【特別企画】

さよなら数多のイカれカード達……! 「遊戯王マスターデュエル」リミットレギュレーション改訂で新時代が幕を開ける!?

【「遊戯王マスターデュエル」新リミットレギュレーション】

8月31日 適用予定

 爆アドォォォ!アドえもんです!筆者は普段YouTubeにて遊戯王を中心にカードゲーム動画を投稿している愉快でうるさいお兄さんだ。今回は「遊戯王 マスターデュエル」において8月31日に適用予定の新リミットレギュレーションについてバッッッッッチリ語ろうと思う!

 まず前提として、このタイミングでの適用には先日開催されたイベント「デュエリストカップ」が大きく関わってそうだと筆者は考えている。このイベントでは今までのカジュアルなイベントとは毛色が異なり、真剣に強さを追い求めたガチガチの環境デッキ同士の熱い戦いが日夜繰り広げられていたのだ。今回はその結果を見ての禁止制限カードの試行もしくは現環境を締めくくる最後の舞台として「デュエリストカップ」を開催し“最初からこのイベント後にリミットレギュレーションを更新する予定だった”とも考える事ができるだろう。

 いずれにせよ我々ユーザーにとっては“特に環境で暴れているカード”の強さを体感できるイベントではあったため、その恐ろしさから記憶に強く刻まれているカード達が今回は投獄されているように感じる。今回は何故そのカードが規制を受けたのか、主にどう使われていたのかなどにフューチャーしながら、今後の環境や影響を受けたデッキタイプのについても取り上げていこうと思う。

【新環境徹底解説!VFD、虚無、勅命など禁止カード大量追加!弱体化・強化されるデッキをチェック!【#爆アド】】

 なお、こちらの動画では私と一緒に出演している相方が今回のリミットレギュレーション改訂について動画でまとめているので是非チェックしてみてほしい。前回の新リミットレギュレーションについての記事はこちら。

あまりにも納得の新禁止カード達! OCGとは少し違う改訂にも注目!

 まずは今回の改訂で禁止カードになったカード達について取り上げていこう。今回の改訂の印象だが全体的に禁止カードは「その1枚が使われただけでゲームが終わる」というカードが投獄され、制限・準制限カードに関しては「環境テーマの抑制」+「汎用最強カード」が投獄、緩和されたカードに関しては「環境にはいないが強力なカード」が釈放されている印象。かなり多くのテコ入れが入っているため環境が大きく揺れ動く予感をビンビンに感じる。早速禁止カードから順に見ていこう。

【公式より発表された新たなリミットレギュレーション情報】

8月31日適用予定のリミットレギュレーション

禁止カード

・真竜皇V.F.D.
・王宮の勅命
・虚無空間
・D-HERO ディバインガイ
・No.75 惑乱のゴシップ・シャドー

制限カード

・抹殺の指名者
・金満で謙虚な壺
・プランキッズ・ミュー
・フュージョン・デステニー

準制限カード

・オルターガイスト・マルチフェイカー
・転生炎獣ガゼル
・スキルドレイン
・炎舞-天キ

規制が解除されるカード

・深淵の暗殺者

さらば最凶モンスター「真竜皇V.F.D.」!良い夢をありがとう……

 まず1枚目は「電脳堺」デッキの最強制圧カードにして所謂「ハリアウロ」のゴールとしても優秀だった最強エクシーズモンスター「真竜皇V.F.D.」だ。禁止化は非常に妥当な判断ともいえる存在で、むしろOCGの環境より少し長く使わせてくれてありがとうって感じだ!

