ニュース
2018年のフィナーレを飾る「PUBG」最大のオフイベント「PWI2018」が開催
キルに特化したPKLルール採用でさらに魅力アップ。韓国の強豪を退けSunSister Suicider'sが優勝!
2018年12月17日 01:34
DMM Gamesは12月16日、国内でチャネリングサービスを展開する「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」のオフラインイベント「PUBG JAPAN SERIES WINTER INVITATIONAL 2018(PWI2018)」を、東京日本橋のベルサール日本橋にて開催した。
「PWI2018」は、「PUBG」の国内リーグ「PJS」の上位9チームと、ファンのユーザー投票で選出された5チーム、そして韓国のプロリーグ「PUBG Korea League(PKL)」に参戦するプロチームから2チームの計16チームで争われる、単日で決着が着くeスポーツ大会をメインイベントとしたユーザー参加型のオフラインイベント。DMM Gamesとしては初の試みで、会場も都内スタジオではなく、ベルサール日本橋を借り切り、約500名の幸運なファンが参加することができた。
入場料はわずか1,000円で、全4ラウンド行なわれた「PWI2018」をはじめ、目当てのチームの選手達と交流ができるファンミーティングや、「PWI2018」公式グッズの先行販売、豪華賞品があたるラッキードローへの参加、ドン勝つTシャツアバターが貰えるシリアルコードなど、12時の入場開始から20時の閉幕までガッツリ楽しめるイベントとなっていた。
「PWI2018」の注目点はいくつかあるが、1つは賞金の高さだ。賞金総額は1,000万円で、優勝チームにはなんと350万円が与えられる。MVP、MOSTKILLもそれぞれ50万円という具合で、賞金を出さず出演料のみで運営しているPJSとはケタ違いの大盤振る舞いとなっている。この賞金はすべてスポンサーからの協賛金で賄われており、Intel Extreme MastersやOverwatch Leagueなどと同じ開催スタイルとなっている。
当然、ステージ後方にはスポンサー各社を歓待し、新たな商談の場とする“VIPエリア”も用意されており、スポンサー関係者はアルコールとケータリングサービスを愉しみながら「PWI2018」の試合を愉しむことができた。ようやく日本もグローバルスタイルのeスポーツイベントが開催できるようになってきたなという印象を持った。
これで観客側にも、選手入場でハイタッチに参加でき、飲食し放題で、チームのサイン会にも優先的に参加できるようなVIPシートも用意されれば完璧だが、今年はその代わりに「ステージ側シート」に加えて「選手席側シート」が用意され、試合に臨む選手たちのすぐ横で試合を観戦することができた。選手からすれば少々やりにくかったかもしれないが、プロとは観られる仕事であり、出場選手の多い「PUBG」ならではのファンサービスと言える。
試合については、DMM Gamesの公式Twitterに、全結果とハイライトシーンが掲載されているので、詳細についてはそちらを参照いただきたいが、今回衝撃を受けたのが試合ルールが劇的に変わっていたことだ。
9月からスタートしたPJS season 1から、「PUBG」の世界大会「PUBG GLOBAL INVITATIONAL 2018(PGI2018)」準拠となった。これによりキルポイントが5ポイントから15ポイントになり、キルを取ることがより重要になった。そして今回「PWI2018」では、PGI2018準拠からさらにPKL準拠に変わった。
PKL準拠とは何かというと、PUBG Corpのお膝元である韓国のプロリーグで採用されているルールで、これがもうビックリするぐらい何もかも違うのだ。PWI2018に関係のある部分だけ抜き出すと、20チーム制が16チーム制に変わり、視点はFPP(1人称視点)のみ。キルポイントは1キル1ポイントとシンプルになると同時に、順位ポイントが誤差レベルまで減産され、1位8ポイント、2位4ポイント、3位2ポイントとなる。
