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3日間にわたりデッドヒートを展開、「ネイションズカップ」では國分諒汰選手が日本人初優勝! 「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2019 ワールドツアー東京」レポート

【FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2019 ワールドツアー東京】

10月25~27日開催

会場:MEGA WEB

 一般社団法人日本自動車工業会は、プレイステーション4用レースゲーム、「グランツーリスモSPORTS」を使用した「e-Motorsports 『グランツーリスモSPORT』」を、東京モーターショーの会場となったMEGA WEBにて、10月25~27の3日間にかけて開催した。

 本イベントは、FIA(国際自動車連盟)とソニー・インタラクティブエンタテインメントが共同開催した「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2019 ワールドツアー東京」として実施され、本稿ではシリーズ初の日本開催となった、「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ 2019 ワールドツアー第5戦」の「マニュファクチャラーシリーズ」と「ネイションズカップ」の2戦と、「都道府県対抗 U18 全日本選手権」、「自動車メーカー対抗・真剣勝負(ガチバトル)」の模様をお伝えしよう。

e-Motorsports「グランツーリスモSPORT」の会場となった東京・お台場の「MEGA WEB」
ゲスト解説を務めたのは、「ドリキン」こと土屋圭市さん(中央)。右はMCの平岩康佑アナウンサー、左はMC兼レポーターの井澤エイミーさん

「マニュファクチャラーシリーズ」は、最終レースでトヨタを逆転したポルシェが勝利!

 ワールドツアーの「マニュファクチャラーシリーズ」は、自動車メーカーごとに契約したドライバーが3人1組でチームを編成し、合計12チームによって行なわれているチーム戦。初日の25日(金)は予選のみを行い、2日目に行なうセミファイナル、グランドファイナルの2レースの合計ポイントによって順位を競うというルールで行なわれた。

 これまでに4戦を終え、第3戦と4戦ではメルセデス・ベンツが2連勝と勢いに乗っていたが、25日(金)に行なわれた予選で8位と大きく出遅れる意外な展開に。翌26日(土)に行なわれた最初のレース、セミファイナルは、オーストラリアのマウント・パノラマモーターレーシングサーキットを13周し、タイヤはソフト、ミディアム、ハードの3種類すべてを使用し、それぞれのタイヤで最低4周走るというルールで行なわれた。

 日本開催の地の利があったのか、ここではトヨタが会心のレースを見せてくれた。昨年の「ネイションズカップ」王者、イゴール・フラガ選手を擁するトヨタは、まずは前日の予選上位6チームで行なわれたタイムアタックでフラガ選手がトップタイムを叩き出し、ポールポジションを獲得する。本戦でもフラガ選手、ライアン・デルッシュ選手、山中智瑛(ともあき)選手の順にステアリングを握り、2位に約6.9秒差をつけるポールトゥウィンで快勝。2位にはポルシェ、3位には最後にソフトタイヤを用意して猛烈な追い上げを見せたメルセデス・ベンツが入った。

 インタビューを受けたフラガ選手は、「タイヤが冷えている間にミスがあったけど、挽回してトップに立てて、いいポジションでチームメイトにつなぐことができた」とレースを振り返った。また山中選手は、「今回は理想のチームができて嬉しいし、なおかつ勝たなくてはいけないなと思っていましたが、その第一歩が踏み出せました」とコメントすれば、デルッシュ選手は「最高のチームワークだったと思います。まだファイナルレースが残っているので、気を引き締めていきたい」と、早くも次のレースに頭を切り替えていた。

【セミファイナル】
ポールポジションから第1コーナーに先頭で飛び込んだフラガ選手は、さすがの走りで後続の追撃を許さなかった
会心のレース運びで、見事トップでチェッカー・フラッグを受けてガッツポーズする山中選手
インタビューを受けるトヨタチームの3選手。左から順に、フラガ選手、山中選手、デルッシュ選手

 続けて行なわれた、グランドファイナルレースの使用コースは、本作オリジナルのラーゴ・マッジョーレ。ハード、ミディアム、ソフトの各タイヤで最低5周以上、全18周を走り、スターティンググリッドは直前に行なわれたセミファイナルの順位のまま配置されるルールで行なわれた。

