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山内一典氏氏「これはジャガーそのもの」。ジャガーとのコラボで生まれた“美しいEVスポーツカー”「ジャガー ビジョングランツーリスモ」レポート
2019年10月25日 21:19
- 【ジャガー ビジョングランツーリスモ】
- 10月25日発表
- 11月下旬実装予定
東京モーターショーの1つのパートを担うeモータースポーツ。現在東京有明にて開催されている第46回東京モーターショーでは、それを体現する場として「e-Motorsports Stage」が設けられ、本日10月25日より27日にかけて、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「グランツーリスモSPORT」を用いた様々なチャンピオンシップが開催される予定となっている。
その「e-Motorsports Stage」の開幕イベントとなったのが、ジャガー ビジョングランツーリスモ「Jaruar VGT Coupe」の発表だった。会場にはメディアや関係者のみならず、チャンピオンシップに出場する選手らも詰めかけ、「グランツーリスモ」シリーズプロデューサーの山内一典氏と、今回コラボレーションしたJAGUARからデザインディレクターのジュリアン・トーマソン氏とのトークショウという形で、「ジャガー ビジョングランツーリスモ」のお披露目が行なわれた。お披露目の後には、カーメディアとeモータースポーツアスリートがバディを組んで、史上初となるJaruar VGT Coupeを使ったワンメイクレースも行なわれ、ジャガーのeモータースポーツへの船出を祝った。
それにしても「ビジョングランツーリスモ」は不思議なプロジェクトだ。「GT」シリーズのファンならすっかりお馴染みの存在だが、それ以外の人に取っては何のことだか訳が分からないだろう。しかし、「ビジョングランツーリスモ」こそが、「GT」シリーズが孤高の存在として世界中の自動車メーカーに愛される要因であり、「GT」シリーズと自動車メーカーを繋ぐ深い絆になっている。
「ビジョングランツーリスモ」とは、山内氏の自動車メーカーに対する“挑戦状”だ。それは大のクルマ好きとして知られる山内氏からの「本当に皆さんはクルマ作りを楽しんでますか?」という挑戦的なニュアンスを含んでいる。
山内氏の「理想のグランツーリスモ(スポーツカー)とは?」という問い掛けに対して、自動車メーカーのデザイナーたちがリソースを総動員して、現実世界に存在する一切の制限を排除して理想の1台を生み出す。それをポリフォニーのデザイナーがゲームに落とし込み、「ビジョングランツーリスモ」として実装する。現実世界には存在しない、あくまでゲーム内だけの架空のクルマだが、そのプロセスは、通常の自動車設計と何ら変わらず、各社の哲学、こだわり、DNAがこれでもかとばかりに注ぎ込まれる。その結果、市販のスポーツカーやレーシングカーより遙かに純度の高い1台が完成する。
そうしたプロセスを経て生み出されるため、「ビジョングランツーリスモ」は年に数台しかゲームに実装されないが、その極上のスポーツカーでレースに挑めるのが「GT」シリーズならではの楽しみだ。その醍醐味は、シリーズ最新作「グランツーリスモSPORT」にも引き継がれ、その最新モデルが「ジャガー ビジョングランツーリスモ」ということになる。
今回公開された「ジャガー ビジョン グランツーリスモ Coupé」は、ビジョングランツーリスモ初となるピュアEVレーシングカー。モータースポーツの歴史そのものであるジャガーが生み出した最新のピュアEVカーとして、心臓部には最新の電動パワートレインを採用し、それを駆動するバッテリーは「I-PACE eTROPHY」で鍛えられたリチウムイオン式。バッテリーの冷却には液体窒素を使うという。
デザインはエクステリア、インテリア共に優美そのもので、ジャガーらしさを随所に感じさせる流線型を採用。コクピットは、C、D、Eタイプといった歴代のジャガーの流れを汲み、搭乗したドライバーはクルマに包み込まれるような感覚が得られるという。操作に必要な各種情報は、ドライバーの視線の先に、ホログラフィックディスプレイによって表示され、シームレスな視界が得られる設計になっている。
