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【Predator League】SunSister Suicider'sが史上初の2日連日ドン勝で総合5位に
総合優勝はぶっちぎりで韓国Afreeca Freecs Fatal! 何故彼らはこんなに強いのか?
2019年2月18日 11:46
Acer主催のeスポーツイベント「Predator League 2019」が4日間の会期を終えて2月17日に閉幕し、「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」部門は韓国Afreeca Freecs Fatal(AFF)が、3ドン勝、105キル、163ポイントという他を寄せ付けない圧倒的なスコアで総合優勝を果たした。日本代表として出場したSunSister Suicider'sは、2日目に続いて3日目も2日連続ドン勝(1位)を獲得するなど好調を維持し、2日目より順位を1つ上げて総合5位(2ドン勝、62キル、100ポイント)に食い込んだ。
先日のインタビューでのCiNVe選手の発言通り、SunSister Suicider'sは2日連続でのドン勝を決めた。国際大会で2回ドン勝を獲ったのは日本チームとしては史上初のことで、本大会でも2位タイの記録となる。
ドン勝が発生したのは、3日目最初のラウンド11。いつも通り中央北のSevernyに降下したSunSisterに対して、最初のサークルはほぼど真ん中、わずかに東寄りに展開。昨日同様、かなり早い段階で動き始め、序盤はそのまま南下していたが、南進すると激戦区に飛び込むことになると判断したのか、昨日のドン勝を獲ったラウンド9と同様に、反時計回りに西側に回り込み、極力交戦を避ける作戦を取った。
この策が見事に当たり、敵チームとの正面からの戦闘を避けながら、漁夫の利狙いでキル数を稼ぐことに成功。4人生存のまま最終局面に突入し、見事8キルドン勝を果たした。このドン勝で、SunSisterは順位を6位から4位まで上げ、日本語配信でも、「これは3位入賞も狙えるのでは?」と楽観的な声が相次いだ。
しかし、運の要素が多く、思った通りにいかないのが「PUBG」というゲームの難しさだ。SunSisterにとって理想的な試合運びができたのはラウンド11が最後で、ラウンド12から15までは、思ったような試合運びができず、苦しい戦いが続くことになった。それでも、ラウンド13では、唯一生き残ったgabha選手が家の中で息を潜め漁夫の利を狙う“ガブハウス”作戦が奏功し、順位ポイントの獲得すら危ぶまれた局面から、3位入賞を果たし、ラウンド15も、AFFに狙われ10位で終わったものの、効率的にキルを稼ぎ、終わってみれば最高記録となる9キルを記録するなど、最後まで存在感を見せつけていた。
2日目、3日目は、まさに“日本チームここにあり”ということを見せつけてくれたし、世界トップレベルの実力を持つ韓国、中国を除けば、アジアでも上位に食い込める実力を備えていることを実証した。ひとまずは、SunSister Suicider'sの快挙を喜びたい。2月22日からは、SunSister Suicider'sも参戦する日本のプロリーグが開幕する。国際大会で結果を残し、一皮剥けた彼らがどのような活躍を見せてくれるのか注目したい。
ところで、本大会でとにかく印象的だったのは、韓国AFFの圧倒的な強さだ。本大会は、不運にも、「PUBG」のプロリーグと開催時期が重なる国が多かったため、世界トップクラスの実力を持つ韓国と中国は出場を辞退。そうした中、主催のAcerは、韓国AFFを招待チームとして出場を要請した。ただし、韓国の「PUBG」プロリーグ「PUBG Korea League(PKL)」と日程が一部被るため、出場チームのPKL欠場という事態を避けるためにAFFとその姉妹チームAfreeca Freecs Ares(AFA)より2名ずつ出場し、空いた穴を補欠メンバーが埋める形で、両方に出場するという特例での出場となった。
Predator Leagueに出場した韓国選手達にとってはぶっつけ本番で、実際AFFは“作戦、俺”という感じのスタンドプレイが目立っていたし、連携が噛み合わず早い段階で壊滅することも少なくなかった。しかし15ラウンドが終わってみれば、ドン勝数、キル数、獲得ポイント、総合順位、そのすべてが1位という完璧な形で完全勝利を収めた。これで韓国勢は、世界大会PGI 2018、アジア大会PAI 2019、そして今回のPredator League 2019と、国際大会3連勝となる。
2017年から「PUBG」をウォッチしている筆者からするとこの状況に驚かざるを得ない。というのも、2017年のβテストの時代から、2018年2月のIEM Katowice 2018まで、韓国チームはずっと勝てていなかったし、韓国のeスポーツアスリートは「PUBG」には目もくれていなかったからだ。
世界中が驚いたのは「PUBG」初の世界大会PGI 2018で、韓国Gen.G Goldが優勝したことだ。ポイントなのは韓国が優勝したことではなく、Gen.G Goldの優勝の立役者となったEscA選手が、「Overwatch」出身だったことだ。