PGI準拠のPJS season1では1キル15ポイント、1位500ポイントであり、単純計算で、1回のドン勝に33キル分の価値があったわけだが、PKLルールではわずか8キル分しか価値がなくなることになる。これは言い換えれば、安全地帯に恵まれて4キルで見事ドン勝した1位チーム(4+8=12ポイント)よりも、乱戦をくぐり抜けて10キルで2位に入ったチーム(10+4=14ポイント)のほうが高くなる、というルールだ。
これは極めて危険なルールだ。なぜなら「PUBG」の根底にあるバトルロイヤルの要素、“最後まで生き残ったものが勝ち”というゲームデザインを根本から覆してしまうからだ。PJSではβリーグの頃から、この点を重要視しており、キルポイントを5ポイントから加算することにも反対していたぐらいで、おそらくDMM側は今回も大反対だろうと思う。実際、唯一PKLルールで実施されている韓国では賛否両論あるようで、2019年もこのまま行くかどうかはわからないという。
筆者は今回の試合がPKLルールで行なわれるということを会場で初めて知って、その内容に衝撃を受けたが、1ラウンド、2ラウンドと見ていくうちに、これはeスポーツとしての「PUBG」としては大正解であり、「PUBG」はeスポーツと、通常ルールで行なわれる100人によるバトルロイヤルを、別々のコンテンツとして扱っていく覚悟を決めたのだなと感じた。
筆者が正解だと感じたのは以下の理由からだ。まず第1になんといっても展開が早い。PKLルールでは、輸送機で運ばれる時点で、初回の安全地帯が見えている。当然のことながら全チームが見えている安全地帯の位置の影響を受けて降下先を決める。見てしまった以上、完全に無視して降下先を決めるわけにはいかず、自然と安全地帯とその周囲に密集する形となる。そうなると全チームが安全に降下して、たっぷりファーミングして、全員が乗り物とフル装備を手に入れるということが許されなくなっている。
第2に「PUBG」最大の醍醐味である銃撃戦が存分に楽しめる。これはもうβリーグの時代からずっと書いてきていることだが、「PUBG」降下直後のファーミングはeスポーツとして破滅的におもしろくない。20チームもいるのに、なぜか序盤はバトルが発生せず、15分から20分にわたって安全にファーミングし続けることができる。なぜ毎回毎回こうなるかというと、キルより順位のほうが優先順位が高いため、お互いが無益な戦いを意図的に避けているためだ。
PKLルールでは、降下位置が毎回安全地帯周辺に密集し、キルポイントを獲得するために序盤から積極的に攻めるようになった。ヘルメットも付けず、トミーガンやMini14といった比較的使いにくい武器で、生き残りを賭けて降下位置の建物で遭遇戦が乱発する。これこそがeスポーツとしての「PUBG」で我々が観たかったものだ。しかも、トータルの試合時間は約30分と、全体の試合時間は変わっていないため、降下直後からドン勝が決まるまで全編にわたって銃撃戦を楽しめるようになった。
第3にキルがキルを呼び、従来では起こりえなかった乱戦が常に発生する。PKLルールのポイントは、キルにもっとも大きな価値を置いているということだ。逆に言えば、ダウンだけではまったく意味がないため、第三者にキルを奪われないようにダウン直後にキルを取る。従来は助けに来る味方をおびき寄せるためのエサにしていたりしたが、PKLルールでは1ポイントをもぎ取るためにすぐキルを取るようになった。こうした結果、キルだけを効率的に取るために、1対1の戦いに第三者が入り、漁夫の利を狙う戦術が頻繁に見られるようになった。PWIでも漁夫の利を狙った動きが雪だるま式に繰り返されることが度々あり、“勝者”が目まぐるしく変わる展開に観客は魅了されていた。
一方、選手達にとってはこのPKLルールに対応するのに大変だったと思う。FPPのみになったことで、どちらかといえばTPPのほうが慣れていた選手にとってはその時点で不利な試合になっていたわけだし、降下位置をカチッと決めて、その後のムーブを細かく設定していたチームにとっても、そのすべてがひっくり返され大弱りだったはずだ。