 このモンスターは自身の効果でお互いのターンにエクシーズ素材(X素材)を使う事で、自分の宣言した属性の相手モンスターの効果の発動と攻撃を封じる効果を持ちつつ、相手の場に出てきたモンスターがその宣言した属性になるという理不尽極まりない効果を持っている。言ってしまえば場に出たモンスターに関してはそのターンに限りほぼアクションができず、さらには相手のデッキが判明した後ならば的確な属性を宣言する事で手札・墓地であってもモンスター効果を封じることができてしまう。

 基本的にモンスターで戦う遊戯王において、うまくいけば2ターンに渡って相手ターンにこの効果が使えてしまうのはほぼ負けに等しい状況を作ってしまい、他の制圧モンスター達との違いとして、複数枚の制圧カードを並べる事による妨害ではなく、この1枚の効果だけが通ってしまえば、ほとんどのアクションを封じれてしまうと言う点が飛びぬけていた点となっていた。

 ランク9という点で少し出しづらさがあった点もリソースを回復できるレベル9のシンクロ召喚を複数回行なえる「電脳堺」や、今や殆どのデッキで行えてしまう「ハリアウロ」の動きによっても簡単に出せてしまう。さらには、「勇者グッドスタッフ」等にも投入されるパターンもあるなど、もはや出しにくいとは何ぞやと言わんばかりにポンポンフィールドに出てしまうのも問題の1つだろう。

改めて見るとモンスターに親でも殺されたんじゃ無いかと疑うレベルで相手のモンスターアクションをガチガチに封じる効果を持っている。元々は出しづらさと能力が比例していたが、様々カードが追加された現代パワーによってお手軽に出せるようになってしまったのが大きな問題点だ

 弱点としてどのタイプのデッキでも出すためのルートに多くのカードを使用する事から相手の手札誘発カードによる妨害を受けやすかったり、出しやすくなったとはいえこの「真竜皇V.F.D.」を出そうとすると他の制圧モンスターを出せるほどの余力を残す事が難しいため、効果を発動する際に「無限泡影」や「禁じられた一滴」等の手札からチェーンできる効果無効カードを使われると妨害が一気に無くなってしまうという懸念点があった。しかし、この部分も先日登場した「勇者」の出張によってお手軽に追加の妨害を増やせるようになった事に加え、展開の障害となる手札誘発カードをケアしながら「真竜皇V.F.D.」の召喚を行なえるようになってしまっている。

 環境でよく見かけたデッキタイプの最終ゴールが「真竜皇V.F.D.+流離のグリフォンライダー」を基本として「勇者電脳堺」デッキであれば「真竜皇V.F.D.+流離のグリフォンライダー+電脳堺門-朱雀」、「勇者グッドスタッフ」であれば「真竜皇V.F.D.+流離のグリフォンライダー+D-HERO デストロイフェニックスガイ」といった具合に、オマケにしては強すぎる面々が揃ってしまう事もしばしばだったのも強さに拍車をかけてしまっていた。

 上記2つのデッキタイプが多く見受けられた事もあって数多くのプレーヤーにお手軽ゲームエンドモンスターとしての印象を持たれてしまった事からも「真竜皇V.F.D.」が禁止カードにぶち込まれてしまうのはしょうがないと思うデュエリストも多いだろうと予想できる。

 加えて実際の「遊戯王OCG」では現状の「マスターデュエル」のカード環境の頃には既に「真竜皇V.F.D.」が禁止カードになっていた為、より長く生き残っていた事がある意味奇跡だったとも言える。多くのヘイトが向けられていたかもしれないが、OCGでは見れなかった「勇者」や「D-HERO デストロイフェニックスガイ」との長きに渡る夢の大怪獣バトルを見せてくれた彼には感謝をしつつ安らかに眠ってもらおう。

本体が出しやすくなった事で回りに別の妨害カードを簡単に用意できるようになってしまった。「V.F.D.」1体ならまだ何とかなってたとしても、他の妨害を使われると流石に相手するのが厳しくなる……!

1枚ゲームエンドカードの代名詞「虚無空間」+「王宮の勅命」がついに投獄! むしろなぜ今までシングル戦で許されてたんだ!?