「Overwatch」は、eスポーツファンならご存じの通り、Blizzardは2018年にスタートさせた「Overwatch League」を唯一のプロリーグとし、韓国を含む地域のリーグを実質的にアマチュアリーグと位置づけた。この結果、韓国のトッププレーヤーは、EscA選手が所属していたSeoul Dynastyをはじめとした「Overwatch League」所属チームに移籍した一方で、その座組を快しとしないプレーヤーは、「Overwatch」そのものから離脱していった。その行き先がどこになるのか注目されていたが、もうここまで書けばおわかりの通り、彼らは「PUBG」に流れているのだ。
韓国で今何を流行っているのかはPCバンのシェアを見るのが1番早い。さっそく、調べて見たところ1位「League of Legends」(33%)で変わらなかったものの、2位は「Overwatch」ではなく「PUBG」(18.2%)が付けている。「Overwatch」は3位(8.2%)まで下がっており、韓国ナンバーワンFPSはいつのまにか「PUBG」になっている。「Overwatch」は、韓国と切っても切れない関係にあるBlizzard Entertainmentの代表作で、韓国にとってお家芸のひとつになっている。「Overwatch League」は出場選手の過半数が韓国選手で、BlizzConで開催される「Overwatch Worldcup」は、実質的に“韓国チームの全勝優勝を見守る大会”になってしまっている。
それぐらい凄まじい強さを誇る韓国勢が、「Overwatch」から「PUBG」に軸足を移しつつある。あるいは最初から「Overwatch」ではなく「PUBG」のプロを目指してチームの門を叩く。「PUBG」で韓国が強いのは、「PUBG」が韓国のゲームだから、ではなく、韓国の才能が集結しつつあるから、ということが言えそうだ。
今回のPredator Leagueを観戦していた限りでは、AFFがフルメンバーで万全の状態から攻めかかった場合、敗れるケースはほぼなかったように思う。慢心から来る無理攻めにより、数は削られるケースは何度か見られたものの、基本的にはAFFが狙った相手をワンサイドで蹴散らすことがほとんどだった。
AFFの毒牙に掛かったのは、我らがSunSister Suicider'sも例外ではなく、良くて相打ち、トータルではほぼ完敗だったように思う。個々人のスキルはほとんど違わないように思うが、敵を認識してから狩りきるまでの寄せのテクニック、判断の速さ、そしてなんといっても“狩りの執着”が全然違う。狩りの執着というのは筆者が勝手に命名した言葉だが、日本のPJSなら見逃すような何気ないすれ違いシーンでも、一気に追い詰めてキルまで持っていく、その執念が凄い。
とりわけ凄かったのが、Style選手だ。CrazySam選手と同様のアタッカーのポジションだが、飛び込むタイミングがとんでもなく早く、単騎でもどんどん飛び込み、「さすがにここまで来ないだろう」と油断している相手の隙を突いてなぎ倒していく。Style選手のみ1人生存の状況下で、1対4の状況から、単騎で全滅させる活躍も見せ、今回はMVPは特に選ばれなかったが、1人選ぶとすれば、間違いなくStyle選手だと思う。
筆者は17日の試合が午後だったため、午前中、PKLの試合を見ていたが、日本のPJSより遙かにスピーディかつスリリングな試合展開で、非常におもしろかった。PKLは月水金の3日間、Twitchから手軽に観戦できるので、「PUBG」ファンは覗いてみるといいと思う。
先述したように、日本でもいよいよ2月22日より「PUBG」リーグ「PJS」がスタートする。日本のPJSも、そろそろ「League of Legends」のプロリーグ「LJL」のように、韓国人の選手やコーチをスカウトする時期が来ているように思うが、そういう動きにならないのは、単純に費用の問題だ。
eスポーツとしての「PUBG」はまだビジネス規模が小さいため、本大会で活躍した国内最強のSunSister Suicider'sですら、選手達に十分な報酬を与えられていないという。所属選手への報酬が十分でないのに、韓国人選手やコーチを雇えるわけがない。こうした状況を改善するためには、これを読んでいるファンの皆さんの力が必要になる。
「PUBG」は、2019年、eスポーツシーンを拡大化させ、大会の機会を増やすだけでなく、チームの収入を増やす機会も同時に増やし、ビジネスとして全体がWin-Winになるように改善していくとしている。「PUBG」ファンの皆さんも、ぜひ積極的に観戦して大会を盛り上げ、プロを目指して切磋琢磨している選手たちを陰に陽に支援して欲しい。
最後に、Predator Leagueは、2020年にフィリピンで開催されることが発表された。競技種目は未発表ながら、本大会の盛り上がりを見れば、よっぽどの事情がない限り「PUBG」が含まれるのは間違いなさそうで、この1年でアジアのチームがどのような成長を遂げるのか、来年の開催が楽しみだ。