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国体史上初のeスポーツ競技がついに開幕!
「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」レポート
2019年10月6日 09:44
- 10月5~6日開催
- 会場:つくば国際会議場
第74回国民体育大会、「いきいき茨城ゆめ国体」の文化プログラム「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」が、茨城県つくば市のつくば国際会議場にて10月5日より開幕した。
本大会は、いきいき茨城ゆめ国体・いきき茨城ゆめ大会実行委員会、一般社団法人 日本eスポーツ連合(JeSU)、公益財団法人 日本サッカー協会(JFA)の3団体の主催により実現した、国体史上初となるeスポーツ競技。大会初日は、「eFootballウイニングイレブン2020」の少年・オープンの部、「グランツーリスモSPORT」の少年・一般の部、「ぷよぷよeスポーツ」の小学生・一般の部の予選が行なわれ、各タイトルの部門ごとに47都道府県の代表と、開催県である茨城特別枠(茨城第二代表)を加えた48代表、約600名の選手たちが参加した。
各タイトル、部門の予選を勝ち抜いた選手またはチームは、翌6日の決勝大会へと進出し、栄えある国体チャンピオン第1号選手、およびチームが誕生となる。
地元、茨城勢の活躍が目立った「eFootball ウイニングイレブン 2020」
「eFootball ウイニングイレブン2020」(以下、「ウイイレ」)は、高校生が対象の少年の部と、年齢制限のないオープンの部に分かれて開催された。どちらも1チーム3人によるCO-OPモードを使用し、1グループ4チームによるリーグ戦をA~Lの12グループに分けて行ない、各グループ1位の12チームと、グループ2位で成績の上位4チームを加えたそれぞれ16チームずつが、2日目の決勝大会へと駒を進めることができるというルールで行なわれた。
少年の部では、初戦のキックオフ直前に機材トラブルや調整などが入ったため、予定の時間どおりに始まらないこともあってリラックスできず、かなり緊張する選手が目立っていた感がある。だが、いざ試合が始まると集中力を徐々に増し、ゴールが決まると「ヨッシャア!」という大きな声があちこちから聞こえてくるようになった。試合が終わった後は、お互いに勝っても負けても引き分けても握手を交わし、「(相手が)強かったな」「うん、強かった」などと仲間内で話す光景があちこちで見られた。
オープンの部において、「ウイイレ」ファンから最も注目されたと思われるチームは、茨城県特別選考予選大会を勝ち抜いた、茨城第二代表の「ゴラ族feat.レバ」チームであろう。同チームは、昨年9月に開催されたプレ大会でした準優勝した「ゴラ族」のメンバーに、アジア競技大会の金メダリストである「レバ」こと相原翼選手が加わり、さらなる戦力アップを遂げているからだ。結果は、相原選手がさすがの貫禄を示し、2勝1分の勝ち点7で見事にグループ1位で勝ち抜いた。ちなみに、なぜ相原選手が加入したのかをメンバーに伺ったところ、「ゴラ族」のリーダーがオフ会で知り合ったのを機に、「一緒に出ようと」を誘ったのがきっかけだったそうだ。
開催県という地の利があったのか、茨城県代表は一般の部で第一・第二代表チームともにグループ1位で通過し、少年の部でも茨城第一代表が決勝大会に駒を進める大活躍。唯一、涙をのんだ茨城第二代表も、わずか1ゴール差での敗退という健闘ぶりを見せてくれた。
オーバーテイクは至難の業。場内が一体となり盛り上がった「グランツーリスモSPORT」
「グランツーリスモSPORTS」は、6歳以上~18歳未満が対象となる少年の部と、18歳以上による一般の部の2部門を開催。少年の部は、11または12人をA~Hの8ブロックに分け、各ブロックの1位となった8名と、敗退した選手がレース終了後に参加可能となる、タイムトライアルで上位4位以内に入った4名の、合計12名が2日目の決勝大会に進出する。一般の部は16チーム(※1チームにつき2名)をA~Dの4ブロックに分け、各グループの上位3位までに入ったチームが勝ち抜けとなるというルールで行なわれた。コースは、少年の部が富士スピードウェイを5周、一般の部は鈴鹿サーキットを10周する設定で、後者ではレース中のドライバー交換が義務付けられていた。
両部門とも、スターとしてはオンライン予選の成績順で決められ、なおなつ台数がとても多いので、予選で好タイムを記録してポールポジションからのスタートとなったこともあってか、ポールトゥウィンのレースがかなり目立った感がある。しかも、本大会には過去に国内外の「グランツーリスモ」シリーズの公式大会で好成績を収めたプレーヤーに加えて、何と本物のカートレース経験者も多数参加しており、どの選手たちも洗練されたドライビングテクニックを持っているため単独ミスは皆無。よって、オーバーテイクが起きる場面は非常に少なかった。
