【特別企画】

「ストリートファイター6」CBTレポート【ゲーム紹介編】

ドライブシステムが革命的! シンプルで圧倒的に対戦が楽しい格闘ゲームが来た!

【ストリートファイター6】

2023年 発売予定

価格:未定

 カプコンが2023年に発売を予定している「ストリートファイター6」のクローズドベータテストが、10月7日から10月10日の3日間に渡り開催された。

 バージョンは東京ゲームショウ2022で試遊できたものと同様で、プレイアブルキャラクターは「ルーク」、「ジェイミー」、「リュウ」、「春麗」、「ガイル」、「キンバリー」、「ジュリ」、「ケン」の8キャラクターだった。

 過去に一度本作を試遊したことがあるが、数多くのプレーヤーと対戦するのは今回が初めてとなるので、格闘ゲームファンとしてはワクワクが止まらない。本稿では、「ストリートファイター6」がどのような進化をしているのか、特に1987年に1作目がリリースされてから35年の歴史を積み重ねてきた「ストリートファイター」シリーズ最新作としての視点でプレイ感や魅力をお届けしよう。

 なお弊誌では、「スト6」のCBTをeスポーツ競技としての視点でレポートした記事も掲載している。合わせてご覧いただきたい。

対戦施設バトルハブには“俺より強いやつ”がいっぱい!

 格闘ゲームをプレイしていないゲーマーからすると、格闘ゲームは第一に“難しそう”という敷居の高さを感じるジャンルではないだろうか。あくまで筆者の感想であるが、それに加えて「ストリートファイター」シリーズは近年の格闘ゲームの中でも特に硬派であり、初心者たちを寄せ付けないオーラを放っているような印象がある。

 しかしそれはあくまで印象。簡単だと言ったら嘘になるが、実際にプレイして感じる難しさよりも“先入観が大きく上回っている”ように思える。例えば「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズをイメージして、“難しいゲーム”という印象を持つ人はほとんどいないだろう。しかし実のところ、格闘ゲームとしては他作品よりも格段に難しいところのあるゲームだったりするわけだ。

こんな無骨な男たちがぶつかり合うゲームだけあり、ライトな雰囲気は確かに感じられない

 見た目で損をしている心優しきモンスターのような「ストリートファイター」だが、今作ではそんなイメージを払拭するために注力しているのが見て取れる内容となっている。

 大きなポイントのひとつは、今回のベータテストでも触れた「アバタークリエーション」である。後述する「バトルハブ」で使用できるアバターを作れるのだが、その自由度が驚くほど高い。髪型や顔面のパーツをエディットできるのはもちろん、腕の長さや骨盤の幅、さらには筋肉&脂肪量まで設定できるという細かさ。設定をめちゃくちゃにイジれば相当極端な見た目にすることも可能で、まだゲームも始まってもいないのだがその幅の広さがすでに面白い。

 ゲームでポイントを貯めると衣装などが購入でき、着せ替えたりすることができる。硬派な「ストリートファイター」が格闘ゲームとは別の部分でユーザーを楽しませているのは、良い意味で時代の流れに沿った進化を感じられた。

どんな見た目のアバターも思いのままに作れる
アバターには好みの服を着せることも

 今作では「バトルハブ」という巨大施設内でアバターキャラクターを操作して遊んでいく。空間内に設置されているアーケード筐体にプレーヤー同士を対面で座らせれば対戦ができ、かつてのゲームセンターを彷彿とさせる仕組みである。

 対戦の流れもまさにゲームセンターそのもので、相手にわざわざ対戦の申し入れをする必要はなく、席が空いていたら即乱入できるのもかなり遊びやすい。「ストリートファイターⅤ」のラウンジマッチのような、入室したら部屋主に挨拶をして、微妙な部屋であっても気まずいのですぐには抜けられないなんていう煩わしさもないので、ソロプレーヤーにもかなり敷居の低いシステムになっているのは嬉しいところだ。

広大なラウンジ内を自由に見て回れる
必殺技のアクションも繰り出せる。技は当たり判定があるので周りの人に注意して昇龍拳しよう
2人が席に着くと対戦開始

プレーヤーごとのスタイルが色濃く出る、ドライブシステムが戦いの鍵を握る!

