【特別企画】

フロムを“ソウルボーンの会社”だと思っている人に贈る「アーマード・コア」講座

「ここが! この戦場が、私の魂の場所よ!」

【ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON】

2023年 発売予定

 フロム・ソフトウェアの3D戦闘メカアクションシリーズ「ARMORED CORE(アーマード・コア)」の新作プレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Steam)用3D戦闘メカアクション「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」が発表された。「アナベル・ガトー」は3年待ったが、我々“傭兵”はこの時を10年待ったのだ。

【ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON アナウンスメントトレーラー】

 2013年発売の前作PS3/Xbox 360用「ARMORED CORE VERDICT DAY(Vの続編)」から9年経っているし、世界的という点ではPS3用アクション「Demon's Souls」から始まる“ソウルボーン”(ソウルライクとも。最新作「ELDEN RING」にまで至る「死にゲー」としての独自のテイストを指す言葉)の方が圧倒的に有名だし、フロム・ソフトウェア=ソウルボーンの会社というイメージがあってもおかしくない。当時高校1年生だった筆者が今は社会人である。10年とは子供が大人になるほどに長い。

 しかし「ARMORED CORE」シリーズは、大型の人型兵器による高速戦闘アクションが魅力であり、依頼をこなして資金を貯め、メカのカスタムパーツを買う傭兵稼業を楽しめるゲームとなっている。レベルの概念もなく、いわゆるソウルボーン作品とは本質的に手触りが違う。機体をカスタマイズし、試行錯誤しながら強敵に挑む。このサイクルが癖になるタイトルだ。

 筆者は世代的に「ARMORED CORE 4」から「ARMORED CORE VERDICT DAY」までしかプレイする機会がなかった。特に記憶に残っているタイトルは「ARMORED CORE for Answer(4の続編)」であり、その世界観・ゲーム性は筆者の趣向に大きく影響を与えている。「人類種の天敵」として、シリーズでも屈指の殺戮をもたらした主人公の生き様は当時思春期だった筆者にはいささか刺激が強かったようで、今でもYouTubeなどで動画を見るとしばらく興奮する程、自身の深いところまで影響されている。

「ARMORED CORE for Answer」
「ARMORED CORE VERDICT DAY」

 閑話休題。

 ここで改めて、「ARMORED CORE」とは一体どんなシリーズなのかを振り返っておきたい。本稿の狙いは、特に「フロム・ソフトウェア=ソウルボーンの会社」というイメージがある人に向けて、「ARMORED CORE」シリーズが何であるかを紹介することにある。ぜひ「ARMORED CORE」シリーズの知識を入れつつ、約10年ぶりの最新作に備えていただきたい。

「フロム・ソフトウェア=ソウルボーンの会社」だけじゃない

 まず、フロム・ソフトウェアは、「ソウルボーン」だけでなく、今回紹介する「ARMORED CORE」シリーズに加えて、「Another Century's Episode」や「天誅」シリーズなども手掛けている会社。もとはゲームを作る会社ではなく、ビジネスアプリケーションの開発を行なっていた会社というのも有名な話だろう。

 今回紹介する「ARMORED CORE」シリーズも根強い人気を誇るタイトル群ではあるが、他にも様々なロボット作品のクロスオーバーを楽しめる「Another Century's Episode」なども続編が待たれている。

フロム・ソフトウェア「沿革」のページ

【フロム・ソフトウェアその他タイトル】
「Another Century's Episode : R」
「重鉄騎」
「天誅 4」

「ARMORED CORE」とは

 そもそも「ARMORED CORE」とは何なのか。一言で表すなら、戦場で生きる傭兵たちの生き様を描いた3D戦闘メカアクションゲームシリーズだ。

 シリーズ第1作目となる「ARMORED CORE」は、1997年7月10日にプレイステーション向けに発売された。続いてスピンオフの「PROJECT PHANTASMA」(ACPP)、「MASTER OF ARENA」(ACMoA)が同じくPS向けに登場。プラットフォームをPS2へと乗り換えて、2000年にナンバリングの「ARMORED CORE 2」が発売、その後もスピンオフを含めて全10作余りがリリースされた。シリーズが最後に世に出たのは、2013年発売の「ARMORED CORE VERDICT DAY」(ACVD)。それ以降長らく音沙汰がなかったが、今回ついに発表されたのが、2023年発売予定の次回作「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」というわけだ。