 ここでもオープニングラップを奪ったのは、ポールポジションスタートのトヨタのフラガ選手だった。セミファイナルと同様、ソフトタイヤを履いて貯金を作って逃げ切りを図る作戦で、2周目には2位に2秒以上の差をつけ、後続をさらに引き離しにかかる。2周目に入ると、2連勝中のメルセデス・ベンツが2位に浮上するものの、トヨタとの差をなかなか詰められない。

 トヨタは最初のピットでミディアムに交換後も、2位のBMWに3秒以上のリードを保つが、メルセデス・ベンツはソフトからハードに履き替えたところで、BMWにかわされて3位に後退。さらに11周目にはミスから5位に順位を落とす苦しい展開に……。トヨタは13周目に2度目のピットに入り、ハードに履き替えて山中選手が登場したが、2位のBMWに徐々に差を縮められ、17周目には1秒差未満でスリップストリーム圏内に張り付かれてしまう。

 トヨタとBMWがこのまま優勝争いをするかと思いきや、終盤になってこれら2台のパーフォマンスを上回る驚異的な走りを披露したのは、ソフトを最後に用意していたポルシェだった。15周目でフォードをかわして3位に浮上すると、17周目にはBMWもパスして2位に上がり、ファイナルラップ突入時にはトヨタと約0.3秒差まで肉薄。そして、ハードタイヤながらも必死に抑え込みを図る山中選手のトヨタもかわして驚異の大逆転勝利を収め、同時に本レースの総合優勝も決めた。

 ポルシェはミディアム、ハード、ソフトの順で使用する戦略が見事に当たり、とりわけ最終ドライバーとして登場したチリ出身の新鋭、アンヘル・イノストローザ選手のごぼう抜きパフォーマンスは圧巻で、チェッカーを受けた瞬間に喜びを爆発させた。レース後のインタビューでは、「言葉が出ないほどうれしい! スタート時は本当に緊張した」と話していたが、最後まで集中力を切らさない、良い意味でも緊張感を保っていたのではないだろうか。また、チームメイトのマット・シモンズ選手は、「クレイジーなレースだった。戦略がピッタリ当たった、今日のレースはアンヘルのおかげ」と話せば、トリスタン・ベイリス選手も、「本当にうれしい! アンヘルの走りはすごかった。次のモナコにつながる、いいポジションに付けた」と、チームメイトを祝福していた。

 トヨタはファイナルラップでBMWにも抜かれ、一時はメルセデス・ベンツにも脅かされたが辛うじて3位でゴールしたものの、レース後の審議で1秒ペナルティを受けたため5位に降着した。しかし、2レース合計のポイントでは総合3位を死守して、見事に地元開催のレースで表彰台に上がった。2位にはBMWが入り、2連勝中だったはメルセデスは総合5位に終わった。ファイナルを飾るにふさわしい、見応え抜群の素晴らしいレースで、シリーズ初優勝を飾ったポルシェチームの雄叫び、そして敗れてもお互いの健闘を称え合う光景も素晴らしかった。

【グランドファイナル】
終盤にソフトを履いて猛追したポルシェが、ファイナルラップで逃げ切りを図るトヨタを鮮やかにオーバーテイク!
怒涛のラストスパートでチームを初勝利に導いた、ポルシェのイノストローザ選手(右)。
本物のレースと同様に、表彰式では優勝したポルシェの母国、ドイツの国歌が場内に流された

国体に続いて水野航希選手が優勝! 「e-Motorsports 都道府県対抗 U18 全日本選手権」

 27日最初に行なわれたレースは、9月に行なわれた「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」(「いきいき茨城ゆめ国体」)の少年の部に出場した選手の中から、各都道府県予選で最も速い記録を出した48選手が参加した、「e-Motorsports 都道府県対抗 U18 全日本選手権」。まずは12人ずつの4グループに分かれてセミファイナルを戦い、各グループで上位3位以内に入った選手がファイナルレースへ勝ち進む。ファイナルレースは、富士スピードウェイを10周、タイヤはレーシングハードとミディアムの2種類を使用するというルールで行なわれた。

 ファイナルレースでは、ポールポジションを獲得した福島県代表の鈴木聖弥選手がオープニングラップを奪ったが、2周目には5番手スタートから追い上げた広島県代表の橋本蕗維斗選手に早くもオーバーテイクを許してしまう。さらに、直後に2人のマシンが接触して鈴木選手はコースアウトして6位に後退、橋本選手はプラス1秒のペナルティを受けてしまった。