 続いてはほぼ同じ扱いとなる「虚無空間」と「王宮の勅命」についても2枚一気に触れていきたい。

 正直もう個人的には触れる必要がないレベルでベストオブ禁止カードだと思っている。この2枚は両方とも永続罠カードとなっており、張られている間それぞれ「モンスターの特殊召喚が行なえない」と「フィールドの魔法カードの効果無効化」というそれぞれ「遊戯王」の半分以上を締めるであろうアクションを封じる効果が適用される。デッキによってはこのどちらかを発動された瞬間勝ち筋が全て消えるほどの強い拘束力を発揮し、先行を取ったプレーヤーが手札事故を起こしていたとしてもこの片方を引いていればイージーウィンできる可能性があるほど強力なカードとなっている。

もう見るのも嫌だというデュエリストも多いであろう2枚の最強トラップカード……! 「遊戯王」の基本アクションを永続的に封じてくるのはやはり強力だ

 一応、いずれも永続罠カードのため「コズミックサイクロン」や「ツインツイスター」と言った速効魔法にチェーンされて破壊されると効果が適用できない弱点がある事に加え、それぞれ「虚無空間」であれば自分の手札・場の他のカードが墓地に行く事で自身を強制破壊する効果があったり、「王宮の勅命」に関しても毎ターン700LPを払う必要があり、払えなかったらこのカード破壊するという解除条件が設けられている。

 だが、正直言うとこれは無いも等しいデメリット効果である。効果は両プレーヤーに及ぶため、お互いの動きを封じていたはずなのに上手く解除されて相手にだけはカードを使われるという事があるほか、現状の遊戯王は1ターンでも動きを封じられた時点で大きく相手に有利を与えてしまうほどの高速環境である。そのため、これらの条件はデメリットではなくメリットとして使われてしまう事の方が多いのだ。

 相性の良い環境デッキとしては両方を無理なく投入できつつ比較的自由に自分から効果を解除できる「エルドリッチ」が代表的だろう。他にも「虚無空間」であれば自分は全く特殊召喚を行なわない展開ができる事に加えて、テーマの特性的にも墓地にカードがあまり行くことが無い「ふわんだりぃず」等も相性が良い。とは言えこの2枚に関しては単体パワーが高すぎるため、どのデッキから飛んできてもおかしくないカードとなっていた。

 ロックを主体としない展開系デッキであっても、それぞれ1枚ずつ入れるだけで全然仕事をするし、さらには後述する「抹殺の指名者」によって相手の「虚無+勅命」を一時的にケアするといった芸当も可能だったからだ。もちろん、デッキタイプ的に合わなかったりデッキを作る際の枚数調整で入らないという事も発生するカードではあるが、それでもデッキのスロットに余裕がある場合はつい入れてしまうカードになってしまっていた事も否めないだろう。

あらゆる永続罠を駆使できる最強の罠デッキ「エルドリッチ」と、多くのメタカードをすり抜けながら他テーマには無い特殊な展開を行なう「ふわんだりぃず」がよりにもよって一番相性が良いというのも対戦相手の顔を歪ませる要因だったのかもしれない

 さらに、この2枚に関しては本作の基本がOCGの「マッチ戦」とは違い1本勝負の「シングル戦」であるという事も大きな禁止要因となっていると思っている。というのも2本先取となるOCGの「マッチ戦」のシステムであれば例えば1本目のデュエルに敗北したとしても相手が「虚無空間」+「王宮の勅命」を採用しているような罠型のデッキと判明すればサイドデッキからそれらを除去するカードを投入する事でギリギリ対策を打つことはできるのだ。そうでなくても先行後攻の選択が2戦目以降は可能だったり、それに合わせたサイド構築等で理不尽な敗北を感じることが少ないシステムとなっている。

 だが1本先取の「シングル戦」となるとそんな対策をメインデッキから順当にできるかと言われれば難しく、対策カードが無かった場合にこの2枚のどちらかを発動されて負けてしまうと敗北に理不尽感を強く感じてしまう事が多いのだ。なお「マッチ戦」が可能な「遊戯王OCG」の環境ですら「虚無空間」と「王宮の勅命」は現在禁止カードになっている。逃げ場ねぇな!?