「ARMORED CORE」シリーズラインナップのページ

「ARMORED CORE」
「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」

 プレーヤーは、いかにも兵器然としたデザインの人型兵器「アーマード・コア(AC)」に搭乗する傭兵となる。機体を数百種類におよぶパーツや、武器を組み合わせてカスタマイズ“アセンブル(アセンともいう)”することでオリジナルの機体を作成。企業や反体制組織など様々な勢力からの依頼を受けて、縦横無尽に戦場を飛び回れる戦闘アクションが特徴となっている。

 ただ“人型兵器”といっても、下半身は四本足や逆関節のもの、果てはキャタピラやアイロンの様な形状のものなどがある他、腕部分は人型から武器そのものもあり、機体本体のカスタムだけでも際限なくプレーヤーの個性が光るアセンを楽しめる。

 加えて射撃・近接武装や肩部武装、機体カラーにエンブレム、果てには機体内部や外装に至るまで自由に組み合わせられるのは、同シリーズを紹介する上で欠かせない魅力だ。

【ARMORED CORE VERDICT DAY ゲームツアームービー[アセンブル編]】

 シリーズに登場する“依頼(ミッション)”にも様々なタイプがある。筆者の好きな「ARMORED CORE for Answer」を例に紹介すると、シンプルに武装した敵ターゲットを見つけて倒すものから、数千万人が住む居住用の高空プラットフォーム「クレイドル」を破壊して回るものまで様々。プレーヤーが選択するミッションや難易度によって物語や細かいセリフが変化する。依頼を選択し、機体をアセンし、目標を達成し、お金をもらう。ただ何も考えずに敵を倒すだけでなく、プレーヤーに問いかけるようなその物語性も、根強い人気の理由だろう。“選んで殺すのが、そんなに上等かね。”など一部過激なセリフも世界観とマッチしている。

 さらに、渋くも好々爺然としたおじさんからうら若き女性、鬼教官のような勝気女性オペレーターなどの味方に加えて、高い志を持った人物から自身の欲の為に戦う人物まで登場する様々なキャラクターも、各シリーズの物語に深みを与えてくれている。

 また、「国家解体戦争」や「コジマ粒子」、「リンクス戦争」や「レイヴン」、「UNAC」などの物語を彩る各用語や歴史的出来事の語呂からくる独特な雰囲気も秀逸だ。さらに、被弾した際に飛び散る装甲やバリアの様な「PA」の輝き、高速戦闘でもしっかりと描かれる砂塵や建造物の崩壊描写など、「オイルにまみれた泥臭い戦い」を感じさせるディテールが、一部ロボット作品ファンに刺さっている。

「ARMORED CORE 4」
「ARMORED CORE V」

 特に「オイルにまみれた泥臭い戦い」の雰囲気を楽しめたのは「ARMORED CORE V」と「ARMORED CORE VERDICT DAY」だ。重量を感じさせる挙動や破壊された際の地面を転がっていく様子など、随所に拘りを感じられる。一方で、「ARMORED CORE 4」や「ARMORED CORE for Answer」の様に操作すると即座に動くようなネクストACによる高速戦闘では、「機動戦士ガンダム」シリーズのザクを蹂躙するガンダムの様な気分を味わえた。こちらはこちらで、“自分が物語の主役”という気分を存分に楽しめるので、好みが分かれるかもしれない。

 厳密には違うが、量産機同士による“泥臭い戦い”が好きな人、ワンオフ機同士による“主人公感のある戦い”が好きな人、そのどちらの需要も満たしてくれるシリーズは中々ない。なお「ARMORED CORE V」と「ARMORED CORE VERDICT DAY」に関しては、いずれもPS3とXbox 360で出たタイトルなので、それ以前のタイトルに比べてプレイし易いので、機会があればぜひ触れていただきたい。いくつかのタイトルは現在もオンラインサービスが継続している。