 ではメインとなる対戦部分はどうだろうか。今回使用できたのは8キャラクターで、投げキャラは不在だが、コマンドタイプのキャラと溜めキャラが揃っていて「ストリートファイター」を楽しむには十分な環境が整っていた。

 個人的にはこれまで触ったことのなかった新キャラクター「キンバリー」が注目所。武神流だけありガイや是空に似たような必殺技を持ち、忍者らしい機動性の高さで相手を翻弄する立ち回りが強く感じられた。

 手軽に使えるキャラ性能ながら奥深さもある感触で、詰めれば非常に強いキャラクターになりそうだ。

ガイの押し掛け弟子で、武神流の技を使うキンバリー
姿を消して瞬間移動。師のガイよりも忍びらしい技を持っている
クリティカルアーツを発動すると音楽を再生し、移動速度と攻撃力がアップする

 触っていて面白いキンバリーだが、0から本格的に突き詰めていたらベータテスト期間なんてあっという間に終わってしまうので、過去作から使っていて勝手の分かっているリュウを使用して対戦を楽しんだ。とりあえず200戦ほど対戦してみて感じたのは「ドライブシステム」がかなり革命的であったことだ。

 「ストV」のEX必殺技にあたる「オーバードライブ」、ブロッキングにあたる「ドライブパリィ」、セービングアタック&セービングキャンセルにあたる「ドライブインパクト」と「ドライブラッシュ」、そしてVリバーサルにあたる「ドライブリバーサル」と、ドライブシステムの中身自体は過去作であったシステムの集大成といった内容だが、これらの要素が全て共通のドライブゲージを消費して使用するというのが肝となっている。

 オーバードライブをガンガン使っていくスタイルや、ゲージを温存しながらここぞというところでドライプインパクトを使うスタイルなど、ドライブゲージを使う傾向や運用に個性が色濃く出る。実際にいろいろな人と対戦したが、同じキャラクターであってもプレーヤーごとに全然違う立ち回りで、常に新鮮な感覚で対戦を楽しむことができた。みんながテンプレの立ち回りにならない、とても練られたゲーム設計である。

通常よりも強化された必殺技・オーバードライブ
攻撃の隙消しやコンボにも使えるドライブラッシュ
ドライブゲージが0になるとバーンアウト状態となり一定時間ドライブシステムが使用できなくなる。ゲージ管理が重要になる

 筆者的にはドライブインパクトが強力で、このシステムによる攻防がかなり熱いものになっている。相手の攻撃に合わせてドライブインパクトを叩き込めば膝崩れ状態にすることができ、無防備になった相手にさらなる追撃を与えられるという爆発的なアドバンテージを得られるのだ。

セービングアタックのように攻撃を受け止めて強力な一撃を放つ
食らった相手は無防備になるのでクリティカルアーツも入れ放題。かなり強力なシステムである

 格闘ゲームはもとより画面端は不利になるため押し込まれたくない場所なのだが、本作ではドライブインパクトの存在により画面端の苦しさが激増している。画面端を背にしている状態でドライブインパクトをガードすると壁やられ状態となり追撃をもらってしまうという仕様となっている。

 プレーヤーがこのシステムに慣れていないベータテスト初日は画面端に押し込んだらとにかくドライブインパクトを出せば美味しいといった空気だったのだが、2日目ともなると対策もされ、甘えたドライブインパクトには後出しのドライブインパクトで返されて逆に痛い目を見るといった状況になっていた。

 画面端に相手を追いやったからといって相手もドライブインパクトを持っているので、“無闇やたらにガン攻めができない”という本作ならではの新しい画面端の駆け引きが生まれ、過去作では見られない非常に面白いゲーム性になっている。

画面端ではガードすらも許されない。壁際の攻防がさらに緊張感を増した
安直なドライブインパクトはドライブインパクトで返される。攻める側にもリスクがあるという絶妙なゲームバランス

王道の対戦以外にも遊べるモードが充実!