 これに乗じて順位を少しずつ上げてきたのが、愛知県代表の水野航希選手だった。3周目のホームストレートで橋本選手がペナルティを受けている隙にかわしてトップに立つと、ミディアムタイヤで7周目まで引っ張り、ピットに入るまでに2位と約2.8秒差のギャップを作って逃げ切りを図る。しかし、終盤になると4番グリッドからハードを履いてスタートした、福岡県代表で国体では2位に入ったの龍翔太郎選手が、ミディアムに履き替えてから猛追。9周目に入ると、龍選手がマシンを接触して警告を受けながらも、水野選手をかわしてトップに立った。

 だが、これでレースは終わらなかった。ファイナルラップで2位に下がった龍選手が水野選手のインを突くと、またもマシンが接触! 大きく挙動が乱れた龍選手は一気に7位に後退するなか、すぐさま体勢を立て直した水野選手が、国体に続いて見事に連勝を飾った。2位には茨城県A代表の箕輪卓也選手が、3位には国体でも3位に入賞した、東京都代表の佐々木唯人選手が飛び込んだ。

 優勝した水野選手の走りっぷりはもちろん見事だったが、レース後のインタビューでも「最後に龍選手をスピンさせてしまったのが悔しいですけど、優勝できてうれしいです」とコメントするなど、17歳とは思えない相手を慮った姿もこれまた素晴らしかった。

【イゴール・フラガ選手のトークショーも開催】
レースに先駆けて、イゴール・フラガ選手(左)と山内一典プロデューサーのトークショーを開催。石川県金沢市生まれのフラガ選手は、流暢な日本語で「グランツーリスモ」やカート時代の思い出を語った

【「e-Motorsports 都道府県対抗 U18 全日本選手権」】
先の「いばらき国体」と同様、国家の演奏とともにレースが開幕
レース終盤は、逃げ切りを図る水野航希選手と、凄まじい追い上げを見せた龍翔太郎選手のマッチレースに
ファイナルラップで、先頭争いをする2台のマシンが接触! 土壇場でレースの行方がわからなくなり、会場に詰め掛けたギャラリーが一斉にどよめいた
国体に続き2冠を達成した水野航希選手(中央)。2位は箕輪卓也選手(左)、3位は佐々木唯人選手(右)

現役のスーパーGTレーサーも参戦! 「自動車メーカー対抗・真剣勝負(ガチバトル)」

 27日(日)の第2種目は、10社の自動車メーカーが参加した、社員と契約ドライバー、「グランツーリスモSPORT」のプロゲーマー3人で編成したチーム戦の「自動車メーカー対抗・真剣勝負(ガチバトル)」。前回優勝のマツダがポールシッターとなり、鈴鹿サーキットを15周、タイヤはハード、ミディアム、ソフトすべてを必ず使用して、全ドライバーが最低3周走るルールで行なわれた。

 社員選手が登場した序盤のレースは、先の「いばらき国体」では愛知県代表選手として出場した、トヨタの長和樹選手がハードタイヤを履きながらも2周目でトップに立つとそのまま快走。これとは対照的に、後続は1周目から接触が続出する荒れ気味の展開に。だが、これはけっしてゲームの腕が下手なのではなく、むしろどの選手もレベルが高く、なおかつ自社のマシンを操って会社の看板の背負うプレッシャーとも戦っていたがゆえのこと。解説の土屋圭市さんが、「前回よりもレベルがすごく上がっている。ガチでやっているから、(レポーターのエイミーさんに)『インタビューして来い』と言うつもりだったが、言えなかった」と語っていたことからも、社員の皆さんがいかに真剣にレースをしていたのかがおわかりいただけるだろう。

 最初のピットイン時に、社員から交代した各社の契約ドライバーの面々もこれまたガチで、日産は平手晃平選手、トヨタは阪口晴南選手という、現役バリバリのスーパーGTドライバーが参戦。さらに三菱からは、何とワークスドライバーの中谷明彦選手までもが登場! とりわけ阪口選手はレーシングスーツを着用し、ゲームにも本気であることを身をもって示すと、ゲームのほうも2位以下のチームと20秒以上のギャップを作る見事な走りを見せ付けた。そして、2度目のピットで山中選手にステアリングを託すと、危なげない走りでそのまま逃げ切ったトヨタが圧勝。2位には、ソフトタイヤを2度履き替える3ストップ作戦の奇策を用いたスバルが、3位には日産チームが入った。

