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異例の無観客試合となった「鉄拳7」伝統の日韓対抗戦は日本チームが圧勝!
日本の新鋭 弦選手がKnee選手をはじめ多くの韓国プレーヤーを下す活躍
2020年3月1日 09:36
- 2月29日開催
- 会場:バンダイナムコ 未来研究所
「鉄拳」シリーズの競技シーンにおいて、日本と韓国の間には絶えることのない因縁がある。「鉄拳」の生まれた地である日本と、持ち前の研究力で強豪プレーヤーを数多く輩出してきた韓国。両国のプレーヤーたちは常に最強プレーヤーの座を奪い合い、切磋琢磨してきた関係にある。
最近の「鉄拳7」シーンではパキスタン勢の存在感も大きかったが、それでも鉄拳ワールドツアー2019決勝大会のグランドファイナルは、日韓戦であった。この一戦は、日韓が「鉄拳」二大国であることの証明であると同時に、日本勢のチクリン選手が勝ったことで、新たな因縁の幕開けともなった。
「鉄拳7」は2019年12月よりシーズン3に突入し、新キャラクター・大幅調整と共に、再び新鮮さを取り戻している。2020年2月29日に開催された「鉄拳プロチャンピオンシップ 日韓対抗戦 2020」は、そんな新シーズンで行われる、初めての大型日韓対抗戦だ。新しい時代を迎えた「鉄拳7」において、果たして日本と韓国どちらが強いのか。因縁の対決をレポートする。
ライフ獲得戦は日本が3勝1敗!19歳若手の弦選手が大健闘!
本大会には日本人プロライセンス保持者全14名と、昨年の鉄拳ワールドツアー・ポイントランキングにおける上位12名の韓国人プレーヤーが招待された。新型コロナウイルスの影響が騒がれる中、韓国人プレーヤーの内JDCR選手とKkokkoma選手は感染リスクを懸念して出場を辞退したが、大会自体は無観客での開催が決行された。
まず韓国チームの人数に合わせるため、日本勢14名を10名に絞る選抜戦が繰り広げられた。選抜戦には1本先取・総当たり戦という変則的なルールが採用された。1本先取の連戦を安定して勝ち抜くには、勝負強さと堅牢さの両方必要となってくる。その結果、破壊王選手、ぺコス選手、用心BΩY選手、じょうたろう選手の4名が予選敗退となった。大会上位の常連であるこの4名が敗退したことからも、日本勢のレベルの高さが伺える。
これで10対10の構図が整ったわけだが、本大会にはさらに『ライフ獲得戦』という仕掛けが設けられている。ライフ獲得戦では10名がそれぞれA~Dの4チームに分かれ、それぞれのチームが勝つごとに、チームメンバーの一人に余剰ライフが与えられる。つまり、本来10回負けたら敗北となる10対10の勝ち抜き戦において、ライフ獲得戦の結果次第では両チーム14までライフを増やせるということだ。
言うまでもなくライフが多い方が本戦を有利に進められるわけだが、日本チームはライフ獲得戦においてA、B、Dチームが勝利、合計3の余剰ライフを獲得した。中でも注目すべきなのがLiquid所属の弦選手のライフ獲得だろう。弦選手のBブロックは、先述の辞退選手の影響により、弦選手対ROX所属Knee選手の一騎打ちとなった。Knee選手といえば「鉄拳」のレジェンドプレーヤーで、日本チームとしては彼にライフを与えることは絶対に避けたい。そんな中、19歳若手の弦選手がいきなり番狂わせを起こし、ゲームカウント2-0でKnee選手に勝利して見せたのだ。
多くのキャラクターを使いこなすKnee選手だが、本大会にはプレーヤーネームの由来となっているブライアンで出場した。対する弦選手はシャヒーンでの出場だ。弦選手は、先日開催された「EVO Japan 2020」では、配信後すぐさま最強キャラクターの座を確立したリロイを使用していたが、本大会ではキャラクターを変更している。これはリロイが弱体化の修正を受けた影響かとも思われたが、後に本人に理由を尋ねると、彼は現状の最強キャラクターは依然リロイだと感じているとのこと。シャヒーンを起用した理由は「使っていて一番楽しいキャラだから」。キャラクターとのシンクロ率の高さも、勝利の要因となっていたかもしれない。
一方、Knee選手はベテランの風格を感じさせる堅牢な立ち回りで、小技を活かして弦選手の体力を削ろうとする。しかし、弦選手はこれらの小技に動じることなく、冷静に距離をとって反撃の隙を作っていた。さらに要所でスライディングやレイジアーツなどのハイリスク技も当てており、勝負強さも感じさせられる内容だった。Knee選手相手にこれだけ冷静に立ち回り、対応型のプレイスタイルで勝利するのは至難の業だ。後に弦選手に勝因を尋ねると「チームとしてKnee選手にライフを与えるのは絶対に良くないと思っていたので、意地で勝ちました」とのこと。弦選手の使命感が成した勝利だ。
日本チームは弦選手の他にTeam YAMASA所属のノビ選手、ユウ選手のベテラン2名がライフを獲得し、チームとして盤石な態勢を整えた。対する韓国チームは、鉄拳ワールドツアー2018覇者のRangchu選手がライフを獲得し、日本チームを迎え撃つ。総ライフ数は日本13対韓国11と、日本チームはやや有利な条件で本戦に進むことになった。
勝ち抜き戦では日本の若手選手が大活躍!
