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新型スープラのワンメイクレース「GR Supra GT CUP」決勝大会が開催
並み居る日本の強豪選手を押しのけ、大差を付けてミカエル・ヒザル選手が初代王者に
2019年10月27日 08:44
- 【GR Supra GT CUP】
- 10月26日開催
- 会場:MEGA WEB
トヨタの新型スポーツカーGR Supraを採用した「グランツーリスモSPORT」の世界大会「GR Supra GT CUP」の決勝大会が10月26日、東京モーターショー会場で開催され、欧州/中東/アフリカ地区代表のミカエル・ヒザル選手が、2位に6秒以上の大差を付けて圧勝。“世界最速のスープラ乗り”として初代王者に輝いた。
「GR Supra GT CUP」は、GR Supraの公開に合わせて発表されたグローバルワンメイクレース。現在市販されているGR Supraとまったく同じ仕様のモデルを使ってオンライン予選を実施し、世界5地域から24名のスープラ乗りが決勝大会に参戦した。26日の決勝大会では、準決勝2レース、決勝1レースの合計3レースが行なわれ、選手全員がまったく同じ仕様のクルマで走り、純粋にドライバーの腕が試されるレースとして、極めて熱い戦いが繰り広げられた。
筆者は「GT SPORT」のオフラインでの観戦は久々だったが、eスポーツの様式というよりは、むしろモータースポーツの様式に近い、極めてクオリティの高い大会内容に驚かされた。もともと「GT SPORT」は、eスポーツ展開を前提に開発され、大会モードとリプレイ機能が充実しているタイトルだが、ステージ上に並べられた12台のコクピットと、モータースポーツの実況でお馴染みの中島秀之氏と、元「GT」選手で、現在ポリフォニー・デジタルで「GT」シリーズの開発に携わっているYAM選手の両名による実況解説など、舞台装置が非常にゴージャスで、パブリックビューイングで(リアル)モータースポーツを観戦しているかのような錯覚に陥った。未観戦の方はぜひ下記録画を参照いただきたい。
レース展開も、“フェアネスこそがスポーツ”という「GT」プロデューサー山内一典氏の理念の元、ライバルカーとの接触やコースアウト、ショートカット等に対して極めて厳しいペナルティが科せられるため、リアルなモータースポーツと同様に、接触や追突がほとんど発生しないフェアでクリーンな内容となる。お互い数百kmの猛スピードで走行しながらわずか数十cmの間隔でせめぎ合うレース展開は、まさに手に汗握る感じでeスポーツとしてエキサイトメントが非常に高い。これは選手達も同様で、実際、1レースを終えた選手達は額にビッシリ汗をかいており、超高速な空間で高度な駆け引きが繰り広げられていることをうかがわせる。
準決勝では、6人の日本人選手がすべてB組に回り、6名中何人が決勝戦に勝ち進むのかが注目された。A組は予選1位だったミカエル・ヒザル選手が最初から最後まで安定した走りで1度も1位の座を明け渡さずトップ通過を果たしたが、逆に言えばまったく荒れなかったため、ラップタイム、総合タイム共には相当速い。日本人選手にとってはかなり不利な状況だ。
一方、日本人選手6名がひしめくB組のレースは、果たして最初から最後まで大荒れの展開となった。特に日本人選手6名は全員が勝手知ったるライバルばかりであるためか、互いに後ろにピッタリ付けながら、スリップストリームからの直線の追い越し、大胆なライン取りからのS字カーブの攻め合いなど、各所で熾烈なバトルが繰り広げられた。
ここまで激しいと当然のことながら接触や追突、オーバーランが続発し、ペナルティを受ける選手が続出。1位から下位まで1周毎に激しく順位が入れ替わるような展開となった。中でも衝撃的だったのは、前半トップを守っていた山中選手が最終6周目に起こした宮園選手への追突事故。山中選手がもっともスピードが出るメインストレートからの第一コーナーでブレーキングを誤り、首位を走っていた宮園選手に追突。宮園選手はその衝撃でコースアウト、山中選手も5秒ものペナルティを受け、共に首位争いから脱落する結果となった。
最終的にやや漁夫の利を得る形で川上奏選手がトップ、11位スタートのSolis選手(米国)が9人抜きの2位という結果に終わった。それでも日本勢は6名中4名が決勝にコマを進めたのはさすがといったところ。11位で敗退となった山中選手は、真っ先に宮園選手のところに駆けつけアクシデントを詫びた後、自分自身が信じられないと言わんばかりの悄然とした表情で選手席にどっかりと座り込んだ。
B組は大荒れだっただけにA組1位のヒザル選手のタイムと比べて、5秒以上遅い。B組1位川上選手のタイムは、A組では5位に相当する。これは日本勢は相当不利なのではと思いきや、決勝は総合タイム順ではなく、1位の総合タイムが速い方が奇数、遅い方が偶数というルール。これならまだ日本勢にも勝機がある。
各組上位6名ずつが参加して行なわれた決勝戦は、コースを富士スピードウェイからスパ・フランコルシャンに移し、タイヤ交換ありのルール。タイヤはソフトとミディアムの2種類で、それぞれ2周以上走らなければならない。ソフトはグリップ力がある代わりに摩耗しやすく、ミディアムはグリップ力が劣る代わりに摩耗に強いものの、ソフトよりわずかに遅い。
それぞれ3周ずつにするのか、あえてどちらかを4周にするのか、そもそもどちらのタイヤでスタートするかなど、選手間で試合前から駆け引きが行なわれ、タイヤの選択や、ピットインのタイミングでいちいちどよめきが起こる。この空気感こそオフライン観戦の醍醐味だ。
書き忘れたが、タイヤの摩耗は通常の14倍。決勝戦に名を連ねるトップ選手らのギリギリの走りでは、ソフトタイヤは3周も持たない。だが、ミディアムでは遅すぎる。スタート時点では12人中7人がソフト、5人がミディアムを選択し、多くの選手がソフト4周、ミディアム2周という攻めのチョイスをしたのに対し、上位陣の中では宮園選手だけが3周ずつを選択。
そのチョイスがおもしろいと感じ、個人的にずっと彼の走りに注目していたが、スピードに勝るソフトタイヤの後続に対して、絶妙なコース取りでずっと我慢のレースを展開。宮園選手はミディアムタイヤでピットから戻った段階では7位まで順位を下げ、この判断にどちらかといえば悲観的な見方がされていたが、徐々に順位を上げ、最終的に3位に入賞。準決勝で山中選手に追突され、不幸な形で1位を逃した宮園選手だったが、見事にトップ選手としての意地を見せた格好だ。
決勝戦は、A組1位のヒザル選手が準決勝と同様に最初から最後まで1位を明け渡さなかったばかりか、1周毎にラップタイムを上げる独走で、2位に6秒以上の差を付けて優勝。2位には堅実な走りでB組1位の川上選手が入った。3位までの入賞者にはトロフィーと、1位のヒザル選手には副賞としてレーシングシート「Real Racing Simulator TE2」が贈られた。なお、12月15日に富士スピードウェイで開催されるTOYOTA GAZOO Racing FESTIVALにて改めて表彰式が行なわれる予定。
「GT」シリーズプロデューサーの山内一典氏は、「年間を通じて強い選手が勝った。スポーツはそういうところを裏切らない」と総括。「GR Supra GT CUP」は、第2回の開催も決定しているということで、来シーズンの開幕が非常に楽しみだ。