【「自動車メーカー対抗・真剣勝負(ガチバトル)」】
今回参戦したのは全10チーム
自社のマシンを操り、会社の看板を背負った重圧からか、スタート直後のコーナーで接触が相次いで発生……
「すごく楽しかったですね。普段乗らない車を使うと、いいトレーニングになります」とレース後に語った日産の平手晃平選手。3位入賞に貢献した
トヨタは阪口晴南選手が参戦。表彰式では、「(長選手が)ギャップを作ってくれたので、レースは安心、安全でした。自分で言うのもどうかと思いますが、3人とも速かったと思います」とコメント
優勝を喜ぶトヨタチーム。左から順に、長和樹選手、阪口晴南選手、山中智瑛選手

日本人初優勝の快挙達成に場内は大興奮! 「ネイションズカップ ファイナル」

 国・地域(個人)で順位を競う「ネイションズカップ」は、まずは予選のタイムアタックで上位6位以内に入った選手たちによる「トップ6予選」からスタート。最初のタイムアタックに続き、宮園拓真選手がトップ通過を決め、セミファイナルA(第1)レースのポールポジションを獲得すると会場からは大きな拍手が上がった。2位も日本の國分諒汰選手が入ってセミファイナルBのポールシッターに決定し、日本のファンにとっては幸先のいいスタートとなった。

 セミファイナルAは、サルディーニャ・ロード・トラックコースを12周し、ハードとミディアムの2種類を使用し、それぞれ最低4周以上走らせるルールで行なわれた。また本レースでは、全選手が新登場となったジャガーのEV車を使用する規定になっていたため、車の挙動に不慣れだったせいなのか、第1コーナーで多重クラッシュが発生、順位が大きく変動する大波乱の展開に。すると、レースオフィシャルが審議した結果、レッドフラッグ(やり直し)の裁定が下り、大クラッシュの原因を作ったオランダのリック・ケベルハム選手はペナルティとして最後尾からのスタートとなった。

 乱戦を制したのは、1周目でトップに立ち、そのまま逃げ切ったブラジル出身で30歳のベテラン、アドリアーノ・カラッツァ選手。2位はファイナルラップでカラッツァ選手を執拗に攻め続けたスペインのコケ・ロペス選手で、3位にはチリのニコラス・ルビラー選手が、4位にはオーストラリアのアダム・ウィルク選手が入り、それぞれファイナル進出の切符を手にした。日本の宮園選手は5位で、敗者復活戦に回ることとなった。

【セミファイナルA】
レッドフラッグが出るまさかの展開に。写真は再スタートを前に、「ドライビング規定をリスペクトしてください」というオフィシャルからのコメントが表示される珍しいひとコマ
再スタート後のレースを、最初から最後まで大きなミスのない冷静な走りで制したカラッツァ選手
日本の宮園選手は、ポールポジションを得ていたがスタートの出遅れと接触ペナルティが響き、一時は4位に浮上したもののファイナル進出にあと一歩及ばなかった。

 セミファイナルBは、スパ・フランコルシャンを7周し、天候はヘビーウエット(雨)の設定で行なわれた。ここではセミファイナルAのカラッツァ選手と同様、終始安定したレースを見せてくれたのは國分諒汰選手。土屋さんをもうならせた、悪コンディションをものともしない絶妙のステアリング操作で、オーストラリアのコディー・ラトコフスキ選手との競り合いを制してトップでゴール。3位にはフランスのライアン・デルッシュ選手が、4位にはイタリアのジョルジョ・マンガーノ選手が入りファイナルに進出。日本の山中選手は5位、菅原達也選手は6位でわずかに及ばなかった。

 また、セミファイナル直後に行なわれた敗者復活戦は、東京エクスプレスウェイ(南ルート内回り)を6周するルールで行なわれた。地元開催、なおかつ自国のコースが採用された本レースは、ポールポジションから宮園選手が、2番手から山中選手、6番手から菅原選手がスタートすると、2周目で山中選手をオーバーテイクし、先頭集団から抜け出した宮園選手が、そのまま逃げ切りに成功してトップを獲得。2位には、3周目に山中選手がカーブで膨らんだ隙を突いて前に出た、フランスのバティス・ボボア選手が入り、3位はイタリアのサルバトーレ・マラグリーノ選手、4位にはスペインのマニュエル・ロドリゲス選手が入って、それぞれ敗者復活を果たした。山中選手は、5周目の途中までは3位をキープしていたが惜しくも5位で、菅原選手は8位でフィニッシュし、第4戦で優勝し注目されたドイツのミカエル・ヒザル選手も6位となり、ここで姿を消した。