そんななか、一般の部の予選グループAに出場した茨城Aチームは、7番グリッドからスターとして徐々に順位を上げると、ファイナルラップの時点で4位に浮上。しかし、その前方を走る車ははるかに先で、このまま敗退濃厚かと思われた。ところが、土壇場で3位の群馬チームがショートカットで2秒間のペナルティを受ける痛恨のミスを犯し、3位に滑り込むという劇的な幕切れとなり、ギャラリーを驚かせた。レース中はギャラリーも順番待ちの選手たちも静かに、なおかつ真剣にその行方を見守り、時折鮮やかなオーバーテイクや土壇場の逆転劇が映し出されると、場内からは自然と拍手が沸き起こる館内の雰囲気も好印象だった。
公認プロゲーマーが順当に勝ち抜け。好勝負続出の「ぷよぷよeスポーツ」
「ぷよぷよeスポーツ」は、小学生の部と12歳以上が対象の一般の部に分かれて開催された。小学生の部は、北海道、東北、北信越、関東、東海、近畿、中国・四国、九州・沖縄の全8ブロックの代表8名が出場。北海道、東北、北信越、関東代表選手4名を東ブロックリーグに、近畿、中国・四国、九州・沖縄代表の4名を西ブロックリーグに分け、両ブロックのリーグ戦で1位になった選手が、翌日の決勝大会へと進出するルールで行われた。
一般の部では、A~Hの8グループに分け、各グループのリーグ戦で上位2位までに入った選手が決勝大会へと進出する。本大会には埼玉県代表のlive選手をはじめ、大阪府代表のマッキー選手など、JeSU公認プロゲーマーの資格を持つ6名の選手が出場したが、都道府県予選でほかの公認プロゲーマーを敗退に追い込んだ猛者もそろった本大会だけに、さしもの彼らでも苦戦するのではないかと思われた。しかし、終わってみれば6名全員が勝ち抜きを決め、しかも千葉県代表のレイン選手以外の5名はグループをトップ通過しており、改めてその実力を示した。
また、小学生の部に出場した選手たちは、可愛いらしい外見とは裏腹に、実況・解説者をもうならせるえげつない大連鎖を連発して場内のギャラリーも大喜び。勝った選手も負けた選手も、一般の部に出ても見劣りしない素晴らしいテクニックを披露してくれた。
全部門で決勝大会進出の茨城勢。地元で栄えある初代総合優勝の座を獲得できるのか?
国体といえば、昭和の時代からほぼ毎回必ず、開催県が天皇杯(男女総合優勝)を獲得するという伝統があることでも知られるが、初開催となるeスポーツにおいても茨城県にかなり追い風が吹いているようだ。なぜなら、エントリーした選手がいなかった「ぷよぷよeスポーツ」の小学生の部をのぞく全3タイトル、5部門で茨城第一、第二いずれかの選手が決勝大会進出を果たしたからだ。
とりわけ、前述したように「ウイイレ」では4チーム中3チームがグループステージを突破し、「グランツーリスモSPORT」でも茨城Aチームが奇跡的な逆転で3位に入り、また少年の部では小林陽樹選手が見事に敗者復活を果たした。さらに「ぷよぷよeスポーツ」でも、ざいろ選手が勝ち抜けているのだからすごい。
以下、余談になるが、3タイトルの予選会場を回っている間に、筆者は何人かの選手の保護者に「国体でeスポーツを採用し、それに子供たちが夢中になることについてどう思いますか?」と尋ねてみた。すると、「ゲームのことはよくわからないけど、今ではeスポーツの世界大会も行なわれているので面白いのでは?」、「学校の先生からも、県大会への出場をすすめられた」とか、「県の代表になって国体に出られるんだから、ずっと練習しているところを『やめろ』とは言えないですよね」などというように、総じて好意的だったことには改めて驚かされた。ただ単にゲームセンターに行っただけで補導され、学校の先生やPTAから大目玉をくらった筆者の少年時代とは、まさに隔世の感がある。
なかでも傑作(?)だったのが、「ウイイレ」少年の部に出場した、茨城第ニ代表の保護者の方から伺ったお話だ。同チームのメンバーは、全員が東洋大牛久高校のサッカー部員であり、小学生の頃からのサッカー仲間とのこと。彼らが今大会に出場した動機は、何とサッカー部の監督に、「この間、県大会で(リアルのサッカーで)負けた水戸桜ノ牧高校が茨城第一代表になったから、お前らも出ろ!」と言われたからだそうだ。学校公認でゲーム大会への出場を後押ししてくれるとは、本当に良い時代になったものだ。
なお、本大会は全競技終了後に、都道府県ごとの成績をポイント化して集計し、最も高かった都道府県を総合優勝として表彰することになっている。本大会を観戦または視聴される際は、個々の活躍だけではなく、国体のリアルのスポーツ競技と同様に、地元出身者の活躍ぶりにも注目しつつ楽しむといいだろう。
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