催と重なったことなども要因であると分析している。

 また、オンライン的な要素のない「非運営型ゲーム」では、大会による「瞬間風速」を作り出すのが困難として、そういった際にRTAで盛り上げるのがオススメだという。というのも「スーパープレイ」の量が他のゲームよりも連発されることによる盛り上がりや記録更新か否かの“ドキドキ”でも盛り上がることで「瞬間風速」を作り出しやすいのがポイントだと語った。

 さらに、えぬわた氏はRTA走者による「セルフプロモーション」についても言及。基本的にRTA走者はプレイしているゲームが大好きであり、積極的にゲームのセール情報やプラットフォームを紹介していると語った。そこで同氏は、RTAが盛り上がる「RTA in Japan」の開催時期に、セールを実施すればRTA走者が紹介してくれるのではと提案した。

RTAコミュニティの課題

 えぬわた氏によればRTAは、e-Sportsほどの盛り上がりは見込めないという。これはRTA練習の際の同時接続者数がトップでも100から200人ほどにとどまっているからでもあるとのこと。一方で、イベントなどによる瞬間的な盛り上がりを作りやすく、さらに出演料も安い他、タレントなどを起用するよりもゲームに詳しくプレーヤースキルが高いため、ゲームコンテンツ自体での集客を見込めるため観客の満足度を高められると語った。

 最後にえぬわた氏は、「RTA走者のゲームメーカーもゲームが大好きなので上手に歩み寄れたら嬉しいです!」とコメント。「RTAをプロモーションに使いたい」、「RTAを意識したゲームを作りたい」など気軽に相談してほしいとした。連絡は下記画像のメールアドレスや同氏のTwitterのDMにて受け付けている模様だ。