勝ち抜き戦が始まると、日本はまず2ライフを持つノビ選手、韓国はGG所属Saint選手を投入。本戦は1本先取の勝ち抜き戦で、ライフが1つしかない選手は1回負ければ敗退となる。昨年開催された日韓対抗戦では日本チームが勝利しており、連覇を狙う日本に対し、韓国はプライドに懸けてリベンジを狙っている。
長年使い続けるドラグノフで臨むノビ選手に対し、Saint選手は新キャラクターの巌竜での出場だ。Saint選手は「鉄拳6」時代から巌竜を使用しており、「鉄拳7」にシーズン3で巌竜が追加されてから、ひたすら巌竜をやりこんでいる。その仕上がりは相当なものと噂されており、試合でも巌竜の近距離戦の強さを活かした手数の多い攻めを展開し、ノビ選手から2ラウンドを先取して見せた。しかし流石はベテランのノビ選手、2ラウンド取られてから徐々に相手の攻めのリズムを汲み取り、横移動からの反撃が決まるようになる。試合はノビ選手が意地を見せ、見事Saint選手を破った。
そんなノビ選手も、続いて投入された韓国Rangchu選手に惜しくも敗れてしまう。一進一退の展開に、やはり本戦は拮抗した展開になるかと思われた。しかし、日本チーム3人目に投入された弦選手が、ジリジリとした展開を打ち破る快進撃を見せる。まずノビ選手とユウ選手を破ったRangchu選手に勝利すると、続くCBM選手、LowHigh選手にも難なく勝利してみせる。LowHigh選手は鉄拳ワールドツアー2019決勝大会で7位の成績を残した強豪プレーヤーで、彼を破ったのは日本チームとって大きなアドバンテージとなる。
弦選手は以前から日本の若手プロの筆頭として注目されていたが、本大会での弦選手はその前評判に違わぬ強さを見せていた。持ち前の反応速度を活かした技の空振りへの反撃精度はいつにも増して鋭く、また細かい下段のガード頻度も非常に高かった。なんとしても弦選手を止めたい韓国チームは、ついにKnee選手の投入を決める。韓国チームの総大将ともいえるKnee選手を中盤に投入する選択から、彼らの焦りが感じ取れる。
Knee選手は先ほどの敗北を受けて、戦い方を変えて弦選手に臨む。シャヒーンの下段技、サイレントリゲルを警戒してか、先ほどより距離をとって戦っていた印象だ。Knee選手の技の空振りに対する意識はすさまじく、試合時間残り4秒の場面で、シャヒーンのラピッドバッシュ空振りに反撃を入れていたほどだ。しかし、弦選手も反撃されてばかりではなく、この変化に的確に対応し、上手く間合いを詰めていた。結果として、弦選手がKnee選手を壁際に追い込む展開が多くなっていく。
間合いを詰めてしまえば、再びシャヒーンの下段技とショートアッパーによる削りが有効になり、さらに有利フレームからライジングファルコンなどのコンボ始動技も当たるようになる。弦選手の攻めはやはり圧倒的で、第3ラウンドではKnee選手相手にパーフェクト勝利を決めていた。終盤にはKnee選手も焦りを隠せず、横移動がジャンプに化けたり、起き攻めの挑発をコマンドミスしていたほどだ。試合はラウンド2-2ともつれたが、最後には弦選手がKnee選手を圧倒し勝利する。弦選手は、ライフ獲得戦も合わせると、Knee選手相手に3連勝したことになる。
弦選手は勢いのままに続くRest選手、JeongDDing選手も下し、CHANEL選手に敗北するまでの間、6連勝を達成して見せた。これは決してまぐれでは達成できない偉業であり、弦選手のプレーヤーとしての地力が発揮された結果といえよう。