 従来の格闘ゲームの対戦ルールの他に、特殊ルールやギミックが加わったエクストリームバトルが新たに実装された。指定されたお題を相手よりも先にこなせば勝利となる「パネル・トライ」や、既定の回数ダウンを取り合う「スリップ・マスター」など、日替わりでさまざまなルールが用意されている。爆弾や電撃、牛が突っ込んでくるなど、「ストリートファイター」とは思えないお祭り色の強い内容に昔からのファンとしては衝撃的であった。

 ガチの格闘ゲーマーからしたら「従来の対戦ルールだけで十分」となるかもしれないが、幅広いユーザーが楽しめるアクションゲームのようなゲームモードの実装は、格闘ゲームのデビューの間口を大きく広げてくれるのではないだろうか。

エクストリームバトルでは、通常の対戦とは全く異なる立ち回りが要求される
爆発や電流、まさに何でもアリ!
ロックマンに登場するメットールを味方にして戦うルールなんかも!

 「ストリートファイター6」とは直接的な関係はないのだがどうしても触れたいのは、バトルハブ内にあるゲームセンターだ。ここではなんと、「ファイナルファイト」や「マジックソード」などのカプコンの過去の名作がフリープレイで遊べてしまう。オマケにしては豪華であり、これが製品版でも本当に実装されるのか勘ぐってしまう程、カプコンマニアにはたまらない要素である。

ゲームセンターで遊べるタイトルは日替わりで変化
「ストリートファイター」と世界観を共有している「ファイナルファイト」
ファンタジーな世界の横スクロールアクション「マジックソード」
懐かしの「スーパーストリートファイターⅡX」もプレイできた

シンプルで圧倒的に面白い「ストリートファイター」の予感!

 今回3日間ガッツリとベータテストをプレイした感想だが、過去作と比べてかなり遊びやすい内容となっていた。

 まず、ドライブシステムが全キャラ共通なのがすごく分かりやすい。前作「ストリートファイターⅤ」のVトリガーやVスキルはキャラクターごとにそれぞれ効果が違い、自分の使用するキャラはもちろん、対策として対戦相手の能力も理解する必要があった。

 プレイアブルキャラクターは全45人もいて、各キャラクターがそれぞれVトリガーとVスキルを2種類ずつ持っている。ガチでプレイするなら単純計算で180種類の能力を頭に入れなければならない。まあこれは極論で、使用頻度の低いVトリガーなどもあるので厳密にはこんなに覚えなくても良いのかもしれないが、それでも勝つためにはかなりの知識が必要だった。しかし、今作ではドライブシステムを理解するだけ――いや、ドライブインパクトの使いどころを覚えるだけで高度なコンボなんて習得しなくても普通に対戦になるレベルだ。

 遊びやすさという点では1ボタンで必殺技を繰り出せる操作系「モダン」の存在も大きい。筆者は操作に慣れ親しんだクラシックでプレイしたが、対戦相手の中にはモダン操作で本格的なプレイをしているプレーヤーも存在し、モダンでも格ゲー勢と対等に渡り歩けるというのを肌で感じることができた。

まずはドライブインパクトの使いどころと切り返しを覚えれば十分戦える

 シンプルで遊びやすいゲームシステムになりながらも、格ゲーマーが退屈するような浅いゲームではないのもポイント。中でも光っていたのが、攻撃の硬直をキャンセルさせて次の行動に移れるドライブラッシュ。あまり実戦投入はできなかったが、コンボ開発伸びしろがかなりありそうな感触があった。

 3日間のプレイではまだまだ「ストリートファイター6」の表面的な部分しか触れられていないと思うが、筆者的には近年のシリーズの中でもダントツで対戦していて面白かった。加えて、対戦以外でも楽しませてくれるエンタメ的な部分の一端にも触れることができ、その間口の広さの部分にも期待したい。

 本作の発売が2023年のいつになるのかは分からないが、久々に待ち遠しいと思える格闘ゲームである。対戦の奥深さと楽しさゆえに、今後のeスポーツシーンでの盛り上がりにも期待が持てそうだ。