 勿論この2枚にも良い部分は当然ある。「どんなデッキに採用しても先行でこれらを使うとイージーウィンできる可能性がある」という事は初心者と上級者の壁を払いのけるパワーカードとしては重宝しなければいけない存在ではあるし、永続罠である点を活かして多くのカードと面白いコンボが可能だったことも事実だ。

 ただ、それでも発動されただけでゲームを終わらせる可能性が高い最強の拘束力、相性の良いテーマは勿論ながら、どのデッキからでも飛んでくる可能性がある程のカードパワーの高さと相手にする頻度の多さ、そして使われた瞬間のゲーム体験の虚無っぷりからも健全なカードだったとはお世辞にも言えないだろう。筆者が個人的にこの2枚をあまり好きじゃないという感情を差し引いたとしても禁止カード入りは妥当と言わざるを得ない。

「デスフェニ出張」に今までに無いメスが入る! 禁止に選ばれたのは「アナコンダ」ではなく「ディバインガイ」!?

 続いての禁止のリストにぶち込まれカードは「D-HERO ディバインガイ」だ。様々なデッキで猛威を振るう「D-HERO デストロイフェニックスガイ」でも「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」でもなく「D-HERO ディバインガイ」である。そして同じ理由であるためここで今回制限カードへと指定された「フュージョン・デステニー」についても一緒に取り上げていきたいと思う。この改訂には正直筆者もかなり驚いた。

カード単品で見ればテーマを支えるちょっと条件の厳しいドローソース位の性能なのだが……。組み合わさったカードがあまりに最強すぎたため無念の禁止カード化を果たしてしまった

 このカード達が禁止・制限カードへと至った理由としてはいわゆる「デスフェニ出張」と呼ばれる動きが問題となったからだ。これはデッキから融合素材を墓地へ送れる「フュージョン・デステニー」を使って1枚で最強カード「D-HERO デストロイフェニックスガイ」を融合召喚するギミックである。発動後に重い誓約がかかるものの、展開の最後に発動すれば問題ない点、ドローでデッキから引くのはもちろん「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」からも間接的に使用できる事からどんなデッキでも取り入れられる。さらには、デッキに必要なスロットが「フュージョン・デステニー」2枚+素材モンスター2体+EXデッキの「D-HERO デストロイフェニックスガイ」1枚の計5枚だけで済むお手軽さもあり、数多のデッキにこのギミックが採用され、一時期は「D-HERO デストロイフェニックスガイ」だらけの対戦風景が広がった程だ。

どんなに重い誓約を付けたとしてもデッキからモンスターを複数体墓地へ送りつつ強力なモンスターを生み出せてしまう“デッキ融合”はちょっとしたカードの追加ですぐにバランスブレイカーになってしまうほど強力な効果といえる。毎ターン相手のカードを破壊しつつ何度も蘇るモンスターが簡単に出せてしまい、あらゆるデッキに出張していた

 そんな中で今回は実際に融合を行なう「フュージョン・デステニー」と出す先の融合モンスター“ではなく”その素材として活躍していた「D-HERO ディバインガイ」が禁止カードとしてぶち込まれる事となった。この「デスフェニ出張」では融合素材モンスターとしてこの「D-HERO ディバインガイ」と「D-HERO ダッシュガイ」がほとんどの場合で採用されており、ダッシュガイによるドローカードの特殊召喚と、ディバインガイによる2枚ドローによって融合召喚をした次のターン以降のリソース回復に大きく貢献していた。