お披露目の後に行なわれたトークショウでは、デザインへのこだわりについて深いトークが繰り広げられた。
「ジャガー ビジョン グランツーリスモ Coupé」のデザインコンセプトについてトーマソン氏が、「(モチーフとなっている)Cタイプ、Dタイプは、まさにジャガーの神髄であり、歴史とレガシーが詰まっている。デザイナーはこれらのクルマをミュージアムにおいて毎日見ており、そこから得られるエキサイトメントや感情を呼び起こすようなクルマを設計したいと考えた」と答えると、山内氏は「このクルマがジュリアンさんから送られてきて、ポリフォニーデジタルのスタジオで作り上げられるのを見てきて、このクルマの大きな特徴だと個人的に感じているのは、C/D/Eタイプといったジャガーの過去のヘリテージをイメージさせるだけでなく、“とてもエレガントで獰猛なネコ科の動物”に見える。それはつまりジャガーそのものに見えるということ。こういうデザインのクルマは見たことがなくて、ジュリアンさんのチームは“本質的な仕事”をされたんじゃないか、そういう気がしている」と、山内氏らしい表現で最大級の讃辞を贈った。
トークショウの締めくくりとしてジャガーのモータースポーツへの情熱について問われると、トーマソン氏は具体的なコミットメントは避けつつ「ジャガーは常にレースにこだわっていて、しかも美しい彫刻のようなデザインのクルマでカッコ良くレースに挑むということにこだわり続けている」と応じ、「個人的な話だが、『グランツーリスモ』は1から遊び続けているし、最近では3人の子どもと一緒に遊ぶようになっている。私が愛しているものが融合できてとても嬉しい」と「GT」ファンであることを告白した。
気になるゲームへの実装時期については、速報記事でもお伝えしたように11月下旬を予定している。
トークショウの後には、カーメディアとトップアスリートのデュオによる「Jaruar VGT Coupe」を使った8台のクルマによるワンメイクレースが行なわれた。コースはTokyo ExpresswayのEast Outer Loop。全5周で、カーメディアは最低2周は走らなければならないというルール。
筆者は会場で初めて知ったのだが、僚誌のCar Watchがカーメディアの1社、しかも2枠しかない日本のカーメディアの1つとして出場しているではないか。そんなCar Watchとバディを組んでくれたのは、日本のトップ選手の1人である宮園拓真選手。Car Watchからは、大の「GT SPORT」好きの椿山和雄。いかに欧米勢が強いとは言え、これは行けるのではないかと思わせる強力な布陣だ。
レースは、カーメディアからスタートし、開始直後の乱戦を避けたCar Watch/宮園拓真チームと、GTPlanet(米国)/KinLong(香港)の独走で幕を開けた。350km以上出るEVスポーツカーということで、それぞれハンドリングに戸惑いながらの立ち上がりだったが、この2チームの記者は「GT SPORT」経験者ということでコースを理解しており、後続がカーブを曲がりきれずに次々に壁に激突していたのに対し、2チームはしっかりとしたブレーキングで丁寧に2周を走りきり、そのままの勢いで選手たちにバトンタッチしていた。
勝負の行方はそのまま宮園選手とKinLong選手の直接対決にもつれ込み、あたかも何百周も走り込んでいるかのような正確なハンドリング、コース取りで、お互いに背中を取り合い、スリップストリームで抜けるという抜きつ抜かれつの白熱したレース展開となった。
最後の最後に仕掛けたのは宮園選手だったが、トラクションが抜け、やや大回りになってしまい、そのままKinLong選手が1位でゴール。最終結果は1位GTPlanet(米国)/KinLong(香港)、2位Car Watch/宮園拓真、3位Autosport/國分諒太(日本)という日本の2チームが共に表彰台に上がる結果となった。
2位と3位のチームには、「Jaruar VGT Coupe」のラフスケッチが額に入れた状態で贈られ、優勝チームには「Jaruar VGT Coupe」デザインのトロフィーが贈られた。
なお、明日26日、27日は「GR Supra GT CUP」の決勝大会をはじめ、マニュファクチャラーズシリーズファイナル、ネイションズカップファイナルなど、5つの大会が行なわれる。eモータースポーツファンはぜひ現地で観戦してみては如何だろうか?