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2DイラストにMayaを使う奥の手が効く!「聖剣伝説EoM」におけるキャラクターアニメーションの制作手法【CEDEC2022】

奥の手だけに“手”がすごい! フルメタルハガーなどのアニメーション制作例も

【CEDEC2022】

開催期間:8月23日~25日

 コンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC 2022」にて、Android/iOS用RPG「聖剣伝説 ECHOES of MANA」のキャラクターアニメーション制作におけるノウハウが紹介された。

 本作「聖剣伝説 ECHOES of MANA(聖剣伝説EoM)」は4月27日にサービスを開始したスマートフォン向けのRPG作品。「聖剣伝説」シリーズにおける歴代キャラクターも参戦するなど、作品の枠を越えたコラボレーションが楽しめるタイトルになっている。Wright Flyer Studios(WFS)が制作を手掛けており、今回の講演では本作に採用されている2Dと3Dの垣根を超えたアニメーション制作手法が紹介された。

「聖剣伝説EoM」アニメーション制作において洗い出された問題点

 まずはじめに、2Dパーツアニメーションを使用する際の課題があったという。そもそも2Dアニメーションは2Dイラストをそのまま動かせるという強みがあるが、各キャラクターが同じモーションを使用していると無個性化しがちになる。さらに、2Dアニメのクオリティアップにはメッシュ変形が必要不可欠であることや、スタッフにデッサン力が問われること、2Dアニメーターの希少性が高いことなどが挙げられる。

 これら複数の問題が発生することから3DアニメーションソフトであるMayaを採用することにしたという。Mayaを用いることで様々な問題が解決できるほか、2Dアニメの業務をしながら3Dツールの経験を積むことも可能で、人材を育成することもできているという。

キャラクターの手が凄い! 「聖剣伝説EoM」における奥の手が披露

 講演ではキャラクターセットアップにおける手法が紹介された。各キャラクターはアートチームが描いた3面分の素材をPhotoshopで書き出し、TAツールで自動的に2DMeshを生成。こちらのMeshにボーンをバインドし、各ボーンにリグコントローラーを設定する。また、ターゲットに指定した形状にMeshを変形し戻すことができる機能「BlendShape」を用いることで、安定したMesh変形を誰でも気軽に使えるようにしたという。

 ここでWFSが「聖剣伝説EoM」を制作する上での“奥の手”を紹介した。奥の手は「キャラクターの手を3Dにする」ということ。Mayaは3Dアニメーションソフトであるため、せっかくなので手は3Dにすることを決めたのだという。当然、2Dのキャラクターの手のみが3Dになると、違和感が生まれる可能性があるが、テクスチャを工夫することでキャラクターになじませることができたことを明かした。

 手の指はリグコントローラーを用いることで、1本1本細かく操作することができる。広げた手はもちろんのこと、握りこぶしをつくったり、武器を持ったりとあらゆる場面に対応できるのだ。

 また、これに合わせて武器も3D化することに決定。武器を2Dにすると厚みのある武器がペラペラに見えてしまうという問題があったが、3Dで表現することで過去シリーズに登場した様々な武器を違和感なく再現できるようになったという。

武器は奥行き方向の空間をスケールで潰し2Dパーツと馴染むようになっているようだ

原作・新規ファンも楽しめるアニメーション制作

 本作におけるアニメーション制作では、原作を遊んでいた人には思い出を蘇らせ、初めて「聖剣伝説」に触れる人には原作に興味を持ってもらえるよう「リスペクト&リニューアル 原作に忠実に、新しい表現で」をスローガンに取り組んでいるという。ここでは原作にも登場するキャラクターのアニメーション制作例が披露された。

 本来「聖剣伝説EoM」では斜め前からキャラクターを見せるアングルが基本となっているが、「聖剣伝説3」に登場する「フルメタルハガー」を本作に実装するにあたっては、原作で印象深い真正面からみたアングルを差分として採用した。また、足回りには変形用のボーンを仕込み立体感をアップさせている。

 一方の「ゼーブルファー」には特徴的な口パクのパーツを重点的に準備したほか、口の開閉に関してはコントローラーを追加しリップシンクをなめらかにするなど、表情における工夫を施しているという。原作で印象的だった要素を採用しつつ、本作ならではの演出を取り入れているようだ。

 そのほか、主人公キャラクターたちの個性も踏襲しており、特徴的な走り方や、各々異なる勝利時の演出についてもアニメーションが用意され、各キャラクターをいきいきと見せるための工夫が紹介された。

 本講演では2Dを基盤としつつ、Mayaの採用によって実現した3Dの手など、「聖剣伝説EoM」のキャラクターをよりリッチに見せるための工夫が明かされた。2Dならではの良さと3Dの強みを活かした本作の今後にも注目したい。