 「D-HERO デストロイフェニックスガイ」の単体性能だけで見れば確かに最強カードの一角である事に違いないが、歴代の禁止カード達に比べればまだ戦いようのあるカードともいえる。ただ、冷静に考えて毎ターン復活して場のカードを破壊してくるモンスターを生み出しておきながら「ディバインガイを使って2枚ドロー」という動きはかなり“やっている”寄りに思えるムーヴといえる。

 このギミックの本質は、他の禁止カード達のような直接的なカード単体の強さでは無く、「D-HERO デストロイフェニックスガイ」による妨害+「D-HERO ディバインガイ」によるリソースの確保という部分が大きな強みとなっていたギミックのため、その一旦を担っていた「D-HERO ディバインガイ」が禁止になるのも納得の改訂だろう。

一緒に墓地へ送られていたダッシュガイもドローなどで直接カードを増やせる効果は無いものの、モンスターを出力できる能力は十分に強力。また、上級モンスターを引き込んでしまった際にも効果で特殊召喚する事で、ディバインガイの効果を発動できるようにするなど、融合素材同士でもシナジーが強かったのもこの出張セットが強力たる所以だった

 しかしここで面白いのがこの「デスフェニ出張」ギミックにおける禁止改訂が当時のOCGの禁止改訂とは全く違う道を歩んでいるという事だ。OCGでも「マスターデュエル」と同じく「デスフェニ出張」が環境を荒らしまわった時期があったのだが、OCGにおける1回目の改訂で、まず「フュージョン・デステニー」を禁止にする事でギミックの全てを封印し、次の改訂の時にやり過ぎたと思ったのか「フュージョン・デステニー」を制限に戻した上で、出張の難易度を下げていた「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」を禁止に追いやったのだ。これにより純粋な構築の「HERO」デッキや、一部の相性の良い融合テーマへの出張は可能ではあるが全てのデッキへの出張は不可能なレベルに調整されたのである。

 当時は面白カードでもあった「捕食植物ヴェルテ・アナコンダ」の禁止や、1回目の「フュージョン・デステニー」の禁止の際にもかなり多くのデュエリスト(少なくとも筆者)が「デスフェニを禁止にしろよぉぉぉぉぉぉ!!!!」と嘆き悲しんでいたのだが、今回はそのどれとも違う改訂が実現されたのである。「ディバインガイ」の禁止カード化は改訂内容が非常に的確な事に加えて、今までに無い「マスターデュエル」ならではの独自の対戦環境を生み出す第一歩となると筆者は感じている。

通れば勝ちの代名詞がついに陥落! 「ロンゴミアント」の立役者「No.75 惑乱のゴシップ・シャドー」が禁止カードに!

 今回禁止になった最後のカードは「No.75 惑乱のゴシップ・シャドー」だ。このカードは単体性能で見ると相手が発動したモンスター効果を互いのドローへと変更するというもの。妨害のようなそうでも無いような感じのやや特殊な効果を持ったモンスターなのだが、問題なのがもう1つの効果である。自身と自身の持っているX素材を他の「No.」エクシーズモンスターのX素材としてゴッソリぶっこむという豪快な能力を持っている。これによりX素材を大量に持つことで効果を何度も使用できるようになったり、X素材の数だけ強力になるモンスターをサポートする事ができるという他のモンスターには無い独自性を秘めたカードとなっているのだ。

特徴的な効果を持つ「No.」モンスターの中でも自身がエースとして活躍するのではなく、他の「No.」をサポートする事に長けている非常に珍しいモンスター。100種類以上存在するナンバーズと組み合わせてコンボを考えるのが非常に面白いカードではあった……