ただ、それでも観客の視点に立つと、初期ルールよりも、現行のPGIルールよりも、PKLルールがダントツに面白い。PUBG Corpとしては、グローバル展開するプロリーグにおいて、バトルロイヤルらしさと、競技らしさのいずれかを取るのか選択に迫られた結果、後者を取る決断を下したのだと思う。eスポーツとしての「PUBG」は、結果ではなく、過程を楽しむeスポーツコンテンツに進化したと言えると思う。
試合直前にそのPKLルールを把握した筆者が最初に感じたのは、「だったら、招待された韓国チームは滅茶苦茶に有利ではないか」ということだ。劇的に違うPKLルールでリーグをずっと戦ってきているため、日本のすべてのチームより、その戦い方に知悉していると考えられるからだ。ましてや韓国はeスポーツ大国であり、「PUBG」においても例外でなく韓国が格上だ。1位、2位、合わせて賞金総額の半額以上となる550万円を持って行かれたらおもしろくないが、その可能性は十分にあると思った。
果たして結果はというと韓国2チームとも1度もドン勝を取ることができなかった。ラウンド1はRascalJester、ラウンド2はSunSister Suicider's、ラウンド3はZoo Gaming / Penguin、そしてラウンド4は再びSunSister Suicider'sという具合で、結果は日本勢の完勝に終わった。
しかし、それはあくまで結果だけであり、過程については、常に韓国の2チームが台風の目となった。実況解説陣も語っていたが、韓国の2チームは、ムーブの質、キレが全然違う。敵の位置を把握した際のムーブ、キルすると決めてからのムーブ、遭遇戦の際の立ち回り、そして布陣の仕方などなど、すべての展開が早く、かつ精度が高い。
全ラウンドで見せ場を作った韓国チームだが、とりわけラウンド4のOP GAMING Huntersが素晴らしかった。ゲームの終盤、3人生存で真っ先に安全地帯中央に布陣したOP GAMING Huntersだったが、布陣したのは開けたファーム。このファームに布陣する合理性というのはよくわからなかったが、周囲には全員生存の野良連合Grim Reaperと、2名生存のSunSister Suicider'sがいて、包囲される格好となった。
Grim Reaperの展開の仕方は理想的で、三方から包囲するような形になっていた。誰かが位置を捕捉し次第、一気に殲滅する。その後、数的劣勢で漁夫の利を狙うために息を潜めているSunSister Suicider'sとの決戦になると思っていた。
ところがその予想は完全に外れて、信じられないことにOP GAMING Huntersは、Grim Reaperをほぼ同時に4人全員ダウンを取り、一気に全滅に追い込んだ。一瞬何が行なったのかよくわからなかったほどで、一番よく分からなかったのはGrim Reaperの選手達だと思われるが、これが韓国のプロチームの凄さだと感じた。
その後、SunSister Suicider'sが漁夫の利を得る形で、最後まで生き残ったSabrac選手の理想的なグレネードの投擲でドン勝を取り、PWI2018の優勝およびMVPに輝いた。
最終結果は、SunSister Suicider'sが22キル38ポイントで1位に対して、OP GAMING Huntersは23キル33ポイントの僅差で2位。3位にはSunSister Suicider'sがライバルとして挙げるCrest Gaming Xanaduが27キル29ポイントで3位入賞を果たした。Sabrac選手がもし負けていれば優勝はOP GAMING Huntersの手に落ちていたわけで、なかなか際どい戦いだったと言える。最後、Sabrac選手がグレネードでドン勝を決めた瞬間、本日最大の歓声が挙がった。
優勝インタビューで「今までで一番嬉しかった」と語ったSabrac選手だが、SunSister Suicider'sは日本代表として1月には「PUBG ASIA INVITATIONAL MACAO 2019」(マカオ)、2月には「Predator League 2019」(バンコク)に出場する。ぜひ名実共に日本最強チームとして大活躍してくれることを期待したい。