【セミファイナルB】
レース中盤では、國分選手とラトコフスキ選手が激しくトップを争ったが、0.5秒のペナルティがあったラトコフスキを振り切って國分選手が制した
日本の山中選手(左)と菅原選手(右)は、わずかの差で惜しくもファイナル進出を逃してしまった

【敗者復活戦】
2周目で山中選手を抜いた宮園選手が、以後リードを保ったままトップ通過、見事に敗者復活を果たした
第4戦の王者、ヒサル選手はこれといった見せ場のないまま敗退が決定した

 注目のファイナルレースは、ル・マンのサルテサーキットを8周、ハード、ミディアム、ソフトの各3種のタイヤで最低2周以上走行し、スタートはスタディングスタート形式で行なわれた。1周目で國分選手がカラッツァ選手をかわしてトップに躍り出ると、敗者復活の宮園選手も9位から6位にジャンプアップし、日本人選手の活躍が大いに期待できる序盤戦となったかに見えた。しかし、2周目で國分選手がウォールにヒットさせる手痛いミスで3位に後退すると、ポールポジションスタートのカラッツァ選手がじわじわと後続との差を広げ、6周目には2位の國分選手に2秒を超えるギャップを作った。

 セミファイナルAと同様、このままカラッツァ選手が逃げ切るかと思われたが、レース最終盤にはギャラリーがこの日一番の大盛り上がりとなる、凄まじいドラマが待っていた。2位の國分選手が、6周目で0.5秒のペナルティを受けたものの、トップを走るカラッツァ選手が2度目のピットでガソリン補給に時間を要したため、ピットアウト後に2位に後退。ところが、続く7周目で國分選手が、またも4輪脱輪で1秒のペナルティも加算される痛恨のミス犯し、再びカラッツァ選手に2秒を超える差を付けられてしまった。これで國分選手の優勝は絶望的かと思われたが……。

 7周目の終盤、3位で追走していたロペス選手が、4位から追い上げてきたラトコフスキ選手と激しく接触して大きなタイムロスをすると、この隙に乗じて宮園選手が鮮やかに2台をパスして3位に浮上! さらにファイナルラップに突入すると、今度はカラッツァ選手が4輪脱輪で0.5秒のペナルティを受け、この隙に國分選手がトップに浮上! しかし、カラッツァ選手が負けじとすぐさま追い付き、トップの座を奪い返す。ならばと今度は國分選手がアウトから仕掛け、会心の再オーバーテイクに成功、直後にカラッツァ選手は大きく挙動を乱してリードを拡大!!

 そして最後は、最終コーナーで捨て身のアタックを敢行したカラッツァ選手を抑え込んだ國分選手がチェッカーを受け、悲願の初優勝を決めると、ほかの日本人選手たちが一斉に駆け寄ってもみくちゃにされた。宮園選手は惜しくも4位に終わったが、スリリングな展開の連続に、ギャラリーからも敗退した選手たちの席からも大歓声が巻き起こり、本大会の最後を飾るにふさわしい、掛け値なしの素晴らしいレースだった。

 なお、本大会の模様は「GT LIVE グランツーリスモ・ドットコム」のサイトで視聴することができる。見逃した方はぜひ、下記リンクからアクセスして、本物のカーレースと見紛うばかりのリアルかつ白熱のレースをご覧いただきたい。

【歴史に残る名レースとなったファイナル】
絶妙のオーバーテイクで見せ場は作ったが、表彰台まであと一歩届かなかった宮園選手
國分、カラッツァ両選手による激しいファイナルラップの攻防は、長らく「グランツーリスモ」史上に残る名勝負になったことだろう
チェッカーを受けた直後、國分選手はほかの選手たちからもみくちゃにされ、地元優勝を祝福された
見事、日本人初優勝を飾った國分選手。インタビューでは「うれしいのひとこと以外に、もう何も表せません」と絞り出した言葉と、首筋からしたたり落ちる汗が、いかに激闘だったのかを雄弁に物語っていた
國分選手が表彰台の中央に上がると、地元優勝を達成した証となる君が代が演奏された
賞品のクリスタルを受け取り、満面の笑みを浮かべる3選手。左は2位のカラッツァ選手、右は3位のラトコフスキ選手