 ここまで聞けば様々な面白いコンボに使える最高のカードだったのだが……このカードに関してはある意味被害者と言ってもいいだろう。

 今回禁止へと至った理由はこのカードと合わせる事で最強の性能を発揮する「No.86 H-C ロンゴミアント」とのコンボにある。ロンゴミアントは自身が持っているX素材の数によって様々な効果を得られるカードで、本来はエクシーズ召喚する際に多くレベル4のモンスターを素材とする事で能力が開花していく面白いカードだ。その能力も1枚だと戦闘耐性、2枚だと攻守1500アップといった感じで普通にエクシーズ召喚した際の能力は至って健全と言って良い。さらにエクシーズ素材が増えていく事で効果がロマン寄りになっていき、3枚だと他のカードを受けなくなり、4枚だと相手がモンスターの召喚・特殊召喚できないという制圧効果が付与される。5枚以上になると起動効果で相手の場のカードを全て破壊できるという、除去も戦闘も効かず相手への制圧をしながら場を殲滅してくる最強モンスターになるのだ。

 レベル4モンスター5体を素材にエクシーズ召喚するのは難しく、並大抵の展開力では達成できないため、当初は現実的に考えると3つ素材持ち位が妥当なラインだったのだ。それが一気にエクシーズ素材を3つも増やせるこの「ゴシップ・シャドー」とのコンボによって現実的に達成できるラインになってしまったのである。とはいえ、そのコンボもレべル4モンスター2体+レベル3モンスター2体をフィールドに出す必要があるため簡単ではないのだが、丁度その条件を達成させやすいテーマである「幻影騎士団」は、強力な「幻影騎士団ティアースケイル」用いる事で初動から安定して全ての効果を適用できる通称「5ゴミアント」を作れるようになってしまったのだ。

ロンゴミアントは当初ロマン効果として設計されていたが、周りのカードパワーが上がった事でロマンではなく現実的な強さとして確立してしまったパターンの代表例と言える。「幻影騎士団」は「5ゴミアント」を作れる事に加えて、オマケで妨害罠をサーチしたり大量の墓地リソースを残す点も強力で、今では別タイプとして「勇者」と組み合わせて活躍していたりと非常に地盤のしっかりしたテーマである

 正直この「5ゴミアント」に関しては「マスターデュエル」のサービス開始当初から一定数存在しており、ある程度達成に条件が必要な事から放置されていた節があった。それでも決まってしまったら他の先行展開制圧デッキとは次元の異なる制圧力を発揮してしまい、「シングル戦」でこのタイプのデッキに当たり先行を取られた際に半ば交通事故のような感覚に陥るほどワンサイドゲームになってしまうのが問題だったと言える。

 他の制圧系最終展開とは違い、完成してしまえば後手寄りのカードを何枚用いても“崩す事がほぼ不可能”といっても過言では無いのが難しいポイントで、今でも先行ゲー環境といっても過言ではない「マスターデュエル」をさらに先行ゲーにしてしまっている要因の一端を担っている要因の1つだ。 「No.75 惑乱のゴシップ・シャドー」も「No.86 H-C ロンゴミアント」も双方面白いカードではあるが、ある程度安定してこの2枚を揃えられるようになってしまった現代のカードプールで片方が許されないのも仕方がないだろう。

 今回禁止カードとして投獄されたカードを見て思ったことは「マスターデュエル」の禁止改訂の方針としては召喚した際の演出が付くエースカードは極力禁止化を避ける傾向にあるという事だ。それぞれ見ていくと「5ゴミアント」に関しては最終的にフィールドに君臨する「No.86 H-C ロンゴミアント」を禁止にするのではなく「No.75 惑乱のゴシップ・シャドー」を投獄しているし、「デスフェニ出張」に関しても、フィールドに出てくる「D-HERO デストロイフェニックスガイ」ではなく、その周りを規制する事で本体の規制を何とか回避しているように見える。

 プレーヤーとしての視点から見ると、デッキのエースが規制を受けて本来のテーマ性が機能不全にならずに済むためありがたい采配といえる。その中で、演出がありながら一応「真竜」デッキのエースである「真竜皇V.F.D.」が禁止カードとなった事を考えると、彼だけはどうしようもないほど異色の強さを発揮していたなと感じてしまう。