弦選手が1ライフを失った後、UYU所属Double選手がCHANEL選手を撃破。さらにCOOASGAMES所属ノロマ選手がMeo-IL選手、Rangchu選手を下し、日本チームはライフ9を保持したまま、韓国チーム最後の砦、EQNX所属Ulsan選手に挑む。Ulsan選手は鉄拳ワールドツアー2019決勝大会にて準優勝に輝いた、韓国の19歳若手強豪プレーヤーだ。しかし、そのUlsan選手をもってしても、9-1の状況から勝つのは不可能に等しい。
まずUlsan選手に挑んだのはノロマ選手だ。ノロマ選手は「EVO Japan 2020」以降の一連のナーフ後もリロイを続投しており、キャラクター自体は弱体化を受けたものの、さらに仕上がりを増している。ノロマ選手は持ち前の淡々とした立ち回りで、細かい下段技とリロイならではの強力な中段技で近距離戦を制していく。
しかしUlsan選手も「EVO Japan 2020」以降リロイ対策を詰めていたようで、要所のしゃがみガードやパワークラッシュによる割込みで、近距離戦での被弾を抑えていた。また、距離が離れればUlsan選手の一美には強力な技が多く揃っており、特にこの試合ではハイキックがカウンターでヒットすることが多く、そこからのコンボでUlsan選手がペースを握っていった。ノロマ選手も健闘したが、試合はUlsan選手が勝利する。しかしUlsan選手の勝利後の表情から見るに、彼には韓国チーム最後の一人としてのプレッシャーが重くのしかかっているようだった。
次にUlsan選手に立ち向かったのはITO所属ちりちり選手だ。ちりちり選手は弦選手と同じシャヒーンを使うが、弦選手に比べると攻撃的なプレイスタイルが持ち味で、プレッシャーがかかるUlsan選手にとどめを刺すには頃合いの選手といえる。試合が始まると、ちりちり選手がスライディングから積極的にUlsan選手のガードを崩していく姿勢が見られ、また第2ラウンド終盤に見られたレイジドライブの打ち切りは、まさにちりちり選手の攻撃的スタイルを象徴しているプレイだった。
Ulsan選手も持ち前の防御力をもって必死に猛攻を凌ぐ。近距離戦での隙のない小技での牽制や、堅いガード力は、さすがUlsan選手だ。しかし終盤戦、ちりちり選手が空中コンボから壁破壊を上手く使い、最後には得意のスライディングがヒットしUlsan選手を下す。ちりちり選手が勝利したことで、日本チームは8ライフを残して韓国チームに勝利した。
例年通りであれば拮抗した試合の連続になるかと思われた「鉄拳プロチャンピオンシップ 日韓対抗戦 2020」。しかし蓋を開けてみると、メキメキと成長する日本の若手プロ選手たちの活躍により、8-0という差をつけての大勝となった。これで日本は日韓対抗戦2連勝、韓国に鉄拳発祥の地としての威厳を示した結果となった。
大会後、今大会のMVPともいえる弦選手にインタビューをした。大会の感想を聞くと「自分でもいい動きができているな、と思える場面があり、とても手ごたえの良い大会でした。これまでは一定のセットプレイに頼った勝ち方が多かったのですが、それではベテラン選手には捌かれてしまう、ということに気づき、今大会は冷静に相手に対応するプレイスタイルを心がけていました。その結果Knee選手をはじめトッププレーヤーを倒せたのでよかったです」と答えてくれた。
また鉄拳ワールドツアー2020への意気込みを聞くと「今年こそは絶対決勝大会の舞台でプレイしたいと思っています。そのためにもまずは4月の「TOKYO TEKKEN MASTERS」で好成績を残したいです」と語ってくれた。弦選手をはじめ、これからの日本の若手プロの活躍には要注目だ。
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