【PS3/Xbox 360でプレイ可能な過去作】
“戦い続ける歓びを”「ARMORED CORE 4」
“この戦いの向こうに、答えはあるのか”「ARMORED CORE for Answer」
“ここは、名も無き傭兵たちの戦場。”「ARMORED CORE V」
“「最期」を告げる、評決の日。”「ARMORED CORE VERDICT DAY」

 しかし、よくSNSで言われている様に、同シリーズの操作はいずれも難易度が高い。というのも、3次元的な戦闘中に、射撃や回避に加えて武装の入れ替えや敵の補足に索敵など“とにかくやることが多いから”という理由が挙げられる。かなり特殊な例としてコントローラーの前面をモニター側に持つ所謂「AC持ち」も度々語り草となるが、普通の持ち方でも慣れればプレイできるため、世界観やゲーム性が気に入ったのであれば是非プレイしてみてほしい。

PS5用DualSenseによる「AC持ち」の例。実際にしている人をみたことはない都市伝説的持ち方
【ARMORED CORE V 最新プロモーション映像[CGムービー完全版]】
【ARMORED CORE VERDICT DAY プロモーション映像 第2弾】

 なお、「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」公式ページでは、「ARMORED CORE」シリーズについて繰り返し説明されており、フロム・ソフトウェアも前作からの間隔が長かったと認識している模様だ。

「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」のページ記載の「AC」シリーズ説明

「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」に期待されていること

 12月9日の「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」発表より数日が経った現在。古参傭兵による「ARMORED CORE」シリーズを振り返る投稿や、今後に期待する声がTwitterなどSNSにて多く見受けられる。特にミッション選択形式による物語進行やアセンブルは言わずもがなだが、中には「ARMORED CORE VERDICT DAY」に登場したAIシステム「UNAC(UNmanned Armored Core)」の登場に期待する声も上がっている。

トレーラーでは無人機っぽい同型機体が並ぶ描写も?

 筆者としては「ARMORED CORE 4」や「ARMORED CORE for Answer」に出てきた機体周囲に展開されるバリア「PA(プライマルアーマー)」らしきものがトレーラーに映っていたので、それらを転用した攻撃の「アサルトアーマー」の様な自機を中心とした何らかの“切り札的攻撃手段”が実装されないか仄かに期待している。

 また、トレーラーでは「とっつき」として親しまれている「射突型ブレード」らしき武装も描写されており、敵に突き刺した後、抜いた際にはその先にオイルがベッタリと付着していた。これに注目するファンも一定数いた模様で、シリーズお馴染みの武装が実装される安心感と、描写の細かさに期待が高まる。なお、「とっつき」は射程も短く、攻撃範囲も点なため、高難易度な武装として一般的に認識されている。もし戦場で見かけたらベテランだと思った方がよいだろう。そのプレーヤーは、非常識なまでに強い傭兵な可能性が高い。特にエンブレムが特徴的で凝っていると強い傭兵なことが多いように思う。

血液の様に滴っているオイルが堪らないトレーラーだった

 エンブレムと言えば、次回作でもエンブレムがカスタムできるのか気になっている人も多い印象だ。エンブレムは自身の個性を全面に押し出せる要素なので、以前よりもさらに細かい部分までカスタムできると喜ぶ傭兵も多いのではないだろうか。

 一方で、SNSでは新作発売決定を喜ぶ声と同時に、高齢化している歴戦傭兵たちが自身の反応速度に不安を覚えている声も見受けられた。特に1997年の初代「ARMORED CORE」からプレイしている人は25年経過しているため、シリーズに度々登場するベテラン傭兵よりも年上な可能性がある。筆者としては、そういった“ベテラン”と“ルーキー”の戦いをマルチプレイで見れるのも「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」の魅力になるのではないかと感じている。

 今作のマルチプレイに関しては未だ情報があまり公開されていないが、自分の腕試しと併せて、アセンした機体のお披露目や他の人のアセンの観察(じっくり見る余裕はないかもしれないが)もできるので対人が怖い人も一度は挑戦してみてほしい。魂の場所(戦場)で会いましょう。